食品の話題

定年まで食品会社の技術者として生きてきました.食品科学や食品の法律,食品事件など.

2018年8月13日 (月)

『からだシフト』の低糖質包装米飯

 三菱食品 (2011年に三菱系の食品卸である菱食,明治屋商事などが経営統合した商社) は,糖質制限用の加工食品ブランド『からだシフト』を展開している.
 製造者が異なる個々の『からだシフト』商品を,三菱食品が統一ブランドとして企画開発しているわけだ.
 そのアイテムの一つに「ごはん (大麦入り) 糖質35% off」があるので,どんなものか買ってみた.製造者はテーブルマーク株式会社 (新潟県南魚沼市),販売者はサラヤ株式会社 (大阪市東住吉区) である.
 品名は「包装米飯 (雑穀米)」で,原材料表示は以下の通り.
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原材料名:
米 (国産),大麦,還元難消化性デキストリン,酸味料
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 栄養成分表示は下記の通り.
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栄養成分表示 (1食 / 150g 当り)
エネルギー        163kcal
たんぱく質         2.9g
脂質            0.5g
炭水化物         39.2g
    炭水化物 (糖質)     35.0g
    炭水化物 (食物繊維)    4.2g
食塩相当量         0g
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 食品や食材の低糖質化の常套手法は,デンプンを小麦タンパクで置き換える方法である.例えば少量の小麦粉に,コムギのブランと小麦タンパクを加えて製麺することにより,かなり低糖質の麺とすることができる.まだこのブログで紹介していないが,鳥越製粉がその手法で大幅に糖質を減らした良質の麺を製造販売している.
 しかし包装米飯では,この手が使えない.そこで『からだシフト』の「ごはん (大麦入り) 糖質35% off」は,還元難消化性デキストリン (*脚註) で増量することにより含有糖質量 (%) を低下させているようだ.
 しかしその目論見が成功しているかどうかは実際に食べてみないとわからない.それで購入して試食し,確かめたわけである.

 まずは普通に電子レンジで加熱してパッケージのフィルムを剥がし,しかし中身を見て私は「なんだこれは?」と思った.
 見慣れた包装米飯,例えば「サトウのごはん」とは随分と様子が違う.
 目を近づけて観察したところ,丸い大麦の粒の他は米粒なのであるが,その粒の大きさが小さいものから,普通の大きさの粒まで色々なのである.
 米粒は,短粒の国産米の他に,炊飯時に胴割れしたと思しき小さなかけらと,長粒種 (インディカ米) の米がかなり入っている.
 原材料表示は「米 (国産)」となっているのに,どうしてインディカ米が….
 と思って調べてみたら,私は全く知らなかったのだが,四年前から佐賀県で長粒米が生産されているのであった.品種名は「ホシユタカ」という.
 そしてさらにホシユタカ関連サイトのいくつかを閲覧すると,この品種は,インディカ米特有の香りがせず,日本人に好まれるジャポニカ米の香りのする点が優れていると書かれている.
 この「ごはん (大麦入り) 糖質35% off」に関連する特許を検索したが今のところ見つけることができていない.従ってこれは推測に過ぎないのであるが,短粒国産米に還元難消化性デキストリンを加えて炊飯すると,米粒の外側が還元難消化性デキストリンでコーティングされることになる.還元難消化性デキストリンは主に飲料の機能性成分として使用されているが,薄い水溶液では低粘度であっても炊飯後は濃縮されるから「糊」のようになるだろう.この「糊」で米粒がコーティングされると,米飯の食味としてはベタベタして味を損ねるのではないか.
 それを少しでも緩和するために,元々が炊飯してもパラパラしている (=糊化しない) インディカ米をジャポニカ米にブレンドしたのではないかと考えられる.

 このようにして,包装米飯を還元難消化性デキストリンで増量することにより低糖質化を実現しようとの目的がインディカ米のブレンドというアイディアに結びついたというのが私の推測である.
 その開発プロセスはよしとして,しかし商品化された「ごはん (大麦入り) 糖質35% off」は,失敗していると私は考える.有体に評価して「まずい」のである.
 ホシユタカ単独の食味を私は知らないが,もしかするとあまり上質ではないかも知れない.またそれ以外にブレンドされている国産米も,かなり低品質なのではないか.
 以前にも述べたが糖質低減に関して「35%オフ」は微妙な線である.ほんの少し低糖質だというところである.そのわずかな低糖質化のために,食品の「おいしさ」を犠牲にするのは本末転倒だ.
 そんなことをするくらいなら「おいしい御飯」の,食べる量を少し減らせばいいのだ.
 私たちが食べ慣れている「サトウのごはん」と,『からだシフト』の「ごはん (大麦入り) 糖質35% off」とを食べて比較すれば,百人のうちの百人が「サトウのごはん」を選ぶだろう.「ごはん (大麦入り) 糖質35% off」の食味は歴然と劣る.また「ごはん (大麦入り) 糖質35% off」には酸味料が添加されているが,衛生的な工場で製造されている「サトウのごはん」にはそんなものは使われていない.これも『からだシフト』の包装米飯の減点ポイントである.

 私は『からだシフト』の「ごはん (大麦入り) 糖質35% off」を十個入りを Amazon で購入したのであるが,これほど残念な商品だとは思わなかった.試食したあとの残り九個をどうしようかと思案している.

[脚註]
 難消化性デキストリンは,一般的には焙焼したデキストリン (トウモロコシ由来が多い) を酵素分解することにより,酵素分解可能な部分を除去して得られる.
 その難消化性デキストリンを水素添加して還元することにより還元難消化性デキストリンを得ることができる.還元難消化性デキストリンは,難消化性デキストリンの欠点である焙炒による着色が解消されている.
 還元難消化性デキストリンは,食後血糖値の上昇を緩やかにするとし最近注目されている機能性食品素材である.『からだシフト』の「ごはん (大麦入り) 糖質35% off」は,単なる低糖質化だけでなく,食後血糖値の上昇を抑制する効果を期待したのであろうが,残念ながらアイディア倒れに終わった.

