外食放浪記

藤沢近辺であれを食いこれを食べ.自炊のことや思い出話もむりやりここに.

2017年6月22日 (木)

RF1「海老カツレツと鶏そぼろご飯のお弁当」 (一)

 昨日の記事に,東京は中央線国分寺駅ホームにある立食い蕎麦屋で,鼻炎男の狼藉を目撃した話を書いた.今日の記事もその日のことである.

 その日,所用を済ませての帰路,東京駅で弁当を買って帰ることにした.
 先月にも同様のことがあった折は,《2017年5月26日 たいめいけんチキンライス弁当》に書いたように,大丸デパートの地下食品売場に出店している「洋食や三代目たいめいけん」でチキンライス弁当を購入したのだが,これが呆れるほどまずい弁当だったので,もう大丸では弁当を買わないことにしたのである.
 きちんとしたデパートでは,例えば「洋食や三代目たいめいけん」に単に場所を貸して,後は放置という商売はしない.各フロアで販売されている商品に関してデパートが顧客に対する品質 (この「品質」の意味するところは商品ジャンルによって異なるが,食品であれば味や衛生度やコスパなどである) 責任を果たすことになっている.
 しかるに「洋食や三代目たいめいけん」のチキンライス弁当は,コンビニ弁当より高くて,しかし味は更にまずかった.
 これは即ち,大丸東京店の弁当担当社員が無能であることに他ならない.無能というのは,自分の職責を果たさず「洋食や三代目たいめいけん」の阿漕な商売を放置しているからである.
 ま,消費者に対する「洋食や三代目たいめいけん」の不埒な態度については別件があるので,稿を改めてまた触れることにして,ここは東京駅で買った弁当のことに戻る.

 東京駅の改札内商業施設,地下一階の GRANSTA (グランスタ) は,改札内であるため,都民以外に近県の人々や旅行者にも馴染み深い.
 ここで私は菓子類は購入したことがあるが,現役時代の出張の際の駅弁は,駅構内一階の中央コンコースに面した「祭」でいつも買っていた.グランスタで販売されている弁当を物色するのは初めてだ.
 ウロウロとあちこちの店の弁当を見比べながら検討したところでは,先日の大丸の弁当がガッカリものだったので気のせいかどの店のも旨そうだったが,結局これが良さそうだと気に入ったのはRF1 (ロック・フィールドのブランド名) の店頭に並べられていた「海老カツレツと鶏そぼろご飯のお弁当」であった.
 何もわざわざ東京に出てきてRF1の弁当を買わんでも,と思われるかも知れない.自宅最寄りの藤沢駅北口,さいか屋デパート地下にもRF1の店舗はあり,そこであれこれの惣菜を買って帰れば,同じテイストの一食を調えることができると思われるからである.
 しかしそこはそれ,弁当には弁当の食べる楽しさというものがあるから,私はRF1の弁当でも一向に構わぬのである.

 さて私は《2017年5月26日 たいめいけんチキンライス弁当》に次のように書いた.

このブログで何度も書いたが,私は食品添加物を否定しない.使う必要がある時は使用すればよいという考えを持っている.だが「たいめいけんチキンライス弁当」は度を超している.
 一般論として,保存性を向上させることを目的として使われる添加物は食材の味を損ねるものが多い.上の「たいめいけんチキンライス弁当」がこれほどまずいのは,調味料(アミノ酸等),pH調製剤,酸味料の使い方が拙劣,あるいは使用量が多すぎるからだと考えていいのである.

 そこで比較のためにRF1の「海老カツレツと鶏そぼろご飯のお弁当」も,原材料表示を以下に転記してみよう.
 弁当に関しては,消費者庁《加工食品品質表示基準Q&A (弁当、惣菜関係)》に次のような記述がある.

問9
小売店の店内で弁当、惣菜を作って、容器包装に入れて販売する場合は、加工食品品質表示基準に基づく表示が必要なのですか。バックヤードや店舗と同一敷地内の施設で作って容器包装に入れている場合や、別の場所にあるセントラルキッチンから配送されたものを販売する場合はどうなりますか。

 答
1.加工食品品質表示基準に基づく表示は、容器に入れ、又は包装された加工食品に対して適用されますが、飲食料品を製造し、又は加工し、一般消費者に直接販売する場合は、表示の必要はありません。
2.したがって、 ①小売店の店内で弁当、惣菜を作って、容器包装に入れて販売する場合
②バックヤードや店舗と同一敷地内の施設で作って、容器包装に入れている場合
は、製造又は加工をした者が一般消費者に直接販売しており品質について説明できると考えられるので、表示の必要はありません。
3.しかしながら、別の場所にあるセントラルキッチンから配送されたものを販売する場合一般消費者に直接販売しているとはみなせないので、表示が必要となります。

 従って法的には,店舗のバックヤードで製造している「海老カツレツと鶏そぼろご飯のお弁当」には原材料を表示する義務はないのであるが,包装紙の一部に食品添加物だけ表示されていた.表示義務がなくとも消費者が知りたいことを書いておくのは,まことによい心掛けである.それは以下の通りであった.(ちなみに「たいめいけんチキンライス弁当」は上記「答」の3に該当する)

【食品添加物】・調味料 (アミノ酸等)・酸味料・着色料・ (ウコン、カラメル、カロチン)・水酸化Ca・pH調整剤・乳酸(Na)・トレハロース・糊料 (加工デンプン、増粘多糖類)

(続く)

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2017年5月28日 (日)

藤沢 彩り酒場

 過日,映画『美女と野獣』を観に行ったときに『メッセージ』の予告編が上映された.
 なんだか懐かしいタイプのSF映画のようだったので,公開されてから少し経ったが,一昨日辻堂のテラスモール湘南に出かけて,予備知識なしで鑑賞してみた.
 期待通りの秀作だと思ったが,ストーリーを深く理解するには原作を読んでおくのがよいらしい.そこで遅ればせながら『メッセージ』の原作を含む短編集『あなたの人生の物語』(ハヤカワ文庫SF) をアマゾンで注文したら,在庫切れで入荷時期未定になっていた.みんな考えることは同じで,原作を読もうとしているようだ.
 この映画は,粗筋を書いたりするとまだ観ていない人に先入観を与えてしまうのでそれは避けるが,人間の意志あるいは思考と,言語との主従関係もしくは支配関係とでもいったものを改めて考えさせる.原作の趣を映画がどれだけ伝えられているか,原作を早く読んでみたいものだ.

 SF映画の一ジャンルには違いないだろうが,最近は騒々しいアメコミヒーロー映画が全盛で,『メッセージ』のように思索的で,いかにもSFらしい作品は少ないような気がする.
 と思ったら,あの名作の続編『ブレードランナー 2049』がもうすぐ公開だというではないか.しかも前作の主演ハリソン・フォードが同じリック・デッカード役で出演する.
 さらに,これは観るべき作品かどうかわからないが,ファンタジー作品『キング・アーサー』も公開間近である.
 映画ファンはこの夏が楽しみだ.

 さて映画を観た後,藤沢駅に戻っていつものように昼酒.
 違う.『メッセージ』のストーリーに難解な部分があったので,酒を飲みながら静かに作品が意図したものの余韻に浸ろうとしたのである.
 店は蕎麦屋でもいいのだけれど,午後三時過ぎとか四時過ぎとか,そんな時間帯ならともかく,真昼間に酒だけ飲んで蕎麦を注文しないというのは少し憚られる.
 軽い蕎麦前ではなく腰を据えて飲むのなら,南口の大通りに店を構える磯丸水産が二十四時間営業だが,ここも昼飯時は客のほとんどが海鮮丼などで腹を満たすためのご来店であり,一人で昼酒する客は,藤沢店では (私以外には) いないようである.おいおい.

