新・雑事雑感

主に時事的話題です.

2019年10月11日 (金)

台風19号 (12~13日随時更新)

 台風19号が,非常に強い勢力のまま首都圏直撃しそうだと,テレビ等で繰り返し報道されている.
 
気象庁の梶原靖司・予報課長は11日午前に記者会見し、1958年に伊豆半島の狩野(かの)川が氾濫し、死者888人、行方不明者381人を出した台風に匹敵する記録的な大雨になる恐れがあり、大雨特別警報を出す可能性があることを指摘。「自分の命、大切な人の命を守るために、風雨が強まる前に、夜間暗くなる前に、市町村の避難勧告などに従って早め早めの避難、安全確保をお願いします」と呼び掛けた。》(毎日新聞 2019/10/11 11:27)
 
 今日の午前十一時頃,藤沢のダイエーに食料の買い出しに行って驚いた.
 パンの棚,カップ麺の棚がガラガラになっていたのだ.
 私のうちは食料備蓄は十分なので,パンやラーメンを買えなくても別にかまわないのであるが,みんな心配なんだろうなあ.
 
 ある情報サイトのコンテンツに,各地の停電リスクというのがあり,それによると藤沢市は停電可能性がかなり高い地域になっている.
 私の住居は横浜市であるが,藤沢市に近い.東電の電力供給網は行政区分に従っているわけではないから,湘南の海岸各地域が停電した場合,私の家も停電に見舞われる可能性が高い.実際,大昔だが,平塚市から藤沢市に至る一帯が長期停電した時,横浜市の南部も停電した.
 台風15号が千葉県を襲ったとき,強風で飛ばされた瓦が家の窓ガラスを破壊し,その窓から吹き込む強風で屋根が吹き飛ばされると言う事態が多数発生したという.私の家は,飛来した瓦が直撃したら必ず割れる (雨戸がない) という窓が一つある.困ったなあ.ベニア板で補強しておけばよかった.(後悔)
 実は瓦が当たったくらいでは破れない強度の繊維入りシートをAmazonに発注していたのだが,発送が延び延びになって,台風来襲に間に合わなかったのだ.まあ,よその家の屋根がぶっ飛んで我が家に落下衝突したら,そんなものでは無意味だけど.
 
 テレビの台風報道で,NHKほかが「セブン・イレブンが首都圏1000店休業」と報道し,解説委員みたいな人が「利益よりも従業員の安全を優先した大英断です」と語った.その一方で「ローソンとファミマは,オーナー判断にまかせる」と画面に文字だけで簡単に報じた.
 しかし,例えば読売などネット上の新聞では,
 
セブン&アイ・ホールディングスは11日、首都圏・東海地方のセブン―イレブン約1000店が12日に休業することを明らかにした。
 
休業は加盟店オーナーの判断になるため、詳細な店舗数や休業時間などは明らかにしていない。
 セブンは「顧客や従業員らの安全を第一に判断をしてもらっている」としている。
》(2019/10/11 20:10 読売に掲載)
 
と書かれている.ローソンとファミマと同じ対応なのに,セブンだけが「大英断」とほめられた.w
 これは広報の上手下手なんだろう.今年に入ってからのセブン本部とオーナーの対立で,コンビニ業界を見る市民の目は「コンビニのオーナーを苦しめるセブンvsオーナーにも配慮するローソン&ファミマ」という図式が固まっている.そこへもってきてこのメディアへのリリースはホントにうまい.その知恵をオーナーへの配慮に回せばいいのに.
 
(10/12 10:35) テレビの台風情報と tenki.jp の台風19号進路予想図をずっと見ているのだが,既に私のうちあたりは強風域にあり,やがて暴風域になりなんとしているわけだが,実際には,雨は小降り (部屋の中では雨音があまり聞こえない) で,空は明るい.風はほとんどない.風雨の激しいところと,そうでないところが著しくまだら模様になっていると思われる.
 
(10/12 15:05) 依然として雨も風もたいしたことはない.伊豆半島付近に上陸の可能性が高まっているが,そこから埼玉県方面に進むらしい.とすると私の住んでるあたりは直撃コースだ.と書いてるうちに風の音が急に大きくなってきた.
 
(10/12 18:15) 台風19号は現在,下田市の西方にあり,北北東に進んで上陸する見込み.テレビの中継を見ると,藤沢市の海岸は猛烈な暴風雨に見舞われている.川崎市では住宅への浸水が極めて激しいレベルで発生している模様.
 
(10/12 22:15) ようやく風と雨はおさまった.翌朝になってみないと何とも言えないが,私の家の周辺は被害が軽微だったと思われる.
 
 上に時系列的に記した状況は,テレビとネット情報を参照しながら書いたものだ.
 震災と異なり,台風は現在は事前に詳しい情報が入手できる災害になっている.公共交通機関は計画運休というパラダイムシフトを成し遂げた.
 その効果は著しい.今回の台風19号はあの狩野川台風を上回る規模とされたが,狩野川台風の死者 (1269人) を思えば,人命の安全という点で比較にならぬほど我が国の台風対策は進んだと言える.
 それにしても,と思う.私は貧乏大学生の時には新聞をとっておらず,テレビはもちろん持っていなかった.当時の学生で,自宅通学の学生は別だが,テレビを持っているなんてのは裕福な家庭の子女だったのだ.
 私は,中学生の時に親が買ってくれた小さなラジオ (新書くらいの大きさ) を,高校受験,大学受験勉強の時に愛用していた.大学に合格したあと,そのラジオを後生大事に持って上京した.そのラジオの電池は006Pだったから,すぐ消耗した.
 そんな情報弱者状態でも何とかやってこれたのは,昭和四十年代は実に災害の少ない時代だった (首都圏では,だが) からだとしみじみ思う.
 
 台風が関東地方を通過した十三日の朝五時以降のテレビニュースを見ていると,「昨夜,七十代の男性が○○川の様子を見てくるといって家を出たまま戻らない,と家族から警察に連絡があった」という内容の報道がいくつもあった.
 これだけテレビ各局のアナウンサーたちが口を酸っぱくして,川の様子を見に,などという外出はしないでください,と言い続けているにもかかわらず,外に出ていく高齢者の心境が理解できない.川の様子を見たら何かよいことがあるのか.不思議だ.