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2018年7月23日 (月)

極端から極端へ

 昨年の話であるが,朝日新聞に《「捨てないパン屋」の挑戦 休みも増え売り上げもキープ 》と題した記事が掲載された.(掲載日付 2017年3月22日12時53分)
 これは有料会員限定記事なので料金を払わないと冒頭部分しか読めないが,実は他のメディアに,この記事をパクッた記事があったことをあとで知った.
 ニッポン放送の『上柳昌彦 あさぼらけ』で放送された《業界の常識を打ち破る!『捨てないパン屋』を営む夫婦 「あけの語りびと」(朗読公開) 2017/04/26 06:00 》がそれである.
 朝日新聞がニッポン放送に文句をつけたかどうか知らないが,それはともかく,記事あるいは放送は,広島市の田村陽至さんと奥さんの芙美さんが二人でやっている小さなパン店『ドリアン』が業界で大きな注目を浴びているという話である.
『ドリアン』が注目をされているのは,ここ二年余りパンを一個も捨てていないからである.それを番組は次のように放送した.
 
暗いうちから早起きをして、精魂込めて焼いたパンも、売れ残れば廃棄するしかありません。けれども、作り方と売り方と働き方を変えることによって、『ドリアン』は、パン業界の常識を打ち破り、捨てないパン屋に生まれ変わってしまったのです。
 
『ドリアン』が現在どのような経営をしているかは,『ドリアン』の公式サイトに書かれていることと,ニッポン放送の記事を読んで頂きたい.
 さてニッポン放送『あさぼらけ』の番組紹介記事 (と朝日新聞の有料記事) は,『ドリアン』が「捨てないパン屋」であることを手放しで賞賛しているのだが,本当にそうか.
『ドリアン』は,菓子パンや総菜パンの製造販売をやめて,有機栽培の小麦粉とサワードウを用いて作る酸味の強いパンのみを製造している.日本のパンのマーケットでは非常にニッチな分野である.
 これは『ドリアン』の経営者自らが書いていることだが,このやり方はコストが著しく高いから,売れ残りを「捨て」ていたのでは経営が成り立たない.
 つまり『ドリアン』がパンを「捨てない」のは,売れる以上には作らずに利益を出そうとしたことの結果であって,目的ではない.そのところを『あさぼらけ』は誤解している.
 そもそも有機栽培の小麦粉は高価であるため,日本では富裕層が口にできる特殊な食料である.また全地球的規模で食糧問題を考えた場合,有機栽培は生産性が低く,問題の解決に役立つ農法ではない.
 さらに,酸味の強い伝統的な製法のパンを好む人は,日本ではごく少数派である.従って,現在,通販をしている他のパン屋が『ドリアン』と全く同じやり方で,この非常にニッチなマーケットに参入してきたら,『ドリアン』は小さなパイを奪い合う厳しい競争にさらされることになる.そうなれば,どっちのパンがおいしいか,という競争原理が働くようになるからである.
 
 記事によれば,『ドリアン』の現在の経営者は,親から店を継承した当時,以下のような状況だった.
 
田村陽至さんは40歳の三代目。実家の店を継いだのは、12年前でした。
張り切っていた田村さんは、店をリニューアル。
手作りの具にこだわった総菜パンや菓子パンをそろえ、流行りの天然酵母のパンも始めました。
店に並べた商品は40種類。田村さんは、夜の10時から翌日の夕方まで眠る間もなく働きづめだったといいます。
この努力の甲斐あって、評判の人気店にはなったものの、楽ではなかった経営。
何よりも辛かったのは、店の閉店後、廃棄処分にするパンの多さでした。
25リットル入りの袋がふくらんで行くのを見るたびに思ったそうです。
こんなに働いてるのに、なぜダメなんだ?

 
 記事によると《店に並べた商品は40種類》というから,これは大手のベーカリー,例えば関東ではポンパドウルリトルマーメイドなどが店頭に並べている商品数に匹敵あるいは上回る.
 これは夫婦二人がアルバイトを使ってやっている街中の小規模なパン屋としては異常な多品種,品揃えである.
 消費期限が厳しい総菜パンや菓子パンでこんなことをすれば必然的にロスが増える.固定客数があまり増えないという条件下でどんどん品数を増やすことは,そのままロスの増加をもたらす.
 すなわち,売れる以上に生産すれば,ロスになる.
 この製造業の基本的なことを理解できずに《こんなに働いてるのに、なぜダメなんだ?》とは,何を言っておるのかと呆れざるを得ない.(『ドリアン』の経営者が実際にそう言ったかどうか,『あさぼらけ』が勝手にそう書いたかは不明だが)
 行き詰った『ドリアン』の経営者は極端から極端に方向を転じ,菓子パンと惣菜パンをやめて,富裕層向けのパンというニッチマーケットに参入したのである.
 有機小麦粉とサワードウを用いる『ドリアン』の現在の成功は,その商売がニッチマーケットであることによって支えられている.これを,朝日新聞の記事が書いているように環境問題的サステナビリティと結びつけるのは無理がある.実は朝日新聞は『ドリアン』を複数回取り上げて記事にしている.よほど「捨てないパン屋」というコンセプトが気に入ったとみえる.
 
 五種類とか十種類とかの惣菜パンをメインに,種類は少なくてもおいしいと評判を取ってきちんと安定した経営をしている「捨てない」パン屋は,あちこちの街にあるだろう.
 かつて鎌倉山の住宅街にあった伝説的なパン屋「ボンジュール」は,予約販売の食パンがおいしいので湘南一帯で大評判であったが,それは有機小麦粉もサワードウも使わない,普通の手頃な値段のパンであった.そして昼過ぎには食パンはもちろん,その他のフランスパン類も売り切れた.「ボンジュール」は売れる以上には作らなかったから,「捨て」ることはなかったのである.
 普通の暮らしをしている人々向けではないパンを売る『ドリアン』の成功を手放しで賞賛することは,かつての「ボンジュール」ような,私たちに親しい普通の街のパン屋さんはダメだと批判するに等しいと私は考える.
 
[追記]
『あさぼらけ』の記事中に次の文章がある.
 
輸入小麦に比べて、価格は4倍ほどもしましたが、具材を無くして原価を抑えました
具材が無いことで、日持ちが2週間も延びました。
》 (下線は当ブログ筆者が付した)
 
 (1) 『ドリアン』は菓子パンと惣菜パンの製造そのものをやめたのである.《具材を無くして原価を抑え》たのではない.もしかするとこの文章を書いた人間は,『ドリアン』にインタビューをしていないのではないかと疑われる.
 (2) サワードウで醗酵させると焼きあがったパンは乳酸のために酸性になるのでカビが生えにくくなり,イーストを使用したパンに比べて一般的に室温での日持ちが向上する.具材がないからではない.

