外食放浪記

藤沢近辺であれを食いこれを食べ.自炊のことや思い出話もむりやりここに.

2021年7月 7日 (水)

素麺に似て非なるもの

 まいどなニュース《「そうめんはもう茹でないでください!!」女将の戦後体験から生まれた調理法に「目から鱗です」》[掲載日 2021年7月6日] に,伝統的な素麺の茹で方に異を唱える人が紹介されている.
 下の引用のうち,上の《 》が,その方法,下の《 》が考案者の主張である. 
 
◎鍋で沸騰させたたっぷりのお湯にパラパラッとそうめんを入れて菜箸でほぐし、再沸騰したら蓋をして火を止める。
◎5分後に(10分後でも変わらないのだそう)そうめんをザルにあけ、流水と氷水でしっかりと冷やしながらもみ洗いをして、そうめんのぬめりを取る。
──そうめん動画は200万回以上も再生され大反響ですね。
 再生回数が伸びているのは視聴者の皆さんが「本物」を分かってくれているからだと思います。良いものを良いと思って周りに勧めてくれているからだと。「本物」を理解して視聴されている皆さんがすごいんです。いつもありがとうございます。》(文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 早速試してみた.
 使った素麺は,コンビニでもスーパーでも,どこでも手に入る素麺界のスタンダード「揖保乃糸」である.
 生憎,食材のストッカーに揖保乃糸がないというおかたは,小豆島でも長崎五島でも,各地のうまい素麺でお試しあれ.
 奈良の三輪素麺はお勧めしない.忌避していただきたい.ここの生産者には,五島から仕入れた素麺に「三輪素麺」のラベルを貼って偽装し,五島の製品に利益を上乗せして贈答用高級品として販売してきた黒歴史がある.三輪素麺こそ,日本の食品偽装史における暗黒金字塔だからである.
 
 さて,実食の感想だ.
 考案者は《戦後の苦しい時代を乗り越えてきた私》と仰っておられるので,詐称でなければ戦前のお生まれということになる.
 しかし動画を拝見した限りでは,私 (七十一歳の団塊世代で,物心がついたころには既に日本の経済成長が始まっていた;戦後の苦しい時代を乗り越えてきたのは,私たち団塊世代の親たちであり,そのほとんどは既に世を去った) と同世代の,七十代のように見受けられる.
 とても私よりも一世代以上歳上の,八十代や九十代の女性とは思われぬ若さである.
 そこにまず私は驚いた.そして,彼女がその若さを保っているのには,さぞかし日々の努力を惜しまぬ生き方があるのだろうと感服した.
 で,彼女が戦後の苦しい時代に考案した素麺の「余熱調理法」で作った揖保乃糸はどうなったか.
 この「余熱調理法」は,料理嫌いで頭が悪くてズボラなのに料理の失敗はしたくない性格の悪い皆さんに,ぜひともお勧めしたいと思う.
 なんとか素麺といえばいえるものができることは間違いないからである.
 素麺とうどんの食感の違いなんてどうでもよい,《「本物」を理解して視聴されている皆さん》ではなく,「偽物」で充分だという皆さんは「余熱調理法」で素麺を作っていただきたい.私はいやだが.

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2021年6月27日 (日)

焼きネギ味噌 (一)

 豆腐を油で揚げた油揚げが,豆腐よりも日持ちしないのは,多孔質だからである.
 油で揚げると豆腐の内部から水が蒸気となって放出され,その水の抜け出したところが泡状の孔 (あな) となって残る.これを膨化といい,スポンジ状になる.
 実際の製法は全国豆腐連合会のサイトのコンテンツ《豆腐加工食品詳細》に紹介されている.
 多孔質になると,表面積が著しく増える.その結果,油揚げに含まれている揚げ油の酸化速度が非常に大きくなる.
 また表面積が大きいと細菌の繁殖も速くなる.
 圧搾脱水して薄くカットした豆腐 (油揚げの材料) を油で揚げている最中は,表面は高温になるが,豆腐の内部は沸騰水程度の温度であるため,耐熱性菌が残存してしまう.
 また,スーパー等の店頭で油揚げが置かれている場所はあまり温度が低くないので,菌の繁殖が進行している上に,照明光 (油脂の酸化を促進する) に晒されているので酸化も進んでいる.
 そのため午後遅くになると,消費期限の迫った油揚げが値引きされて販売されるのだが,その日の夜に食べるというのでなければ,これは避けた方がよい.
 このような少々劣化が始まった値引き品を買って,すぐ帰宅して食べる場合に一番よい調理方法は,煮ることである.
 まず油揚げに熱湯をかけて,いわゆる「油抜き」をしたあと,汁の具にしてもいいし,稲荷寿司のような味付けに煮て,飯のおかずにしたり,熱いうどんに載せて食べるのが私の好物だ.
 それはそうなのだが,値引き品の油揚げを焼いて食べるにはどうしたらいいか,諸兄は御存知か.
 
 藤沢駅北口のスーパー「サミットストア」の棚に値引き販売の「栃尾の油揚げ」(あぶらげ) があった.消費期限はあと二日.
 安かったので買ったが,この越後長岡名物の油揚げは米の飯のおかずにしにくい.
 レシピサイトを覗いてみても,この油揚げは焼いて酒の肴にするしかないと思われる.
 他人のレシピで多いのは,中に切り込みを入れて納豆やネギ味噌を詰め込むというやつ.
 しかし,栃尾揚げは普通の油揚げとは異なり,元々が袋状にはならないものだから,何のために中に納豆なんぞを詰めるのか,その理由がわからない.普通の油揚げを巾着にする料理方法に発想が引っ張られているだけだ.わざわざそんなことをせずに,焼いた栃尾揚げと,小鉢の納豆を一緒に口に入れて食べれば同じことだからである.
 納豆だけでなくネギ味噌も,栃尾揚げの中に詰め込む理由がない.面倒なだけである.
 だが私のやり方は違う.それを以下に紹介する.
 
 賞味期限が迫った栃尾揚げを,ポリ袋のパッケージに入ったまま,パッケージの一部をほんの少し開封し,電子レンジで数分加熱する.
 加熱時間の目安は,パッケージの中に水蒸気が満ちて外にシューッと出てくるまで.
 これを「達温100℃」といい,繁殖しつつあった耐熱性菌は死んでしまう.菌の一部は耐熱性の高い芽胞を作って生き延びるが,加熱後はすぐ食べてしまうので,問題なし.
 この加熱処理は色々と応用が広く,冷蔵庫に入れてある常備菜を一日に一度「達温100℃」処理することで,かなり日持ちをよくすることができる.ただし,ジャガイモのように煮崩れてしまうものが入っているおかずはだめ.しかし牛肉とタマネギだけでカレーを作り,これをポリプロピレンやガラス製の耐熱保存容器に入れ,毎日加熱して「達温100℃」を繰り返すせば,長期保存もできるし風味も増すので,電子レンジの活用方法として優れている.
 