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2019年10月10日 (木)

コメント投稿方法の変更

 各位
 これまではコメントを常時受け取る方式にしていましたが,今後は通常はコメント投稿欄を常時クローズしておく方法に変更します.
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2019年10月 7日 (月)

袋ラーメンのパック

 初めてAmazonのパントリーをやってみた.
 パントリーというシステムは,要するに手数料オフになる商品を規定数買えばいいのであり,梱包ダンボール箱の使用率は気にしなくてもいい (緩衝材が空隙に詰められるから) のであるが,何となくそれはイケナイことのような気がした.
 大昔,「かっぱえびせん」とか各社のポテトチップスが世に出た頃の話だが,工場からそれらの菓子を運ぶトラックのドライバーは「張り合いがない」と嘆いたという.運転時の体感的に,空気を運んでいるような気分がするからであった.今の感覚でいえば,運輸というのは価値を運ぶ仕事であり,積載重量で評価するものではないから,スナック菓子はむしろ良い荷物なのだが,しかし当時のドライバーさんたちの気持ちはよくわかる.私は今もそういう感覚 (→空気を運ぶなんて,モッタイナイ) を捨てられない.
 そこで,パントリー箱の使用率をぎりぎり高めようと試みた.パントリー専用商品は食品ジャンルに多いし,食品はかさばるのでパントリーに適しているような気がする.
 そこで即席袋麺とスナック菓子,米菓,珍味などをカートにポイポイ放り込んだ.(下記の価格は変動する)
 袋麺は体積当たりの単価が安い.「日清のラーメン屋さん」シリーズが特に安い (スープの味が今一つだから売れていないのかも) ので,「旭川しょうゆ 5食パック 299円」を入れた.店頭でも袋ラーメンはこれが一番安い.
 次に安いのは「サッポロ一番みそラーメン 5食パック 399円」と「サッポロ一番塩ラーメン 5食パック 399円」だった.店頭でも価格はこんなもんだ.
 高いのは「日清焼そば 5食パック 499円」で ,同じ日清食品なのに,どうしてこれが「日清のラーメン屋さん」よりも200円も高いのか理解できない.できないがパントリー箱をいっぱいにするためにカートに放り込んだ.
 そうこうするうちに,手数料オフ商品を入れる余裕がなくなってきたので「明星 中華三昧 四川風味噌拉麺 手数料オフ対象品 456円」もカートに入れた.なんで「日清焼きそば」より高いんだと不思議に思ったが,このあたりでは「単価と手数料オフかどうか」にしか注意が向いておらず,何個入りであるかには注意が向かなくなっていた.パントリー箱の使用率を極限にすることと,手数料オフを両立させる組み合わせを求めて,商品をカートに入れたり出したりすることに熱中したのであった.「日清焼きそば」を買った頃には既に逆上していたと思われる.
 
 さてパントリー箱が届いて,中身を点検しながら気が付いた.「中華三昧」は三食入りだったのである.エラい高いものをつかんでしまった.ディスカウンターで買えばよかったと後悔した.
 熱くなって袋ラーメンをたくさん買ったので,しばらくは袋ラーメンを日に一食する.飽きそうだなあ.

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2019年10月 5日 (土)

白花曼殊沙華

 陋屋のネズミの額ほどの土があるところに,シロバナマンジュシャゲが咲いた.
 
20191003b
 
 我が家は建ててから四十年経つが,これまで一度たりとも庭にヒガンバナが咲いたことはない.もちろんシロバナマンジュシャゲも初見である.
 あまりに唐突なので,驚いてウェブを検索してみた.すると,既にヒガンバナが群生している場所に,シロバナマンジュシャゲが突然に現れることは屡々あることのようであった.この現象について,日本植物生理学会のコンテンツ《植物Q&A 白色のヒガンバナについて 》には次のように説明されていた.文章がコンパクトに凝縮されているので,これ以上の要約はむずかしく,それで少々長いが全文引用する.
 
白色のヒガンバナについて
質問者: 一般 R.T.
登録番号3374 登録日:2015-09-24
ここ数年、近所で白色のヒガンバナをよく見るようになりました)。それまでずっと、赤のヒガンバナが咲いていた場所に、白色のヒガンバナが混在して咲いています。近所を中心にしか確認できていませんが、1つの場所ではなく、複数の地点でこの現象が観察されます。
インターネットでは、シロバナはショウキズイセンとの雑種なのだと書かれています。白のヒガンバナが観察されるようになった場所の1つは、わたしの親戚宅ですが、ショウキズイセンを育てたことはないそうです。これは、遠方から、ショウキズイセンの花粉が飛んで来ることを意味するのですか。
ヒガンバナと近縁種の自然交配は、比較的簡単におこるものなのでしょうか。それとも、白化には、別の理由があるのでしょうか。
どうぞよろしくお願いします。

R.T.さま
みんなのひろばへのご質問有り難うございました。頂いたご質問の回答を遺伝学がご専門の奈良女子大学の鈴木孝仁先生にお願い致しましたところ、ヒガンバナの系統や自然交配についての論文を調べて下さり、以下のような非常に詳しい回答をお寄せ下さいました。少し難しいかも知れませんが、難しいところを飛ばしても、ショウキズイセンとの自然交雑ではないとか、ヒガンバナは種子を作らないとかなどなど、ご参考になる点が多いと思います。