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2018年7月 9日 (月)

ほろ酔い初恋の味

 昔々,私が二十四歳の時,後に妻となる女性と地方都市のパブで酒を飲んだ.
 その時に彼女が飲んだのは,カクテル名は忘れたが,ジンを炭酸水で希釈したカルピスで割り,そこにサントリーのカクテル用ライムジュースを少量加えてステアしたものだった.
 彼女が,このカクテルはおいしいと言うので,私も飲んでみた.アルコール入りの初恋の味がした.w
 
 昭和二十年代生まれの老人たちにとって,カルピスは特別な飲み物だろうと思う.
 我が国は,「昭和31年 年次経済報告」の結語に
 
いまや経済の回復による浮揚力はほぼ使い尽くされた。なるほど、貧乏な日本のこと故、世界の他の国々に比べれば、消費や投資の潜在需要はまだ高いかもしれないが、戦後の一時期に比べれば、その欲望の熾烈さは明らかに減少した。もはや「戦後」ではない。我々はいまや異なった事態に当面しようとしている。回復を通じての成長は終わった今後の成長は近代化によって支えられる。そして近代化の進歩も速やかにしてかつ安定的な経済の成長によって初めて可能となるのである。》 (下線は当ブログ筆者が付した)
 
と書かれた時期,戦前の経済水準への回復を達成し,怒涛の経済復興は終わりを告げた.そして,戦前の水準を凌駕すべく《速やかにしてかつ安定的な経済の成長》を目指す新時代を迎えた.
 この頃,比較的に裕福な庶民の家では,玄関の引き戸脇の壁にヤクルトと森永ホモ牛乳の木箱が釘打ちされて設置され,この二つの飲料の宅配が広まった.
 ヤクルトが現在とほぼ同様の小瓶入り商品となったのは昭和三十年代の前半である.(「ヤクルト」発売80年ヒストリー)
 乳製品業界最初の乳脂肪均質化 (ホモジナイズド) 牛乳「森永ホモ牛乳」が発売されたのは昭和二十七年 (1952年) のことだった.(森永乳業商品ヒストリー)
 この二つは《もはや「戦後」ではない》を象徴する食品であった.
 すなわちヤクルトと森永ホモ牛乳は生活に不可欠の食品ではなく,子どもの栄養のために購入するものであったから,家計に余裕のある家庭が月極契約で購入した.そしてヤクルトと森永ホモ牛乳の,どちらがステータスが上かというとヤクルトであり,家庭の裕福度は以下のようであった.
ヤクルトと森永ホモ牛乳を両方   裕福
ヤクルトのみ           そこそこ裕福
森永ホモ牛乳           やや裕福
いずれもとっていない       普通の家庭経済状態
森永ホモ牛乳の配達アルバイトをしている    (ToT)
 
 私の生家は貧しかったので,幼時の頃は子どもの飲み物といっても特別のものはなく,焙じ茶や麦茶を飲んでいたのだが,そのうちに「渡辺粉末ジュース」が登場し,これが夏の飲料の定番となった.(粉末ジュースには発泡性と非発泡性のものがあり,非発泡性のオレンジ味は冬にも飲まれたがうまくはなかった)
 当時の粉末ジュースは合成甘味料,合成香料,合成着色料などの食品添加物で構成されていた飲料で,安全性を問わなければ,今や多くの飲料メーカーから発売されている「ゼロカロリー飲料」の先駆けであった.ヾ(--;) 問えよ
 しかし当時,いかにもジャンクな粉末ジュースとは別格の飲料があって,何を隠しましょう,それはカルピスであった.
 
 企業としてのカルピスの創業は,大正五年 (1916年) 設立の醍醐味合資会社に遡る.
 翌年にラクトー株式会社が設立され,大正八年 (1919年) にカルピスが発売された.大正十二年 (1923年) にカルピス製造株式会社に商号変更したのが創業である.
 商品としてのカルピスは昭和中頃まで贈答品として確固とした地位を保持していたのだが,その後は凋落の一途を辿り,平成十九年 (2007年),遂に立ち行かなくなり,味の素に吸収されて完全子会社となった.
 しかし味の素は,平成二十四年 (2012年),カルピスの全株式をアサヒグループホールディングスに売り,カルピスはアサヒグループの一員となった.
 ところがアサヒグループホールディングスは,平成二十八年 (2016年) に飲料事業を再編成し,カルピスの事業をグループ各社に継承・移管して解散したため,大正時代創業のカルピスはここに消滅した.
 企業としてのカルピスは創業百年で命脈尽きたが,しかし飲み物としてのカルピス,ブランドとしてのカルピスは一世紀を生き延びた.カルピスの乳酸菌発酵事業を継承したアサヒ飲料は昨年,体脂肪減少を謳う機能性表示食品「カラダカルピス」を発売したのだ.
 現在,乳酸菌飲料の主戦場は機能性を訴求する商品であるが,遅ればせながらようやくカルピスも機能性表示食品市場に参入したわけである.
 
 前置きが長かったが,本題である.
「体脂肪減少」は鰯の頭も信心から程度に考えておけばいい (発表されたデータによれば三ヶ月間飲み続けても効果は僅かで,短期間の厳しい糖質制限ダイエットに遠く及ばない w ) が,私がこのカラダカルピスで感心したことがある.体脂肪減少というコンセプトから必然的に,砂糖を使用せずに他の甘味料へ原材料を変更したわけだが,にもかかわらず,味が依然として,私たちが慣れ親しんだ昭和のカルピスなのである.
 そこで私は老人諸兄に,糖質制限中でも飲んでよいカクテルを提案したい.
 黒糖焼酎,泡盛あるいはジンのいずれでも結構であるが,タンブラーに好みの量を入れ,カラダカルピスで割り,氷を入れる.あれば無果汁のライム風味炭酸水 (ペリエやクリスタルガイザーから出ている.カラダカルピスは甘いので,甘いライムジュースよりも無果汁炭酸水のほうがよいかと思う) を加えてステアする.
 カラダカルピスに由来する糖質が含まれるが,その糖質は砂糖や果糖,ブドウ糖ではなく「体脂肪減少」に有効だとするニゲロオリゴ糖なので,摂っても大丈夫ではないかと思う.
 材料それぞれの比率は各自のお好みで,初恋の味のするカクテル,名付けて「初恋」をどうぞ.w

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2018年6月24日 (日)

門前の小僧

 小学館のニュースサイト「NEWS ポストセブン」に《カレーの常温保存は危険 温め直しても菌は死滅せず》という記事が掲載された.
 厚労省が先日,夏に発生しやすいカレーが原因の食中毒について注意を喚起するよう国民に呼び掛けたが,それがこの記事が書かれたきっかけだろう.
 それはよしとして,この記事の最後にこんなことが書いてある.
 
