外食放浪記

藤沢近辺であれを食いこれを食べ.自炊のことや思い出話もむりやりここに.

2020年8月10日 (月)

塩分過多

 大人気のテレビ番組,テレビ朝日《家事ヤロウ》で放送された料理の中でもヒットしたものの一つが「海苔とベーコンの炊き込みご飯」だ.
 出演者のバカリズムとカズレーザー,中丸雄一の三人が,作った料理を一口食べて,あまりのウマサに感極まった表情をするのだが,これがまたなかなかよろしい.いっちょオレも作ってみるか,という気にさせる.
「海苔とベーコンの炊き込みご飯」は,何のテクニックも要らず,だたもう材料を炊飯器に入れてスイッチをオンにすりゃいいだけだから,一般視聴者の実作レポートがたくさんアップされている.
 その「海苔とベーコンの炊き込みご飯」のオリジナル・レシピ (番組インスタグラムに載っているママを意味内容を変えずに掲載) は以下の通りである.
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(1) 炊飯器に米2合と水を入れ,酒大さじ1,白だし大さじ3,
  しょうゆ大さじ1,コンソメ5g,バター15g,角切りベーコン100gを入れる.
(2) 焼き海苔を3枚敷き詰める.
(3) 炊飯器で炊いた後,よく混ぜて完成.
――――――――――――――――――――――――――――
 
 これを見て,多少は料理のできる人ならば,ずいぶん塩っぱい飯だなあ,と思うに違いない.高齢者がこんなものを食ったら頭の血管に悪い.
 まず,これは調味料が過剰だ.
 味付けに白だしと醤油を併用しているが,それなら当然のことながら酒 (たぶん料理酒だろう) は要らない.味がくどくなる.
 米二合に対して「コンソメ5g」とあるのは,おそらく普及している味の素のキューブタイプのことだろう.しかしコンソメスープの素は,含まれる食塩相当量を考慮しないと再現性のあるレシピにならないから製品名指定が必要だ.これ,料理の常識.
「バター15g」も当然,家庭の冷蔵庫にある有塩バターを使うのだろうが,この時点で塩味の強さは限界に近い.これは量を減らすか,オリーブ油にするのが私のお勧めだ.
 オリジナルのレシピは「角切りベーコン」を具材に使うが,これまた塩味が強い具だ.
 これにさらに白だしと醤油を加えるというのだから,血圧高めの高齢者はおそろしくて追試できない.
 事実,クックパッドに,オリジナルを作ってみた人が何人か「味が濃い」と書いている.
 そりゃそうだろうなあ,ということで,普通の味覚の人向けにレシピを改変してみた.
 
米 (無洗米)                        二合
白だし (キッコーマン,極み白だし)            大さじ二杯
粉末コンソメの素 (トップバリュ,チキン味,個包装)    一袋 (4.5g)
ベーコン (トップバリュ,ハーフ,薄切り)          100g
バター (有塩,雪印)                    10g 
焼海苔(*)                          9g
 (*) 海苔は西伊豆の土産物で知人からの到来物.寿司海苔ではなく,全型に成形せずに焼海苔にした風味良好な高級品.本来は味噌汁にいれて食べるものだ.
 
 塩加減は,醤油を省いた上記のレシピでちょうどいい.
 米二合ということは四人分だが,具材の角切りベーコンを100グラムでは,盛り付けると具材が少ない印象だ.番組インスタに掲載されている盛り付け例の写真は,ベーコンを実際より多めに入れている.私のレシピでは,薄切りのベーコンを用いて具材が全体に均一に混ざるようにした.
 全体的に《家事ヤロウ》のレシピは,飯のおかずでもスイーツでも,塩分過多,砂糖過多で,とにかく味が濃い.若い人たちは,こんなに濃い味付けが好きなんだろうか.
 
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 この炊き込み飯の欠点は,色が黒いことだ.望むべくもないが,海苔の色が緑色だったりした日にゃ,これ以上にウマそうな飯はそうはないだろう.海苔の代わりにアオサを使ったらどうだろうと思ったことである.

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2020年8月 5日 (水)

メンマの炊き込み御飯

 冷蔵庫にスーパーで買ったメンマが二種類あった.一つは食品パックに入れられて惣菜コーナーにあったもの.このスーパーのバックヤードで製造したものだろう.これは消費期限もので,品名は「ピリ辛メンマ」とあり,普通のメンマに辣油をまぶしたと思われる..
 もう一つはポリ袋包装で割と賞味期限がある.ラーメンなどに入れる用途に製造されたものと思われる.
 
 話は別のことだが,桃屋のテレビCМで「穂先メンマ やわらぎ」と牛肉の炊き込み御飯というのを時々やっている.この炊き込み御飯が消費者に受けて,このコロナ禍の中での内食需要が追い風となり,今年が創業百年だという桃屋は設備を増強し,売り上げはこの四月まで対前年二桁成長率 (10%超) の快進撃だという.三木のり平健在の頃からの桃屋のファンである私は,こういう会社が頑張っているのはとてもうれしい.
 そこで桃屋のオリジナル・レシピを私も作ってみた.
 作って食べてみると,これは色々と応用が利くなあと思った.
 次に,牛肉の代わりに油揚げ (米二合に対して,油揚げのみじん切りを一枚分と「穂先メンマ やわらぎ」一瓶,白醤油を大さじ一杯) でやってみた.これも食が進む.牛肉入りよりも私はこっちが好きだ.
 ここで一つ不満が生じた.「穂先メンマ やわらぎ」の食感はかなり軟らかい.一片も小さいので,二合の米に一瓶では,メンマの存在感に欠けるうらみがある.
 かといって二合の米に二瓶を使用して具沢山にするのは,コストの点でちょっとなーという印象だ.「穂先メンマ やわらぎ」のスーパー店頭価格は二百五十円前後だからである.五百円あれば,肉か魚か,ちょっとした料理が作れるものを,炊き込み御飯だけに五百円をかけるのは,一回の食事としてバランスが悪いだろう.
 そこで,冒頭のメンマのことに戻る.スーパー惣菜のメンマは,桃屋の瓶詰よりもかなーり安いのである.
 下の写真は,米二合に,惣菜のメンマ (ラーメンのトッピング用と「ピリ辛メンマ」各百グラム) 約二百グラム,白醤油 (盛田株式会社,特級) 大さじ一杯を入れて炊いたものだ.メンマがこれだけ入っていると食感もしっかりしているし,風味は中華風の筍御飯みたいなことになる.そこからさらに思い付くのは,炊き上がったら叉焼を刻んで混ぜたらよかろう,ということである.今度やってみようと思う.
 
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2020年8月 2日 (日)

老人は加工食品をアレンジしよう

 テレビによく出演しているリュウジさんというかたは,今までにないタイプの料理研究家だ.
「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」を始めとするテレビ各局の料理番組に登場する料理家,料理研究家,料理人,あるいはそういう範疇に入らない怪人平野レミとか,こういう人々は,食品会社の製品をメインに使った料理は作らない.調味料は基礎調味料 (塩,醤油,砂糖,酢など) を組み合わせて使うのが原則だ.「ミツカンのカンタン酢がおいしいので,今日はこれを使った料理を作ってみましょう」とは絶対に言わない (ただしミツカンの提供する番組は除く).
 またカレーは,即席カレールーにおいしいものが沢山あるのに,わざわざ「カレー粉」を使う.「昔風の家庭のカレーを作ってみましょう」と言うなら,ハウスのバーモントカレーを使うのが家庭内料理人にとっては「鉄板」だが,彼らプロは決してそう言わない.加工食品を用いるのは料理研究家の沽券に関わるとでも思っているのだろうか.あるいは番組スポンサーの意向とか,NHKの番組放送ルールで商品名は放送しないということも考えられが.
 このような彼らプロ料理家の流儀は,実際にその料理を作ろうとする一般人にとってデメリットとなる.
 少し考えてみればわかることだが,メーカーによる差がほとんどない調味料は砂糖と酢とサラダ油くらいのものだ.醤油はメーカー差が歴然とある.あるいは伝統的な容器に充填された醤油と,最近流行の「風味保存性のよい容器」に入っている醤油でも風味が違う.しかしテレビの料理番組に出てくる先生は,そんなことはお構いなしに「醤油大さじ二杯を」で済ませてしまう.だから関東の視聴者と関西の視聴者では,同じレシピで作っても味の違う料理ができてしまうのだ.
 また基礎調味料ではないが「めんつゆ」は,どんな料理音痴でも,メーカーが異なると味が違うということを知っている.各メーカーは,味の違いが消費者にわかるように商品設計しているから当然だ.
 私は食品会社に定年まで勤めていた人間なので言うのだが,料理家は「自分がよいと思って使っている調味料や食材は○○の△△です」と明らかにすべきだ.料理を作るに際して肝心なところを,視聴者あるいは消費者に丸投げしてはいけない.きちんと仕事をして欲しい.
 
