食品の話題

定年まで食品会社の技術者として生きてきました.食品科学や食品の法律,食品事件など.

2022年6月30日 (木)

食品のブランドは製法とは無縁のものか /工事中

 日経《「八丁味噌」巡る老舗の訴え却下 東京地裁》[掲載日 2022年6月28日 21:00] から下に引用する.
 
農林水産省が地理的表示(GI)保護制度に登録した愛知県の豆みそ「八丁味噌」を巡り、老舗の「まるや八丁味噌」(同県岡崎市)が伝統的手法と生産方法が異なるとして国に登録取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は28日、訴えを却下した。
 原告側は、加盟していない組合の製法に基づく豆みそがGI産品に登録され、将来的に八丁味噌の名称で販売できなくなると主張。中島基至裁判長は「GI産品との混同を防ぐようにすれば、八丁味噌の表示ができる」とし不利益は限定的とした。
 
 食品産業に従事する者や技術者,研究者および食品に関心ある国民にとって,愛知県岡崎の特産品である八丁味噌に関して,戦国時代から現在に至る本家本元の製造者と,昭和末期に類似品の製造を始めた新参サードパーティ製造者との間で,長らく係争が行われてきたことはよく知られている.上に引用した新聞記事は,その最新の状況である.新聞社によって東京地裁の判決趣旨が異なるので記事読者は本件の理解が困難であるが,八丁味噌を巡る係争全体についてはウェブ上に解説がいくつかあるので,それを参照されたい.
 
 愛知県岡崎の名産「八丁味噌」は,戦国時代,岡崎城より西へ八町 (約八百メートル) 離れた八丁村で創業した二軒の味噌蔵,大田弥治右衛門家の「まるや八丁味噌」と早川久右衛門家の「カクキュー」が始まりである.
 しかし,昭和五十六年 (1981年) に「カクキュー」の前身企業が起こした商標絡みの裁判で,東京高裁が下した判決が,現在の「八丁味噌」の名称を巡る混乱を引き起こした.これについてWikipedia【八丁味噌】から一部を下に引用する.
 
東京高裁は「『八丁味噌』とは、愛知県岡崎市を主産地とし、大豆を原料とする豆味噌の一種であり、『八丁味噌』なる文字は、該商品を指称する普通名称であると認められる」ことを根拠として、カクキュー一社による商標出願を斥けた。ただしこれはあくまで「合資会社八丁味噌」という8文字の言葉に対してであり、「八丁味噌」という言葉に対する拒絶を意味するものではないとした。
 このように、「八丁味噌」という言葉は普通名称であることが認定されているが、同判決は、当時の名古屋地方におけるNTT職業別電話帳(タウンページ)、および岡崎地方におけるNTT50音別電話帳(ハローページ)にて「八丁味噌」の名称又は名称を冠したものはこの2社のみが記載されていること、および八丁味噌は愛知県岡崎市において江戸期より太田家及び早川家を製造元として作られてきた同地方の特産品であり、現在も合資会社八丁味噌(カクキュー)と株式会社まるや八丁味噌(当時は合名会社太田商店)の2社のみで醸造されていることを認めた。
 
 東京高裁判決は,《八丁味噌は愛知県岡崎市において江戸期より太田家及び早川家を製造元として作られてきた同地方の特産品であり、現在も合資会社八丁味噌(カクキュー)と株式会社まるや八丁味噌(当時は合名会社太田商店)の2社のみで醸造されている》ことを認めたにもかかわらず,「八丁味噌」は普通名詞であるとした.これは明らかな矛盾だ.健全な日本語感覚であれば,「八丁味噌」は製造者が老舗の二社に限られ,製造所所在地も限定されている以上,固有名詞だからである.
 司法の判断が正しいとは限らぬ.上記の東京高裁判決は「八丁味噌」は単なるブランドであり,製造に特別な醸造技術は必要としないのだと言っている.まるや八丁味噌およびカクキューでなくても,八丁味噌なんか誰でもどこでも同じものを作れる言っている.だから八丁味噌という言葉は普通名詞であり,それを老舗二社の製品に限定してはならないというわけだ.
 この「誰でもどこでも同じものが作れる」という思想は国中に蔓延している.例えば,最も酷い例は讃岐うどんだ.讃岐うどんは普通名詞であるから,全国どこで製造しても,讃岐うどんを名乗れると公正取引委員会が言明している.(Wikipedia【讃岐うどん】)
 行政的に讃岐うどんの製品規格 (と製法) が定められていればそれでもよかろうが,生麺で名産,特産,本場,名物等を表示する場合は基準 (公正競争規約) があるが,それ以外の場合にはそんなものはない.そのため全国各地で勝手に讃岐うどんが製造されている.
 