 さて「達温100℃」にした栃尾揚げはすっかりフニャフニャになっているが,これをオーブントースターで焼く.
 そのトースター用のトレーに載せて,上面だけを焼く.そのままトースターに入れて上面下面を同時に焼くと,油が垂れてトースターの中を汚してしまうので,トレーがなければアルミホイルを皿代わりにするとよい.
 焼いている間に,ネギ味噌を作る.
 深谷ネギのような普通の太ネギをみじん切りにする.白いところだけでなく緑色がかった部分も使える.
 栃尾揚げ一枚に対して,ネギは白いところを一本分くらいかと思うが,使う量のことは深く考えず,ネギ味噌は御飯の菜になるのだし,ネギ一本をみじん切りにして目分量でたくさん作ってしまえばいい.
 使う味噌の量は,常備している味噌の種類によって変わるから,これは各自の好みだ.
 私は小鉢いっぱいのみじん切りネギに対して,味噌をカレースプーンに一杯くらい使う.味噌は少ないかと思えるくらいでちょうどいい.減塩タイプがおすすめ.
 次に,器に入れたネギと味噌に,水または湯を加えて軟らかく練る.
 ネギ味噌は,他人のレシピ通りに作らず,初めての人は試行錯誤で自分が旨いと思う作り方を覚えるとよい.
 
 ネギ味噌の準備ができてトースターを覗くと,フニャフニャだった栃尾揚げの表面がカリッとして,いかにも旨そうになっているだろう.
 そうしたら,上下をひっくり返して,下面も焼く.
 下面も焼けたら,その上にネギ味噌をたっぷり塗り,再びトースターに入れて焼く.
 やがてネギ味噌の焼けるいい匂いがしてくるから,そうしたら取り出して四つに切って皿に盛り付ける.
 
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 焼いたネギ味噌は,しみじみと旨いものだ.もうとうに亡くなった私の父親の好物で,私は小学生の時に,父にネギ味噌の作り方を教えてもらった.以来,六十年の間,私はネギ味噌を作っては食べてきた.
 私の父親は,越後の長岡から東へ山深くに入ったところにあった中蒲原郡村松町 (合併して現在は五泉市) の生まれ育ちで,隣の長岡の栃尾地域に旨い油揚げがあると小学生の私に語った.
 当時は,油揚げは日持ちしないので,栃尾揚げは長岡に行かないと食べることができなかったのだが,昭和の後半に食品のチルド流通が発達したおかげで,首都圏のスーパー店頭に置かれるようになった.そしてすぐに居酒屋の定番メニューにもなった.
 熱い炊きたての飯にネギ味噌を載せて食うのも旨いが,握り飯や油揚げに塗って焼くのは格別だ.栃尾揚げは,ネギ味噌を塗って焼くのが一番美味だと私は思う.
 
 ところで,越後長岡のローカルな食べ物だった栃尾揚げが世間の人に知られる前に,普通の油揚げとネギ味噌の取り合わせは,昔からあった.私は学生時代に自炊してよく食べたものだ.
(続く)

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2021年6月 9日 (水)

アサリの呼吸

 冷蔵庫の肉や魚がなくなりそうなので,買い物に出かけた.
 藤沢駅北口のダイエー藤沢店で野菜を購入.キュウリ,カットレタス,モヤシ (ブラックマッペ),ミョウガ,アスパラガス,etc..
 それから「さいか屋」デパートの地下に降りて,鮮魚を見て回ると,アサリが安かった.季節だなあ.
 料理素材としては,アサリは水煮缶詰が便利なので普段はそれで済ませるとして,しかし味噌汁は殻付きのものでないと有難味がない.
 一パックをカゴに放り込んだが,量は味噌汁なら三椀,酒蒸しなら一皿分はたっぷりある.
 あとは本マグロの中おち丼,塩鮭切り身,精肉店に回って牛肉の切り落としを買った.
 
 帰宅して最初にしたのはアサリをリラックスさせてやること.
 店頭で売られている状態のアサリは大抵の場合,発泡スチロールのトレイに盛ってラップ包装されている.
 つまり窒息状態なのである.
 アサリはエラ呼吸だが,このように海水の無い酸素不足の環境では,呼吸ができないので体内に蓄積してあるグリコーゲンを分解する方法で生きることがわかっている.
 従ってアサリを買ってきてそのままにしておくと,どんどんグリコーゲンが減って (遂には死んで) しまうので,すぐにラップを外して塩水に入れてやらねばいけないのである.一番やってはいけないことは,ラップ包装されている酸欠状態で冷蔵庫に放り込むことである.こんなことをするとアサリは簡単に死んでしまう.
 酸欠状態のアサリを回復させるために用意する塩水の濃度は,水一リットルに食塩三十グラムでよい.
 これがアサリの一時的な保存方法 (飼育にはまた別のことが必要) だが,同時に砂抜きの方法にもなっている.
 
 さて,ここで私はかねてより疑問に思っていることがある.ウェブからの引用で示そう.
 次の記述は,福田かずみさんというかたが,一流誌ESSEのウェブ版,ESSEonline《効率的なアサリの砂抜き。水を多く入れすぎないで》に書いている解説記事だ.
 福田かずみさんは,《冷蔵庫収納家。独自の冷蔵庫活用術を構築し、家庭の冷蔵庫から食料廃棄をなくす啓蒙活動にも積極的に取り組む。ブログ「美人冷蔵庫LIFE」を更新中》だそうである.美人である (画像) ことに全く異論はないが,「美しい冷蔵庫LIFE」ではなく自分から「美人冷蔵庫LIFE」と言ってしまうのは如何なものかと批判する人がいるかも知れない.しかしかずみさんは美人だからよろしい.美人は無敵だ.
 
海水の塩分濃度は、約3%。
 水 500mlに対して塩大さじ1で、ちょうど3%になります。
 次に、砂抜きをするときの容器と塩水の量です。
 アサリは、水に深く浸かっていると酸欠になってしまいます。スーパーで売っているときも、パックの中には水が入っていないですね。
 砂抜きをするときの塩水の量は、アサリがやっと浸かるくらいが理想です。容器はというと、アサリが重ならないように、ボウルではなく平らなトレーがおすすめです。》

 アサリは水に深く浸かっていると酸欠になる (つまり溺れる) とかずみさんは言う.パックに包装されている時に水が入っていないのは,水があると酸欠になるからだというのだが,本当か.
 Wikipedia【アサリ】の記述を読んでみよう.次のように書かれている.
 