【鈴木先生からのご回答】
シロバナマンジュシャゲについて
シロバナマンジュシャゲLycoris x albifloraについては、ヒガンバナL. radiateとショウキズイセンL. aureaの自然交雑種と牧野富太郎が提唱しました。稲荷山資生(1951)および栗田子郎(1976)による核型をもとにした系統関係の研究から、コヒガンバナL. radiate var. pumila(2倍体)から現存のヒガンバナL. radiata var. radiata(3倍体)が染色体突然変異で生まれたと示唆されること、および祖先型マンジュシャゲからの染色体突然変異を重ねてできたショウキズイセンとコヒガンバナの自然交雑からシロバナマンジュシャゲが生まれたと記述されています。
現存のヒガンバナは11本の半数型を構成している染色体の組が3組で構成されている3倍体となっており、種ナシスイカと同じように交雑ができず、種子もできない不稔性の性質をしています。互いに異なる11本の染色体の組はすべてアクセントリック染色体といって、動原体に対して両腕の関係になる部分の長さが異なる形態をしています。祖先型マンジュシャゲはあくまで仮想の原種ですが、現存のコヒガンバナがそれを継承した種とみなすことができ、この11本のアクセントリック染色体が2本ずつ存在する2倍体であり、稔性があります。一方、祖先型から3段階の染色体突然変異によって、2倍体(2本のアクセントリック染色体、10本の動原体が末端にあるテロセントリック染色体)の核型をもつようになったショウキズイセンL. aureaができ、稔性があったためコヒガンバナと自然交雑してシロバナマンジュシャゲが生まれたとされています。ただし、ショウキズイセンとされている種には、核型では3種類が存在し、そのうちの1亜種とコヒガンバとの自然交配によって、シロバナマンジュシャゲができたと推定されています。シロバナマンジュシャゲの核型は動原体に対して両腕の長さがほぼ等しいメタセントリック染色体5本と、2本の染色体どうしが末端で結合したテロセントリック染色体が1本、および11本のアクセントリック染色体から構成されており、稔性がありません。
こうした核型と不稔性の特徴を考慮すると、現在の日本に生えているマンジュシャゲL. radiata var. radiata(3倍体)とシロバナマンジュシャゲLycoris x albifloraはそれぞれ無性的に(つまり鱗茎や地下茎で)繁殖してきたものであると結論できます。さらに3倍体であるマンジュシャゲから遺伝子突然変異でシロバナマンジュシャゲと同等なものができる可能性は極めて低いと推定できます。なぜなら、花が白色になるような遺伝子の突然変異が起きたとしても、野生型の対立遺伝子は2つ残っているので(ヘテロ接合状態なので)、白い表現型が現れることがないからです。また、減数分裂過程もないので、白い花となる対立遺伝子が子孫に分離してホモ接合状態になることも起こりません。むしろ2倍体であるコヒガンバナに白い花となる突然変異が生じた場合には、この対立遺伝子が減数分裂過程でホモ接合となった子孫種子が形成される可能性は十分にあり得ます。ただしこの場合には、コヒガンバナの開花期がヒガンバナより1ヶ月ほど早いので、白化した突然変異種がヒガンバナのように一斉に開花する時期に同じように開花するとは限りません。
(結論)ヒガンバナ(3倍体)と近縁種の自然交配は、風媒であろうと、昆虫が媒介しようと、種子形成には至りません。よって自然交配は、先ず起こりえないと結論できます。

白色のヒガンバナが混在している理由は、(1)かつてシロバナマンジュシャゲの鱗茎がヒガンバナと共に植えられおり、ヒガンバナに遅れて地上に出てきたとする可能性が最も高く、(2)次の可能性はショウキズイセンの種子が鳥の糞と共に遠方から運ばれた場合だと考えられます。なお、(1)の場合には、ヒガンバナのアレロパシー(他感作用)がはたらいて、シロバナマンジュシャゲの生育を抑制していたことも考慮する必要があるかも知れません。
また、(2)の場合にはショウキズイセンの種子に含まれる有毒のアルカロイドが鳥に影響しないという前提が必要かもしれません。

 鈴木 孝仁 (奈良女子大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2015-09-29
 
 文意からすると,回答者の奈良女子大学鈴木先生は,ヒガンバナの中にシロバナマンジュシャゲが混在しているのを実際に観察したことがないようである.そのため頓珍漢な回答になっている.
 これと異なって,実見した上での写真付き解説は,簡単だが《筑波実験植物園 植物図鑑 シロバナマンジュシャゲ 》にある.この解説ではシロバナマンジュシャゲは,ヒガンバナ二倍体とショウキラン (註;ショウキズイセンのこと) との交雑で生じると書かれている.
 少し横道に逸れるが,この《筑波実験植物園 植物図鑑》ではショウキズイセンをショウキランと書いている.ショウキランはラン科ヒガンバナ属のショウキズイセンの別名であるが,ラン科ショウキラン属の多年草の名でもあって紛らわしい.そのことを注釈せずに.単にショウキランと書いてしまう「研究者」には困ったものである.
 私の住居に近く,国道一号線が横浜市戸塚区から藤沢市に入るあたりにヒガンバナが道路沿いに群生する場所がある.この群生は三十年ほど前に発生した.それ以来の三十年間,私はそのヒガンバナ群生を季節になると目にしてきたが,去年初めてシロバナマンジュシャゲが咲いているのを発見した.上記の《植物のQ&A》の質問者と同じ状況である.
 仮にこれを,奈良女子大鈴木先生の説明《(1)かつてシロバナマンジュシャゲの鱗茎がヒガンバナと共に植えられおり、ヒガンバナに遅れて地上に出てきたとする可能性が最も高く 》によって解釈すると,誰かがシロバナマンジュシャゲを植えたことになる.筑波実験植物園でも,また《植物Q&A》の質問者の家の近所でも,誰かがシロバナマンジュシャゲを植えて回ったということになる.鎌倉にもヒガンバナとシロバナマンジュシャゲが混在しているところがあちこちにある.それもみな誰かが植えたのだ.奇特なことである.
 次に鈴木先生の説明《(2)次の可能性はショウキズイセンの種子が鳥の糞と共に遠方から運ばれた場合だ 》とすると,シロバナマンジュシャゲが咲く前年にショウキランが開花していなければならない.私はその開花を目撃していないが,見落とした可能性はある.事実としてシロバナマンジュシャゲが咲いたのであるから,この群生場所でヒガンバナとショウキズイセンとの交雑が起こったとしか考えられない.
 
 さて陋屋の片隅に咲いたシロバナマンジュシャゲのことに戻る.
 そこには今までヒガンバナが咲いたことはない.ショウキズイセンが咲いたこともない.突然シロバナマンジュシャゲが出現したのである.
 これは鈴木先生の二つの説では説明できないことだ.たった一つの可能性は「植えられた」ということである.誰が植えた?
 そう考えた時,私の頭に浮かんだことがある.その花が咲いた場所は,暫く前まで,一匹の黒い猫が昼寝のお気に入りにしていた場所なのだ.
 その猫は,隣家の御主人が食べ物の面倒をみていた猫で,食事が終わると,うちの庭に来てずっと寝ていたのである.
 彼の姿を見なくなって少し経つ.もしかしたらこのシロバナマンジュシャゲは,彼がどこかへ行ってしまう時に植えていったものかも知れない.挨拶代わりの白い花を見ながら,そんなことを考えた.