 だがしかし,そんな時に便利な昼酒専門店が藤沢駅の近くにいくつかあるのだ.
 彩り酒場はその一つ.

 藤沢駅の南北を結ぶ地下道から駿河銀行の地下へ行く途中に,居酒屋「村さ来」と回転鮨「昭和匠寿司」と立食蕎麦屋「新月」と「彩り酒場」があって,ここは知る人ぞ知るチープ感溢れる一角だ.
 ここの村さ来には私は入ったことがないので紹介できないのだが,新月は私の青年時代から営業している古い店だ.この蕎麦屋の蕎麦はツナギが多いために,うどんの親戚状態であるが,それが却って腹持ちがいいというわけで,ファンが多いと聞く.私もたまーに入るが,ジャンクフードってのは,KFCが代表各だが,時々無性に食べたくなる.あれだ.(笑)
 昭和匠寿司は,カウンターに置かれている無料のガリだけを肴にして酒を飲んでいる客がいたりする.これは私も一度やってみたいのだが,その勇気がない.

 彩り酒場はこの一角では新参で,最近ようやく地域に根付いたか,客が増えてきたようである.
 彩り酒場の経営方針は,酒肴を安くして酒で稼ぐということらしい.だから酒を何杯も飲むと,かなりの金額になる.せいぜい焼酎のロックを三杯と肴を二品くらいが財布にやさしい飲み方で,私のお勧めである.
 焼酎は黒霧島のロック一杯が三百六十円で,三杯飲めば千と八十円.
 肴二品は何がよろしいか.私のお勧めはハムカツ (二百八十円) とザーサイ (百五十円) である.五百円玉ワンコイン也.これで焼酎三杯は余裕で飲める.
 酒が千八十円,つまみが二品で四百三十円だから,結構腹が満たされてお勘定は千五百十円.これは安い.

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 ところでハムカツといえば,テレビ朝日『じゅん散歩』で高田純次が商店街を散歩していると,肉屋とか惣菜屋の店頭に旨そうな揚げたてのハムカツが置かれていることがある.
 その際に,無類のハムカツ好きである高田純次は大抵ハムカツを買い求め,店頭で立食いしながら,よく「ほんとはハムカツって言うけどソーセージなんだよねー」と言う.
 それはその通りで,高田純次や私のような団塊の世代が少年だった頃から存在する伝統的ハムカツはハムのカツではなかったのである.
 であるからして,Wikipedia【ハムカツ】の記述

ハムカツは切ったハムに小麦粉・卵・パン粉をつけて揚げたカツレツである。

は食肉加工品業者の言い分を丸写しにしたものであり,百科事典の記述として相応しくない.以下にその意味を記す.

 昔も今も正真正銘のハムとは「伝統製法で作られたボンレスハム」を指す.これに比較すると日本独自の食肉製品であるロースハムは,保水性の高い副原料と食品添加物入りの調味液を注射 (インジェクション) して重量を大幅に水増し (参考ウェブページ《肉より重くて安いハム?その正体のカギは“水” 》 ; この記事に書かれていることは概ね事実である) したものが多く,そのため安価な薄切りのロースハムはフライパンで焼くと半分くらいにチリチリと縮んでしまったりする.
 この重量水増し製法は,ロースハムよりさらに低品質であるプレスハムも同様であり,それどころか昭和三十年代のプレスハムには,豚屑肉だけでなく馬,ウサギやカンガルーなどの雑肉も原料に使われていた.
 それでも平均的国民の肉類摂取量が現在よりも極度に少なかった昭和中期には,プレスハムが庶民にとっての高級ハムだった.
 ところがプレスハムよりさらに低品質な食肉加工製品があって,粗挽きした豚屑肉,雑肉,脂肪などを練ってケーシングしたもので,製法上はソーセージであるが,昭和当時の日本人は偽装表示なんぞは屁でもなくて,これが堂々とハムと称して売られていた.
 それは平成の世にも生き残っていて,例えば通販で入手できる《昔なつかしい 赤ハム ハムカツ用に。ハムカツ用 赤ハムブロック 1本 2キログラム 》である.
 この商品説明に

豚肉の荒く挽いたミンチを使用し

と書かれているように,正真正銘のソーセージであるにもかかわらずハムと称している.
 商品名「赤ハム」というソーセージです,という言い訳は食品偽装であるが,食肉業界はそんなことは気にしないのである.
 ともあれ,高田純次が「ほんとはハムカツって言うけどソーセージなんだよねー」と言うように,ジャンクフードの一つ「ソーセージカツ」を「ハムカツ」と呼ぶことは,昔からの既成事実として,これからも生き続けるだろう.

「お飲み物は~?」
「とりあえず黒霧のロックとザーサイとハムカツね」
「はーい」

 ジャンクフードってのは,時々無性に食べたくなるものだ. もし貴兄が藤沢の彩り酒場に行くことがあったら,ザーサイとハムカツをどうぞ.

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2017年5月26日 (金)

たいめいけんチキンライス弁当

 所用で東京に出かけた.
 用事を済ませての帰路,昼過ぎだったので,東京駅の大丸に寄って弁当を買うことにした.大丸地下一階の弁当売場「弁当ストリート」が,この辺りの会社の女性社員や旅行者に人気だとテレビのバラエティ番組で紹介されていたので,一度見てみようと思ったからである.
 件の弁当売場は惣菜店のある一角に隣接 (大丸 B1F フロアガイド) していて,ネット検索すると「全長60mの通路にお弁当屋さんがひしめいている」とか書いているブログがあるが,私には意外に狭いなーという印象である.
 フロアガイドから店舗名を抽出すると以下の通り.

叙々苑,ミート矢澤,ブラッカウズ,大雲,洋食や三代目たいめいけん,たまひで からっ鳥,両国鳥幸,つきじ鈴富,ベーカリーPAUL,柿安牛めし,日本橋弁松総本店,なだ万,銀座天一,日本橋伊勢定,とんかつ まい泉,味の梅ばち,牛たん かねざき,タキモト,蝦夷前知床鮨,平島,セレクトスイーツ2,崎陽軒,築地 魚弁 味の浜藤,地雷也,神田明神下 みやび,浅草田甫 草津亭,神田志乃多寿司,築地 青木,銀座萌黄亭,米八,サンドイッチハウス メルヘン

 弁当ストリートをぶらぶら歩きながら,ショーケースの弁当サンプルをちら見したのだが,おお!と食欲をそそるようなものがない.この弁当ストリートの弁当は全体的に茶色っぽいなとの印象を受けた.こんなことなら東京駅の中で買えばよかったという後悔の念が湧いたと正直に書いておく.
 それで東京駅に行こうと思ったとたんに「洋食や三代目たいめいけん」のカウンターにいた販売員の娘さんに「この時間帯は,もうここにあるだけで終わりで~す (にこり)」と声をかけられた.
 正直に告白するが,女性から声をかけられるなんて定年後は絶えてなかったことなので,私は大いに感動して「たいめいけんチキンライス弁当」(税込 1,180円) を即決購入した.
 代金を払うと「今日の五時までのお召し上がりとなりま~す (にこり)」とのことであった.

 さて帰宅したのは午後二時過ぎだった.
 「たいめいけんチキンライス弁当」の箱を開けると,中に割箸と樹脂製のスプーンと小さなお手拭き (小袋包装) が入っていたのだが,それらはチキンライスや鶏唐揚の上に直接置かれていた.
 駅弁などでは,内容物の上に透明フィルムを置き,その上に箸とかお手拭きを載せるものだと思うが,「たいめいけんチキンライス弁当」では直置きであった.これってこういう仕様なのだろうか.透明フィルムの一枚くらい,大したコストではないと思うが.
 チキンライスの飯粒がいくつも貼りついた小袋入りのお手拭きは取り除いて捨てたが,ちょっと感じが悪い.いや違う.かなり感じが悪い.