また、カレーやシチューなどを、鍋に入れたまま室温に置いておくのは危険だ。
「煮込むと熱に弱い菌は死滅しますが、熱に強いウェルシュ菌が残ります。この菌は、45℃以下になると急増。一度発生すると温め直しても死滅しません。2時間以内に20℃以下に急冷することが大切です」(大石さん)
 傷みやすいじゃがいもやにんじんを除いてから、ラップを敷いた密閉容器に入れ、粗熱がとれたら、ラップでくるみ、冷蔵または冷凍するのがおすすめだ。

 
 除いた《傷みやすいじゃがいもやにんじん》は,どうしろというのか.捨てるのか.肉よりもイモとニンジンが多い庶民のカレーはほとんど捨てることになるが.w
 鍋の中で食中毒菌はカレー全体に存在している.どの材料が傷みやすいとか,そういうことがなくなっているのが煮込み料理というものなのだ.
 
 引用文中の (大石さん) は管理栄養士だと記事に書いてあるが,料理本を何冊か書いている人のようだ.管理栄養士は,調理と栄養は専門だとしても,食中毒については専門家ではないのだから,取材を受ける前に少しは勉強してほしいものだ.
 あと,《45℃以下になると急増》とあるのは間違いで,正確には47℃.詳しいことは国立感染症研究所のサイトに解説がある.

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2018年6月18日 (月)

ポテサラの食品衛生学 (二)

* 前回の記事《ポテサラの食品衛生学 (一) 》の末尾を再掲する.
さて,ポテトサラダが傷みやすい理由だけでかなり長文になってしまった.このあと,島本教授は驚くべき妄説を開陳したのであるが,それは続きで.

 弁当に詰めた四種類のおかずのうちで,一番食中毒の危険性があるのは何でしょうかという問題 (正解はポテトサラダ) に続く問題は《ポテトサラダに先生オススメのあるものを加えると、味も美味しくなり食中毒予防もできるそうなんですが、それは、一体何でしょうか? 》だった.(その問題と答えが番組サイトに掲載されている)
 
20180611e
(上の画像は,録画データを加工したものではなく,テレビ画面をデジカメで撮り,そのデータをトリミングしたものである.以下の画像も同じ)
 

20180611f
 
 自分で料理をする人にとっては常識であるが,カレーは家庭料理の中で腐敗しやすい料理の代表格である.
 この資料に《ウェルシュ菌食中毒の原因食品別の割合》という図が載っている.
 そのデータを以下に転記する.
 
 煮物       28%
 カレー      21%
 肉の煮込み    11%
 シチュー類     8%
 ローストビーフ   6%
 肉じゃが      3%
 その他      23%
 
 この表で,カレーのウェルシュ菌食中毒発生割合が,肉じゃがやシチュー類よりもずっと高いのは,カレーに用いられる香辛料が著しく菌に汚染されていることが原因である.
 香辛料は主として東南アジアを中心とした発展途上国の農産物から製造される.中でもブラックペッパーとターメリックの芽胞形成菌 (昨日の記事で説明した) 汚染は甚だしい.家庭のキッチンにある食材の中で,最も芽胞形成菌に汚染されているのはカレー粉なのである.(カレー粉の商品価値である香気を失わずに芽胞を破壊するのは,現行の日本の法規制下では非常に難しいためである.機会があれば説明したい)
 
20180611g
 
 カレー粉の原材料である香辛料のターメリックにはクルクミンが含まれており,確かに純粋なクルクミンには弱い抗菌性が認められるのであるが,ターメリックそのものの菌汚染が甚だしいので,少しばかりのクルクミンの効果は焼け石に水である.
 
20180611h
 
 つまり,作り立てで菌の少ないポテトサラダにカレー粉を加えるのは,数千個の芽胞をポテトサラダにぶち込んで,わざわざ食虫毒のリスクを激増させるようなものなのである.

 カレー粉をポテトサラダに入れて菌の増殖が抑制できるのなら,とっくに惣菜製造業者が実行している.スーパーでもコンビニでもカレー風味のポテトサラダが売られていないのは,カレー粉が芽胞形成菌に著しく汚染されていることを惣菜製造業者は承知しているからなのである.
 カレー粉の菌汚染のことを知らないのは《専門は食品衛生学》の島本教授くらいなものだろう.テレビに出る前に,少しは食品衛生学を勉強していただきたいものだ.『世界一受けたい授業』の視聴者が,島本教授発の嘘情報を信じなければよいのだが.

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2018年6月17日 (日)

ポテサラの食品衛生学 (一)

 日本テレビのバラエティ番組『世界一受けたい授業』(6/9 放送) を録画しておいて観たら,季節柄か,食中毒の話題が取り上げられていた.
 弁当に四種類のおかず (鶏の唐揚げ,肉ジャガ,ポテトサラダ,ハンバーグ) が入っていて,その中で食中毒になる危険性が高いおかずは,どれでしょうか,というクイズが出されたのである.
 クイズの出題者は,広島大学大学院生物圏科学研究科の島本整教授である.
 島本教授は,講義の名称でいうと「食品病原遺伝子学」が専門で,広島大学のサイトにある研究室紹介を読むと,現在はノロウイルスの研究をされている.研究室紹介には
 
島本先生の専門は食品衛生学。食品の安全性に関する研究を行う学問だ。なかでも先生は、食中毒を起こす微生物に関する研究を中心に行っている。こうした微生物には、O157、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、カンピロバクター、ノロウイルスなどがあるが、日本で起こる食中毒の半数以上はノロウイルスを原因とするものという
 
と書かれているが,《島本先生の専門は食品衛生学》の箇所は誤りである.『世界一受けたい授業』に島本教授は度々「食品衛生の専門家」として出演しているが,島本教授は食中毒の原因微生物を研究しているのであって,食品衛生学の研究者ではない.その理由をこれから述べる.

20180611d_2
(上の画像は,録画データを加工したものではなく,テレビ画面をデジカメで撮り,そのデータをトリミングしたものである.以下の画像も同じ)

 正解は言うまでもなく,ポテトサラダである.ポテトサラダが腐りやすいことは,ほとんど常識だ.だから作ったらすぐに食べてしまうのがいいが,調理したのが昼過ぎで,夕食に食べる予定という時は,必ず冷蔵庫に入れておく.従って朝作る弁当にポテトサラダを入れるなんてのは,そもそも大間違いなのである.
 