 しかしともかくリュウジさんは,そういう「食品メーカーとの癒着を疑われてはいけない」というシガラミとは無縁だ.発想が自由である.「どこにうちにもあるカップスープを使って……」などと言いながら,テレビ画面にははっきりとクノールの製品が映し出される.たぶんリュウジさんは,アレンジするのに最適な,つまり結果的に一番おいしかった製品を放送で紹介しているだろう.従って視聴者は,リュウジさんのレシピ通り (材料のメーカーを含めて) に作れば,おいしいアイデア料理を作れるのである.レシピ通りに作ったものがおいしければ,レシピを作った人とメーカーの癒着がどうのなんて,消費者は問題にしないに違いない.
 こういう傾向は次第に料理好きの若い人たちのあいだに広まっているようだ.
 テレビ朝日の《家事ヤロウ》は最近の人気テレビ番組で,当初は深夜枠の放送だったが,いまやゴールデン帯に三時間スペシャルが放送されるまでになった.
 この番組はタイトルには「家事」とあるが,ほとんど料理のアイデア特集とでもいった内容になっている.番組コンセプトは「料理に全くの初心者でも作れる料理」ということだが,初心者ではない私でも楽しめる楽しい内容である.そしてリュウジさんはこれに不定期出演している.
 この「初心者でも作れる料理」は,野菜の切り方とか,鶏モモ肉の下処理の仕方とかの技術的なことは全く無関係で,ただもう「○と○を組み合わせたらおいしかった」というものだ.従ってその「○」と「○」に何を使うかが重要になる.先日の放送では,そうめんを使ったアイデア料理を紹介していたが,出演者のバカリズムもカズレーザーも口を揃えて「そうめんは揖保乃糸ですよねー」と言った.私はそれでいいと思う.もちろん,我が家は三代前からそうめんは三輪に決めている,という人はそうしてほしい.
「家事ヤロウ」のように,出来合いの常温保存の加工食品やレトルト食品,冷凍食品,調理済みチルド食品などをアレンジして,自分がおいしいと思うものを作る,というのはよいことだ.料理本を読みながら一から手作りの料理を拵えてまずかったりすると精神的ダメージが大きいが,出来合いのもののアレンジは簡単だから気楽だ.それて失敗だったら二度と作らなきゃいいだけのことである.
 そういう流れの話で,一つ紹介したいものがある.レトルトカレーでハウス食品の「プロクオリティ ビーフカレー 辛口」だ.これはCМ動画を時々テレビで流しているが,「具が入っていない」のが「プロクオリテイ」だというのである.
 確かに,一袋五百円前後のレトルトカレー (そういうのがあるのよね) でも,入っている具は一センチ角の謎肉みたいなかけらで,実にチープである.こんな具だったら入ってなくてもいいやと普通の人は思うのではないか.
 だから私は遠藤憲一シェフの「プロはソースで勝負!」を支持する.そこでAmazonのユーザー評価を読んでみよう.
 
プロクオリティとか言っているが、全然美味しくなかった。宣伝で美味しそうに食べてるが全部嘘だ。普通のレトルトカレーの方が美味しい。何かウスターソースか中濃ソースを混ぜたようなマズさ。もう二度と買わないと思う。
 
と☆一つにしてディスっている人もいるが,
 
不味いカレーではないが、5分の2ぐらいはソースというかデミグラスソースの味だ。カレー本来の味はあまりしない。色も黄色ではない。あまりウコンを使っていないのでカレー感がしない。むしろハヤシライス風の味だ。ガーリックはきいている。
 
と,☆四つにしたうえで《カレー感がしない》と書いている人もいる.まあ,そうだろうと私も思う.
 しかし,このレトルトカレーはとにかく価格が安い (一袋が百円以下で売られている) ので,具をたっぷり入れてさらに「カレー感」を強化すれば,ワンランク上の価格帯の商品 (これもカレー屋のメニューに比べるとかなりチープだ) よりもおいしくできるのではないかと私は思った.それに,即席カレールーで一人前のカレーを作るのは難しいが,レトルトカレーをベースに利用すれば少量のカレーを作ることができるメリットがある.独居あるいは夫婦二人の高齢者は,作る料理の量を減らすことが必須だ.
 というわけでその一例だ.
 スーパー等で「カレー用」とラベルに書いてある安い牛肉を二百グラムくらい買ってくる.
 小さめの鍋に肉を入れ,ヒタヒタの水を加えて火を着ける.
 すると味を損ねるアク (血液成分等の不溶性タンパク質) が浮くので,これを掬い捨てる.煮る前に,肉に付着しているドリップをよく洗うとアクが少なくなることは,諸兄既に御案内の通り.
 次に「プロクオリティ ビーフカレー 辛口」一袋を鍋に投入する.当然だが,シャブシャブに薄くなる.
 ここにインデアン食品のカレー粉と,GABANのガラムマサラ,各大さじ二杯を加える.インデアン食品のカレー粉は評判がいいが,通販で買ったりすると高くつくので,デパ地下とか,近くに成城石井とかがなければ,スーパーにあるS&Bの赤い缶でよい.GABANのガラムマサラは実店舗で入手しやすい.特段にいくつものスパイスを用意しなくとも,カレー料理にはガラムマサラがあれば充分だと思う.
 以上を,カレーソースが元のレトルトカレーの量になるまで煮詰める.味見すると,はじめは「とがった」スパイシーな味だったものが,煮詰めていくと「プロクオリティ ビーフカレー」とは別物のようになる.そして出来上がりは,米の飯にカレーソースをぶっかけて食べるいつものお手軽カレーではなく「御飯と肉のおかず」という雰囲気が漂ってくる.(下の写真)
 下の料理例は牛肉だが,大きく切った鶏腿でも「ちゃんとした料理」のように見える.爺さんがレトルトカレーを温めてチャチャッと昼飯を済ませてしまう粗食感はないと思う.要は,カレーソースの量に対して具をたくさんにすることだ.
  
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 ところで,上の写真の飯は着色しているのがわかるだろう.これは,米二合に対して粉末か顆粒のコンソメスープの素を八グラムくらい入れて炊いたもの.コンソメスープはメーカー間の違いが大きいので,食塩相当量四グラムを目安にするとよい.飯にうっすらと味をつけておくと,カレーソースは少なめで具が多くても,おいしい.ちなみに上の写真では,飯の量は茶碗に軽く一膳である.

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2020年7月18日 (土)

お手軽ドライカレー

 ドライカレーが庶民の家庭料理になったのは,たぶん昭和四十年代のことだ.
 私が大学に入って上京した昭和四十三年,東京の中野駅北口に居を構えた (ホントは西武新宿線沼袋駅に至近なのだが通学に使った中野駅のほうが通りがいいからそうしている) が,中野駅の繁華街ではドライカレーが既に喫茶店の軽食メニューになっていた.
 当時の学生は喫茶店で飯を済ませることが屡々あった.神田お茶の水界隈の学生街には筋目正しい洋食屋があったが,中野や高円寺あたりまでくると洋食屋はほとんどなく,喫茶店が洋食風の飯を学生たちに供していた.
 当時でも,厨房に修行した料理人がいる洋食屋あるいはレストランなら,ちゃんと米を炊いてピラフを作っただろうが,喫茶店はそんなことはしない.冷や飯をコンソメ味に炒めてこれをピラフと称していた.別に食通でもなんでもない学生たちは「ピラフは洋風のチャーハン」だと思っていたのである.
 パスタも同様だった.現在の日本人はイタリアには多種多様な麺類があり,総称してパスタと呼ぶことを知っているが,昭和四十年代の私たちはパスタという言葉を知らなかった.スパゲッティとマカロニしか知らなかった.
 今や七十過ぎの老人となった団塊世代が小学生だった頃,学校給食の献立に汁粉が出せないものかと考えた人たちがいた.学校の創立記念日とか学期末の日など年に何回か特別の献立が供されたのであるが,その特別献立の一つに当時は御馳走だった汁粉が選ばれた.
 今では廃ってしまったが,昔は「あんこ屋」という商売があった.そこから「漉し餡」を仕入れれば「あずき汁」は作れるが,困ったのは餅だ.
 起源は江戸時代以前に遡るようだが,今でも和菓子屋で売られている甘味に「懐中汁粉」というものがあった.Wikipedia【汁粉】にはこう書かれている.
 