[食レポ]
 チキンライスの量はかなり少ない.箱は大きいが内容量は少なめで,この弁当がターゲットしている購入客セグメントは「老人」「ダイエット中の女性」と考えられる.
 チキンライスは,まずい.食品添加物「グリシン」の味がする.グリーンピースが六粒載っている.具材は,小指の爪以下の大きさの鶏肉が三粒入っていた.それだけで他に具材は使用されていない.
 エビフライは悲しいくらいに細い.小さな樹脂カップにマヨネーズ状のものが入れられており,原材料表示に「タルタルソース」書いてあるのが,これらしい.しかしこれを食べて「タルタルソースだ」と言う人はいないと思う.食品添加物によると思われる異様な酸味がある.
 鶏唐揚はバサバサである.まずい.
 付け合わせにキャベツの酢漬けのようなものが入っていた.原材料表示に「コールスロー」と書いてあるものがこれらしいが,これを食べて「コールスローだ」と言う人は少数派ではなかろうか.食品添加物によると思われる異様な酸味がある.

 あとはもう省略するが,こりゃだめだ,というのが食べた感想である.
 それで,ネットで「たいめいけんチキンライス弁当」を検索してみた.
 すると,大丸のサイトではなく,「ごちクル」という宅配弁当やケータリングの情報サイトに「たいめいけんチキンライス弁当」が掲載されていた.製造者 (実際の製造工場) は不明.流通経路は異なるが,販売者は同じ「株式会社たいめいけん」と考えられる.

 で,このサイトに掲載されている「たいめいけんチキンライス弁当」の画像を見て驚いた.リンク切れになる可能性があるから,商品説明ページをブラウザに表示させて画面のコピーを取り,トリミングしたものを,証拠として下に掲載する.(画像を取得した日はこの記事を掲載したのと同じ日である)
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 この画像によると,チキンライスに缶詰のマッシュルームが入っているようであるが,私が大丸で購入したものにはマッシュルームは一切れも入っていなかったのである.大丸で売られているやつをチキンライスと呼ぶのはかなりの勇気が必要だと思う.チキンレースかよ.←自分で自分に座布団一枚.
 ただし,この「ごちクル」に掲載されている「たいめいけんチキンライス弁当」は税込 1,300円であり,大丸で売られているものは税込 1,180円である.

 結論として,「たいめいけんチキンライス弁当」の味のレベルは,コンビニ弁当以下だと思う.久しぶりにこれ程まずい弁当を食べたので,有名デパ地下の弁当なのに,こんなのが大手を振ってまかり通っているのだなあと,珍しいものを口にした私は少し感心した.こんなものを売るなんて,きっと大丸B1F のバイヤーは,この弁当を試食したことがないのだろう.

 もしかしたらこの弁当を買ってしまうかも知れない消費者のために,原材料表示を下に示す.

[原材料名]
チキンライス(国産米),鶏唐揚げ,えびフライ,えびグラタン(ナチュラルチーズ入り),ナポリタンスパゲッティ,コールスロー,フライドポテト,ミニトマト,タルタルソース,ピクルス,加工澱粉,トレハロース,調味料(アミノ酸等),増粘剤(増粘多糖類,加工澱粉),pH調製剤,乳化剤,セルロース,酸味料,着色料(カラメル,ウコン),乳酸Ca,リン酸塩(Na),香辛料抽出物,酸化防止剤(V.C,亜硫酸塩),イーストフード,V.C,発色剤(亜硝酸Na),保存料(亜硫酸塩)

 このブログで何度も書いたが,私は食品添加物を否定しない.使う必要がある時は使用すればよいという考えを持っている.だが「たいめいけんチキンライス弁当」は度を超している.
 一般論として,保存性を向上させることを目的として使われる添加物は食材の味を損ねるものが多い.上の「たいめいけんチキンライス弁当」がこれほどまずいのは,調味料(アミノ酸等)pH調製剤酸味料の使い方が拙劣,あるいは使用量が多すぎるからだと考えていいのである.
 それから,加工澱粉にも要注意.稿を改めて書きたいが,この添加物はロクなもんじゃないのである.食品添加物肯定派の私が言うのだから当ブログの読者は心して頂きたい.

「ごちクル」に掲載されている「東京 日本橋 三代目 たいめいけん」のコンテンツ《★こだわり》には次のような記述がある.

創業80余年、現在は三代目の茂手木浩司氏が調理場を仕切る「東京 日本橋 三代目 たいめいけん」。
その茂出木氏監修のお弁当(「ごちクル」では委託製造)は、「おいしい」「また食べたくなる」「特別な味はしないのに、後味までしみじみおいしい」と言っていただけます。

 そうですか,と言う他はないが,私なら「まずい」「もう食べたくない」「グリシンと酸味料の味がするので,後味までしみじみとまずい」と言いたい.
 ところがこの「たいめいけんチキンライス弁当」は,大丸「弁当ストリート」で売上トップテンに入る人気なのだという.(東京駅大丸の弁当年間ランキング!2016年に一番売れた弁当はコレだ!)
 みんな,この弁当が本当においしいと思ってるわけ?
 コンビニ弁当ならもっと安く同等の味のものが買えるのに,「たいめいけん」ブランドの威力なんだろう.これが悲しいかな一般消費者の味覚レベルなのだ.と,女性店員さんに声をかけられただけで「たいめいけんチキンライス弁当」を即決購入した私が言う.まことに年甲斐のないことで,済まぬ済まぬ.

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2017年4月20日 (木)

横浜中華街 山東

 会社員時代の同期の男から,横浜辺りで昼飯を食おう (酒を飲もうという意味) とのメールがあった.
 彼は東京が生活圏で,滅多に横浜まで来ることはない.横浜なら私に土地勘があるから店は私が選ぶことにし,ミシュランガイドの横浜・川崎・湘南版 (2015年) を探すと,安くてよい店として中華街の「山東」が掲載されていた.私には勝手知ったる横浜中華街であるが,「山東」に入るのは初めてなので,この店に決めて返信.

 石川町北口改札で待ち合わせ,西門から善隣門へ抜け,中華街大通りを東へ歩く.聘珍樓の手前の薬局の角を左折すると「山東一号店」(本店) がある.その向こうに「山東二号店」があり,二号店のほうが店構えは大きい.
 私たち二人のすぐ前を歩いていたグループ客が,ぞろぞろと一号店に入った.入口ドアから中を覘くと店はかなり狭く,グループ客で満杯になりそうだったので「二号店に行こう」と店の前を通り過ぎたら,ドアが開いて後ろから「だいじょぶよー」と声を掛けられた.グーループ客は二階に案内したから,一階でよければ客はいなくて空いていると言う.
 席に着くと店員さんがメニューを持ってきたが,そもそもの目的が酒だから,あれこれ料理を選ぶのは面倒くさい.
 それでメニューには記載がなかったが「ランチのコースはありますか」と訊いたら,二千円でできるとのこと.料理はそれに即決して,「あと,紹興酒をボトルでください」と注文した.時刻はちょうど午後一時で,「山東」では本格的な昼酒客は少ないらしく,店員さんの顔には少々驚いたような色が浮かんだ.
 そりゃそうだろうね.中華料理店は居酒屋じゃないのだから.
 でも,仕事に追われて老後の趣味を持てなかった団塊の爺たちが,今や定年で暇を持て余しているこれからの時代は,料理店においても昼酒がニッチからメジャーになりつつある.場合によっては朝酒のビジネス展開すらありうるとも言われている.誰が言っているかというと私だ.
 新しい日本の昼酒黎明期を目前に,私たち二人が,横浜中華街のミシュランガイド掲載店「山東」にとって黒船であるかも知れぬ.時代の夜明けを「山東」従業員の皆さんと共に寿ぎたい.