 一番有名な「香川県とは無縁の讃岐うどん」は丸亀製麺である.
 ITmedia《丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由》[掲載日 2022年2月22日 11:43] から下に引用する.
 
あまりにも有名な話なのでご存じの方も多いだろうが、丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスは兵庫県が発祥で、創業時は焼き鳥屋である。「讃岐うどん」の本場である香川県と縁もゆかりもないし、屋号である丸亀市には店鋪はもちろん、製麺所を経営したこともない。
 
 兵庫県の焼鳥屋だった店 (今の丸亀製麺) が讃岐うどんの店を始めたら大当たりして,ついには消費者は丸亀製麺こそが讃岐うどんの代表選手だと認知するに至った.
 香川県と県民にしてみれば,憎き丸亀製麺に切歯扼腕だが,相手が公正取引委員会では勝ち目はゼロだ.
 
 これと似たことを農水省がやった.
 上に述べたように,東京高裁が「八丁味噌」は普通名詞であると決めたために,老舗二社が大切にしてきた伝統的製造法は価値を失った.
 誰でも「うちの豆味噌は八丁味噌です」と言えば,それが通るようになったのである.愛知県内の味噌製造者の中に,それまで本家本元の老舗八丁味噌に遠慮して,八丁味噌を名乗らなかった愛知県内業者が「うちの豆味噌は八丁味噌です」と言うようになった.
 既に述べたカクキューとまるや八丁味噌は,「八丁味噌」の名の由来として「岡崎城から西に八町のところの村で創業致しました」と顧客に語ることができるが,それができない.
 例えばイチビキ (名古屋市) には「無添加八丁味噌」という商品があるが,製品名「八丁味噌」の意味の説明はない.もし説明しようとすれば東京高裁判決を製品名の根拠とするしかないが,いくらなんでもそれはみっともない.恥ずかしい.
 さらには同社には「愛知県産大豆100%の豆みそ」があるのだが,共に豆味噌であるのに両者の違いを説明できないのである.
 同社の公式サイトからコピーすると,「愛知県産大豆100%の豆みそ」の商品説明は《愛知県産大豆「フクユタカ」と天日塩を使用し、昔ながらの木桶で、じっくり熟成させました。添加物を使用せず、みそ本来の風味が味わえます》であるが,「無添加八丁味噌」は《地理的表示保護制度(GI)規格を満たした、無添加の八丁味噌です。豆みその特徴である旨みやコクを活かして、おみそ汁や煮物、料理の隠し味にも使えます》と書かれている.
 これを素直に比較解釈すると,「無添加八丁味噌」は原料に愛知県産の指定がない.国産大豆使用ですらないかも知れない.また「愛知県産大豆100%の豆みそ」は天日塩を使用しているが,「無添加八丁味噌」は使用する塩の指定がない.さらに,「愛知県産大豆100%の豆みそ」は木桶で熟成させているが,「無添加八丁味噌」は木桶で熟成とは書かれていない.ということはおそらくタンク熟成だ.
 こうしてみると,消費者に対して商品名に込めるメッセージがなく,原料も製法もなんら訴求ポイントがない.
 それでもイチビキは「無添加八丁味噌」を製造している.たぶん何の工夫努力をしなくても「八丁味噌」と名付ければ売れるからだろう.
 このように,「八丁味噌」は普通名詞だと断じた東京高裁判決がもたらしてものは,岡崎という土地に生まれた食文化の衰退だった.
 

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2022年5月 6日 (金)

崎陽軒の方針

 先日,うちの近所のファミリーマートで食べ物をいくつか買った.
 カゴに入れてレジに行くと,若い女子バイトさんがバーコードを読み取った.
 が,納豆巻を手に取って「あ」と言った.
「すみません,これ,もうすぐ期限切れなんでお売りできません.よろしかったら他のものはどうでしょう」
 いつもの私なら棚の商品の期限はちゃんと確認するのだが,この時はうっかりした.
「気が付かなかったよ,ありがとう.じゃ,それは止めて,おにぎりにするよ」
 