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2019年10月 2日 (水)

続々・アンフェア

 いくつかのメディアで小泉環境大臣がバッシングされている.結婚報告に総理大臣官邸へ行くという,メディア受けを狙ったとしか思えない行動を取った時も,一部で批判の声があったが,テレビの情報番組では「めでたいことだから,いいんじゃないすか」で終わった.加藤浩次から宮根誠司にいたるまでMC諸君は誰も批判しなかった.暇でテレビばかり観ている私が言うのだから間違いない.
 それからあまり経っていないが,テレビ以外のところで急に小泉進次郎叩きが始まった.きっかけは国連の気候行動サミットに出席するためニューヨークを訪問した際,小泉環境大臣の「セクシー発言」だった.これにメディアが噛みついた.この発言を小泉大臣があまり丁寧に弁解しなかったので,かなりこれで盛り上がった.その間の状況を,後になって割と冷静に報じたのは,FNN PRIMEの《小泉大臣「セクシー発言」ナゼ炎上?説明は野暮?記者とのやりとりの全容を検証 》(2019年9月26日) だったが,一度始まったバッシングの勢いは止められなかった.
 この時のニューヨーク滞在中に,ステーキ屋に行ったことを攻撃したのは,津山恵子というライターが BUSINESS INSIDER jp に書いた《日本は「環境汚染大国」という世界の評価と進次郎大臣「ステーキ」発言の波紋 》(2019年9月27日) だった.
 津山恵子は記事を次のように書き始める.
 
日本メディアを引き連れ、ニューヨークのステーキ屋に行った小泉進次郎・新環境相のビデオを見て、目を疑った。
環境大臣という環境問題で日本を代表する公人が「気候行動サミット」に参加するために来たニューヨークで、ドヤ顔でステーキ屋に行くのを喧伝するセンスのなさ。それをテレビでニュースであるかのように放送するメディア。
放送したTBSによると、小泉氏は「毎日でもステーキを食べたい」と話していた。TPOを完全に間違えている。
牛肉、豚肉、鶏肉などの畜産業界は、農場で多大な土地と水を汚染し、加工や輸送にも多くの二酸化炭素を出すため、「地球汚染ビジネス」の代表格とみられている。少なくとも欧米では環境問題を語る上では“常識”とされ、肉を食べないベジタリアンになる若者も増えているというのに、信じられない発言だ。
 
 畜肉1kgを生産するに必要な飼料用穀物は,牛肉で11kg,豚肉で7kg,鶏肉で3kg必要である.これを飼料要求率という.
 この飼料要求率で牛肉は突出している上に,消化管 (第1胃) でメタン (温室効果ガスの一つ) 醗酵が行われ,これが環境に排出されるために,牛肉生産は環境負荷が高い.これは十年以上も前から指摘され続けてきた事実である.肉牛肥育の他に酪農もあり,地球温暖化における畜産による環境負荷は牛肥育が過半を占める.これに対して養豚と養鶏の環境負荷は相対的に低く,牛肥育から養豚養鶏へのシフトが必要だとする意見はあるが,津山が言うように「畜産は環境汚染ビジネスだ」として養鶏までも排除を求める議論を私は知らない.データの詳細はFAOのサイトに譲るが,コンテンツの一例《農業からの温室効果ガス排出は増加 》を挙げておく.そのFAOも牛肥育の排除までも求めてはいない.
 津山の主張《(畜産は環境汚染ビジネスだということは) 少なくとも欧米では環境問題を語る上では“常識”とされ》は,果たして本当か.欧州はともかく,米国では“常識”ではない.それどころか,そもそも米国民は地球温暖化自体を認めていない.だから一向に牛肉生産をやめようとしないし,私たちにも「牛肉を食え」と勧めてくるのである.このように何でもかんでも「欧米では」と一括りにするのが,頭の悪い人間の特徴である.
 実を言うと私も畜産の環境負荷は大きいと思っているが,津山のように,欧米では畜産が環境汚染ビジネスとするのが常識だ,とするのは事実ではない.地球温暖化に関する各国国民の意識は,欧州と米国とでは分けて考える必要がある.それが常識だと私は考える.
 
 次にベジタリアンのこと.津山は,欧米ではベジタリアンになる若者が「増えている」と主張するが,調査数値は示していない.各国のベジタリアン数を調査したデータはある (Wikipedia【ベジタリアン】など) が,その増減に関する調査データを私は目にしたことがない.私だけでなく一般の人は,欧米におけるベジタリアンの増減データなんか知るはずもない.このように,読者に提供すべき出典を敢て示さずに,さも広く認められている事実であるかのように書くのが,ある種のライターの特徴だ.
 続いて津山は,畜産を指弾することから「ミートレスマンデー」に話を変える.
英国発 ミートフリーマンデーで飲食店はどう変わる 後編 》(2013年4月25日) は今から六年前に書かれたレポートであるが,欧米で盛んになった「ミートフリーマンデー」「ミートレスマンデー」運動は,当時の米国では専ら健康改善を志向したものであったことを報告している.その後,この運動は地球温暖化と結びついて盛り上がりを見せるようになったわけだが,その地球環境保護の面だけを一面的に取り上げるのはアンフェアである.この運動の健康と地球環境の両面を同時に紹介するのがフェアだ.例えば《米NYの全学校で「ミートレスマンデー」実施へ、ベジタリアン向け食事提供 》(2019年3月12日) のように.
 ところが津山は,論点を地球環境の面に絞り,しかも,《肉、乳製品、皮革製品、ウール製品など家畜に関連するビジネスは、人間に起因する地球温暖化ガスの14.5%を占める。その中で、牛肉が占める割合が一番高い(国連の食糧農業機関による)》(下線は当ブログの筆者が引いた) として,自分が養鶏もひっくるめて環境汚染ビジネスだと断じたことを,なかったことのようにして引っ込めてしまう.これでは論旨がまるで通らない.
 さらに津山は以下の引用箇所で電力問題に話を展開するのだが,ここでいよいよ馬脚を現す.
 
日本では、大量の二酸化炭素を出す石炭火力発電の割合が高いことは、海外の環境運動家から批判の的だ。国連のグテーレス事務総長は、2020年以降の新規建設をやめるように加盟国に何度も要請してきた。欧州では、将来的に火力発電からの撤退を決める国が相次いでいる。
ベルギーは2016年までに欧州連合(EU)で初めて、火力発電ゼロを達成。フランス、ドイツをはじめ、欧州の10カ国以上が、稼働ゼロか段階的削減を宣言している。
 
欧州では、将来的に火力発電からの撤退を決める国が相次いでいる 》が嘘である.
ベルギーは2016年までに欧州連合(EU)で初めて、火力発電ゼロを達成。フランス、ドイツをはじめ、欧州の10カ国以上が、稼働ゼロか段階的削減を宣言している 》も嘘である.
 