懐中汁粉 – もなかの皮の中に粉末の漉し餡とあられを入れた日本古来のインスタント食品。湯を掛けて溶いて食べる。
 
 懐中汁粉にはあられの入っていないものもあり,湯で軟らかくなったもなかの皮を餅に見立てていたようだ.昭和三十年代に渡辺製菓の製品で,懐中汁粉に想を得た「即席しるこ」という食べ物があって,初代林家三平のラジオCМが評判を取った.これは,最初は懐中汁粉と同様に餅の代わりにあられが入っていたが,やがてあられは小さなデンプン餅に代わり,三平のCМでは「お餅も入ってベタベタと」になった.余談だが,昭和三十年代の社業好調な時期に駄菓子屋的な商品しか開発できなかった渡辺製菓は,やがて他社に吸収され,今の老人たちの記憶に残っているのみとなった.これに対して,企業としては食品業界の再編の波に飲み込まれはしたがしかしブランドは今も健在なカルピスとは大きな違いである.
 話が横に逸れすぎた.元に戻すと,小学校の給食関係者が餅の代替にしたのがマカロニであった.まだこのマカロニ (一般的な筒型ではなく平たい形であった.この形のショートパスタを私はそれ以後見ていない) を覚えている人はいるだろう.これは,本物の餅のようには調理に手間がかからず,餅のように煮崩れして溶けてしまわないのがよかったのだろう.
 戦前から都市部の中産階級の人々は洋食に親しんでいたと思われる (そこそこ裕福な作家たちが随筆に書き残している) が,外食とは無縁の庶民はパスタなるものの存在を知らなかった.なにしろ有名なディズニー映画『わんわん物語』(日本公開は昭和三十一年/1956年) の,野良犬トランプと血統書付きの犬レディがスパゲッティを食べるあの有名なシーンを見て,西洋にもうどんがあるのだと人々は理解したと言われている.誰が言っているかというと私だが,小学校にあがったばかりの私も,『わんわん物語』を観て,犬がうどんを食べていると思った人々の一人であった.
 Wikipedia【わんわん物語】にはこうある.
 
トランプとレディがスパゲッティを食べている最中に偶然キスをするシーンは有名であり、イギリスのTotal Film誌が選出した「映画史に残る最高のキスシーン50」では第8位に選ばれた。当初ウォルトは犬がスパゲッティを食べるというこのシーンに対して否定的だったが、フランク・トーマスが作成したアニメーションを見て考えを変えた。
 
 なにしろ年端も逝かぬピカピカの小学生だから,スパゲッティも知らないし,キスも知らない.キスをしてしまったレディが恥じらうシーンは理解不能であったことを記しておく.記すほどのことかよ.
 それはともかく明治維新以来,日本人が西洋料理だとしてきたのはフランス料理 (のコース) であった.
 これに対して洋食というのは,欧風の一品料理を日本人がなじみやすい風にアレンジしたものといえる.
 日本人がスパゲッティを洋食のひとつに加えたのは,戦後になって米軍基地で働くようになった人たちが,進駐軍兵士がスパゲッティをトマトケチャップで和えて食べているのを見て,まねたのが始まりであるとされている.横浜のホテルニューグランドがスパゲッティ・ナポリタンの発祥であるとするのが定説だが,実際に食べてみると,これはトマトソースを用いるイタリア料理というべき一皿である.つまりスパゲッティ・ナポリタンには二つの起源がある.ホテルニューグランドのナポリタンとは別に,進駐軍のキャンプから日本人が学んだトマトケチャップ和えのスパゲッティが,昭和の時代に洋食の一品となった (そしてもう今はほぼ姿を消した) スパゲッティ・ナポリタンである.
 しかしホテルニューグランド式のトマトソースのスパゲッティも,ケチャップ和えのアメリカンでチープなスパゲッティも,いずれもイタリア現地でイタリア人が食べている麺料理をそのまま日本に紹介したものではなかった.
 ホテルニューグランドの公式サイトには,同ホテルのコーヒーハウス「ザ・カフェ」の名物「スパゲッティ・ナポリタン」は《2代目総料理長入江茂忠が、米兵が茹でたスパゲッティに塩、胡椒、トマトケチャップを和えた物を食べているのを見て、アレンジ加えて生み出した一品》であると書かれているように,実はこれも進駐軍起源の一皿なのであった.入江総料理長が加えたアレンジとは,トマトケチャップに代えてトマトソースを使い,レストランの料理にふさわしいものにし,かつ「ナポリタン」と名付けたことである.
 当時,スパゲッティ・ナポリタンという名称はいかにもイタリアっぽくて秀逸だったのだろう,ホテルニューグランド「ザ・カフェ」がアレンジした料理よりもずっとチープな,進駐軍式のトマトケチャップ和えスパゲッティも,スパゲッティ・ナポリタンと呼ばれるようになった.
 入江総料理長の命名センスが優れていたことは,スパゲッティの料理はイタリア人がどう呼ぶかに関係なく「スパゲッティ・○○○」呼ばれることとなったことからも知られる.それでもスパゲッティ・ボンゴレとかスパゲッティ・ペスカトーレあたりはいいとして,スパゲッティ・ナポリタンみたいなローカル料理ではないぞというわけでスパゲッティ・イタリアン (スパゲッティ・イタリエンヌとは別物/あまりに嘘くさいので現在は廃れた) が登場するに至って,ようやく私たちはスパゲッティ・ナポリタンが日本語であることを知ったのであった.
 ところでレストランの料理長や洋食屋のシェフも,もちろん喫茶店のマスターも,イタリアで料理を現地修行したわけではなかったから,スパゲッティを西洋うどんだと誤解していた.そのため,デュラム・セモリナ (硬質であるデュラム種の小麦を粗挽きした粉) を押し出し製麺したスパゲッティを,なんとかうどんのような食感にしようと工夫をこらした.漫然とスパゲッティ (乾麺) を長い時間茹でれば,うどん化できるわけではなかったという.テレビでおなじみ辻調理師専門学校の小池浩司先生の調査によると,当時の料理人たちが編み出した方法は「前日に茹でて冷蔵庫で一晩寝かせる」だったそうである.
 だがしかしこの「西洋うどん」式スパゲッティに止めを刺したのが,若き日の伊丹十三だった.伊丹十三は二冊目のエッセイ『女たちよ!』(1968年) の中で,スパゲッテイはうどんではないと強く主張した.伊丹はその当時の,自分で料理をする青年たち (私のような貧乏自炊青年を含めて) に大きな影響を与えた.それまでの自分では料理しない食通作家たちが書いてきた「どこどこの蕎麦屋の蒲鉾が絶品で…」などという嘘くさい文章は伊丹十三によって一気に色褪せたのである.
 最近,包丁の持ち方を知らず簡単な料理一つできないくせにグルメぶっていた渡部建というお笑いタレントが下半身問題で失脚して笑い者になっているが,この愚か者の胡散臭さは,料理ができない食通作家に通ずるものがある.
 伊丹十三よりも一世代上の人だが,映画評論家の荻昌弘も自ら料理をする人だった.著書は少ないが,「食の安全安心」が社会問題となる数十年前の『男のだいどこ』(1972年) で既に食品の安全性について語っている先見性がすごい.
 荻昌弘も伊丹十三も,自分の食い物は自分で作れる人だった.私も彼らのようにありたいと思う.
 ただ,実際に一日の三食を自分で料理するのはなかなか難しい.やってみると一日中,頭の中が飯のことで一杯になってしまう.昔の専業主婦みたいな境遇の人は,今はそうは多くない (男は言うまでもなく,女性も有職がほとんどの時代だ) から,普通の人は一日のうちで料理に割ける時間はあまりない.だから,クック・パッドが代表だが,レシピサイトに掲載されているレシピの主題は「時短」だ.
 私みたいな高齢者は,女性たちに比べれば自由になる時間は多いだろうが,それでも他に色々することはある.手早くできるものの方がありがたい.手早くできない料理の代表はリゾットだと思う.あれは鍋の前に貼り付いて,鍋の中の出汁が米に吸われて減ったら継ぎ足し継ぎ足しを繰り返す.よほど時間がある人でなければ作れない.元々はイタリアの郷土料理だと思うが,イタリアで一般に食べられるようになったのは意外に最近のことで,第二次大戦後だとのこと.リゾットは家庭料理というよりもレストランの料理だと言われているが,私はよく知らないので調べてみたが,ウェブには確とした資料はないようだ.
 パエリアも面倒くさい料理だ.プロの料理人がパエリアについて書いているブログ等を読むと,本来のパエリアはパエリア鍋やフライパンで炊くのだが,その際に決してフタをしてはならぬという.しかしその理由を料理人は説明してくれない.ただもうスペインではそうやっているのだからフタをするなという.一種の原理主義ですな.
 同じ量の米を,フタをしない鍋で炊く場合,必要な水 (ブイヨン) の量は火加減と鍋の大きさ (直径) によって全く違ってくる.水の蒸発量が違ってくるからだ.従って,ネット上に公開されているパエリアのレシピは,水加減がテンデンバラバラである.同じ料理とは思えぬ.確定したレシピが存在しないのは火加減と使う鍋の二つが主要因だが,しかもイタリアやスペインで栽培されている品種のジャポニカ米と,日本産品種のジャポニカ米では米粒の大きさもデンプン粒の性質も異なることが,これに大きく影響していると考えられる.
 その結果,パエリアもリゾットと同様に,鍋を火にかけたあと,スープが減りすぎたら足すなどの調整が必要となる.つまり手間がかかる料理だ.
 しかし日本人はなんでも日本化する国民だから,日本風のパエリアを工夫した.鍋もしくはフライパンにフタをして炊く方法を考案したのである.
 こうすると,水 (ブイヨン) 加減と火加減で失敗することがなくなる.仕上げにフタを取って加熱して,パエリアらしいオコゲを作ればよい.
 こうしてみると,やはり米の料理はアジアが長けていると思う.新米を炊飯器に入れてスイッチを入れ,ほったらかしておけば白い飯が炊ける.白飯は最上の米料理だ.
 インディカ米も鍋にたっぷりの湯で茹で,香り高い熱々のできあがりは日本産ジャポニカとは別種のおいしさである.
 これらに比較すると,米料理界の新参者であるリゾットなんてのはできそこないの料理にしか思えない.
 