日本、朝鮮半島、台湾、フィリピンまで広く分布する。地中海(アドリア海とティレニア海)、フランス(ブルターニュ地方)、ハワイ諸島、北アメリカの太平洋岸に移入されている。汽水状態を好み、成貝は海岸の潮間帯から干潮線下10mほどまでの、浅くて塩分の薄い砂あるいは砂泥底に分布する》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 満潮時の海面と干潮時の海面のあいだの範囲を潮間帯というのだが,潮間帯で,しかも遠浅で海底が砂質または砂泥質のところがアサリの潮干狩りに適した砂浜である.
 しかし,実はアサリは,干潮線下10m (干潮時の海面より10mも深いところ) にも生息している.すなわち,福田かずみさんの説 (⇒ 海面下ではアサリは酸欠で溺死する) に反して,常時海面下の海底でもアサリは生きているのである.
 では,なぜアサリは深い海底でも酸欠にならないか.
 普通の小学生でも「貝はエラ呼吸だからです」と答えるだろう.
 むしろ頭の良い小学生 (低学年) には「干潮のとき,アサリはエラ呼吸なのに,海水のない砂浜でも酸欠にならないのはなぜですか?」と質問するのが適当だろう.きっと海の生き物について興味を持ってお勉強してくれるに違いない.
 だが福田かずみさんは,海の深いところを泳いでいる魚は,時々は海面に出てきて息継ぎをしないと酸欠になってしまうと,小学校の頃に思い込んだのだ.イルカみたいに.
 そしてその後のかずみさんは,魚類とか爬虫類とか両生類とか私たちの身の回りの生き物の体の仕組みがどうなっているか,本を読むことなく,授業中は教科書のページの隅に落書きして過ごしてきたのだろう.オタマジャクシがカエルの子だなんて聞いたら,幼い子の純真な眼差しをして驚くに違いない.
 福田かずみさんは,魚や貝の体がどうなっているかについて全く関心がないはずだ.塩鮭は,切り身がヒラヒラと海を泳いでいると思っているだろう.
 冷蔵庫に入っている色んな食材は,野菜でも魚介でも元は生き物だ.生き物について勉強しようとしない人が,栄養士を対象にして冷蔵庫の食品ロスを減らすにはどうしたらいいかを講演して ギャラを稼いで いるのだ.日本の未来は明るい.よかったよかった.
 さて,アサリは肺呼吸していると思い込んでいるのは,福田かずみさんだけではない.ウェブを「アサリ+砂抜き+ひたひた」で検索すると,「アサリは肺呼吸」派の人々がワラワラと出てくる.
 みんな小学校で,貝類はエラ呼吸をすると学習したはずなのに,どうしてこんな状態なのか.それが私が以前から持っている疑問なのである.
 
 三越伊勢丹グループが運営する食のメディア“Foodie”には,《失敗しないあさりの砂抜き法はこれ!【鮮魚店直伝】簡単レシピ付き》が掲載されているが,そこから一部引用してみよう.三越伊勢丹といえば一流デパートだ.そこの社員は優秀に違いない.アサリが肺呼吸だなんて言うはずがない.
 
A.「水に深く浸かっていると、あさりが酸欠になり死んでしまう場合があります。頭が少し出るくらいのひたひたの水分量にすれば、あさりが殻を開け閉めする時に塩水が適度に混ざり酸欠になるのを防いでくれます」
 
 だがしかし,砂浜にいるアサリは,満潮時には酸欠になって死んでしまうことがあると三越伊勢丹デパートは主張しておる.
 全くどいつもこいつも,冷蔵庫評論家も一流デパートも,満潮時にアサリが酸欠で死ぬのを見たことがあるのか,正直に言ってみるがいい.
 実はアサリの砂抜きの際に,塩水をヒタヒタ程度にするのは,それでも砂抜きができるからである.
 つまりそれ以上に多く塩水を作るのは無駄だから,しないのだ.日々の暮らしの中で節約が大切だった時代からの生活の知恵なのである.
 
 料理の世界は嘘がまかり通っている.聞きかじったことを,試しもしないでブログに書いたりする人の何と多いことか.
 自分が思いついた嘘を自分で信じ込んで,ウェブに記事を書くのは馬鹿だ.
 デパートで活アサリを買ってきて,これを長生きさせるにはどうしたらいいか,実験してみよう.
 アサリをバットに拡げてヒタヒタの塩水に浸しておくと,水中の溶存酸素は次第に減少し,やがてアサリは酸欠で死ぬ.
 その逆に,水槽にたっぷりの塩水 (海水程度の塩分濃度) を入れて飼育すれば,塩水ヒタヒタ状態よりもずっと長生きする.決して溺れ死にはしない.これは,やってみればすぐわかることだ.
 さあ,冷蔵庫評論家や一流デパートがどう言おうと,アサリが肺呼吸ではないことをその目で確かめてみようではないか.
 もしも貝が肺呼吸で,海水中では酸欠になるのなら,養殖のホタテもカキもとっくの昔に死に絶えているぞ.
 
 ちなみに,店頭で売られているアサリは,トレーに入れたまま塩水のない状態で包装されているが,この状態ではアサリは呼吸ができないため,既に述べたように体内のグリコーゲンを分解する方法でエネルギーを得て生きている.この時に,グリコーゲンの代謝でコハク酸が生成する.コハク酸は旨味成分の一つなので,数時間程度であれば,塩水のない環境で酸欠状態にすると旨味が増すということはいえる.ただし,ストレスを受けたアサリの食味は落ちると思われるので,私は食材をこのように不自然なやり方で扱うことはお勧めしない.
 
[追記]
 上の記事を掲載した日の夜,NHK《ガッテン》が実にタイムリーに《まさか!?育てて最強「アサリ」新調理術》を放送した.
 この放送の中で,アサリの大産地である熊本県から,どのようにして東京の市場へアサリが輸送されるかが紹介された.
 熊本県の水深数十センチくらいの浅瀬で漁獲されたアサリは,メッシュコンテナと呼ばれる樹脂製の箱に入れられ,海水に浸った状態ではなくトラックに積まれて輸送される.
 この状態ではアサリは呼吸ができず,グリコーゲンを消費しながら何とか生きているが,三重県あたりで非常に弱ってしまう.(放送では「ヘロヘロ」と表現)
 そこでアサリは,メッシュコンテナに入れられた状態のまま,三重県下に設置されている輸送中継施設の,海水を満たした生け簀に沈められる.
 そしてその生け簀で二十四時間,静置されるとアサリは鮮度が回復する.
 そしてまたトラックに積まれて,大消費地である東京へと運ばれていくという.番組の公式サイトから下に解説を引用する.
 