 いずれも,火力発電の一部である石炭火力発電を,火力発電全体のことにしてしまった.ベルギーが達成したのは石炭火力発電であるし,欧州各国が縮小しようとしているのも石炭火力発電なのである.
 津山がこんな小学生並みの間違いを書いてしまったのは,彼女が発電について無知であり,論じ慣れていないことを示している.
 発電について無知な津山であるが,実は原子力発電の推進を主張したいのである.
 次の図は,経産省資源エネルギー庁の『エネルギー白書2018』の《第2部 エネルギー動向 / 第2章 国際エネルギー動向 / 第4節 国際的なエネルギーコストの比較 》から引用した.
 
20191003a
 
 これを見ると,日本の電力供給は,2011年の東日本大震災後に,発電方法の内訳が大きく変わったことがわかる.原子力発電が激減し,それをLNG火力発電と石炭火力発電で穴埋めしたのである.
 上の図で明らかであるが,原子力発電を東日本大震災前の発電量に戻すと,石炭火力発電量を大きく減少させることができる.
 従って,新エネルギーの開発推進が今後の我が国の選択肢の一つであるのと同じく,「日本の原子力発電を震災前の状態に復旧し,それによってCO2排出量を減らす」というのも一つの選択肢ではある.
 だが津山はそう主張はしない.我が国の石炭火力発電を非難はするが,原子力発電には触れない.日本の電力政策に関する自分の立場を明らかにしない.なぜなら,津山の記事の目的は小泉進次郎のゴシップを叩くことであり,エネルギーに関する高尚なことを論じる知識も,ライターとしての度胸もないからである.それならそのように,せせこましいゴシップを探して書いておればいいのに,実にアンフェアなライターだ.
 最後に一つ.津山は記事の中で,下のような間抜けなことを書いている.
 
自然エネルギー財団によると、日本の発受電電力量に占める火力発電の割合は1990年に9.7%だったのが、2016年には32.3%になった。
 
 このライターが,火力発電とは石炭火力発電のことだと思い違いしていることは既に書いたが,それとは別に,《自然エネルギー財団によると》と書いているのが情けない.日本のエネルギーに関する資料の出所は経産省資源エネルギー庁である.孫正義が立ち上げた「自然エネルギー財団」のサイトには資源エネルギー庁のデータを加工したものが載ってはいるが,そんな二次加工資料を論拠にしてどうする.もしかすると津山は「エネルギー白書」の存在を知らぬかも知れない.

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2019年10月 1日 (火)

続・アンフェア

 文春オンラインに近藤奈香というライターが《ノーベル賞候補に躍り出た16歳、グレタ・トゥンベリさんの驚くべきメディア戦略 》と題した記事を書いている.(2019年9月29日 5:30)
 同記事から一部引用する.
 
全世界でムーブメントを起こすトゥンベリさんだが、その活動を訝しむ声が飛び交っているのも事実だ。
「まず子供たちに学校をボイコットさせる手法が疑問視されている。そして最大の疑問が、彼女のバックに仕掛け人がいるのではないかというもの。国会前の座り込みをSNSで広めた活動家が彼女を自身の会社にアドバイザーとして迎え入れようとし、その株価が一気に跳ね上がったこともあった。またスウェーデンの企業20社が彼女への支援を申し出ており、そうした企業の狙いは各国の補助金にあるのも間違いありません」》(文字の着色は当ブログの筆者が行った)
 
 近藤奈香は《そして最大の疑問が、彼女のバックに仕掛け人がいるのではないかというもの》の根拠として「現地メディア」としか書いていない.現地メディアってなんだよ.
 メディアの名称 (日本の場合に例えれば,文藝春秋とアサヒ芸能ではえらい違いである),その報道の品質をスウェーデン国民がどのように評価しているか,そしてその「疑問」を書いた文章を引用して示さねば,お話にならない.つまり近藤奈香は,自分の文章が根も葉もない嘘ではないことを明示しなければならぬのである.それをしないで単に「現地メディアがそう言っている」で済ませるのは,アンフェアの極みである.

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2019年9月28日 (土)

立ち食い蕎麦 三百円の壁の嘘

 ITmedia ビジネスオンラインの記事《消費増税で「1杯のかけそば」の価格はどうなる? ゆで太郎、小諸そば、富士そばの対応 》(掲載 2019/09/27 15:44) を読んで,疑問に思ったことがある.
 同記事は,来月実施される消費税増税に伴って,大手の蕎麦屋チェーン (「名代 富士そば」「ゆで太郎」はほぼ全店が椅子に腰かける席であり,「小諸そば」も多くが椅子のある店なので,これらを「立ち食い蕎麦屋チェーン」と呼ぶのは実情と合わないため,ここでは「蕎麦屋チェーン」としておく) が価格をどうするかについて書いたものである.
 テレビの情報番組は消費税の増税のことよりも,キャッシュレス・ポイント還元事業のことばかり放送しているが,同事業は中小・小規模事業者が対象なので,大手の蕎麦屋チェーンの利用者には恩恵がない.
 そもそも蕎麦屋チェーンは,「名代 富士そば」が辛うじて交通系電子マネーに対応の食券自販機を有しているが,「ゆで太郎」はキャッシュレス決済に食券自販機が非対応で,「小諸そば」はエキナカの店舗を除いて非対応らしい.(公表データがない) キャッシュレス・ポイント還元事業に参加する以前の状況であるようだ.
 ちなみに牛丼チェーンは,「吉野家」「松屋」「すき屋」はキャッシュレス決済 (クレジットカード,電子マネー,各種QRコード決済) に対応しているが,「なか卯」は現金のみ.「吉野家」「松屋」「すき屋」はキャッシュレス・ポイント還元事業に不参加だが,「吉野家」は独自の消費者還元を検討するという.(テレ朝news, 2019/9/6)
 さてITmedia ビジネスオンラインの記事によると,蕎麦屋チェーンの十月以降の価格は次の通りだ.
 