 さてこのブログでは高齢の爺さんでも簡単に作れる炊き込み御飯や炒飯を作ってきた.今回は超簡単なドライカレーを紹介する.
 ドライカレーには,昭和四十年代の昔から洋食屋や喫茶店のメニューであった「カレー味の炒飯」と,それから一時代遅れて世に現れた「水気の少ないキーマカレー」の二つがある.
 そこでWikipedia【ドライカレー】をみてみよう.
 
現在、以下のスタイルのカレーライスが、ドライカレーと呼ばれている。
挽肉とみじん切りにした野菜を炒め、カレー粉で風味をつけ、スープストックで味付けをして煮詰め、平皿に盛った飯に載せた料理。一種のキーマカレー。(挽肉タイプ)
カレー風味の炒飯。家庭で簡単に作れる「ドライカレーの素」や、冷凍食品が各社から発売されている。「カレーチャーハン」とも呼ばれる。(炒飯タイプ)
生の米とカレー粉を具材と一緒に炒め、炊き上げたもの。カレーピラフ。(ピラフタイプ)
 
 随分とテキトーなことを書くものだ.再度強調するが,ドライカレーは昭和四十年代に洋食屋の一品料理あるいは喫茶店の軽食メニューとして定着したものだ.定食 (コース) を出す料理店の献立にはなかったし,さりとて家庭料理でもなかった.ドライカレーが現れるよりも一昔前の軽食といえば,スパゲッティ (ナポリタンとミートソースが代表) とサンドイッチ,そしてトーストした食パンだった.
 その当時は,軽食を食わせる喫茶店はもちろんだが,ある程度きちんとした料理を出す洋食屋でも,本物のピラフは客に出さなかった.どういうことかというと,野菜のブイヨンで炊いて下ごしらえしておいた冷や飯を,客の注文があると具材を加えてフライパンで炒めて作った.つまり正しくは洋風の炒飯と呼ぶべきものを,ピラフと呼んでいたのだ.
 当時の日本人はピラフとはどんな料理か知らないから,客が注文してからピラフを炊いていたのでは,当然ながら客は「遅いっ」と怒って帰ってしまう.だからどの店も実はピラフ風の炒飯をピラフだと偽っていたのである.従って,カレーピラフなどという食べ物は,家庭で作る人はいたかも知れないが,外食の献立には存在しなかったのである.
 余談だが,某鎌倉のレストランでは,パエリアを注文すると,一人前のパエリアがあまり待たずに出てくる.あきらかにレンチンだ.
 きちんとしたスペイン料理屋では,パエリアは二名以上の会食で予約する料理である.予約しておけば,その他の料理を食べたあと続いてパエリアがテーブルに到着するという具合だ.ま,鎌倉の店じゃあそんなことはやってらんないだろうなあ.
 閑話休題.ついでに書くと,私くらいの年寄りは水気の少ないキーマカレー (Wikipediaが「挽肉タイプ」と呼んでいるもの) をドライカレーと呼ぶのにも違和感がある.そのままキーマカレーと呼べばいいじゃないかと思う.別にドライではないのだからドライカレーと呼ぶのは羊頭狗肉だ.
 というわけで,昭和四十年代に東京で学生時代を過ごした爺さんたちにとって,ドライカレーはすなわちカレー炒飯である.
 ただし,普通に冷や飯を使ってカレー炒飯を作るのでは,暇な者としてはおもしろくないので,ちょっと工夫をしてみたい.
 それが下の写真だ.
 
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 炒めた飯を塩コショーとカレー粉で味付けすればいいようなもんだが,食品会社の社員だった私は,各社が工夫した調合済調味料に興味がある.今回はグリコの「洋風炒めごはんの素」のうちの「ドライカレーの素」を使用した.先日,この製品を使って冷や飯でドライカレーをこしらえた際に「お,なかなかいいじゃないか」と思ったので,今回はそのバリエーションだ.
 これは他社のドライカレーの素従来品と異なって,具材と液体カレーソースの小袋ふたつに分かれている.この具材がやや貧相なので,てこ入れすることにした.
 まずタマネギ (小一個) をみじん切りにする.これはインディカ米 (今回はタイ産ではなくインド産にしてみた) 一合に対する量である.
 大き目の鍋に一リットル以上の湯を沸かす.沸騰したらインディカ米をサラサラと投入し,箸で撹拌する.単に投入したまま放っておくと糊化したデンプンのせいで鍋底に貼り付いてしまう.コトコトと十五分,茹でる.
 米を茹でている間に具材を作る.
 豚挽肉百グラムを炒めてフライパンを豚脂でコートする.タマネギを投入し,炒める.タマネギをどの程度炒めるかはお好みだ.
「グリコ ドライカレーの素」の具材を加えてざっと混ぜつつ炒める.これで具材は準備終わり.
 そうこうしているうちに,米が茹であがるから,ステンレス網のストレーナーで漉して,重湯を捨てる.
 ほかほかの飯をラーメン丼くらいの器に移して,レンチン (500W,二分間) して余分な水分を飛ばすと同時に,日本米の炊飯でいうところの「蒸らし」を行う.
 あつあつの飯に,雪印北海道バター「切れてる」を二かけら (ひとつ十グラム) を加えてよきく混ぜ,バターライスにする.バターが好きなら三つでも四つでも.
 融けたバターが全体に回ったら,あらかじめ具材を炒めておいたフライパンに飯を投入し,カレーソースも投入し,熱しつつよく混ぜる.これでできあがり.米一カップがたっぷり二人前あるので,二人前 (一人前×2) 入りの「ドライカレーの素」を全部使ってしまう.
 このまま食べてもいいのだが,カレー皿の半分に盛り付け,残りの皿半分に,よく温めたレトルトのタイカレー (グリーン) を流しいれる.
 茶漬けのようにさらさらと食べる.塩味の強くないカレースープでもいい.昔々はやったスープカレーを思い出しつつ食べると遠い目になること必定である.