 それじゃ,コンビニ弁当にポテサラが入っているのはなぜ?

 それは,工場で作る弁当に入れるポテトサラダには,食品添加物である日持ち向上剤と pH調整剤とが加えてあり,細菌が増殖するのを抑制しているからだ.しかもその場合に,ポテトサラダが何時間後も食べて安全であるかを試験して確認済みだからである.

 家庭ではそんな食品添加物は用意していないし,普通の人はそれらを使いこなす技術を持っていない.だからポテトサラダは必ず冷蔵するのだ.それに,日持ち向上剤と pH調整剤を入れたポテトサラダは味が悪いから,おいしいことが大切な家庭料理で,敢えて食品添加物を使う必要はないのだ.
 スーパーでパックに入れて売られているポテトサラダにも,ほとんどの場合,日持ち向上剤と pH調整剤が添加されている.だから,食べてみればわかるが,まずい.
 買ってきた惣菜のポテトサラダを電子レンジで加熱すると,すっぱい嫌なにおいがするのは,pH調整剤のせいである.

 余談だが,気温が二十度を超す季節の弁当というものは,加熱調理したおかずのみを詰め,おかずの色は茶色一色で充分だ.愛妻弁当にトマトだのレタスだのを入れる必要はさらさらないのである.弁当は白い飯と,鶏の唐揚げでよろしい.彩だの栄養バランスだのは,弁当に限って言えば,余計な考えというものである.

 閑話休題.
 クイズ出題者の島本先生は,ポテトサラダが腐敗しやすい理由として,次の二つの画面を用いて説明をした.

20180615e

20180615f

 以下,上の画像に沿って説明して行く.
 私は,一番目の理由「ジャガイモは水分が多く腐りやすい」という島本説を聞き,驚いてテレビの前の安楽椅子から転げ落ちて腰を強打した.泣きながら書架まで這って行き,『日本食品標準成分表』を取り出した.これは,食品衛生学だろうが食品栄養学だろうか,すべての食品研究者にとってバイブルとも言うべきものである.

日本食品標準成分表2015年版 (七訂) から抜粋
        100g中の水分量 (g)
生のニンジン    89.7g
茹でたニンジン   90.0g
生のタマネギ    89.7g
茹でたタマネギ   91.5g
生のジャガイモ   79.8g
茹でたジャガイモ  81.0g
蒸したジャガイモ  78.1g
生のキュウリ    95.4g

 これはもう一目瞭然で説明の要はない.ジャガイモは水分の少ない野菜なのである.
島本教授は「ジャガイモは水分が多く腐りやすい」 (ナレーションは画面の文と少し異なり,《ジャガイモは元々水分が多いために腐りやすい食材です》であった) を一体どこからひねくりだしたのか.食品成分表を読んだことがないのか.
 自ら料理をする男はもちろん,妻の家事を少しでも手伝う夫なら皆が知っていることだが,生のジャガイモは腐りにくく,上手に扱えば数ヶ月の長期保存に耐える野菜なのである.
 つまり,「ジャガイモは水分が多く腐りやすい」は大嘘で,「ジャガイモ」ではなく「ジャガイモ料理」が腐りやすいのである.
 なぜか?
 その理由は,加熱調理するとジャガイモ (の塊茎) の細胞 (詳しくは Wikipedia【デンプン】 ,同【アミロプラスト】,日本植物生理学会のQ&Aから《でんぷん粒は液胞?》を参照のこと) が壊れ,そこからデンプンが流出し,これが微生物の良い栄養源になるからである.
 付け加えると,食品などの腐敗には,(1) 水分,(2) 微生物の栄養源,(3) 微生物の繁殖に適した温度,の三条件が必要である.従って,例えば乾燥したデンプンは腐敗しない.
 
 次に,ポテトサラダが食中毒の原因になりやすい二番目の理由として島本教授が挙げた《キュウリなどの生野菜》 (を入れるから) と《調理工程が多い》はどうか.
 島本教授は,腐敗の原因微生物や食中毒菌は加熱すれば死ぬと思っているらしい.ポテトサラダの材料で,加熱して使うのはジャガイモとニンジンだ.タマネギは,生を使う人と,加熱したものを使う人,入れない人がいる.これは好みである.キュウリは普通は生で使う.それで島本教授は《キュウリなどの生野菜》としたのであろうが,キュウリを入れなくてもポテトサラダは腐敗しやすいのである.(キュウリを入れるか入れないかも好みの問題で,キュウリを入れないレシピもある.クックパッドを御覧あれ)
 なぜかというと,芋類や根菜などの農産物には,芽胞形成菌 (spore-forming bacteria) が付着していることが多いのであるが,この芽胞は,調理程度の加熱や,消毒薬などによる処理に強く抵抗するからである.(一般的な消毒薬では次亜塩素酸ナトリウムがやや有効だが,塩化ベンザルコニウムやアルコールは事実上無効である)
 Wikipedia【芽胞】から一部を引用する.
 
有芽胞菌の中にはアンフィバシラス属、バシラス属、クロストリジウム属、スポロサルシナ属などが存在する。このうち、バシラス属とクロストリジウム属が、病原性や微生物の有効利用などの面から、ヒトに対する関わりが深く、代表的な有芽胞菌として取り上げられることが多い。
 
 バシラス属の食中毒菌にはセレウス菌があり,クロストリジウム属にはウェルシュ菌やボツリヌス菌などがある.これらは,ジャガイモの皮を剥き,包丁で切って下拵えする過程では完全には除去できない.従って極端な話,ジャガイモだけでポテトサラダを作っても,食中毒の可能性が存在するのである.
 以上に述べたように,島本教授による「ジャガイモは水分が多いから腐りやすい」とか「ポテトサラダに生野菜を入れると食中毒の可能性がある」という説明は,広島大学の公式サイトで《島本先生の専門は食品衛生学》と紹介されている島本教授が,実は食品衛生の素人であることを示している.
 また,調理の工程数と腐敗しやすさには何の関係もない.クックパッドを覗いてみれば,女性たちが「時短」のために様々な工夫をしていて,手間のかかる料理の工程数を減らしてみせている.しかし,工程数を減らしても,腐りやすいものは腐りやすい.切って皿に盛りつけただけの料理でも腐るものは腐るのである.
 