アサリは、生きたまま家まで届くちょっと珍しい食材。鮮度が命なので、とにかく生かして、消費者まで届けなければならないんです。だから、スーパーで買ってきたアサリをよ~く見てみたら、どれも心臓がバックバク!では、いったいどうやって生きたまま届けられるのか。その要となるのが、いわゆる“アサリの保養所”。遠く離れた産地から、中央の市場やスーパーなどへ届けられる前に立ち寄る“中継点”で、アサリの活力を回復させる施設です。着いたときは、殻を閉じる力すら失っていたヘロヘロのアサリを温度や水質が管理された海水に、およそ1日浸してあげます。すると、すっかりリフレッシュ!殻をピッタリ閉じた元気なアサリに戻ることができるんです。
 
 生き物について小学生以下の知識しかない福田かずみさんは《ガッテン》を観ただろうか.
 貝類はエラ呼吸をするから,水がないところでは呼吸ができない.
 アサリは,海水中の溶存酸素をエラから取り入れている.だから,海水が少ないと弱ってしまう.かずみさんは《アサリは、水に深く浸かっていると酸欠になってしまいます》と書いているが,それは全く正反対の大間違いなのである.
 弱ったアサリを生け簀の海水に沈めることで,酸欠で瀕死寸前の状態から回復させることができるのを,かずみさんが理解してくれるとよいのだが.

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2021年6月 7日 (月)

私はパスタを茹でるのに塩を使わない /工事中

 AllAbout《塩を入れないでパスタを茹でるとどうなるの? 意外と知らない、茹で汁に「塩を入れる」理由》[掲載日 2021年6月6日 12:35] に土屋敦というかたが,いいことを書いている.
 
ネットで調べていると、塩を入れるのは沸点を上げるため、とか、塩なしの水で茹でるとパスタがくたくたになって食べられたものではない、とか、いろいろ書かれています。料理の世界は今も迷信に満ちていますので、自分でいろいろ試して、確かめてみるとよいでしょう。
 
 ほんとにそうだ.
 私は高齢になってからというもの,血圧がややもすると130を越えたりするので,パスタを茹でるのに塩を入れることをやめた.
 私はうどんが大好きだが,茹でる時はたっぷりの水を使い,茹で上がった麺も水でよく洗って充分に塩気を抜いてから食べる.
 乾麺の蕎麦で,最近増えている低品質の製品は原材料表示に「小麦粉,塩」あるいは酷いのになると「小麦タンパク,塩」と書かれているものが非常に多い.
 これは,蕎麦の製麺技術が低いので,それをカバーするために,うどんの製麺法を用いているのである.
 小麦

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2021年6月 5日 (土)

じり焼の謎

 テレビの料理番組を観ていると,希に乾物のサクラエビを使った料理が紹介されることがある.
 サクラエビは日本の数ヶ所で生息が確認されているが,漁業として行われているのは駿河湾のサクラエビ漁で,その歴史は古くはなく,明治二十七年に始まったとされている.
 静岡県外には,水揚げされた浜で天日乾燥した乾物が流通するが,駿河湾に面したあちこちでは乾物に加工する以外の食べ方も行われる.中でも,静岡県の郷土料理といってもいいのは生のサクラエビのかき揚げで,これは農水省の「農産漁村の郷土料理百選」に入っている.
 私が幼少の砌は,乾物のサクラエビはそれほど高級な食材ではなく,玉ねぎと乾物のサクラエビのかき揚げは庶民的な惣菜であった.
 それがこのところ不漁が続き,乾物のサクラエビは高級食材の仲間入りをしている状況である.
 同等のものが台湾からも輸入されているが,駿河湾産は台湾産の二倍近い店頭価格だ.
 
 さて話代わって,私の郷里の群馬県には,家庭で作る「じり焼」という食い物がある.超シンプルな「お好み焼き」みたいなもので,小麦粉に少々の具材を混ぜ込んでフライパンで焼いたものだ.
 この系統の食い物は,近畿地方の「一銭洋食」が有名だ.Wikipediaにも項目が立てられていて,Wikipedia【一銭洋食】に次のように解説されている.
 
一銭洋食(いっせんようしょく)は、水に溶いた小麦粉にネギなど乗せて焼いた鉄板焼き料理。「洋食焼き」、「壱銭焼き」、「べた焼き」などとも呼ばれる。
 大正時代の近畿地方の駄菓子屋では、水で溶いた小麦粉に刻みネギやわずかな肉片などを乗せて焼き、ウスターソースを塗ったものが「洋食」と銘打って売られていた。当時は小麦粉やソース自体がエキゾチックな食材と見なされており、お好み焼きのルーツのひとつとされる料理である。
 東京のどんどん焼き(お好み焼き)を起源とする説もある。神戸では同種の料理を「肉天」と呼び、洋食という言葉は使用されない。
 洋食焼きは当時1枚1銭で売られていた為に「一銭洋食」と呼ばれるようになった。 具材はねぎ、千切りキャベツ、ひき肉、すじ肉、こんにゃく、かまぼこ、もやし、魚粉、豆類、天かすなど多岐にわたり、店や時代によって様々である。
 洋食焼きは戦後も「拾円焼き」「五〇円焼き」などと銘打って店舗の軒下などで作られてきた。岸和田市のかしみん焼きや高砂市のにくてんのように、現在も一銭洋食系統の粉物料理が作られ続けている地域もある。懐古的に商品化された京都市の壹錢洋食や、ねぎ焼、キャベツ焼きのような例もある。
 また名称は「お好み焼き」に変えたものの、戦前と同じ様式で作り続けられている地域も少なくない。広島では戦後、洋食焼きをベースに独自の地域的発展を遂げ、広島風お好み焼きが誕生した。》
 
 上の記述にあるように,「一銭洋食」は駄菓子屋などで子供相手に売られていた食べ物であり,家庭料理 (というほどのものではないが) ではない.
 今でこそ家電のホットプレートが普及しているが,昔は鉄板で焼く料理は外食に限られていたからである.まあ外食といっても見栄えの良い店舗ではなく,駄菓子屋とか縁日の屋台が主だったのであるが,それがいつしか具材に肉や魚介を使うようになり,高級化して「お好み焼」になった.
 東京の「もんじゃ焼」も同じで,今でこそ月島あたりの名物料理になってしまっているが,ありゃあ昔は駄菓子屋の店先に置かれた小さな鉄板で子供たちが作って食ったものが,今は大人の食い物に昇格したもんだと年寄りは言っている.
 群馬の「じり焼」も同じで,腹を減らした子供が,勝手にフライパンで焼いて食ったものだ.
 さて,ここでタイトルに「謎」と書いたのは,同じ名称でちょっと様子の異なるものが大分県にもあるからだ.
 これは農水省のサイトのコンテンツ《うちの郷土料理》に《大分県 じり焼き (じりやき)》として紹介されている.大分県は豊後大野市という地方に伝わるものだそうだ.このコンテンツにダウンロード・フリーの画像があるので,下に示す.
 