 さて前菜盛り合わせ (かなり盛りがよい) と瓶ビール一本でまずは乾杯し,それから直ちに紹興酒に移行する.
 ネットで下調べした情報では水餃子が「山東」のウリであるらしい.確かに,なかなかの美味であったし,他にも定番中華料理である海老のチリソースなども結構なお味であった.
 料理がうまいと話しも弾む.
 だが昔会社員だった人々は,仕事がらみの昔話をすると,現役のときの社内序列,地位がどうであったかを避けて通れぬことが多い.
 だから負け組の会社員だった私は昔話が嫌いだ.ヾ(- -;) こらこら
 それで私たちはこの日,病気の話で大いに弾んだのである.ヾ(- -;) おいおい
 ガンだの心筋梗塞だの,お互いの術後経過を話し終えたあとは,北朝鮮問題に話題が移ったのであるが,私たちが飲み食いを始めてからずっと隣のテーブルにかなり年輩の御老人がいて,私たちの話に耳を傾けていた.
 初めは客かと思っていたのだが,そのうち御老人が料理を運んできたりしたところをみると,どうやら「山東」の人のようであった.かといって,オーナーは女性だと公式サイトに書かれているから御主人ではなさそうで,よくわからない.

 結局この日の午後一時から日暮れるまで延々六時間,私たちは紹興酒のボトルを何本も空にして飲み続けた.料理はランチコースに少し追加したかも知れぬが記憶がない.
 そろそろ帰ろうと勘定を済ませて道路に出ると,御老人が玄関の外に出てきて手を振って見送ってくれた.私たちは酔った勢いで,ありがとうござましたーおいしかったでーすと大きな声を上げ,「山東」を後にしたのであった.

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 横浜の中華街には,中小規模の店で時として極めて接客態度の悪い店があり,そんな店に入ってしまうと大変に不愉快な思いをすることがある.
 ことがある,どころではなく,三十年ほど前は小さい店の半分は中国式接客の無礼な店だったと思う.釣銭を放り投げてよこすとかね.
 「海員閣」は漫画『美味しんぼ』で傲慢な店として描かれたことで知られているが,その程度の店は他にいくつもあった.
 私の経験では,ある日家族揃って某店 (今はもうない) に入り,ランチを注文したあと「薬を飲みたいのでお水をください」と言ったら,ふてぶてしい顔付きの女店員に「水だってただじゃないよ.うちはお金払えばお茶だすよ」と言われたことがある.
 また関帝廟通りに面したS風楼なんか,初めて入った時に店員の無礼な態度にカッときて,皿を叩き割ってやろうと思ったくらいだ.こんな店に「食べログ」で高評価点を付けてありがたがっている連中の気が知れない.
 横浜中華街は,飲食店の接客の点で非常に低水準であり,そんな有様だから,ミシュランガイドに掲載されているのは「山東」一軒しかない.
 これまで大切な食事の際は,そこそこ安心できる老舗の大きな店を選んでいたのだが,小さな店でも「山東」のように良いところがあるとわかったのは収穫だった.また寄せてもらいます.ごちそうさまでした.

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2017年3月29日 (水)

大船 鴇

 昨年末,会社員時代の後輩たちと酒を飲む機会があった.
 午後一時ちょうどに,JR川崎駅のコンコース,改札を出た辺りで待ち合わせ,さあどこへ行きましょうかという段になってその後輩の一人が,「昼酒飲める店を探してあります」と言った.
 もう何年も前からだが飲食店業界では,団塊世代の爺さんたちの「昼飲み需要」にビジネスチャンスがあると指摘されてきた.
 実際にその通りになったようで,大昔は昼酒というと,東京でも赤羽であるとか湯島であるとかのディープなスポットに出かけたものであるが,昨今はあちこちの駅前飲食ビルに入っている小ぎれいな居酒屋で,堂々昼間から宴会を催すことができる.生きててよかっ

 で,昨年末の昼酒は川崎駅近くのビル地下一階の,客が五十人は入ろうかという居酒屋に入った.ここの主たる客層は二十代から三十代の若者といったあたりだろうか.しかし店内を見渡すと,ちらりほらりと年寄りが独酌する姿も見えた.

 我々の席に注文を取りにきたのは,かわいい顔をした小柄な娘さんで,笑顔できびきびと注文を受け,我々が刺身やら焼鳥盛り合わせなんぞを頼んで「とりあえずそれで」と言うと,彼女はオーダーを復唱した.
 そこまではごく普通の居酒屋風景であろうが,件の後輩が娘さんに「きみって出身はどこかな,福建?」と訊ねた.
 すると娘さんは「○○省です」と答えたのである.
 私は全く気が付かなかったのであるが,あとで後輩が言うには「だって,少し中国語訛りがあるじゃないですか.江分利さんはわかんなかったですか?」だと.

 昔のことであろうが,大陸中国のデパート店員とかホテル従業員の接客態度は極めて横柄で有名だった.
 私も経験があるが,客に対してニコリともしない女店員が無言で釣銭をこちらに放り投げて寄こすので,これが日本なら「店長を呼べ!」と怒鳴るのだがと悔しい思いをしたものである.
 そういう中国式接客は中国人の国民性であると一般に言われていたが,しかし香港では私はそんな屈辱的な目に遇ったことはないし,大陸でもうんと下層階級の人たちは割とフレンドリーだったし,あるいは私の経験した限りでは,超高級料理店の女性従業員はドレスのスリットがセクシーでとても好感度の高い接客であったから,横柄なのは国民性だと言っては間違いのような気がする.

 中国人のことはそれとして,日本人の中にも,飲食店の主人で極めて傲慢無礼なやつが希にいる.
 かつて日本経済新聞の特別編集委員を勤め,『全日本「食の方言」地図』(日本経済新聞社) などの著書で知られる野瀬泰申氏は,ネット上でかなり前に《野瀬泰申のチャブニチュード判定委員会》と題した連載をしていた.(チャブニチュードとは,飲食店で感じる「チャブ台をひっくり返したくなる怒りのエネルギー」を,おもしろおかしく五段階評価したものである)
 氏の飲食店評価は,出てくる食い物が単にまずいだけならチャブニチュード 1~2 であるが,これに接客態度の傲慢・横柄・不潔なんぞが加わると,とたんにチャブニチュード 4~5 となる.
 氏や私のような老人世代は「男は食い物のうまいまずいを殊更に言うんじゃない」という親父からの教育を受けて育ったから,大抵のまずいものはおいしく頂いてしまうのであるが,ただし客を客とも思わぬ接客は許しがたい.そういった怒りのツボが私と野瀬氏は似ているので,チャブニチュード判定委員会の連載を私は愛読していたものだ.

 ところで例のミシュランガイドのこと.
 東京の,政財界や芸能界の有名人が懇意にしているとかいう星三つの高級店は,庶民には無縁の世界のお話ではあるわけだが,ミシュランガイドの功績は,どこぞの鮨屋やラーメン店のように客に罵声を浴びせるような店は決して掲載されないということを私たちに再認識させてくれたことだろう.
 それはそれとして,東京を離れて横浜や鎌倉あたりにくると,ガイドブックに載っているが意外に敷居の低い店があり,しかもそのような店では料理が美味であることははもとより,上質の接客を受けられることをミシュランが確かめてくれているわけで,少しよい気分で食事をしようという時には,私はミシュランガイドに掲載されている店を推したい.