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2020年6月 7日 (日)

間歇消毒常備菜

 コロナウイルス禍の中で巣ごもりしていると,テレビの料理番組を観るのが楽しみである.料理ジャンルの長寿番組の一つである《上村恵美子の おしゃべりクッキング》では,曜日がわりで辻調の三人の先生と上沼恵美子さんが,料理を作ってみせてくれる.この番組の最大の特徴は,料理の先生よりもアシスタントである上沼さんのほうが大物だという点にある.
 もう一つの特徴は,上沼さんがソーシャル・ディスタンスなんぞまるで無視していることである.これは,番組のコンセプトからすればきっとそうなるところで,料理をしている先生の横でおしゃべりしていなけりゃ上沼さんがアシスタントである意味がない.これは,コロナ禍のもとでも以前と変わらぬスタイルの番組を作るんだ,という上沼さんの見識なんだろう.
 対照的なのは土井善晴さんの《おかずのクッキング》だ.テレ朝アナウンサーの堂真理子さんはアシスタントというより,土井先生から二メートル以上離れて,料理の実況放送をしている.
 
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 上の写真にあるように,これが料理番組の出演者としては限界の「距離」だろう.これだけ離れると堂真理子さんは,調理する土井先生の手元を肉眼でなくモニター画面で見ざるを得ないから,二人ともやりにくそうである.
 しかし実用料理番組というコンセプトを捨てれば,実際のキッチンから離れて,リモート出演で番組を構成することができる.代表例は《家事ヤロウ !!》だ.
 現在は,過去の放送をリモートに編集し直して再構成しているが,元々がおもしろい企画だったので,総集編でもかなり楽しめる番組に仕上がっている.
 
 さてこの《家事ヤロウ !!》の特筆すべき点は「名前のある料理」は登場しないことで,有名無名の人たちが発作的に考案した「名もない料理」がたくさん紹介される.「名もない料理」というのは例えば,納豆とスパムとレタスを入れて牡蠣だし醤油で味付けしたチャーハンであり,これは説明的に「牡蠣だし醤油の納豆スパムレタスチャーハン」(《家事ヤロウ !!》で紹介されている) としか呼びようがない.
 江戸料理の一つ「深川飯」と聞いても,食べたことがない人はどんなもんだか想像できないが,「タラの芽の天ぷら」ならどんな料理であるか明快だ.
 中国料理では基本的に,料理名は「材料名+料理法」から成っている.麻婆豆腐のような固有名詞は少ない.日本の「おかず」も同じで,こういうのが「名もない料理」だ.
 そこで先日の「しらたきの常備菜」に続いて,「名もないおかず」をもう一つ紹介する.「ベーコンとシメジと卵の炒め物」だ.
 これは特にレシピを書くまでもないもので,まずシメジ (ブナシメジ,一パック) をフライパンで炒めて軽く塩胡椒する.次にベーコン (フルサイズの薄切りを五,六枚) を投入してさらに炒める.ベーコンから油が融け出てきたところでシメジとベーコンをフライパンの片側に寄せ,あいたところに鶏卵二個を入れてスクランブルする.つまり塩味をつけるのはシメジだけでよい.
 こんな変哲もないおかずをここで紹介したのは,これが「しらたきの常備菜」と同じく,日に一度,百度近くまでレンチン加熱する (達温90℃という) ことにより,大量に作ってもかなり日持ちするようになるからだ.
 実際のやり方は,作った料理を耐熱容器に入れてフタをし,フタの隙間から激しく水蒸気が漏れ出てくるまで電子レンジ加熱する.加熱後に室温で粗熱をとったら冷蔵庫に入れて冷やす.
 冷蔵と日に一度のレンチンを繰り返すのを「間歇消毒法」という.シメジには一般的な細菌がたくさん付着しているが,最初の達温90℃でこれは死滅する.しかし農産物に必ず存在する耐熱性菌は芽胞 (休眠型菌体) 残して生き残る.
 一日保存すると,生き残った芽胞が通常の菌体 (増殖型菌体) に変化して活動を開始する.ここで二度目のレンチンをすると,増殖型菌体の多くは死滅する.一部は芽胞を残して生き残るが,その数は加熱前よりも減っている.
 この操作を繰り返すと,料理中の菌は減り続ける.これを私は勝手に常備菜的無菌と呼んでいる.ただし加熱によって水分が失われるので,加熱時に少し水を足してやる.
 缶詰・瓶詰やレトルト食品は,完全無菌ではないが年単位の保存が可能で,これは商業的無菌と呼ばれている.実用上は無菌と呼んでも差し支えないというほどの意味だ.
 家庭で常備菜と呼ばれる料理は,冷蔵庫で数日から一週間程度も保存できればいいだろう.私が考案する常備菜は一週間の冷蔵を目標に作っている.
 ところが,どんなおかずでもレンジ加熱を繰り返せば記述「しらたきの常備菜」と「ベーコンとシメジと卵の炒め物」のように日持ちする常備菜にできるかというと,そうでもない.食感が劣化してしまうからである.
 その例として,レトルトの麻婆豆腐の素と豆腐だけ (つまり材料に由来する菌数を可及的に減らすために,挽肉もネギも入れない) で作った麻婆豆腐はレンジ加熱を繰り返せば確かに日持ちはするが,加熱を繰り返して食べると豆腐の食感が悪くなり,まずくなるのでので常備菜にはできない.
 次回は,レンジ加熱を繰り返さずに日持ちするおかずを作ってみる.
 
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2020年6月 5日 (金)

男爵でポテトサラダを作る

 ポテトサラダはメイクイーンで作るのがおいしいと私は思う.イモをブイヨンで煮ることができるからである.
 男爵イモでこれをやると,イモがスープの味を含む前に煮崩れてしまう.単に水で茹でるにしても,茹で加減で水っぽくなってしまって失敗するからむずかしい.
 結局,男爵イモでサラダを作るときに簡単な方法は,男爵イモをレンチンすることだが,それでも味付けはマヨネーズだけなので単調になってしまうことが多い.それを避けるには,香辛料や調味料を工夫するのがよい.下に一例を挙げてみた.
 
[材料]
 男爵イモ           大きいのを3個
 フルサイズのベーコン     4枚
 キュウリ           1本
 マヨネーズ     味の素でもキューピーでも好きなメーカー製を好きな量
 チューブ入りの和辛子     押し出した長さ6センチくらい
 (トッピングの例)       オリーブ油(エクストラ・バージン)
                とDukkahを混ぜた調味料
[作り方]
* 男爵イモは,6Pチーズくらいの大きさにカットする.
* これを深皿に入れてラップをし,ラップが膨らんでから二分間レンチン (500W) する.爪楊枝をイモに刺して,柔らかくなったのを確かめる.硬かったらさらに加熱.加熱時間はイモの重量によって変わるので,様子をみながら行う.
* ラップを取り去って更に一分間加熱して,イモから出た水分を飛ばす.見た目にまだ深皿の底が濡れていたら.さらに加熱する.これをしないと水っぽい仕上がりに.
* まだホカホカのうちに,フォークでイモを小さく割り,キュウリとベーコンを加えて混ぜる.次に味見しながらマヨネーズを混ぜる.
* よーく冷蔵庫で冷やしてから食べる.ポテトサラダは日持ちしないので,早めに食べてしまうこと.
[感想]
 ジャガイモは,微生物の培養に用いるくらいで,微生物にとってよい栄養源である.そこにキュウリという菌数の多い生の野菜を入れるわけで,冷蔵しても腐敗は避けがたい.二,三日は冷蔵できる常備菜にするには,生野菜は使わずにフライド・オニオンがよい.いっそマヨネーズではなくポン酢とかフレンチ・ドレッシングでサラダにするという手もあるなあと思う.
 
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2020年5月30日 (土)

真・鶏釜めし

 先日の記事《ミツカン「鶏釜めし」》[掲載日 2020年5月24日] で,ミツカンの「鶏釜めし」を買って作ってみたら,あまりにもチープ感あふれる貧相な商品だったので,これはもう買わないと書いた.
 このミツカン「鶏釜めし」の原材料表示は以下の通りである.
 