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 掲載されている解説には《地粉を水で溶いたものをクレープのように薄く焼いて、細かく砕いた黒砂糖やかぼちゃのあんを巻いて食べる》とあり,「お好み焼」ではなく,素朴な甘い菓子に近いもののようだ.
 この記事の元になったのは,大分県が作成した《次代に残したい大分の郷土料理》に掲載されている《じり焼 (豊後大野市)》である.
 大分県はこうして県の公式サイトにレシピを記しており,他のウェブコンテンツと参照比較しても内容に間違いはないようである.
 しかし私の郷里の群馬県は,《次世代へ伝えたい ぐんまの郷土料理・伝統料理》の中で
 
群馬県の特産品である小麦粉を使って手軽に作ることができる「やきもち」は、群馬の粉食文化を代表する郷土食です。小麦粉を使い、丸く焼き上げるほかには特別な決まりはなく、地域や家庭によって生地や具、作り方や呼び方も少しずつ違い、県内各地でいろいろな味の「やきもち」があります。地域によって「おやき」や「じり焼き」などと呼ぶこともあります。
 
と述べており,「じり焼」は「やきもち」の別称であるとしている.
 群馬県の公式サイトにレシピが書かれていないので,「じり焼」がどのようなものかが不明である.(しかも掲載されている写真は明らかに「じり焼」とは別物である)
 それなのに《小麦粉を使い、丸く焼き上げるほかには特別なきまりはな》い,と書かれている.作り方に決まりがないようなものが,すなわちレシピのない食べ物が,どうして《群馬の粉食文化を代表する郷土食》になり得るのか.小麦粉を材料にして丸く焼けば「じり焼」であるなら,ホットケーキもドラ焼も,「一銭洋食」も「お好み焼」もすべて「じり焼」だということになる.そんなわけがあるもんか.少しは考えてものを言うがよい.
 大分県が「じり焼」の典型的レシピを示して,これが「じり焼」だとしているのに比較すると,我が郷土,群馬県という地方 (の人間) のいい加減さが際立っている.
 こんな有様だから,テレビ番組《踊る!さんま御殿!!》や《秘密のケンミンshow》で中山秀征 (群馬県出身) が「群馬県人はホットケーキに砂糖醤油をつけて食べる」なんてことを言い始めるのである.(中山秀征は子供の頃「じり焼」をホットケーキと呼んでいたらしい w)
 そこで群馬県の「じり焼」について書かれたレシピを探してみた.
 すると群馬県玉村町の公式サイトにそのレシピを発見した.
 それがこれ
 まずキャプションが次のように記述され,次にレシピが掲載されている.
 
群馬県南部は、古くから米麦二毛作と養蚕が盛んで、多様な粉もの食が生まれてきました。また、県内の他の地域と同様「かかあ天下と空っ風」と言われるように、上州独自の風土や気質が知られ、女性も男性と一緒に働き仕事を終えてから食事作りをすることから、簡単・時短で栄養もとれる「おっきりこみ」や、おやつとして「おやき」などが食されてきました。「じり焼き)」は、ご飯が少し足りないときに、小麦粉に野菜や桜海老などを具として混ぜ、お好み焼きのように焼き、ご飯の足しにしました。また、小麦粉の生地に少し余ったご飯も具として他の具材と一緒に混ぜ込み、子どものおやつなどにしました。
 
[じり焼き ]
材料
材 料 4個分
地粉(小麦粉)   200g
水         200ml
キャベツ      160g
長ネギ       140g
さくらえび     20g
かつお節      10g
紅しょうが     20g
油         小さじ2
しょうゆ(ソース) 小さじ4
① キャベツは細切りに、長ねぎは小口切りにする。
② 小麦粉と水を混ぜ、生地を作る。
③ ②の生地に具を加え混ぜる。
④ フライパンに薄く油をひき、③を流し入れて中火で焼く。焼き色がついたらひっくり
返し、ふたをして火が通るまで弱火で焼く。
⑤ 適当に切り分け、しょうゆ、またはソースをかける。
※ 具は玉ねぎやニラ、小女子やじゃこなど家庭にあるものを使い、残りご飯を混ぜ込む
こともあります
 
 およそのところは上のレシピでよいのだが,「キャベツ,かつお節,紅しょうが」を入れると具だくさんの「お好み焼」感が出てしまう.
 つまりクレープ状にはならず,ぼってりとした食感になってしまう.
 そうではなくて,群馬県で終戦後から昭和三十年代にかけて,腹を減らした子供たちがフライパンで焼いて食っていたプアな代用食は,小麦粉,長ネギの小口切り,サクラエビを焼いたものであった.(群馬の農家が農作業の間に食べる間食は「おやき」「やきもち」と言うが,これと「じり焼」を混同している人が多い.また最もよく知られている「おやき」は長野県の名物だが,それは群馬のものとは異なる)
 ここまできてようやく冒頭に振ったサクラエビの話を回収しよう.
 あくまで「昔は」の話であるが,群馬県の「じり焼」の具材は,長ネギの小口切りとサクラエビだったのである.
 それくらい,サクラエビは身近で安価な乾物だったのである.
 一つ付け加えると,昭和三十年代の群馬県では,庶民にとって鰹節は高級食材であった.味噌汁や蕎麦つゆなどの出汁を取るには専ら煮干しが用いられ,鰹節は正月の雑煮のすまし汁など,ハレの日の食材であった.
 