 コンビニによって少し違うようだが,弁当惣菜類は,だいたい消費期限の二時間から三時間前に棚からおろす.
 購入した客が家に着いたら消費期限が切れてました,なんてことのないようにするためである.
 だが,これに反対する人がいる.期限ぎりぎりまで売るようにすれば,食品ロスが減るじゃないか,という主張だ.
 それはそうだが,期限切れ一分前まで売るというのは,コンビニとしては大変な作業である.たくさんの弁当惣菜類にはそれぞれの消費期限があり,その期限が切れた瞬間に棚からおろす,というやり方は,言うは易く行うは難しである.たいていのコンビニは,ワンオペの時間帯があるから,そういう時間帯は一人で販売と商品管理をしなければいけない.それを客が強要してよいものか.考えなくたってわかる.
 常識人がそういうと ああ言えば上祐は 少しくらい期限が切れたって死ぬもんじゃないし,とか言うのだ.
 彼らは,食品ロスを減らすことは地球環境を守るための大切な手段であると言う.
 消費期限なんて細かい事は,食品ロス削減に比べりゃ大したことじゃない.つべこべ言うなっ! と言う.
 食中毒なんかを恐れていて地球環境を守れるかっ!と.
 彼らは,健康のためなら死んでもいいと言う健康オタクに似ている.
 こういう連中に限って,万が一食中毒が発生すると,管理ができていないと言って店を轟々と非難するのである.
 
 昨日,買い物に街に出たついでに,崎陽軒の売店でシウマイ弁当を買った.昼を少し過ぎていた時で,夕飯に食べようと思ったのである.
 スイカで支払いをして弁当を受け取るときに,店員さんが二時までにお召し上がりください,と言った.
 あと二時間ない.
「えーっ,そんなにぎりぎりなの? そんなにすぐ食べなきゃいけないなら買わなかったのにー」
 店員さんはニコニコしながら (マスクをしているが目はにっこりと微笑んでいる)「申し訳ありません」と言った.
 スイカの返金てのは対応店でないとできないので,その崎陽軒の売店が取消処理をしてくれるかどうかわからない.
「申し訳ありません」しか言わないところをみると,キャンセル処理をしてくれる気はないようだった.
 たかが弁当でもめるのは嫌なので,そのまま買って帰った.帰宅した時は期限が切れていた.
 
 崎陽軒は徹底的に食品ロスをなくす経営方針で知られる.たとえ販売機会を失っても,廃棄するよりはマシだという.
 デパ地下でも駅ナカでも,崎陽軒の売店に午後行くとわかるのだが,何種類もある弁当類のほとんどは,売り切れ,あるいは入荷待ちの状態になっている.
 販売予定数量がかなり少なく設定されていて,それ以上は製造しないのである.客が欲しいと思っても買えない状態を意図的に作り出している.作れば売れるだろうが,売れ残る可能性が高まる.だから作らない.
 崎陽軒のこの方針は徹底している.たしかこの件に関する記事が経済誌に載っていた覚えがあるのだが,検索してもどういうわけかヒットしないので紹介できないのが残念だ.
 
 余談だが,検索してヒットするのは,コロナ禍の初期に横浜港に停泊したクルーズ船の乗客とスタッフに,緊急に4,000食ものシウマイ弁当を寄付したのに,これが行方不明になった (廃棄された) という崎陽軒黒歴史の記事ばかりである.だがこれはこれで教訓が大であるので,記事の所在を示しておく.
 YAHOO!ニュース《ダイヤモンド・プリンセスに積み込まれた崎陽軒のシウマイ弁当4000食はどこへ?》[掲載日 2020年2月14 13:55]
 YAHOO!ニュース《消えたシウマイ弁当4000食どこへ?積み込み当日の昼、英国人男性がふ頭で発見》[掲載日 2020年2月16 14:21]
 
 さて,崎陽軒の弁当は「売り切れ御免」なのであるが,例外は看板商品のシウマイ弁当だ.
 これが入荷待ち,あるいは売り切れ状態になっていることはあまりない.
 これだけは最後の最後まで売り切るのだと思われる.
 そのため,私の場合のように消費期限が残り二時間以下になっていて,買ったあと用事が済んで帰宅したら消費期限が過ぎていた,ということが起きる.(上に紹介した記事を読むと,シウマイ弁当の消費期限が製造後何時間に設定されているかがわかる.関心がある向きは記事を読まれたい)
「そういう方針を納得できる消費者だけが崎陽軒のお客様なのです」と言われれば,はあそうですかとしか言いようがない.
 残る興味は,いったい崎陽軒の売店では,残り消費期限がどれくらいになるまで販売するだろうか,ということである.
 一分前だったらおもしろい.
「シウマイ弁当くださーい」
「はい,おひとつですか?」
「はい」
「八百六十円になります」
「スイカでお願いします」
「はい承知いたしました」
(ピッ; スイカ入力音)
「こちら,お品物になります.消費期限は午後二時ですので,残り二十秒です.間に合いました! お早めにお召し上がりくださいませー」
 ww
 レジ打ちの前に残りの賞味期限を教えて欲しいものだ.