 話かわって先日,私の娘からメールがあり,私の誕生日にランチをしないかとの連絡であった.
 私が「父は初めてなんだが大船の鴇はどうだろう.ミシュラン掲載店だよ」と返答すると,すぐに予約を入れてくれた.
 当日は正月以来の息子も来てくれて,久しぶりの家族食事会と相なった次第.
 このは,稲庭うどんを食わせる至って庶民的な店である.店構えは立派だが,それが証拠に酒肴のお値段はそこらへんの居酒屋とさして変わらぬ価格帯である.こんな店が近所にあれば毎日でも昼酒をくらいに通いたいほどだ.
 さて予約した食事は十一品五千八百円のコースである.
 案内された個室の卓上に,献立をPCで印刷したものが置かれていた.これをスキャンしてここに掲載すれば一目瞭然なのだが,たぶんこれは著作物扱いになると思われ,そこで料理の一覧を以下に転載する.

 平成二十九年○月○日
  本 日 の お 料 理

食前酒   日本酒 明鏡止水ラヴィアンローズ
先 付   平目煮凝り
         旨出汁ジュレ
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前 菜   平目湯葉けんちん鳴門巻き
         ずわい蟹べっこう餡 露生姜
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吸 物   小柱銀杏安平清まし仕立て
         新若布 口柚子
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向 付   生本まぐろ (奄美大島)
      活〆天然平目 (小田原)
      活〆天然ぶり (伊東)
      あおりいか (小田原)
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焼 物   天然ぶり照り焼き
         酢取り茗荷
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口代り   完熟トマトのコンポート
         梅酒ジュレ
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煮 物   佐賀農園有機栽培
         ふろふき大根
揚げ物   天ぷら盛り合わせ
         海老 いさき さつま芋 シシトウ
食 事   稲庭うどん冷または温をお選びください
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デザート  抹茶アイスと豆乳プリン
         抹茶ムース
20170329h2

 以上のお料理になります。ごゆっくりお楽しみください。
                     鴇 店主  印

といった具合であった.(ただし料理の写真は娘が撮影したもの)
 私たちの部屋に料理を運んできてくれた年輩の女性はたいへんにフレンドリーで,食事会の趣旨が私の誕生日であると娘が述べたら,それじゃ記念にお写真をお撮りになりませんか,と言い,シャッターを押してくれた.
 食前酒からデザートに至るまで,この日はとても楽しく,私はいつになく日本酒を四合飲み,大船駅まで足元覚束ずというご帰宅となったのであった.
 鴇,よいお店である.ごちそうさまでした.

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2017年3月 5日 (日)

藤沢 近江堂の団子

 藤沢駅の北口を出るとすぐにビックカメラのビルがあり,その横に「遊行通り」という道の入口があって,その先は藤沢橋交差点方向に続いている.
 ビックカメラのビルの東側,遊行通りに面して近江堂という和菓子屋さんがある.藤沢駅北口が現在のような姿に再開発されるずっと前からある古い店の一つだ.
 その近江堂に,先日の朝の十時少し過ぎ,銀行へ行く用事があったついでに何の気なしに入ってみた.この辺りは私が若かった頃からの馴染みの通りであるのに,どういうわけかこれまで近江堂に入ったことがなかったからである.
 それに,去年であったかテレビ東京で,人気のお笑いコンビ「さまぁ~ず」の二人が湘南を散歩するという番組があり,そのときに近江堂に立ち寄って菓子を買っていたのを思い出したこともあった.

 朝の十時過ぎに,開けたばかりの店に入り,壁際の棚と店内中央のテーブルに並べられた品をざっと見渡すと,この店の売り物は和菓子といっても高級な生菓子とか干菓子などではなく,いたって庶民的な菓子を商っているようだった.
 そして店の奥,入り口のドアの真正面にガラスの商品ケースがあり,大福や団子の類が置かれていた.直感的にこれはおいしそうだと感じられたので,粒餡の草餅と道明寺の桜餅を二つずつ注文した.
 ついでに「みたらし団子を三本ください」と言ったら「五本だとお得ですよ~」と言われたので,こうなりゃもう今日の飯は甘いものだと決めて,団子を五本買った.

 さてその日の昼飯と夕飯に,買ってきた餅と団子を食った.特にほめておきたいのだが,初めて買った近江堂の草餅は,蓬の香りが立っていておいしいものだった.蓬はもしかしたら今年採れたものかも知れない.
 余談だが,日本全国で食べられている草餅 (京都の生八つ橋や大宰府の梅ヶ枝餅など類似の菓子も含めて) は大変な量になるに違いない.それに使用する蓬も大量であろうと想像されるが,それは果たして自生しているのを採集したものだろうか,それとも畑で栽培したものであろうか.これについて Wikipedia には記載がない.
 調べがまだ行き届いていないのであるが,少なくとも回転焼きで知られる「御座候」のウェブサイトには,

「安全な原料を調達できないか?」
始まりは平成18年。もともと自生しているものが原料となることの多いよもぎでしたが、栽培工程のわかる安全な原料を調達できないものかと相談を受けたのがきっかけでした。
しかしよもぎは農作物として栽培されている事例がほとんどなく、何もかも手探りの状態で栽培に向けた調査、試験をスタートしました。

とあり,蓬は《自生しているものが原料となることの多い》こと,そして同社では原料蓬の一部を農家に栽培委託していることが書かれている.この記述からすると,おそらく個人商店の和菓子屋が使う蓬は,自生のものを地産地消しているのではないだろうか.

 で,その日の昼飯も夕飯も餅と団子を食ったのだが,食べきれないみたらし団子が二本余ってしまった.
 団子を入れてあるパッケージには「本日中にお召し上がりください」と書いたシールが貼ってあったが,すぐ腐敗するとかカビが生えるとかは考えにくいので,まあ大丈夫に違いないと食卓に置いておいた.
 翌日の昼,前日に食べ残したみたらし団子を食べて私は「おお」と感心した.
 というのは,前夜に食べたときにはちゃんと柔らかくおいしかった団子が,翌日にはデンプンが老化して明らかに固くなっていたからである.シールに「本日中にお召し上がりください」と書いてあった通りの品質であったから,「やるやるとは聞いていたがなかなかやるな近江堂」(←寛平ちゃんとか高田の純ちゃんが今でも言う半分死語化した昭和感溢れる台詞) というわけなのであった.

 近江堂の団子が,一日で味が落ちてしまったのに,私がなぜ感心したかというと,これが本来の団子だよな,と思ったからである.
 セブンやローソンはどうか知らないが,私の家の近くのファミマでは,山崎製パンの団子が定番になっている.
 ちなみに同社の商品情報ページをみると,

串団子 (たれ・あん・三色)
自慢のたれ・あん・三色、3本パックの団子
サッと程よく焼き目をつけた団子にとろりとしたタレをからめた「串団子 (たれ)」、あんの甘味がおいしいハーモニーを奏でる「串団子 (あん)」、彩りと香りのバラエティを楽しめる「串団子 (三色)」を取りそろえました。今日の好みで選んで、煎れたての緑茶といっしょに召し上がれ!

となっているが,実際に商品のパッケージに表示されている商品名は「串団子」ではなく「串だんご」である.ウェブを検索して調べてみたら,十年前の商品は包装にも「串団子」となっていたらしい.山崎製パンは,同社公式サイトを管理する部署の仕事が雑である.(笑)

 この団子については栄養成分表が掲載されているが,なぜか原材料表示が見当たらない.
 そこでパッケージに記載されている原材料表示を以下に示す.