 その思い出のプアな代用食「じり焼」を再現してみた.
 調理に用いる熱源だが,プロパンガスはまだ普及していなかった時代である.
 小学校低学年の当時,私は「じり焼」を作る時はまず七輪に炭火を熾した.飯は,台所の「へっつい」で羽釜と薪で炊いたが,調理には七輪または灯油のコンロが用いられた.
 食パンを焼くにも七輪だ.灯油コンロでは石油臭いにおいがついてしまうからである.七輪なら遠赤外線効果でトーストされるわけで,あれはうまかった.思い出は最上の調味料である.
 閑話休題.下がその再現「じり焼」である.
 
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 小麦粉は市販の「お好み焼粉」で代用できる.玉村町のレシピに従うと,26センチのフライパンで三枚を焼ける.
 生地には下味を付けず,焼いた「じり焼」にはウスターソースをかけるのが昔風だが,なければ中濃ソースでよい.
 豊後の人がこの写真を見たら「これがじり焼?」と思うかも知れないが,これが上州の「じり焼」である.
 で,私が以前から不思議に思っているのは,九州と北関東という遠く離れた二つの地方で,全く異なる食べ物がなぜ「じり焼」という同じ名で呼ばれているのだろう,ということである.
 江戸時代からある郷土食では,殿様の国替えの結果,ある地方の食べ物が別の地方でも食べられるようになったという例はあるが,豊後の殿様が上州に転封されたことはないようだ.
 私はかねてよりそういう疑問を持っていたが,群馬県人である中山秀征の世代でも,もはや「じり焼」を食べたことがないことから考えると,群馬の「じり焼」は滅びたのだろう.だから私の疑問は無意味なものになった.大してうまい食い物ではないから,それもよかろうと今は思っている.
 

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2021年5月25日 (火)

カリフローレ始末

 藤沢駅北口商店街にあるダイエー藤沢店へ食料を調達しに行った.
 このスーパーは客がとても少なくて,新型コロナウイルスの感染症リスクが非常に低いので,私は好んでここで買い物をする.
 さて私はカリフラワーが好物なのだが,これは旬が晩春までで,時季が過ぎたせいかこのところ,店頭で大人の握りこぶしくらいのものが三百円近い値段で売られている.重量単価では,安い時の二倍くらいの価格だ.
 
 ところでダイエーでは,売れ残り野菜が「お得」であるとして叩き売られている.
 昨日はソフトボール大のカリフラワーがポリ袋に一個入って二百円だった.ただし花の部分が薄茶色に変色していて,見た目がよろしくない.
 とはいえ安いのには抵抗できなくて,カゴに放り込んだ.
 ついでに野菜売り場を物色すると,日本で開発されたスティック・カリフラワーの一種であるカリフローレが,一袋百七十八円で棚に置かれていた.あったのは一袋だけで,これも売れ残りと見えて変色している.
 だが実は私,カリフローレを食べたことがない.そこで安いやつを試しに食べてみようと思い,これもカゴに放り込んだ.
 
 帰宅してカリフラワーを茹でるために小房に分けている時に,太い茎の根元にスが入って空洞になっているのに気がついた.
 これはもう消費期限切れ品の鮮度だ.
 これに気が付かなかった私がバカなのではあるが,ダイエー藤沢店は平気でこういうことをやるので,気をつけなきゃいかんなーと反省した.
 がっかりした気を取り直して,鍋に湯を沸かし,小房に分けたカリフラワーを湯がいた.
 余談だが,昔の言葉で「不透明な食材が,茹でて半透明になる」ことを「水色になる」といった.テレビの料理番組なら江上トミ先生や土井勝先生たちの時代の話だ.この「水色」は,もちろんクレヨンなどの「水色」とは全く別の意味である.
 また乾麺の冷麦やうどんの袋の裏に「麺が水色になったら冷水にとり,よく洗う」なんてことが昔は書かれていたものだ.今の乾麺は茹で時間が七分とか八分とか指定されているので,「麺が水色になる」という言い方は廃れてしまったが.(茹で時間を書かないと消費者からクレームが来るとメーカーの人から聞いた)
 カリフラワーも乾麺のうどんと同じように「水色になる」ように茹でるが,乾麺とは異なって,沸騰している湯に投入し,再沸騰するとすぐに「水色になる」
 茹で時間はカリフラワーの量と湯の量 (鍋の大きさ) によって大きく変わり,普通は再沸騰してからおよそ一分乃至二分ほどであるが,茹で時間よりも目で見て「水色になる」を目安にするのが確実である.
「水色」以上に茹でると,腰の抜けた食感で著しく味が落ちるので,私は「水色になった」段階ですぐに鍋から引き上げることにしている.
 熱を通したカリフラワーを冷水で冷やすと水っぽくなるので,ザルに取って湯切り (テレビの料理番組ではこれを「岡上げ」といっている) し,団扇であおいで冷ますといい.
 
 さてカリフローレだ.
 これはどう見てもカリフラワーの仲間だ.フローレはフラワーだもの.
 そう簡単に考えて,カリフラワーと同様に茹でてみた.
 そのあとでネットで「カリフローレの食べ方」を検索して,驚いた.
 ウェブページ《カリフローレの食べ方!生でも食べれる?美味しくなる調理法はどれ?》の二つ目の画像には,市販カリフローレのパッケージに書かれている食べ方が示されている.この画像のカリフローレの製造販売者はトキタ種苗だという.トキタ種苗はカリフローレを開発した会社である.
 その食べ方は《加熱するなら一瞬で 生のままでも食べられますが、下ごしらえの加熱は湯通しするくらいで》である.
 しかも上記ウェブページの筆者 (自称料理研究家の「どん」さん) は「カリフローレは茹ですぎるとかたくなる性質がある」として,お勧めの調理法として生で食べるコールスローに☆を五つも付けている.
「しまった,カリフローレは茹でちゃいかんかったか!」と私は慌てた.
 そこでトキタ種苗の企業サイトを検索してレシピを閲覧してみた.すると,こんなこと (↓) が書いてあった.
 