[1]
値上げに踏み切るのは、富士そばとゆで太郎だ。富士そばは「かけそば」(税込300円、以下同)を310円に値上げする。また、ゆで太郎は「かけ」(320円)を340円に値上げする。消費増税や原材料費の高騰が理由だという。ゆで太郎は、「ゆで太郎システム」(東京都品川区)が運営する店舗と、信越食品(東京都大田区)が運営する店舗がある。後者のゆで太郎の場合、「ダブルかつ丼」(800円)やトッピングの「海老天」(150円)などは据え置くが、セットメニューや丼物などは10~20円程度値上げを行う。また、これまで無料だった追加ネギを50円(30グラム)で提供するという。
 小諸そばはメインとなる「かけ」や「もり」(いずれも290円)の価格を据え置く。一方で「たぬき」(340円)を350円に値上げするなど、メリハリをつける。また、持ち帰り商品については、店内価格と同一価格にする。
[2]
ゆで太郎システムの池田智昭社長は、数年前にもりそばを290円から320円に値上げした際、売り上げへの影響が1年近く続いたと東洋経済オンラインの対談で語っている。260円から290円に値上げした際には大きな影響がなかったため、「正直、泣きそうになりました」と述べている。立ち食いそばチェーンにとって、「300円」の壁は大きいようだ(参考記事:「30円の値上げが立ち食いそばの死活問題なワケ」)。
 
 上記引用の[1]では「名代 富士そば」は「かけそば」(税込三百円) を三百十円に,「ゆで太郎」は「かけ」(三百二十円) を三百四十円に,それぞれ値上げするとある.店舗数一位の「ゆで太郎」は元々「かけ」が三百円以上だったし,二位「名代 富士そば」は今回の値上げで三百円以上となる.
 それなのにITmedia ビジネスオンラインの記事[2]は,不思議なことに《立ち食いそばチェーンにとって、「300円」の壁は大きいようだ 》としている.業界のトップ二社の最低価格が三百円以上であるのに,三位の「小諸そば」が最低価格を二百九十円に据え置くことをもってして,立ち食いそばには三百円の壁があると主張しているわけだ.正しくは,『「小諸そば」にとって、「300円」の壁は大きいようだ』としなければいけない.
 こういう矛盾したことを書いて平気なライターの頭の中には「かけそばは三百円以下」というドグマがあって,それに合致しない現実は無視するのである.
 この不思議頭のライターが参考にしたという《30円の値上げが立ち食いそばの死活問題なワケ ゆで太郎・富士そば社長対談(上)》と《店舗数を急激に増やす飲食店はだいたい危ない ゆで太郎・富士そば社長対談(下)》を読んでみると,「ゆで太郎」が前回の値上げ後に売り上げが低迷したのは,自社の都合 (採算性の改善を意図したのだろう) による値上げが,顧客の支持を失ったかららしい.しかし今回,「ゆで太郎」「名代 富士そば」の両社長は,増税という大義名分がプラスに働き,値上げが通るとみている.両チェーンとも,増税のドサクサに紛 増税分以上の値上げを行うわけだ.当事者たちは,かけ蕎麦に三百円の壁があるなんて思っていないのに,部外者のライターが独断を述べたのが《消費増税で「1杯のかけそば」の価格はどうなる? ゆで太郎、小諸そば、富士そばの対応》という記事の中身なのであった.
 実はネット記事には,この手の独断が多い.その文章中に既に矛盾があるようなものは調べれば馬脚があらわれるから,だまされないようにしたいものだ.

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2019年9月27日 (金)

キャッシュレス決済

 テレビの情報番組は今,キャッシュレス・ポイント還元の話で持ち切りだ.「どうすればお得か」という方法を解説してくれるわけだが,必ずしも解説者によって意見が一致しているのではないから,視聴者は困っているのではないか.(*追記あり)
 文藝春秋の十月号に成毛眞氏が「Suicaが最強のキャッシュレス決済だ」を書いている.特に専門知識がないと理解できない話ではなく,一般人読者の私にもよくわかる.氏の見解にほとんど同感だが,それはどうかな,と思うこともあるので以下に雑感を.
 成毛氏は,以前から現金を使うのは地方の土産物屋くらいのもので,普段は現金をほとんど使わない.買い物には主にSuicaを使用し,高額商品の購入にはクレジッカードを使っているという.
 買い物の決済に何を使うかは,世代によってかなり違うだろう.住んでいる環境によっても違うだろう.
「Suicaが最強のキャッシュレス決済だ」は誤りだと断言するつもりはないのだが,首都圏に住んでいるとSuicaが強力な決済手段であるが,地方へ行くととたんにSuicaが無力になって驚くことがある.
 例えば,少し前に徳島県の大塚国際美術館に出かけたとき,美術館までの路線バス料金の支払いは,現金と紙の回数券だけだった.私はほんの少しの小銭しか持たずに乗ってしまったのでかなり慌てた.それで,この時は途中でバスを降りて土産物屋で鳴門名産のワカメなんかを買って千円札を崩した.この時のバスドライバーさんがとてもいい人で,私が札を崩してバスに戻るまで待っていてくれた.徳島は,電子マネーは通用しないが人柄のよい土地なのであった.(2019年5月31日から徳島駅前の案内所では乗車券と回数券をクレジットカードまたは電子マネーで購入できるようになったが,依然としてバス内では現金のみ)
 また例えば,長野市の善光寺へお詣りした時のこと.長野市は大きな地方都市だと思っていたのに,Suicaが普及していないので心底驚いた.バス運賃は,現金または長野市内でのみ通用するバス専用のICカード「KURURU」でしか支払えないのだ.商店街でもコンビニ以外ではSuicaは使えない.それなのに街を歩いてもコンビニがあまり見当たらない.w
 後で調べると,長野市当局が作成した「ICカード導入に向けた検討」という資料が見つかった.この資料中に「想定されるICカードシステムのケース比較」という表がある.この資料は,交通機関にICカードシステムを導入するに際して,ユーザーにとっての利便性の点ではSuicaとの完全互換が圧倒的に優れている (地域住民◎,観光客◎) としておきながら,交通機関側の都合 (システム開発が楽チン,導入コストが安い) で,互換性ゼロの独自仕様を採用した経緯を説明している.市当局の,地域住民や観光客のことなんぞ頭にない思考方法がよくわかるので,なかなかおもしろい資料だ.行政がこんな状態だから,田舎だとブロガーが嘆いている.(←ブログ記事《SuicaエリアとバスのICカード》)
 長野県内自治体の交通機関がガラパゴス化したのには,長野県内の駅改札でSuicaが使えないから,という理由があるらしい.Suicaの利便性自体が高くないというのだ.しかしまあ,それは遅かれ早かれ自動改札になるのだから,先を見越してSuica互換にしておけばいいだけの話だ.要するに地方はクルマ社会で,交通機関にICカードを導入しても乗客が増えるわけではないから,そのような利益の出ないコストを負担したくないというのがホンネなんだろう.(Suica自体が日本独自のガラパゴス仕様〈=Felica〉だという人もいるが,それならばKURURUはガラパゴスの自乗だろう)
 似たことは米原市に行った際にも経験した.米原駅周辺にはセブン-イレブンが一つあるだけで,商店街すらない.お隣の観光地,長浜も似たようなもんだ.このようなさびれた地方都市では,現金が最強の決済手段であり,キャッシュレス決済なんてのは絵空事だろうと思う.
 絵空事といえば,JCBカードのテレビCM「第3弾 キャッシュレス定食」篇だ.大都市のオフィス街にある定食屋風内装のレストランならともかく,下町の大衆的価格の定食屋でJCBカード (QUICPAY) が使えるようになる時代は永劫こないと私は思う.客層が違うから.
 