原材料名/醤油だれ (砂糖、醤油、昆布だし)、上新粉 (うるち米(米国))、砂糖、トレハロース、ソルビット、加工デンプン、グリシン、pH調整剤、調味料 (アミノ酸等)、カラメル色素、酵素、(原材料の一部に卵、小麦を含む)

 ここに表示されている原材料のうちで,デンプンの老化を遅延させ,翌日翌々日になっても団子の柔らかさを維持させる効果を有するものというと,まずトレハロースである.(トレハロース製造者である林原のURL はここ)
 原材料表示からは判断できないのであるが,食品添加物である「加工デンプン」 (多種多様な性質と効果の製品がある) も老化防止の目的で添加されているかも知れない.
(話が横に逸れるが,「加工デンプン」は我が国の食品添加物界における恥部,食品業界の暗部である.これについては稿を改めて詳述する必要があると常々思っている)

 山崎製パンの団子には,上に示したように各種の食品添加物が用いられている.
 私は,このブログで度々書いているように,食品添加物すべてを頭から否定する一部のインチキ評論家が大嫌いである.
 なぜかというと,現在の私たちが謳歌している豊かな食生活に食品添加物は寄与していると考えているからだ.
 しかし,食品添加物全部を肯定しているのではない.私が肯定する食品添加物は,消費者にメリットがあるものに限る.
 例として,みたらし団子を考えてみよう.
 みたらし団子は,日々の食生活の必需品ではない,たまに食べればいい嗜好品だ.町に買い物に出たついでに,思いついて和菓子屋に寄って,買って帰ればいい,そういう食べ物である.
 包装に「本日中にお召し上がりください」と書いたシールが貼ってあるだろう.その通りに,その日のうちに食べればいい.そういう食べ物である.
 実際に近江堂の団子は,翌日は固くなってしまったが,当日中ならおいしかったのである.

 さあ,だとすれば,山崎製パンの「串だんご」に使用されているトレハロース (たぶん加工デンプンも) は,消費者にとって何の意味もない食品添加物ではなかろうか.
 然り.トレハロース以外にも,上述した表示に書かれているグリシンやpH調整剤などは,消費者のためではなく,山崎製パンの都合で使用されている食品添加物なのである.
 すなわち私の基準によれば,山崎製パンの団子は,消費者にメリットのない添加物を用いているのである.
 諸兄がお住いの町に和菓子屋がなければ仕方ないが,もし和菓子屋があるのなら,コンビニで団子を買わずに,その店で買おう.そしてその日のうちに食べよう,そのほうが旨いと私は断言する.きっと昔から人々が食べてきた団子の味がすると思うのである.

 終りにまたまた余談だが,後日の午前中に近江堂へ行き,豆大福を買った.開店直後に店頭に並べられたその大福は,実にとろけるが如くに柔らかった.
 これが時間経過と共に,食感がしっかりしてくる.そこで思ったのだが,十個くらい買って帰って一日中,二時間おきに豆大福を食い続け,その試験結果を基に「近江堂の大福はね,〇時に店に行って買うと旨いんだ」などと講釈を垂れてみたい今日この頃である.

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2017年2月26日 (日)

鎌倉 石窯ガーデンテラス (四)

 さて石窯ガーデンテラスのテラス席で前菜を楽しみ,パンを一つ手で割って食べているときに気が付いたのだが,女性従業員の一人が,各テーブルの客たちにさりげなく視線を送っていた.
 想像だが,客たちの食事する早さに目を配っているのではなかろうか.
 この日は,テラスの端にテーブルを三つつなげて歓談している年輩客のグループがいて,この人たちは話に花が咲くからどうしてもゆっくりと食べることになる.
 一方,私のように一人の客はそれに比べると食べるのが早いだろう.
 そういう客たちの状況に,女性従業員さんは心配りしていたのではないだろうか.
 実際,私がパンを一つ食べ終わったときにちょうどいいタイミングで,テラス席係の女性が私のところにやってきて「メインディッシュをお持ちいたします」と告げたのだ.
 もし客の様子を見ながら料理を運んでくるようにしているのだとすると,これはなかなかよいレストランではないかと思う.
 昨年十二月の記事《鎌倉のパエリア (十二) 》に書いたように,小町通りの Brasserie 雪乃下という店は,本来三十分かかる料理を十五分で席に運んできた.客よりも店の都合優先 (回転を速くしたいのだろう) が露骨であった.
 それがおいしいものなら文句はないが,ファミレスだってまだこれよりはいいぞというグレードの料理だったので本当に腹が立った.(《鎌倉のパエリア》は,外食放浪記カテゴリに一から十三までの連載が入っている)
 それに比べると,まあ暖かなテラスでのゆっくりとした食事ということもあっただろうけれど,この日の食事を私は気持ちよく楽しむことができた.
 で,運ばれてきたメインディッシュがこれ.

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 鴨のロースト一切れを半分に切って口にいれると,ソースのオレンジの風味がパッと口の中に広がって,口にはださないが「お,うまいじゃないか」と思った.
 付け合せの鎌倉野菜もちょうどいい焼き加減で,おいしい.
 みすぼらしいとしか言いようのない Brasserie 雪乃下の料理に比べると雲泥の差とはこのことだ.
 これから春になると鎌倉の町は大賑わいになり,天気がよかったりすると平日でも石窯ガーデンテラスには客の列ができるかも.それでもまた近いうちに昼食を摂りにきたいなと思ったことである.

 あ,このレストランのパンについての補遺を.
 コースについてくるパンにはバターがついていない.でも何もつけなくて十分においしい.
 店内の一角でパンを販売しているので,食事についてくるのと同じ大きさのパンの六種類詰め合わせと,クルミとレーズンの入ったパンを買って帰った.
 パンというものは,焼きたてを好む人が多いだろうが,翌日になって風味が落ち着いたものをオーブントースターで温めて食べるのもまたおいしい食べ方である.
 私はこのやり方で翌日まで待って食べたが,旨かった.天然酵母のパンは,腕の悪いパン屋に限ってナチュラルがどうの自然がどうのと偉そーな講釈を垂れて,しかしその割にうまくないのが多いが,石窯ガーデンテラスのパンは天然酵母ながら控えめな風味で,どなたにもお勧めできると思う.

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2017年2月25日 (土)

鎌倉 石窯ガーデンテラス (三)

 前回の記事に書いた舟田詠子著『パンの文化史』(朝日選書,1998;講談社学術文庫,2013) を取り寄せて読んでみた.
 するとこれ以上なく明快に,人類史上最古の醗酵パンは,新石器時代のトゥワン遺跡 (スイス) で発見されたものであることが詳述されていた.
 遺跡からパン焼き窯が発掘されたとかいう状況証拠ではなく,1976年に,五千年以上前に焼成された醗酵パンの実物が,スイスのビーラー・ゼー湖岸にあるトゥワン遺跡で出土したのである.
 トゥワン遺跡は下層,中層,上層の三層から成るが,中層から五千七百年前に焼かれた醗酵パンの断片が,上層からは五千五百年前の醗酵パンが完全な姿で見つかった.上層出土のパンは写真の画像も示されている.
 前回の記事に書いたように,Wikipedia【パン】に記載されている矛盾,すなわち醗酵パンの発祥の地に関して

(A)
トゥワン遺跡 (スイス) の下層 (紀元前3830-3760) からは「人為的に発酵させた粥」が発見され、中層 (紀元前3700-3600) からは「灰の下で焼いたパン」と「パン窯状設備で焼いたパン」が発見されている。粥状のものを数日放置すると、自然の出芽酵母菌や乳酸菌がとりつき、自然発酵をはじめ、サワードウができる。当初これは腐ったものとして捨てられていたが、捨てずに焼いたものが食べられるだけでなく、軟らかくなることに気付いたことから、現代につながる発酵パンの製法が発見されたと考えられている。

(B)
パンは当初、大麦から作られることが多かったが、しだいに小麦でつくられることのほうが多くなった。古代エジプトではパンが盛んに作られており、給料や税金もパンによって支払われていた。発酵パンが誕生したのもこの時代のエジプトである。

 として,(A) 新石器時代の欧州内陸部と (B) 古代エジプトの二ヶ所が何の説明もなく併記されているが,(B) 説の《発酵パンが誕生したのもこの時代のエジプトである》は明らかな間違いである.
 私も漠然と醗酵パンはエジプトに始まったと誤解していたので,蒙を啓かれた思いである.この原稿を書き始めたのは,テレビ番組に出てきた石窯ガーデンテラスで飯を食うかと思ったのがきっかけだから,一億総白痴なんぞと馬鹿にせずにテレビは観てみるもんだなあと思った次第である.