《カリフローレの色とりどりサラダ
 採れたての野菜を美味しく食べよう!
 材料 (2人分)
  カリフローレ
  レタス
  ゴルゴ
  赤サラダからし菜
  他お好みの野菜
  お好みのドレッシング
 手順
 ①野菜を食べやすい大きさに切る、ちぎる。
 ②カリフローレは、熱湯で1分ほど茹で、冷水にとり水を切る。
 ③素材を盛り付けてお好みのドレッシングでいただく。》
 
 上の引用箇所中に文字を着色した部分だが,カリフローレを《熱湯で1分ほど茹で》るのでは,《加熱するなら一瞬で》とは正反対のやりかたである.一分ならカリフラワーとほぼ同じ加熱処理時間だ.
 トキタ種苗さんは何を考えているのか.
 そもそも「一瞬加熱する」というのは,数秒間加熱することを言う.常識的な言語感覚では「一分」は絶対に「一瞬」ではない.
 沢木耕太郎に『一瞬の夏』という名作があるが,料理は文学ではない.
 ポテトサラダにはキュウリを入れるのが定番だが,輪切りにしたキュウリをストレーナーに入れ,上から熱湯を一気にかけ流すことをする.これが「一瞬加熱する」だ.こうするとキュウリに大腸菌群が付着していても大きく減って,ポテトサラダが腐敗しにくくなるのは周知の通りである.
 で,通常の野菜は,茹でると軟らかくなる.茹ですぎるとクタクタになる.だが自称料理研究家の「どん」さんは,カリフローレは硬くなるというのだが本当だろうか.
 生で食べると,カリフラワーとおんなじで,たぶん青臭いしエグ味があって消化が悪いと私はにらんでいる.
 にらんでいるが,実験検証する気はない.
 結局,私はカリフローレをフツーに茹でて,フツーにマヨネーズで食べてみたのだが,「どん」さんが書いているように茹でても硬くなることはなく,茎は硬いというよりむしろパリッとした食感になり,もしかするとカリフラワーよりも旨いかも知れないと感じた.
 料理としては,下茹でしたカリフローレを,フライパンにオリーブ油を引いて焼き,グリーン・アスパラガスも同様に焼いて,上にサニーサイド・アップを載せたら朝飯にいいんじゃないか.
 
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2021年5月22日 (土)

ワラサの甘酢漬け

 デパ地下の鮮魚店 (藤沢駅北口「さいか屋」デパート地下) で,おかずの材料を見繕っていたら,時季外れだがワラサ (幼鰤) の切り身が安かった.
 照焼にしてしまうのが普段のことだが,ちょうど冷蔵庫にミョウガと青ジソがあるので,これを使って甘酢漬けにしてみようと思った.
 まず,ワラサ切り身二枚を,フライパンで焼く.下味は不要.
 樹脂加工のフライパンで弱火にすれば,油を引かずとも焦がさずに焼けるが,油を引くならオリーブ油がいいだろうと思う.
 タマネギ (中くらいの大きさ) を,縦に薄めにスライスする.
 その半分を保存容器に敷く.
 焼いたワラサの切り身を半分に切り,タマネギの上に載せる.
 さらに残りのタマネギと,ミョウガ (二本を薄くスライス) と青ジソ (十枚を横に細く切る) を載せる.
 ここにミツカンのカンタン酢をヒタヒタに注ぐ.調味料はこれだけ.
 冷蔵庫で一日放置して甘酢漬けにする.
 以上.
 
 下の写真は漬け上がったところ.甘酢のせいでタマネギから水が出る.
 香り付けのミョウガと青ジソは,青魚にとても相性がいい.
 
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 もちろん甘酢漬けの野菜もおいしいので,これも食べる.
 飯のおかずというよりも,これは酒肴だ.
 自分で拵えたものを自慢するようだが,旨い.
 ブリ (鰤) またはサケ (塩鮭でないもの) でも同じようにできるが,サワラ (鰆) やタラ (鱈) は,身がバサバサで向かないと思う.
 
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2021年5月20日 (木)

「だし」風の浅漬け

 山形県に「だし」という郷土料理がある.(Wikipedia【だし (郷土料理)】)
 農水省のコンテンツ《うちの郷土料理》には《主な伝承地域 村山地域、置賜地域》と書かれているが,かなり前から神奈川県のスーパーでも販売されているくらいだから,山形全県下で食べられているのではないかと思われる.
 で,この「だし」が,夏の暑さで食欲が大幅に減退しているときは,実にもうしみじみと旨いのだ.
 材料は,典型的にはキュウリ,ナス,ミョウガ,青ジソ (大葉) で,これらは欠かせないが,あとは何でも工夫しだいだという.
 特にミョウガと青ジソは,これぞ夏野菜の醍醐味だ.
 
「だし」は飯のおかずとしては最強の部類だが,酒肴としては,スプーンで食べることになるので,ちょっと食べにくい.
 そこで,テイストは「だし」と同じだが,箸で食べることができる浅漬けを作ってみた.
 
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 材料は,キュウリ三本,ナス 一本 (中くらいの大きさもの),ミョウガ三本,青ジソ十枚.
 キュウリは厚さニミリの輪切りにし,ナスは太さによってニミリ厚の扇または半月に切る.
 ミョウガは薄く斜めにスライスする.
 青ジソは,塩こんぶと同じような大きさに切る.
 以上のものをポリ袋に入れ,塩こんぶをカップ一杯加える.
 ポリ袋を揉んで材料をよく混ぜたら,冷蔵庫に入れて半日放置する.
 以上.
 
 私は上記の材料で作るが,好みでカンタン酢とかポン酢で酸味にしてもいいだろう.そうすれば冷蔵庫で数日は保存できると思う.
 ただし,この「だし」風の浅漬けは,見た目は黒っぽくてよくないので,せめてもの愛想でカニカマを入れれば,酒肴としてワンランク・アップのような気がする.

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2021年5月19日 (水)

手打ちきしめん

 TABIZINE《“きしめん離れ”は本当なのか?「えびすや」のきしめんは、そんな噂が信じがたいほど超美味【名古屋めし】》[掲載日 2021年5月18日 12:30] が,きしめんについて書いている.
 
平たくて薄いのにコシが力強いというのがきしめんの醍醐味ですが、それは手打ちだからこそ。機械打ちでは理想的なコシを生み出すのは難しい一方で、生産性向上のために製麺機できしめんを作る店がいつしか主流に。結果的に、本来の姿のきしめんを食せる場が激減したことも“きしめん離れ”の要因のひとつと考えられるのだとか。
 
 私のきしめん体験は,二十代の青年時代 (昭和五十年代) のある日,出張で静岡から関西方面に出張した時が最初だった.
 東海道新幹線のプラットホームにある立ち食いの きしめん屋が評判だったので,乗り換えの時の待ち時間を利用して食べてみたのだ.
 食べてどうかというと「ふーんこんなものか」と思ったのが正直なところであった.
 それから数年後,名古屋で開催された学会に参加するために名古屋駅で下車し,その日の昼飯のために街中のきしめん屋に入ってみた.
 そして「手打ちのきしめんは旨いっ」と思った.
 翌日は,ついでだから山本屋本店で味噌煮込みうどんも食べてみた.
 これも旨いことは旨いが,しかし私には,きしめんのほうが,うどんとして洗練されていて好ましく思われた.
 