 話が横道に逸れた.成毛氏は私より少し若い世代だが,Suicaとクレジットカードで買い物の支払いをするあたりは,私たち高齢者と同じだ.年齢よりも爺むさい成毛氏は,乱立しているQRコード決済を使う必要はないと断言する.理由は《支払いが完了するまでに手間と時間がかかりすぎる 》である.まことに同感であるが,しかしこれこそが,この文の冒頭で「それはどうかな,と思うこともある」と書いた,そのことなのである.
 QRコード決済は,かかる手間と時間の点で現金支払いよりも後退しているから普及しないと成毛氏は言う.しかしQRコード決済事業者がターゲットにしているのは,日常いついかなる時も片手にスマホを持って離さない人々である.彼らは若く,人生の残り時間はやたらと長い.それにくらべれば,コンビニのレジでバイトの兄ちゃんにQRコードを読み取ってもらう手間と時間なんか,ほんの一瞬だ.お得なクーポンを探すのだって,我々年寄りはめんどくさがるが,若い人たちは手間を気にしてなんかいないように見える.
 成毛氏は,ビジネス社会の最前線にいる人だから,いつでもどこでもスマホで動画を見ながらノロノロ歩いている若い世代とは,時間の感覚が違うと思う.いわばサイボーグ002が加速装置をオンにしたようなものだ.
 それに加えて,わずかな時間と手間を我慢できずに,短気に癇癪を起すのが爺いというものだ.QRコード決済の手間と所要時間が面倒だと成毛氏は書いているが,加速装置に老人性の短気がブーストをかけているのかも知れない.
 
 成毛氏の記事の見出しは「Suicaが最強のキャッシュレス決済だ」だが,実は中身を読んでみるとホンネは違うようだ.
不思議でならないのは、これほどの優位性を持つ決済手段があるにもかかわらず、JR東日本は積極的にSuicaのシェア拡大に取り組んでいるようには見えません。
《(Suicaがシェアを拡大するために) どうすればいいのでしょうか。答えは一つしかありません。Suica払いできるお店の数を増やすために、小売店に読み取り端末を無料で配るのです。
 
 まさしくSuicaの致命的に近い欠点は,Suicaの使える店が限られていることだ.(Suicaの使える店)
 私の生活圏である藤沢駅周辺でも,商店街のおいしい飲食店とか鮮度のいい魚屋などの小事業者では使えない.成毛氏が言うようにJR東日本が読み取り端末を無料で商店街にバラ撒いてくれれば,その時こそSuicaが最強のキャッシュレス決済手段になるだろう.しかしJR東日本の関心は都市部のエキナカ開発に向いているようで,地方の街ナカには無関心のように見える.地方では現金が最強のままだろう.キャッシュレスにしたければ,少額でもクレジットカードを使うしかないように思われる.
 
(追記)
 日本テレビの朝の情報番組「スッキリ」で,「情報キャスター」が各種のキャッシュレス決済について説明した.MCの加藤浩次がSuicaを多用していると言うと,「情報キャスター」はSuicaはダメだと言った.Suicaは買い物でポイントを貯めても自動的にSuicaにチャージされないから,その手間が面倒で結局ポイントを捨てることになってしまうという.そこで加藤浩次が「買い物はスマホのアプリで,電車に乗るのはSuicaでと,分けたほうがいいのかな?」と言うと,「そうです」という結論で終わった.これを見ていた私は,情報番組のスタッフたちは文藝春秋くらい読めと言いたくなった.




 

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2019年9月21日 (土)

鍋考

 テレビの経済番組で,愛知県に本社を置く鋳造メーカー「愛知ドビー」が何度か紹介された.(テレビ東京『ガイアの夜明け』,テレビ東京『カンブリア宮殿』,NHK『逆転人生』)
 同社製の超高級鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」 (Vermicular)」が爆発的に売れているのだそうだ.
 テレビの料理番組や料理本を観ていると,登場する高級鍋はたいていル・クルーゼストウブだが,これにバーミキュラが加わって鍋戦国時代の到来かと思われる.
 おもしろいのは,テレビの料理番組で講師がストウブを使用して煮込み料理を作る際に,無水調理ではなくフタをしないで煮ていたりすることだ.それなら普通の安い鍋でもいいじゃないかと思うが,ストウブの鍋がプロの矜持というものらしい.w
 テレビ東京『昼めし旅』なんかでも,局側の取材担当者が,畑で農作業している高齢男性をつかまえて「あなたのご飯を見せてください!」と頼むと,超大豪邸に案内されることが多い.そしてその農家の長男のお嫁さんが,ファッショナブルに改装された広いシステムキッチンでカボチャを煮たりするわけだが,その時の鍋は赤いル・クルーゼだったりする.カボチャの甘みをル・クルーゼが充分に引き出してくれるらしい.カボチャはどう煮ようとカボチャだと思うが.
 以上,安い片手鍋しか持っていない私が,思いっきりひがんで嫌味を書いてみた.(貧泣)
 しかし実を言うと,私のひがみ根性の裏側には高級鍋が欲しいという気持ちがあるのだ.ならば欲しけりゃウダウダ言ってないで買えばいいじゃんと言われそうだが,その価格に納得できないところがあるのだ.
 例えば売れ筋の一つと思われるストウブの両手ホーロー鍋「ココット ラウンド バジルグリーン」の場合,Amazon prime 販売価格は以下の通りだ.(本日現在)
 
径10cm   ¥9,500
 14cm  ¥18,360
 18cm  ¥24,400
 20cm  ¥29,160
 22cm  ¥33,480
 24cm  ¥37,800
 
 ストウブのココットとは仕様が違うだろうから比較にはならないが,ル・クルーゼの両手ホーロー鍋「ココット ロンド」は,同じく Amazon prime  価格だと以下の通りで,ストウブよりは手頃な価格帯のシリーズがある.
 