 さて,ポテトサラダが傷みやすい理由だけでかなり長文になってしまった.このあと,島本教授は驚くべき妄説を開陳したのであるが,それは続きで.
(続く)

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2018年6月12日 (火)

オーロラソース考

 フジテレビ『ソレなら5分で出来ますよ。』(6/3 放送) に,南極料理人こと西村淳氏 (昭和二十七年生まれ) が出演して,タマネギをカットして有り合わせの味噌と混ぜるだけでできる「万能味噌ダレ」を紹介した.
 西村氏はこれを「オーロラソース」と名付けている.このソースをつける料理によって色々に変化するから極地の「オーロラ」なのだそうである.意味がよくわからぬが.
 
20180611a

20180611b
(以上の画像は,録画データを加工したものではなく,テレビ画面を撮影したデジカメデータをトリミングしたものである) 
 
 でも,西村氏は修行を積んだ料理の専門家ではないから御存知ないと思うが,昔からフランス料理に「オーロラソース」はあるのである.だから,フレンチのシェフがこの番組を観ていたら目をむいたことであろう.
 さて本来の「オーロラソース」がどんなものかというと,Wikipedia【オーロラソース】に次のように書かれている.
 
オーロラソース(仏: sauce aurore)は、ベシャメルソースに裏漉ししたトマト(もしくはトマトピューレ)とバターを加えたソースである。フランス料理で鶏卵料理や子牛肉、蒸した肉料理などに使われる。
フランス語で「オーロラ」aurore は曙、明け方の意。トマトのもたらすオレンジがかったピンク色の曙色にちなみオーロラソースと呼ばれる。

 
日本ではマヨネーズとトマトケチャップを1:1の割合で混ぜたソースもこの名で呼ばれることがある
 
 マヨネーズとトマトケチャップを混ぜた日本式「オーロラソース」は,本来の「オーロラソース」と色が似ているので「オーロラソース」と呼んだのだろう.簡単に作れるから洋食屋などで出されることが多い.
 この日本式「オーロラソース」は考案者が不明だが,誰が工夫したのかがわかっている「オーロラソース」がある.誰とは,あの周富徳氏である.
 
〈よく知られた周富徳流オーロラソースのレシピ〉
   マヨネーズ      1 カップ
   ケチャップ      大さじ 3
   コンデンスミルク   大さじ 3
   エバーミルク     大さじ 2
   ジン         小さじ 2
   塩&パセリみじん切り 少々
 
 ただしこの周さんの「オーロラソース」は,色が曙色だから「オーロラ」なのだという本来の意味が失われて,もう何がなんだか意味不明のものになってしまっている.
 
 そして意味不明といえば,私はうっすらと記憶しているのだが,昭和三十年代の小学校給食の献立に「オーロラソース」があったのである.
 アスペクト編集部編『なつかしの給食』((株)アスペクト,1997年) の p.22 に,「鯨のオーロラソース」という献立が記載されている.この一皿に付けられたキャプションは《オーロラソースは謎の味、他では食べた覚えがない。》だ.w
 同書 p.25 には「栄養士さんの思い出」が掲載されているので,それを引用する.
 
オーロラソースというのは、ウスターソースとケチャップを混ぜ合わせたものなんですが、ケチャップを使い始めた当初は、子どもたちに全然受けつけてもらえませんでした。それで、とんかつソースに入れたり、甘めの味噌を混ぜたりといろんな試行錯誤をしました。それでだんだん子どもたちも食べるようになってきて、ようやく慣れてきてくれたのが昭和40年代に入ってからのことだったでしょうか。》 (ブログ筆者註;「とんかつソースに」は「とんかつソースを」の誤植だろう)
 
 同書に記載されているレシピを下に示す.
 
〈昭和30年代における学校給食オーロラソースのレシピ〉
   甘味噌     大さじ 1
   砂糖      大さじ 1+1/3
   トマトケチャップ   大さじ 1+1/3
   うま味調味料     少々
   水          小さじ 1

 
 《オーロラソースというのは、ウスターソースとケチャップを混ぜ合わせたものなんですが 》という時点で既に曙色とは無縁のものになっているのであるが,さらにウスターソースが甘味噌に変化して《オーロラソースは謎の味、他では食べた覚えがない。》になったのである.
 
 上に列記したオーロラソースを,成立した時代順に並べると,(1) フランス料理のオーロラソース,(2) 昭和30年代の学校給食のオーロラソース,(3) 周富徳流オーロラソース,(4) 南極料理人流オーロラソース,ということになるだろう.Wikipedia に書かれている「日本式オーロラソース」の成立時期がわからないのだが,それをモディファイした「周富徳流オーロラソース」よりも古いことは確かである.
 
 ここで一つ不思議に思ったのは,私と年齢が近い西村淳氏は,(1) は御存知なくても,(2),(3) や「日本式オーロラソース」は知っていてもいいはずだが,どうして味噌ダレを「オーロラソース」にしたのだろう,ということ.味噌ダレの「オーロラソース」が「周富徳流オーロラソース」を知名度でしのぐことはまずあり得ない.今からでも別の名称にしたらいいと思う.
 
 私は西村氏の著書を一冊しか読んだことがないのだが,味噌ダレを敢えてオーロラソースと名付けた理由が他の本に書かれているのだろうか.(氏の会社はオーロラキッチンという名称であるところをみると,西村さんは何でもオーロラを冠するのかも知れない)

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2018年6月 8日 (金)

糖質制限 コンソメ対決

 私たち高齢者は,健康のために日常の食事から,できるだけ糖質を減らす必要がある.
 しかし糖質制限のために「根菜はだめ」「トマトは糖質が多いから食べてはいけない」「果物は避けること」などと言い始めると,これはもうフードファディズムになって,著しくQOLを低下させてしまう.
 また何冊も著書がある渡辺信幸という医師が,ネット上の記事《MEC食は糖質制限とどう違う? 医師に聞く「最初の3日間」の始め方》中で次のようなことを書いているのは見逃せない.
 
「糖質制限食は、糖尿病治療のためのものです。病気を治す目的があるため、糖質を制限し、引き算して食事を摂ります。一方、MEC食には制限という考え方がなく、足し算の食事法です。必要最低限の栄養素である、タンパク質、脂質、ミネラル、ビタミンを摂ります。もしMECを食べてお腹いっぱいにならなかったら、さらに追加でMECを食べてもいいですし、その他の炭水化物や野菜、大豆製品なども、特に制限はなく食べてOKです。
(ブログ筆者註;MEC とは,肉 meet と卵 egg とチーズ cheeseの頭文字を続けた語で,その三つの食品を食事の中心にするとしている)
 
 上の引用箇所の中で渡辺医師は《その他の炭水化物や野菜、大豆製品なども、特に制限はなく食べてOKです》と書いている一方で,《もしMECを食べてお腹いっぱいにならなかったら、さらに追加でMECを食べてもいい》 (下線はブログ筆者による) とも書いている.
 