 Wikipedia には各項目の記述内容を統括する責任者がいない.多数の執筆者が各自勝手な主張を正誤関係なく記述するため,その項目内部での矛盾も項目間の矛盾も修正されないことが多く,百科事典として,これが致命的に近い弱点となっている.執筆者たちの論争になった場合は「ノート」にその旨が書かれているからまだ助かるが,そうでない場合 (執筆者たちが書きっぱなしで放置状態の場合) は,記述が正しいかどうかを利用者が自力で調べ,判断しなければならないのだ.それはつまり百科事典としての意味がないということである.自分で調べられるなら,わざわざ百科辞典は読まぬよ.(笑)
 Wikipedia【パン】の場合がまさにそれで,《発酵パンが誕生したのもこの時代のエジプトである》という誤りについて「ノート」には全く議論のあとが見られない.この項目の執筆者たちは誤りに気が付いていないのである.結局のところ,執筆者たちがこんな有様では Wikipedia【パン】の記述には信頼性がないと考えるべきであろう.

 さて醗酵パンの学術的議論については舟田詠子著『パンの文化史』に譲って先を急ぎ,石窯ガーデンテラスのパンのことに戻る.
 公式サイトの記載を再掲する.

石窯ガーデンテラスのパンの特徴
 ホップ種を使用しています
 ホップ種は、野生のイースト菌をうまく取り込みゆっくり時間をかけて酸味と苦みをマイルドにし、奥深い味を作り出します。毎日の自然環境がその日その日の味を作り出します。酵母と作り手が強調しながら時間をかけて、小麦の甘みとホップの酸味を引き出し、素朴で存在感のあるパンを作ります。

 ホップ種の説明をする.パン作りをする人は知っているだろうが,レストランを訪れる一般客は,ホップ種と言われても何のことやら理解できないからだ.
 ホップ種は「パン種 (ぱんだね)」の一種で,パン種はパンを醗酵させるために生地に入れる「醗酵の元」である.醗酵一般の用語としては醗酵種とかスターターともいう.(Wikipedia【スターター】の1.の語義〈発酵の開始のために加える微生物の集団を含んだもの〉参照)

 既に述べたトゥワン遺跡で発見された古代のパンが何をパン種に用いていたか不明であるが,それ以後の人類は自然界から様々なパン種を見出して使用してきた.
 これも詳しく紹介すると長い説明になるので,ウェブコンテンツ《世界の発酵種 》を紹介する.
 ホップ種については,このウェブページに次のように書かれている.

ホップス種
 ホップス種は現在のパン酵母が普及する昭和初期以前まで、酒種と並びパンの発酵に用いられてきました。ホップの煮汁にじゃがいも、小麦粉、りんごなどを加えて種継ぎを行ってホップス種が作られます。ホップに含まれる抗菌作用成分がホップス種の培養中に製パンに適さない微生物の繁殖を防ぎます。
 ホップス種を用いたパンの特徴は、ホップ特有の苦味といわゆるイースト臭の無い淡白な香りを持ちます。

 石窯ガーデンテラスのパン種が自家製なのかそれとも購入したものかはわからない.
 食べてみた印象は,クセのない風味で,まあまあおいしいパンだと言っていいだろう.
(続く)

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2017年2月23日 (木)

鎌倉 石窯ガーデンテラス (二)

 境内から坂道の舗装道路に出てすぐ,石窯ガーデンテラスの敷地入口になる.
 道路と洋館のレストラン建屋のあいだのスペースは,広いオープンカフェになっている.

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 ここで御年配の三人の人がアウトドア用の折り畳み椅子に腰かけて水彩の絵筆を走らせていた.ここから見た石窯ガーデンテラス洋館の玄関がちょっと「絵になる」からであろう.ちらと皆さんの描きかけの絵を見ると,揃ってなかなかの腕前のようであった.

20170223b

 玄関ドアを開けて中に入るとレジカウンターがあり,係の女性に「一人です」と告げると,店内の席とテラスのテーブルとどちらがいいですかと訊かれた.私は迷わずテラスがいいと答えた.この日はそれくらいよい陽気だったのである.
 案内されたテラススペースには,小さな庭に面して (その向こうにはイングリッシュガーデンがある) ゆったりと四人掛けテーブルが十席ほど並べられている.テーブルも椅子も,元はオイルフィニッシュだったのかウレタン塗料か何かで塗装してあったのか,全く判別できないくらいに風化して,いい雰囲気である.

 まぶしいくらいの日差しのテラスで席に着き,脱いだ上着とバッグを椅子に置いてメニュを開くと,献立は二種類だった.
 一つは「ガーデンコース」といい,メインディッシュに肉か魚の料理を選び,これに前菜とパン,コーヒーとデザートが付くもの.
 もう一つの献立は「パスタコース」で,いくつかのパスタから一皿を選び,これに同じく前菜とパン,コーヒーとデザートが付くものである.
 パスタコースは炭水化物定食の趣があるので,ガーデンコースを食べようと思い,メインディッシュには鴨のローストを選んだ.(おそらくメインディッシュは月替わりで季節の料理になるのだろうが,同レストランの公式サイトに掲載されているメニュは更新されていない)

 ほどなく前菜と,バスケットに入れられたパンが二つ,席に届けられた.配膳係のお嬢さんから前菜の説明は受けたのだが,忘れた.スープはサツマイモのポタージュで,あとは鶏のホイル焼きとエビのフリッター.それぞれにソースがかけてあるのだが,そのソース名を忘れたのである.

 パンは自家製で,というよりパンがこのレストランのウリのようで,公式サイトには次のように書いてある.

石窯ガーデンテラスのパンの特徴
 ホップ種を使用しています
 ホップ種は、野生のイースト菌をうまく取り込みゆっくり時間をかけて酸味と苦みをマイルドにし、奥深い味を作り出します。毎日の自然環境がその日その日の味を作り出します。酵母と作り手が強調しながら時間をかけて、小麦の甘みとホップの酸味を引き出し、素朴で存在感のあるパンを作ります。

 パンとは何かを一口で言うのは難しい.歴史的にも地理的にも,色んなパンがあるからだ.
 Wikipedia【パン】を見てみよう.