径14cm  ¥11,458
 18cm  ¥16,148
 20cm  ¥17,727
 22cm  ¥17,760
 24cm  ¥17,760 
 
 若い人の場合,これくらいの価格の鍋なら一生モノだというわけでエイヤっと買ってしまうかも知れない.しかし三十代の人の一生モノは五十年使えるからいいが,七十代の爺様の場合は余命十年だから非常に割高になる.高級鍋はコスパが五倍も悪いのだ.
 
 しかも,テレビを見ていると,通販のジャパネットが「フタ付きフライパン大中+無水調理鍋+レシピブック」のセット合計¥14,900を,受付を30人増員して販売したりする.受付増員はともかく,このセットの鍋はたぶん三千円~五千円くらいで,ものすごく安い.
 ジャパネット以外では,アイリスオーヤマとかパール金属などの国産普及品メーカーの無水鍋が Amazon prime 価格四千円台で買える.一万円から数万円に達する高級品と普及品の価格差は,何によるものなんだろう.密閉性か?あるいは耐久性か?
 価格差が,耐久性の違いによるものなら,老い先短い私には普及品で充分だが,密閉性が違うということになると性能に差があるということだから,高級品に食指が動く.
 だがはたして高級な鍋はよい商品なんだろうか.
 高価な商品だから,実際に購入して性能を比較することは一般のブロガーには難しいのだろう.ネット上を探しても,どの鍋がどんな特徴・性能を持っているかは書かれていない.Amazon のレビューを読むくらいしか鍋の性能を知る手掛かりがない.
「料理にル・クルーゼを使うとテンションが上がる」というレビューを Amazon で読んだ.ま,それも性能のうちか.

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2019年9月20日 (金)

パクリが見つかる診療所

 昨夜,テレビ東京『主治医が見つかる診療所』(9/19放送) を観ていたら,チルドのカレー (要冷蔵の真空パック食品) をレトルトカレーであると勘違いして常温保存し,これを喫食したために,小学生の女児がボツリヌス症を発症したというストーリーのクイズが出題された.
 下の画像 (テレビ画面を撮影してトリミングしたもの;以下同じ) は,親の留守中に子供たちが,誤って常温保存されていたチルドカレーを見つけて食べようとするシーンである.
 
20190919c
 
 下の画像のように,このチルドカレーは,包装の端に小さな文字で「要冷蔵」と書かれていたという設定だが,あまりにも小さいので,この文字をクイズの解答者は見落としてしまった.こんなことは現実にはあり得ない.実際はもっと大きく目につきやすく表示される.この表示の状態は,クイズの解答を間違えやすくするためにこしらえたこざかしい仕込み,トリックなのである.
 
20190919e
 
 下の画像は,このチルドカレー中にボツリヌス菌が繁殖し,これを食べた小学生女児がボツリヌス症を発症したというストーリーを説明している.
 
20190919d
 
 私はこのストーリーに既視感があったので,ただちにネットを検索したら,二年前に日本テレビ『ザ!世界仰天ニュース』が放送した「命を脅かしたインスタントソース」(2017年6月27日放送) の,チルドハヤシソースをチルドカレーに変えただけの丸パクリだった.
 この『主治医が見つかる診療所』は,もともとテレ東の番組中では胡散臭い番組なのであるが,ここまでやるとは驚いた.パクリが見つかる診療所だ.w
 
 さてレトルトカレー類 (ハヤシを含む) の製造販売量が巨大であるのに対して,チルドのカレー,ハヤシ類は微々たるマーケットしかない.ニッチ商品もいいところだが,これには理由がある.「おいしさ」の点で,チルド商品にはレトルト商品に対する優位性がないのである.レトルトカレーは十分においしいので,わざわざ賞味期限が短いチルド商品にする必要がないのだ.
 スーパー等のチルド食品棚を見れば明らかだが,主たるジャンルは,包装に「玉ネギだけで酢豚ができる」とか「白菜だけで八宝菜ができる」などと書かれている中華のソース類である.()
 これら大手メーカーのソース類は,レトルト商品と間違わぬような包装形態にしてあり,かつ大きく包装の表面の目立つ所に「要冷蔵」などと注意喚起の表示がなされている.またこの種のチルド食品の多くは,薄手のアルミ蒸着袋の中の個包装は透明なポリ袋にしてあり,ここでもレトルト食品との違いが強調されている.ことは消費者の生命の安全に関わることであるから,注意深く商品設計がなされているのだ.
 ところが,中小企業の中には食品衛生意識の薄弱なメーカーがあり,それらは,レトルトカレーと見間違える可能性の高いパウチにチルドカレーを包装して販売していることがある.下に例を挙げる.
 下の画像は,「金沢カレー」を標榜して北陸三県にカレーチェーン店を展開している株式会社チャンピオンカレーが販売しているチルドカレーである.(画像引用元)
 画像右下に「要冷蔵」と書かれてはいるが,この注意喚起表示が,買い物かごや家庭の食品庫中で,他の食品と重なって見えなかったりすると,消費者は「要冷蔵」を見落としてレトルトカレーだと思い込む可能性が高い.
 
20190919b
 
 食品企業の生命線は,消費者の安全である.大手のメーカーは様々な食シーンを想定してチルド食品の中身の品質と包装に充分な手を尽くしている.仮初にもチルド食品はレトルト食品と間違って扱われてはならないのであるが,上記の商品の如きものが後を絶たないのが現実である.消費者は,食品衛生意識の低い製造業者が存在することを前提にして知識を身に着け,死に至る危険性があるボツリヌス症から自衛する必要がある.


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