* 鶏肉 (国産),しょうゆ (小麦・大豆を含む),砂糖,にんじん,こんにゃく,鶏脂,油揚げ (大豆を含む),アミノ酸液 (大豆を含む),食塩,なたね油,鶏がらだし/調味料 (アミノ酸等),増粘剤 (キサンタンガ ム),酸味料
 
 この釜飯の素は,さすがに大手食品企業のレトルト製品だけあって,可及的に食品添加物の使用は抑えられている.その点はほめたいが,いかんせん具材が貧相すぎて,食べていて侘しくなる.「鶏釜めし」という商品名は羊頭狗肉だと言わざるを得ない.なんでこんなものをしみじみと食わにゃならんのだ,と食いながら思った.
 さればというわけで,具材をたっぷり追加で入れてみたら,
こんどは元々具材として入っている鶏肉の破片や油揚げの切れっ端がゴミみたいに見えて,まるで異物が混入した料理みたいになってしまった.
 パッケージに米二合用の釜飯の素レトルトが二袋入って店頭価格三百円弱で,これは「安けりゃ喜ぶ消費者っているんだよね」というミツカンのポリシーかも知れないが,馬鹿にするなと言いたい.
 マイナーな販売者の製品で二倍くらいの価格帯 (五百円前後) のものもあるのだが,得てして具は大目に入っているが食品添加物過剰で不味かったりするのが多い.(これはメーカーの技術力を反映している.ミツカンの製品はまずくはない)
 
 ま,そんなわけでちゃんとした鶏飯 (奄美の郷土料理「けいはん」ではなく日本各地の「とりめし」) が食いたくなったので,ミツカンの手を借りずにきちんと作ってみた.
 その前に一つ.Wikipedia【釜飯】に次の記述がある.
 
釜飯 (かまめし) は、米に醤油、みりん等の調味料を加え、その上に椎茸、鶏肉などの具を載せ、一人用の釜で炊いた米飯料理である。一種の炊き込みご飯であるが、釜から飯碗によそうのではなく、釜のまま食卓に供することに特徴がある。釜の種類としては、写真にあるような羽釜式の鉄釜の他に、土鍋型の陶器の益子焼、高田焼もよく用いられる。大正12年 (1923年)、関東大震災あとの東京上野で行なわれた炊き出しをヒントに、のちの浅草の『釜めし 春』の女将が開発させた一人用の釜で、客に供した料理がはじまりとされる。

 
 なるほどね.たぶん一人用の釜なんてものは《『釜めし 春』の女将》の考案したものだろう.世に釜飯はあるが鍋飯がないのは,そういう理由があるからだ.
 するとミツカンが,米二合用の分量をレトルト包装した調味料 (
貧相な具材が申し訳程度に入っている) を「鶏釜めし」とネーミングしているのは大間違いであるということになる.しかも釜炊きではなく炊飯器用に商品設計されている.なぜ素直に「鶏めし」としなかったのか.きっと『「鶏釜めし」とすることで他社製品との差別化を図る』とか何とか会議で主張した お調子者が マーケティング担当がいたのであろう.食品会社ではよくある話だ.
 
[材料]
 米 (無洗米推奨)   二合
 鶏モモ肉      200グラム
 ゴボウ (笹がき)   100グラム 
 白醤油      大さじ二杯
 濃口醤油     大さじ一杯
[作り方]
* 鶏モモ肉は炊くと,驚くくらいに収縮するので,大きめに切る.皮も入れると飯粒に艶がでる.
* ゴボウは,笹がきにして水煮にしたものがポリ袋入りで売られているので,これを使うと便利.
 ポリ袋に入っている水にはゴボウの香りが移っているので,これは捨てずに炊飯に使う.これに溶けている添加物はビタミンC (アスコルビン酸) だけなので,添加物嫌いの人でも心配無用.
 コボウは100グラム入れると,下の写真ではわかりにくいが,たっぷり入っているという感じになる.ほのかなゴボウの香りが食欲をそそる.
* 鶏飯は色も塩加減も濃いめが普通かと思い,他の炊き込み御飯よりも多めにし,濃口醤油を併用した.濃口醤油を使うと,炊飯釜の内底に醤油の色が着き,オコゲみたいな色になる.オコゲじゃないけど.
[感想]
 昔から鶏飯にはゴボウを使うものと決まっている.なぜだかわからないが,鶏つくねにもゴボウを入れる.
 ゴボウの他にニンジンだとか油揚げだとかを入れて炊くと,一食の飯として何だかおもしろくないのが不思議だ.
 昔々,東北を旅した折,盛岡で泊まった宿の夕食に,牛肉とゴボウの鍋が出た.野菜はゴボウのみ.
 このゴボウの香りが実に鮮烈で,東北のゴボウは他所とは違うのだと知った.あれは肉の鍋ではなくゴボウを食う鍋であったのだなあと今でも記憶している.
 
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2020年5月29日 (金)

しらたきの常備菜

 五日前の記事《ミツカン「鶏釜めし」》にこう書いた.
 
ちなみに同じ農水省のサイトに資料《こんにゃくいもの輸入 》があり,次の通りに書かれている.
 《平成19年4月のLDC (後発開発途上国) に対する無税無枠措置の適用以降、 ミャンマー、ラオスからの輸入が増加している。》
 「こんにゃく」はいつの間にか完全自給ではなくなっていたのだ.これについては別稿を立てて書く.
 
 その別稿である.
 一般財団法人日本こんにゃく協会の公式サイトに《こんにゃくができるまで》というコンテンツがある.
 
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 またWikipedia【コンニャク】には次の記述がある.
 
植物としてのコンニャク
サトイモ科の夏緑多年草植物で、学名はAmorphophallus konjac。英名はelephant footあるいはdevil's tongueとも言う。地下茎はコンニャクイモ(蒟蒻芋)と呼ばれる。原産地はインドまたはインドシナ半島(ベトナム付近)とされ、東南アジア大陸部に広く分布している。
 
 つまり東南アジア全体におよそ130種のサトイモ科植物が存在するが,その多くは多糖「コンニャクマンナン」を含まないため,加工してコンニャクを作ることはないという.
 この約130種のサトイモ科植物のうちどれくらいのものが食用であるかは,ネット上の資料を調べてもわからなかった.ただ,そのうちの一部は総称を「タロイモ」といい,東南アジアでは今でも主食の一つである.
 日本でサトイモ (里芋) と呼ばれているものはタロイモの栽培品種の一つで,最も北方で栽培されている品種だ.現在の日本列島に伝播したのはイネよりも早い縄文時代後期だとのこと.現在では日本はもちろん東南アジアでも主食の地位を米に譲った地域が多いが,起源が古いだけあって,食文化的に重要な食材である.
 さてコンニャクイモはサトイモ科の中では特殊な品種で,元々は中国の貴州省や雲南省,四川省など少数民族が多い地域でコンニャクに加工して食用とされてきた.コンニャクの我が国への到来は,Wikipedia【コンニャク】に,
 
日本への伝来時期には諸説あり、飛鳥時代に医薬として仏教と共に伝来した、あるいは縄文時代にサトイモと共に伝来したとも言われ、その後、推古天皇の時代に本格的に中国から輸入されたと言われる。その目的は「砂払い (整腸)」の薬効であったが、鎌倉時代までに食品として確立し、精進料理に用いられるようになった。しかし庶民に広まったのは、江戸時代の元禄年間の頃である。
 
とある.元禄年間以来,日本人はコンニャクを食い続けてきたわけだが,いくら食っても腹の足しにならないコンニャクを,薬効があると信じられていたとはいえ,よくぞまあ今に伝えてきたものだと感心する.(「腹の足し」とは血糖値が上昇することだ.コンニャクは大量に食っても胃の膨満感が増すだけである)
 それはともかく日本人はコンニャクが好きでよく食べるから,これが東南アジア諸国の人々に知られるところとなり,日本こんにゃく協会の記事に描かれているように,彼の地で日本向けに栽培されるようになった.これについてWikipedia【コンニャク】から少し長めに引用しよう.
 