 この説に従えば,一日三食を肉と卵とチーズだけにしてもいいことになる.これでは,野菜嫌いの人は偏食にお墨付きをもらったようなもので,実際にそのような食生活を実行している人のブログがある.
 しかしこんな偏食は必ずや健康を害するであろう.とても医師の主張とは思えぬ.《野菜、大豆製品なども、食べてOKです》ではなく「野菜と大豆製品,牛乳,ヨーグルト,果物,きのこ類,海藻など色々な食品を積極的に食べましょう」でなくてはならないのである.
 極端な偏食を許してしまう点で MEC 食は,フードファディズムの一種であり,マクロビオティックや菜食主義と同じくオカルトでもある.
 現代の栄養学でわかっているのは,数多くの食材・食品を積極的に満遍なく摂ることで疾病や老化のリスクを分散できるということだけである.
 従って渡辺医師が《MEC食とは、肉(Meat)、卵(Eggs)、チーズ(Cheese)の3つの食品を中心にたっぷり食べ》ようと主張している時点で,MEC 食はもうリスクまみれなのである.
 
 さて,MEC 食は論外として,糖質制限食を実行する際には,糖質を排除することと,特定の食材・食品を排除することを混同して,QOLを低下させてしまわぬように気を付けなければいけない.
 そうするためには,例えばサラダの市販ドレッシング一つを選ぶ時にも,栄養成分表示を確認して,食品に関する知識を身に着ける必要がある.
 このような食品選択の例を一つ挙げる.
 ローソンのブランパン二個にサラダチキンを挟んでサンドイッチを作るとする.ブランパンは,それだけを口に入れると唾液を吸ってしまうので嚥下しにくく,高齢者は誤嚥を避けるためにも,ブランパンは何かを挟む必要がある.
 ちなみにサラダチキンは低糖質低カロリーのイメージがあり,普通は製品 100g あたりの糖質は 1g 強程度であるが,私は,スーパーで販売されているもので製品 100g あたりの糖質が 5g 近いものを発見したことがある.鶏胸肉をどう加工すればそのような高糖質になるのか理解に苦しんだが.
 
 それはさておき,作ったブランパンのサンドイッチに,中皿一杯の生野菜とスープを添えて昼食にする場合,簡単に済ませたい場合,私はスープを市販のカップコンソメにしている.
 そのカップコンソメだが,店頭に置かれていることが多いのは,クノールの「チキンコンソメ」だろう.
 その原材料と栄養成分は以下の通りである.
 
原材料名:
デキストリン,食塩,チキンエキス,砂糖,チキンオイル,野菜エキス調味料,食用加工油脂,酵母エキス,香辛料,酵母エキス発酵調味料,うきみ (クルトン,パセリ)/ 調味料 (アミノ酸等),膨脹剤
栄養成分:1杯分 (9.5g) の栄養成分表示
エネルギー;37kcal,たん白質;1.1g,脂質;1.1g,炭水化物;5.7g,食塩相当量;1.3g,カリウム;24.8mg,リン;13.7mg,ヨウ素;0.0μg
 
 これに比較すると最近はあまり店頭で見かけないのが,明治の「JALビーフコンソメ」だ.
 
原材料名:
食塩,デキストリン,砂糖,ビーフエキス調味料,ぶどう糖,牛脂,酵母エキスパウダー,オニオンパウダー,フライドオニオン,香辛料,たんぱく加水分解物,うきみ (クルトン) / 調味料 (アミノ酸等),カラメル色素,膨脹剤,香料
栄養成分:1杯分(5g)の栄養成分表示
エネルギー;14kcal,たんぱく質;0.4g,脂質;0.3g,炭水化物;2.3g,食塩相当量;2.9g
 
 上の原材料と栄養成分の表示は,両社のウェブサイトから転載したものであるが,この二つの製品が全く性格を異にすることを明確に示している.
 
 その前に註釈を書いておくと,デキストリンとはデンプンまたはグリコーゲンを加水分解して得られる炭水化物であるが,食品を粉末乾燥する際の賦形剤として用いられる.チキンエキスやビーフエキスだけでは耳かきで扱うような量にしかならないので,小袋に包装できるような量にするために,デキストリンで嵩 (かさ) をふやしているのである.
 
 その賦形剤デキストリンが,「チキンコンソメ」では原材料中で最も量が多いのだが,「JALビーフコンソメ」では二番目である.
 その結果,「チキンコンソメ」の炭水化物 (この場合,糖質と言い換えてもよい) が 5.7g になっているが,「JALビーフコンソメ」では半分以下の 2.3g である.その差 3.4g は,糖質量のみに着目するなら「JALビーフコンソメ」の場合はローソンのブランパン (糖質量 2g) をもう一つ食べてもよい勘定だ.
 私の目から見ると,クノールがなぜこんなにたくさんの賦形剤を使用しているのか,理解に苦しむ.もっと少なくても製造上の問題はないはずである.
 
 一方の「JALビーフコンソメ」は,デキストリンが少ないのは結構だが,食塩が原材料中で最大で,一杯分に約 3g も入っている.これは,酵母エキスパウダー,オニオンパウダー,フライドオニオンなど,その他の副原料使用量を減らして,その代わりに食塩を使用してコストを削減しているのだと思われるが,その結果どうなったかというと,「JALビーフコンソメ」一袋を規定の 160cc の湯にに溶かすと,ものすごく塩辛いコンソメスープになってしまう.血圧が上がりそうなくらい,しょっぱい.私はあまりJALに乗らないのでわからないのだが,JALの機内ではこんなに塩味の強いコンソメが提供されているのだろうか.
 
 で,結論的には,糖質制限的には「JALビーフコンソメ」の半分量をカップ一杯の湯に溶かして飲むのが私のお勧めだ.そうすれば塩味も許容範囲になるし,糖質量は約 1g なので,糖質制限も楽になるのである.

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2018年6月 4日 (月)

ローリングストック用パン

 藤沢駅周辺の私の行動範囲にローソンが四店舗あるのだが,この二ヶ月ほど,早朝でも昼間でも,ブランパン類が棚から払底している.
 それまでは,糖質制限ダイエットに必須のアイテムだったブランパンは入手困難でも,高カロリー&高糖質のブランドーナツやブランアンパンは人気がないから売れ残っていたのであるが,最近ではそれも見られなくなり,ブランパン類の棚は何も置かれていないのだ.
 売れすぎて供給が全く追い付いていないのか,その反対にローソンの本部が糖質制限マーケットにもう関心がなくなって,ニーズに応える気がないのか不明だが,代替品を探してみた.
 