基本的に、小麦粉やライ麦粉などに水・酵母 (イースト) を加えてパン生地 (en:dough ドウ) にし、それを焼いた食品を指す。発酵のための酵母と糖類 (砂糖など) をセットで加えることも一般的である。なお、出芽酵母を入れずに生地をつくるパンもあり、これを「無発酵パン」や「種なしパン」などと言う (その場合、出芽酵母で発酵させてから焼いたパンのほうは「発酵パン」と言う。)。無発酵パンとしては、生地を薄くのばして焼くパンがあり、アフリカ・中東からインドまでの一帯でさかんに食べられている。なお、生地を発酵させるのは主として気泡を生じさせ膨張させるためであるが、出芽酵母で時間をかけて気泡を生じさせる代わりに、ベーキングパウダーや重曹を加えることで簡便に気泡を生じさせるものもある。

 この定義のような説明について書く前に,歴史的なことを調べておく.
 終末期旧石器時代 (Wikipedia【亜旧石器時代】) に現在のシリア辺りでは気候の乾燥化によって野生のムギ類が減少したため,それまで食糧を採集に依存していた人々は農耕を始めたとされている.野生種から栽培種が選抜されたのである.(Wikipedia【テル・アブ・フレイラ】(現在から一万年ほど前のメソポタミア考古遺跡) を参照)
 この頃は,遺跡からの出土品から,麦を粉に挽いて粥にした食べていたと思われる.
 この時代から三千年ほど後の現在のトルコ共和国辺りでは,グルテンの多いパン小麦が栽培されていたようである.
 さらに時代が紀元前3700-3600年くらいになると,醗酵させた麦粥を焼いたものがスイスのトゥワン遺跡から出土している.
 この点について Wikipedia【パン】には矛盾したことが記載されていて,

トゥワン遺跡 (スイス) の下層 (紀元前3830-3760) からは「人為的に発酵させた粥」が発見され、中層 (紀元前3700-3600) からは「灰の下で焼いたパン」と「パン窯状設備で焼いたパン」が発見されている。粥状のものを数日放置すると、自然の出芽酵母菌や乳酸菌がとりつき、自然発酵をはじめ、サワードウができる。当初これは腐ったものとして捨てられていたが、捨てずに焼いたものが食べられるだけでなく、軟らかくなることに気付いたことから、現代につながる発酵パンの製法が発見されたと考えられている。

としておきながら,これにすぐ続いて次のようなことを記している.

パンは当初、大麦から作られることが多かったが、しだいに小麦でつくられることのほうが多くなった。古代エジプトではパンが盛んに作られており、給料や税金もパンによって支払われていた。発酵パンが誕生したのもこの時代のエジプトである。

 古代エジプトは,トゥワン遺跡よりも数百年,時代が下る.
 醗酵パンが生まれたのは欧州内陸部なのか,エジプトなのか.
 実を言うと,Wikipedia【パン】のこの記述矛盾には,この原稿を書き始めてから気が付いた.私は古代エジプトが醗酵パン発祥の地だと思っていたのだが,どうなんだろう.
 学術的にはどうなのかを知るために急遽,いささか古い本だが舟田詠子著『パンの文化史』(朝日選書,1998;講談社学術文庫,2013) を注文して確認することにした.食文化に関する書物には時としてトンデモ本があるのだが,講談社学術文庫のブランドを信用しようというのである.
(続く)

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2017年2月22日 (水)

鎌倉 石窯ガーデンテラス (一)

 先月の八日,ふとオンにしたテレビで『帰れまサンデー〈冬の鎌倉2チームで最新グルメ&名所巡り旅!出会えるまで帰れない〉』(テレビ朝日) という番組をやっていた.
 出演者は,お笑いコンビ・サンドウィッチマンの男性チームと,女優の藤田朋子さんと浅香唯さんの女性チーム.
 二チームは別々の地点から鎌倉散策を開始し,あちこち歩き回りながら,偶然出会えたらゲーム終了という内容の番組で,その途中であちこちのお店やレストランが紹介されるのである.
 鎌倉は狭い観光地だから,ゲームを始めた途端に二チームが出会ってしまう可能性が高く,そうなったら「尺」が全然足りないので放送することができずにテレビ朝日としては大損をこくわけだから,そこはそれ,撮影スタッフがちょっと誘導するとか何かしらの工夫があるのだろう.
 視聴者は,ヤラセなどと無粋なことは言わずに《冬の鎌倉2チームで最新グルメ&名所巡り旅!》を楽しめばいいわけだ.

 さて,その鎌倉散策の途中,藤田朋子さんと浅香唯さんは金沢街道のほうに足を向け,道を歩いていた人にレストラン「石窯ガーデンテラス」が評判いいですよと教えてもらう.
 そして彼女たちは石窯ガーデンテラスでランチを摂ったのだが,ちょっといい雰囲気のレストランだなあとの印象だった.

 私はこれまで石窯ガーデンテラスに入ったことがなかったのでウェブ検索したところ,浄妙寺の境内に大正十一年に建築された洋館を改装したカフェレストランであると出ていた.いつの創業であるかはわからない.
 浄妙寺は足利義兼によって文治四年 (1188年) に創建された鎌倉五山第五位の古刹である.
 鶴岡八幡から浄妙寺へと辿る道は金沢街道で,道を東に暫く歩き,「岐れ路」信号を左に行くと町名は二階堂である.右というかそのまんま東というか,道なりに進むと雪ノ下四丁目,浄明寺 (ややこしい) 一丁目となる.
 バスで行くならバス停「二階堂」で降車するとすぐ坂東三十三箇所第一番,鎌倉三十三箇所第一番札所にして鎌倉最古の寺とされる杉本寺がある.この辺りは四十年前には鄙びた田舎で,杉本寺は朽ちかけたような風情であったのだが,今では人家も増えて,訪れる観光客も多いようだ.

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(Wikipedia【杉本寺から引用;パブリックドメイン画像)

「二階堂」の次のバス停は「報国寺入口」である.
 報国寺は,知る人ぞ知るデート寺である.なんだそれは.
 今からちょうど四十年前のこと,静岡県に住んでいる女性が毎週末に私を訪ねてくることになっていて,今でいう遠距離恋愛だが,彼女が来たときはいつも報国寺をデートコースにしたものだ.

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(Wikipedia【報国寺】から引用;引用フリー画像)

 まずは鎌倉駅で待ち合わせをし,金沢街道方面行きのバスに乗る.「報国寺入口」で降りるとすぐに山門がある.この寺の竹林にある茶店で抹茶を頂きながら,暫くあれこれの話をする.それからまた八幡宮へ戻り,若宮大路と小町通りの間の路地にあるレストランで食事するのが定番であった.
 ある日,駅へと戻る帰りのバスで,道路の舗装がデコボコになっているところで旧い車体のバスがガタンと弾んだとき,よろけた彼女が私の腕を両手で抱えるようにすがりつくということがあった.その胸の薄さ腕の細さに,私は「ああこの人をいつまでも守ってあげ (以下略).
 そういうわけで,報国寺から少し東に行くと浄妙寺がある.バス通りから山門が見えるし,鎌倉駅からのバスで行けばほとんど歩く必要もないのだが,なぜかこの寺はいつも報国寺ほど観光客 (カップル) が多くはない.庭があまり大したことはないせいだろうか.

 さて昨日は関東地方各地は強風が吹き荒れたらしいが,鎌倉市内は全く無風で暖かい散歩日和であった.
 時刻は正午の少し前,バス停から浄妙寺へ歩いて行くと,和装のカップルが手を繋いで山門のほうから来てすれ違った.男のほうはどうでもいいが,娘さんの振袖姿というのは実によいものである.花のつぼみがほころぶようなその笑顔をちらりと見ながら私は,お幸せに,とつぶやいた.男のほうは不幸せでも一向に構わぬから,どうとでもなるがよい.おいおい.

20170222a

 山門を入ると境内には人の姿少なく,年輩の御夫婦と思しき二人連れと,振袖を召した娘さん二人連れが,盛りをすぎた庭の梅を眺めていただけであった.どこかの大学で謝恩会でもあったのだろうか.この日はあちこちで振袖美人を見かけた.眼福眼福 (←おやじくさ)

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20170222c

 境内の左側のゆるい坂道を上がって行くと,寺域ではあるのだろうが,舗装された道路にでる.
 ここから少し上を見上げると石窯ガーデンテラスの屋根が見えた.
(続く)

20170222d

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