 コロナ禍の最中,私たち老人は家に逼塞している.
 とてものことに,感染リスクを冒してまで,きしめんを食いに名古屋に出かけるわけにはいかない.
 あと数年経てば,新型コロナウイルスの変異株で危険なタイプは,季節性インフルエンザ (世界中でA型,B型が流行を繰り返し多数の死者を出している) のように,数種類に絞られるだろう.
 このようにして私たちは,今後は新型コロナウイルス感染症が常在することを前提にして生きて行くことになる.いわゆる「ウィズ・コロナ」の時代が始まるのだ.
 しかし毎年,その年に流行するタイプの新型コロナウイルスに対するワクチンを接種すれば,重症化して死ぬのはかなり抑制されるようになると思われる.
 そうなったら,死ぬ前にもう一度名古屋に出かけて,旨いきしめんを食ってみたいものだ.

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2021年4月14日 (水)

ダメなコンニャク

 奈良県吉野郡に株式会社オーカワという食品会社がある.奈良県吉野郡にある資本金二千五百万円の会社であるが,日本の食品産業の大部分は中小企業なのであるから,特に小さいという規模でもない.
 先日,ダイエー藤沢店 (藤沢駅北口通り) を買いにでかけたとき,豆腐とか納豆のような大豆製品の隣に,コンニャク関係の商品が置かれていた.その隣が水産練り製品で,さらにその隣に生麺などの棚がある.
 で,大豆製品や練り製品に比べるとコンニャクというジャンルは商品数が少なくて,板コンニャクとしらたき (白滝) がメインだが,その中に申し訳程度の数の「つきこんにゃく」が並べられていた.
 この「つきこんにゃく」は上記の株式会社オーカワの製品だ.
 形状はちょうど,ところてん突きから突き出した心太と同じで,断面は正方形だ.一辺は五ミリくらい.
 これが包装されているビニール袋の表面には,次のように書かれている.

国産 こんにゃく粉100%使用
 便利な長さにカット済み
 簡単・便利
 つきこんにゃく
 
 本来は《国産こんにゃく粉 100%使用》と書くべきだが,《国産 こんにゃく粉100%使用》と書かれている.
 原材料表示には《こんにゃく粉 (国産)、海藻粉/水酸化カルシウム》と書いてあるから,《国産 こんにゃく粉100%使用》は間違いである.
 というツッコミはは少し意地悪かも知れない.食品業界のほとんどは中小企業で「食品の表示」に知識も関心もない会社が大部分だからである.
 それゆえ,そのことはいいとして,私にはこの商品の色が気に入らなかった.コンニャクとしては異様に黒いのである.
 
 買ってきたオーカワ製「つきこんにゃく」を,まず鍋で茹でてみた.これはコンニャク料理の下処理である.
 周知のように,「そのまま使えます」と書いてあるコンニャク類 (板コンニャク,しらたき,結びしらたき等) は,既に製造工程で熱湯処理してあるため,水酸化カルシウムと,その影響で発生するアミン類 (悪臭がするトリメチルアミン) は可及的に除去されている.刺身コンニャクも同様である.(トリメチルアミンの前駆物質は未だ不明である)
 逆に言うと「そのまま使えます」と書かれていないコンニャクは,そのまま料理には使えないのである.
 すなわち,長い時間かけて茹でる (アク抜きといった) か,あるいは酸 (酢やクエン酸など) でアミン臭を除く必要があるのだ.
 ちなみに昔はこれは常識だったが,この常識を知らぬ者がいる.例えば料理を一切したことのない独身男が,突然思い立って肉じゃがを作ろうとして,ジャガイモと肉だけにしておけばいいのに,前処理がされていないしらたきを入れて失敗したりするという.
「失敗」というのは,コンニャク製造時に使用した強いアルカリ性の水酸化カルシウムによって,肉や野菜などの食材が影響を受けて変質することを意味している.
 さてオーカワ製「つきこんにゃく」を茹でて下処理したら,茹で汁は汚い黒っぽい色になった.
 よく知られているように,工業的に製造される黒っぽい色のコンニャクは,ヒジキを粉末にしたもの (海藻粉) で着色してある.
 黒く着色することに何の意味があるのか,こういう無意味な加工はやめたらどうだと私は思うが,コンニャク業界は着色をやめようとしない.
 大昔のコンニャク (江戸時代) は生のコンニャク芋がコンニャクの原料であり,そのためコンニャク芋の皮が混入していたため,できたコンニャクは灰色をしていたのだが,現在のコンニャク製品は生のコンニャク芋ではなく夾雑物を除いたコンニャクの粉を原料にしているので,そのまま素直に作れば白いコンニャクが出来上がるにもかかわらず,多くのコンニャク製造者はわざわざ汚い色を着けているのである.
 一説には,明治時代には生コンニャク芋ではなくコンニャク粉がコンニャクの原料となり,大正時代にはきれいな白い板コンニャクが製造できるようになったのであるが,従来品との色の違いが消費者に不評だったのだそうだ.
 そこでコンニャク業界は,白いコンニャク粉にヒジキの粉末を加える方法を思いついた.
 そして,驚いたことに大正時代のヒジキ入りコンニャクがいまだに作られ続けているのだ.
 株式会社オーカワは,十年一日の如く無意味にコンニャクの着色をし続けているうちに,感覚が麻痺し,どんどん色を黒くしないと気が済まなくなったのではないか.しかしまあ,アク抜きの茹で汁が黒くなるまで海藻粉を入れてどうするんだと思う.明らかに入れすぎだ.オーカワという会社は,消費者が汚い茹で汁を見てどう思うかなんてことは眼中にないのだろう.開発マインドのない困った会社であるが,中小企業の経営者は,冒険をしたくないのだろう.
 
 以上が前フリ.本題は,この「つきこんにゃく」の長さである.
 パッケージには《便利な長さにカット済み》と書かれているが,長さが五ミリとか一センチなどの切れっ端がたくさん入っている.
 ここまで短いと,《便利な長さ》とは言えぬのではあるまいか.
 工場での製造工程がわからぬのであるが,どうしても破片が生じるのであれば,目の粗いストレーナを通すなりして,ゴミみたいな破片は取り除くべきだろう.
 たぶんこれを作っている従業員は,自分が作った製品がどんな低品質のものか目で見たこともないのだろう.
 もし品質に関心がある従業員なら,こんなものを消費者に買わせたら申し訳ないと思うはずである.
 少々怒りつつ,この文を書いた.
 

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