こんにゃくと政治
国内生産者保護のため、こんにゃく芋は関税割当制度の対象とされ、安価な輸入こんにゃく芋には国内産より高コストとなるように、高額の関税が課されている。2015年の1次税率(267トン以内)は40%、2次税率は2796円/kgである。ウルグアイ・ラウンド合意によってこんにゃく芋の関税化が始まった1995年当時は、2次税率の関税率は1706%に相当した。また、各年度において、年度開始からの累積の輸入量が一定量を超えると超えた月の翌々月からその年度の終わりまで「特別緊急関税」と呼ばれる3728円/kgの緊急関税率が適用されることが定められ、2009年2月1日、2009年9月1日、2010年7月1日、2012年12月1日に実際に発動している。
自民党には、こんにゃく農家の保護・育成のために活動する「こんにゃく対策議員連盟」があり、群馬県を地盤とする小渕恵三も会長を務めていた。2011年、当時の民主党政権の前原誠司外務大臣は、こんにゃく芋に高関税が設定されていることについて、こんにゃく芋の大産地である群馬県から出た、自民党の内閣総理大臣が多いからだと発言した。
ただし近年は輸入品価格も上昇し、2008年は1 kg当たり800円程であったため関税率は350%程度で、関税が適用されても輸入こんにゃく芋の方が安くなる場合もある。なお、こんにゃく製品の輸入は自由化されており、関税率は20.3%である。》(引用文中の文字の着色は当ブログの筆者が行った)
 
 先日の記事《ミツカン「鶏釜めし》には
 
ミツカン「鶏釜めし」の「こんにゃく」は輸入原料を国内で加工しているのであるが,その輸入原料が「こんにゃく粉」かどうかはわからない.「板こんにゃく」を輸入して国内でカットと調味をしているかも知れないが,東南アジアから「こんにゃく粉」(精粉という) を輸入して「こんにゃく」を製造している会社から調達しているのかも知れない.いずれにせよこの「鶏釜めし」で使用する「こんにゃく」は大した量ではないのに,なぜ輸入品を使うのかは不明である.
 ちなみに同じ農水省のサイトに資料《こんにゃくいもの輸入 》があり,次の通りに書かれている.
《平成19年4月のLDC (後発開発途上国) に対する無税無枠措置の適用以降、 ミャンマー、ラオスからの輸入が増加している。》
「こんにゃく」はいつの間にか完全自給ではなくなっていたのだ.これについては別稿を立てて書く.
 
と書いたが,関税をかけても輸入のコンニャク芋,コンニャク製品のほうが安い場合があるのでは,コンニャクという伝統的食品はいずれ完全に我が国の自給農産物,自給食品でなくなっても不思議ではない.
 ま,飛鳥時代に輸入製品であったコンニャクが,現代になって再び輸入製品に回帰するのは奇しき時の流れと言うべきか.
 
 ところで,スーパーの加工食品売り場へ行くと,豆腐・納豆と関連製品の棚面積がかなり広いが,料理としてあまり用途の広くないコンニャク製品も,大豆製品に劣らぬ量が日々販売されていることに気が付く.それも,しらたき又は糸コンニャクが,板コンニャクや玉コンニャク,刺身コンニャクを圧倒している.
 刺身コンニャクはそのまま食うだけであるし,板コンニャクの用途はおでんが主だろう.では,しらたきはどうなのか.
 他家ではどうか知らぬが,私は醤油味の辛い炒め物が好物である.冷蔵庫の常備菜だ.
 作り方は何の工夫もない.袋入りのしらたきをまな板に置き,ざっくりと二つに包丁で切る.これを鍋にたっぷりの湯を沸かして下茹でする.下処理したしらたきは,カルシウムが溶け出た湯を捨てて水洗いしておく.
 油揚げを熱湯で洗ったあと,一センチ角くらいの大きさにカットする.
 コンニャクと油揚げと輪切りの鷹の爪一つまみを鍋に入れ,少しの麺つゆで味を付けてからサラダ油で炒める.仕上げに少しの胡麻油を垂らせば出来上がりだ.
 
 これだけで酒肴になるが,炒り卵を加えれば見た目も豪華になる.
 油揚げの代わりに,デパ地下の惣菜てんぷら屋で揚げ玉 (無料) をもらってきて,しらたきを炒めたあとに混ぜるのもおいしい.
 油揚げではなくベーコンをたくさん入れれば,肴というよりも御飯の副菜のようになる.また,日持ちはしなくなるが,ニンジン等の野菜を入れてもよい.
 特筆すべきは,この常備菜は一日に一度レンチンすると,かなり長く冷蔵保存できることである.というか,しらたきと油揚げだけを使う基本形のものは,レンチンするたびにどんどん雑菌が死滅していくという衛生料理である.
 しらたきを二袋使って大量にこしらえて,毎日の晩酌の肴はこれだけ,というのは年金生活者に最適であると私は考える次第だ.
 
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2020年5月28日 (木)

メイクイーンでポテトサラダを作る

 知人から,ダンボール箱にいっぱいの新ジャガイモを頂戴した.箱を開けてみたら,小はSサイズの鶏卵大から大きいのはテニスボール大まで.男爵もメークイン (標準和名はメークインだが,Make in では意味不明だ.私はメイクイーン May Queen と書きたい) も一緒くたの泥付きである.
 これをさてどう食べようかと思案して,まずは茹でて塩を振って食べた.
 次に男爵は細く千切りにして,輪切りの鷹の爪と麺つゆで炒めて,キンピラにして食った.これは私の冷蔵庫の常備菜だ.
 拍子木に切って味噌汁にしてもいい.ジャーマンポテトやグラタンもうまい.
 コンソメのキューブとカレー粉で煮て食ったが,ジャガイモだけのカレーもいけるのではないかと思った.
 惣菜屋に行くとこの季節,ピンポン玉くらいの新ジャガをポテトフライにして売っている.これがうまい.
 こうしてみるとジャガイモは芋の王だ.サツマイモやサトイモではこうはいかない.
 そこで,芋料理の王,ポテトサラダを作ってみた.
 ジャガイモはメイクイーンを使う.男爵イモのポテサラはスーパーの安い惣菜であり,女子供の好物である.男爵ポテサラは,マヨネーズが多いとただもうベタベタのペーストで,うまくもなんともない.マヨネーズが少ないとただのマッシュポテトとどう違うのかわからぬ.ここはメイクイーンのポテトサラダが決まり事である.
 
[材料]
 メイクイーン  普通の大きさのものを四つくらい.
 平和食品工業「野菜ブイヨン」  大さじ二杯くらい.Amazonで購入できる.
 タマネギ    一個の半分を一ミリ厚にスライスする.量はジャガイモの半量くらい.
         今の季節,新タマネギならそのまま使う.
         辛いタマネギの場合は水に晒すなりサッと湯通しするなりして,辛みを除く.
         いっそ一センチ角くらいに大きく切って,油炒めにしてしまうのもアリ.
 キュウリ    一本.握ると痛いくらいに鮮度のよいものは,下処理して尖ったトゲトゲを除去する.やり方はネット参照のこと.
         トゲトゲのないものはそのまま使う.
         一ミリ厚にスライスする.塩もみは不要.というかしないほうが生野菜感があっておいしい.
         塩もみすると書いてあるネットのレシピは参考にする必要なし.
 ベーコン    ファミマのスモークベーコンを一袋.短冊にカットし,フライパンで軽く炒めて香りを立てておく.
[作り方]
* 手頃な大きさのメイクイーンを,四つかそこらピーラーで皮を剥く.これを五ミリ厚から十ミリ厚に輪切りする.さらに半分にカットする.厚みは揃えないことが大切.なぜかは後で食べるとわかる.
* 鍋にジャガイモを入れ,ひたひたの水を入れて火を着け,野菜ブイヨンを投入して茹でる.野菜ブイヨンの代わりに味の素等の高血圧型コンソメで代用しても可.塩分控えめコンソメならもっとよい.
 ただの塩茹でではなく,メイクイーンのポテサラはこの茹でるときの味付けがポイントだ.ここで好きなスパイスを追加して使う工夫をするとさらによい.
* 厚くカットしたジャガイモに火が通ったらすぐ火を止め,イモだけボウルに取り出す.ラップをせずに電子レンジで加熱し,無駄に付着した水分を飛ばす.
* 湯気が立っている状態で,フォークとかスリコギで潰す.マッシュされた部分 (下ごしらえで薄くカットした部分が簡単にマッシュされる) とゴロッとしたイモ感がある部分 (元々厚く切った部分) の割合はお好みで調節する.
* 小皿にチューブ入りの和ガラシを六センチくらい絞りだし,少量の水で溶いてからイモに加える.安っぽいスーパーの惣菜ポテサラはカラシをケチっているのが多い.
* さらにマヨネーズを好みの量絞り入れる.マヨネーズの量は,メーカーの違いもあり,人によりほんとに好き好きなので,少しずつ加えながら,味見をしつつ決めること.
* ベーコンを投入し,シャモジ等で混ぜ合わせるとできあがり.あとは冷蔵庫でよく冷やしてから食べる.
[感想]
 安いスーパー惣菜の男爵ポテサラはジャガイモのペーストに過ぎないが,メイクイーンのポテトサラダは料理感がある.
 要点は,つぶしたイモの大きさを揃えないこと (下の写真参照),イモを茹でるときにブイヨンを使うこと,タマネギとキュウリをたっぷり使うこと.和ガラシをケチらぬこと.
 盛り付けたら,パプリカとかパセリの粉なんかを飾りに振ってもいい.
 黒オリーブの輪切 (コープ食品「サラダクラブ ブラックオリーブ スライス」が安くてよい) をトッピングするのもおすすめ.
 カンボジア産の黒コショウ塩漬け,日本産のシソの実の塩漬けなどをパラリと載せても旨い.もちろん黒コショウをカリカリと挽いてかけてもよし.
  