 私は実はこの一年間,早朝一時間ほど速歩でウォーキングをやったあとでデニーズで朝食を摂る時にしか,普通のパン (=高糖質) を食べていない.
 その理由は,有酸素運動をやった直後は血糖値上昇が緩やかになるからである.
 私の食後血糖値は正常範囲にあるが,ここで「正常」というのは,食後の血糖値上昇が「普通」という程度の意味であり,血糖が循環器にダメージを与えていないという意味ではない.
 若くて健康な人は別だが,私は心筋梗塞の一歩手前で冠動脈のバイパス手術を受けているから,これ以上,血管へのダメージは避けねばならない.可及的に食後血糖上昇を抑制する必要があるのだ.
 栄養知識のない一般人がブログに「GI値の低い食品,食材にしましょう」などと書いているのを見かけるが,これは嘘である.GI値が低いとされている食品を摂取した場合の血糖上昇データを検討すると,高糖質の食品摂取時よりも低いダメージが長時間続くに過ぎないことが多く,結果的に血糖が血管に与える総ダメージ量は変わらないから,低GI値だからと安心はできない.私のように循環器の老化が進行した高齢者は,低GI値などというインチキ理論 (「食べる順番」なんてのも一緒) に惑わされず,食材・食品に含まれる糖質の絶対量で自分の食事をコントロールする必要がある.
 また運動と食後血糖値については,食後すぐに有酸素運動を始めても,運動後に食事するのと同じ効果があると言われているが,こちらは消化によくないような気がするので,精製された糖質は運動後に食べるようにしているのだ.
 ちなみにデニーズの石窯ブールは,うまい.ファミレスの料理レベルを超えている.おまけに「御飯と味噌汁のセット」の糖質が約70グラム (←デニーズの場合) であるのに対して,「石窯ブールとバター」の糖質は32グラムだ.高齢者各位には,デニーズでの食事は,料理にライスをつけるのではなく石窯ブールにすることをお勧めする.一回の食事に摂る糖質がその程度なら,残りの二食の内容を工夫すれば,何とか一日の食事を,緩い糖質制限の範囲に収めることが可能だ.
 
 閑話休題.
 そういうわけで,パン屋には一年間入っていないし,スーパーへ食材の買い出しに行ってもパンの棚は見ずに通り過ぎていた.
 ところが最近,スーパーによっては,パン売り場で Pasco (敷島製パン) の低糖質パンが次第に存在感を強めていることに気が付いた.(ブランドサイトはここ)
 ただしこの Pasco の低糖質パン類は,あからさまに言えば羊頭狗肉で,ローソンのブランパンに比較すると糖質量が数倍多い.敷島製パンだけではないが,元々糖質量の多い食品に「糖質**%オフ」という表現をするのは欺瞞である.中にはパッケージに「糖質**%オフ」とだけ表示して糖質絶対量について情報提供しない悪質な食品会社もある.私たちはこのような企業に騙されずに,糖質絶対量で食事の内容を組み立てないといけない.
 
 糖質制限食的には,この Pasco の低糖質パン類と大差ないものに,株式会社ビアンタの低糖質パンがある.(ブランドサイトはこちら)
 これは, Pasco の羊頭狗肉商品と同様に無視していいかというと,少し違う.これは包装時に鮮度保持剤 (アルコール製剤で商品名は「フレッシュ ドット」) を同封してあり,いわゆるロングライフを標榜しているのだ.私が藤沢のダイエーで数回購入した際は,いつも賞味期限まで一ヶ月残していた.
 ということは,非常時の食料として有用なのである.
 長期の保存に耐える缶詰のパンは高単価であるが,このビアンタの低糖質パンは比較的リーズナブルな価格である.普段は糖質制限の補助的食品として一日に一つ食べて消費し,五つ食べたら五つ補充するなどして最大十個ほどのローリングストックをしておけば,災害時の食料として使える.
 このパンと組み合わせるのに適したレトルト食品は稿を改めて紹介する.

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2018年6月 2日 (土)

糖質制限中の晩酌にどうぞ

 藤沢駅の北口にある「さいか屋」から少し歩くと藤沢銀座商店街にダイエー藤沢店がある.私は,やはり藤沢駅北口にあるスポーツクラブの帰りに,このダイエーに寄って食料の買い出しをすることが多い.
 昨日も筋トレで一汗かいたあと,ダイエーで食材を仕入れた.
 いつも,ここでカット野菜を買う.値段のことだけ言えば南口のOKストアの方が少し安いように思うが,スポーツクラブからだと歩いて行くのが面倒なのである.
 で,今日の昼飯に,カット野菜 (レタスとオニオンのサラダ用) の二袋をサラダボウルに盛り,キューピー・イタリアンドレッシングをかけて食べた.

 そのサラダの量が少し多かったので食べ残しを冷蔵庫に入れておいたら,夕方にはレタスが「しんなり」して,鮮度が高い時よりもむしろおいしそうになった.
 そこで冷蔵庫から日本ハムの「ミートデコレ 切り落としペッパービーフ」を取り出して,野菜に和えてみた.

 するとこれが大正解で,晩酌というか夕食というか,なかなかイケる一品となった.コスト無視で,これにモッツァレラチーズとオリーブの実 (黒) を混ぜると,御馳走感が半端ではなくなる (ような気がする).

20180602a  

(食器は ARABIA ARCTICA の深皿 Φ17cm)

 これに合わせるのは,アサヒのビール風味リキュール「贅沢ZERO」 (糖質はゼロ) である.この一皿に含まれる糖質はドレッシングに含まれるものだけなので,糖質制限中の人にお勧めしたい.手間を厭わなければ,自分でフレンチドレッシングを拵える (意外にフレンチドレッシングは店頭で販売されていないことが多い) のもよい.ペッパービーフが好きでなければ,生蛸や白身の魚を薄く切って使ってもいいだろう.
 でも,そこまでするなら魚介をカルパッチョにして大皿に盛り,そこにドレッシング漬の野菜を付け合わせに添えるのがいいかも.その場合はワインがよいと思うが,おいしくて手頃な値段 (千円以下 w) の低糖質ワインって,探してもなかなか見つからないのだなあ.

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