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2020年5月24日 (日)

ミツカン「鶏釜めし」

 私は米の飯が三度の飯より好きで w ,炊き込み御飯を作るときは自分で季節の材料を整えるが,市販の「釜飯の素」はどんなもんだろうと思い,ミツカンの「鶏釜めし」を買ってみた.商品情報はこちら
 
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 包装の裏面に次のことが書いてある.
 
好みで選べる2つの味! 2合で炊けばしっかりした味付けに 3合で炊けば上品な味付けに
色々試せる2袋入り! 1回目はそのまま、2回目は旬の素材を加える などお楽しみいただけます。
 
 また公式サイトの商品情報ページにはこう書かれている.
 
国産の鶏肉、にんじん、こんにゃく、油揚げが入った「鶏釜めしの素」です。風味にもこだわり、鶏脂を加えたコク のある豊かな風味が具材の味を引き立てるので、そのまま食べても、旬の素材をプラスしてもお使い頂けます。2 ~3合用×2袋入りで、お好みに応じて『しっかり』、『上品』2種類の味をお楽しみいただけます。(●鶏肉、にんじんは国内で生産されたものです。●こんにゃく、油揚げは海外産原料等を使用し国内で製造されたものを使用しています。)
 
 この説明を読んで私は驚いたのだが,こんにゃくは原料を輸入している.私はこんにゃく芋とその加工品 (こんにゃく粉等) はほぼ完全に群馬県産で,少量が栃木県産だと思っていたからである.そこで調べてみたら,農水省のサイトに資料【こんにゃくいもの動向】があった.説明の一部を下に引用し,表とグラフを添える.
 
こんにゃく製品の輸入
 板こんにゃく、しらたき等のこんにゃく製品は、総菜等の業務用を中心に、輸入されている。平成26年産の輸入数量は、24,037tとなっている。

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 ミツカン「鶏釜めし」の「こんにゃく」は輸入原料を国内で加工しているのであるが,その輸入原料が「こんにゃく粉」かどうかはわからない.「板こんにゃく」を輸入して国内でカットと調味をしているかも知れないが,東南アジアから「こんにゃく粉」(精粉という) を輸入して「こんにゃく」を製造している会社から調達しているのかも知れない.いずれにせよこの「鶏釜めし」で使用する「こんにゃく」は大した量ではないのに,なぜ輸入品を使うのかは不明である.
 ちなみに同じ農水省のサイトに資料《こんにゃくいもの輸入 》があり,次の通りに書かれている.
 
平成19年4月のLDC (後発開発途上国) に対する無税無枠措置の適用以降、 ミャンマー、ラオスからの輸入が増加している。
 
「こんにゃく」はいつの間にか完全自給ではなくなっていたのだ.これについては別稿を立てて書く.
 さて,ミツカンの「鶏釜めし」の話である.
 炊飯器の内釜に無洗米のコシヒカリを二合計り入れ,内釜の二合の目盛りに合わせて水加減した.無洗米専用の計量カップが販売されていて,170ミリリットルである.無洗米は通常よりも乾燥しているので水の量を多くしなければいけないというのがその理由だが,実際に炊いてみると180ミリリットルのカップで計った白米を無洗米一合としても全く問題がない.誤差の範囲の話だと思う.無洗米専用カップをわざわざ購入する必要はない.
 次にここに「鶏釜めし」を一袋投入した.
 あとは普通に炊き上げて,熱々を飯椀に盛って食べようとしたのだが,「?」と私は首を傾げた.
 微細なにんじんの切れ端は色が赤っぽいからすぐ目についた.糸こんにゃくの切れ端のような「こんにゃく」も探したらあった.
 だがしかし,肝心の鶏肉は椀の中に見当たらなかった.
 そこで炊飯器内釜の中を精査したところ,五ミリ角ほどの黒っぽいものが発見できた.どうやらこれが鶏肉らしい.しかしカップヌードルに入っている「謎肉」よりも存在感がないのには驚いた.
 さらに飯粒の間を隈なく捜索すると,暗褐色のゴミみたいなものもみつかった.ルーペで子細に観察すると,これは油揚げの破片であることが判明した.
 ミツカン「鶏釜めし」は醤油が濃口だから,炊き上がった釜飯の色が大変に濃い.そこに五ミリ角の鶏肉と油揚げの破片が入っていても,私ら老人の目には,ないに等しい.これはもう「鶏釜めし」ではなく「にんじんとこんにゃくの切れ端釜めし」と言うべきだと思う.
 
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 上の画像はパッケージに描かれている「調理例」だが,実際には「調理例」で飯の上に載っている具材が,二合の米を炊いた飯の中に分散隠滅されている.私は久々に大胆不敵な「調理例」を見た.
 だがしかし私はここで,パッケージ裏面に《色々試せる2袋入り! 1回目はそのまま、2回目は旬の素材を加える などお楽しみいただけます 》と書いてあることにハタと思い至った.そうかっ,なるほどっ.この文言は「この商品には具材がロクにはいっていないので,二回目は自分で旬の素材を加えてお楽しみください」という意味だったのだ.ちゃんと辻褄は合っている.大胆不敵な「調理例」だ,などと貶してまことに申し訳ないことをした.さすが一流食品会社のミツカンであるなあ.よかったよかった.
 というわけで,もう一袋は具材を加えて炊いてみた.
 冷蔵庫にはちょうど買ったばかりの赤魚の粕漬がある.二枚に下した身を二枚,つまり丸々一尾分を焼いて,身をほぐしたら,飯茶碗にたっぷり二杯分あった.
 あとは常備している油揚げを一枚.元々は関西のものだが,油揚げを小さな短冊に切って,うどんに載せて食う.このように切った油揚げを「刻み揚げ」という.鶏飯に限らないけれど,飯に炊き込む油揚げはこの位の大きさの短冊が普通だ.しかし少し前に「上沼恵美子の おしゃべりクッキング」で辻調の先生が,「お揚げは五ミリ角くらいのみじん切りにするとおいしいです」と言っていたので,そのように切った.
 こうすると,元々ミツカン「鶏釜めし」に入っていた ゴミみたいな 破片のメンツがつぶれずに済む.何事もメンツは大切にするのがよい.
 赤魚粕漬は炊いたあとに加えるのが,たぶんおいしい.鯛飯のようにしたのでは,炊いた飯全体が同じ味に均一化してしまうので,せっかくの粕漬のおいしさが薄れると思う.飯は醤油味で,具の赤魚は酒粕風味,というわけだ.
 ただし油揚げは出汁みたいなもんだから,最初から加えて炊く.
  
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 さあ上の写真ができあがりの様子だ.
 赤魚といっても色々あるけれど,私がいつも買う赤魚粕漬は近海ものじゃなくて,一年中安価に店頭にでているものだ.
 赤魚は本来はアコウと読み書きする.「赤魚」は当て字くさい.鯛になぞらえて赤魚鯛とも書き,アコウダイと読む.キンメを金目鯛,キンメダイと呼ぶのと一緒だ.
 このアコウダイは漁獲量が減って今では超高級魚である.これの代替として粕漬にしたり,切り身で売られているのは,アラスカメヌケタイセイヨウアカウオだとのことである.いずれもあまり体色は赤くなく,ピンク色だ.
 これらの他にも色がかなり赤い魚があって,総称が赤魚だが,スーパーで見かけることはない.大き目の鮮魚店で目にすることはあるが,タイセイヨウアカウオなどの赤魚とは差別化するためか,和名あるいは通称で販売されている.
 昔と魚種は変わってしまったが,赤魚の粕漬は食べ応えがあって庶民の食卓の友である.これを一尾,二合の飯に混ぜれば,ミツカン「鶏釜めし」のチープ感を吹き飛ばせる.ま,もうこの釜飯の素は買わないけどね.

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