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2022年3月27日 (日)

青唐がらし味噌

 長野県に小川村というところがある.長野市と北安曇郡白馬村の中間にあり,風景の美しい土地だそうだ.
 この小川村に第三セクター方式による村の事業で「おやき」(長野県の郷土料理) を製造販売する会社である「小川の庄」が作られたのは1986年とのことである.(同社の公式サイトにそうある)
 ある日,藤沢駅北口のスーパー「サミット」で買い物をしていた時,瓶詰めの棚に「農家の味自慢【青唐がらし味噌】90g入り」を見つけた.「小川の庄」の製品である.
 これはいわゆる御飯のお供だが,瓶とラベルのデザインがちょっといいなと思ったので購入した.
 ちなみに,パッケージが載っているアマゾンの商品説明ページは以下の通り.ただしこれは大手通販サイト用商品のようで,140g入りである.当然だが通販物流コストが上乗せされるから,スーパーで販売されている商品よりもかなり割高となる.
 
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 で,帰宅して賞味してみたら,これがなかなか旨い.白い飯が進むというやつだ.
 この食品の原材料は以下の通りである.
 
[原材料]
唐辛子,きゅうり,ふき,味噌 (大豆:遺伝子組み換えでない),みりん,ぶどう糖果糖液糖,米麹,かつおエキス,しょうゆ (大豆:遺伝子組み換えでない,小麦を含む),菜種油 (遺伝子組み換えでない),梅酢
 
 原材料表示を読めば明らかだが,日持ちを延長するための添加物は加えられていない.また色素も香料も無添加である.ラベルに開封後は1週間以内に食べてくれと書かれている.
 
 さて,この「青唐がらし味噌」と類似の商品を久世福商店が販売している.アマゾンの商品説明ページは以下の通り.
 
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 同様に原材料表示を引用する.
 
[原材料]
信州味噌 (国内製造),青唐辛子 (国産),水あめ,本みりん,植物たん白加水分解物,砂糖,寒天,酵母パウダー,/pH調整剤甘味料 (ステビア),(一部に小麦、大豆を含む)
 
 どちらがおいしいか,「小川の庄」の製品と実際に食べて比較してみるまでもない.久世福の青唐辛子味噌は,甘い味噌に青唐辛子と調味料を混ぜただけのものである.安いけど.
 しかも,食品の味を悪くするpH調整剤を使用し,さらに砂糖を使用しているにもかかわらず意図不明のステビアも添加している.まことに不自然なレシピと言わざるを得ない.安いから.
 久世福の青唐辛子味噌には「自然でおいしいものを作って消費者に食べてもらいたい」という製造者の心持が感じられない.安いけど.
 私ならこんな「テキトー仕事」の久世福の青唐辛子味噌ではなく,「小川の庄」の青唐がらし味噌を食べたいと思う.高くてもいいから.

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2022年2月17日 (木)

成城石井のピスタチオスプレッドは

 昨年,爆発的に売れた食品としてテレビ等で紹介されたものの一つに,成城石井が輸入販売している「ポリコム ピスタチオスプレッド 240g」がある.イタリアから輸入した食品で,輸入者は東京ヨーロッパ貿易(株) である.(本商品の公式サイトはここ)
 成城石井の店頭価格は¥1,070 (税込み) だが,アマゾンで買うとプライム価格が¥1,435もする.
 
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 アマゾン・プライムは,商品説明ページに「無料翌日配達」と表示しているが,実は送料込みの価格を,さも商品の税込み価格のように書いているのであるから,これは詐欺に近い.実態は送料は有料である.
 このピスタチオのスプレッドも,アマゾンはちゃんと¥365の送料を得ている.従って諸兄は,成城石井の店舗が近いところにあるのなら通販で買ってはいけない.(通販で送料を取るのはもちろん正当な行為であるが,それを「無料」と表示するのは,消費者保護の観点からして道義に反する)
 ま,それはそれとして,昨年末に私は,毎年の年末になると正月料理を届けてくれる知人に,お礼の意味で成城石井の売れ筋商品をいくつも見繕って,アマゾンに注文して贈った.その中に超人気商品だという「ポリコム ピスタチオスプレッド」を一瓶入れておいた.
 
 さて先日,藤沢駅北口の成城石井に買い物に出かけた.
 棚にピスタチオ スプレッドがあったので手に取り,ラベルの原材料表示を読んで私は愕然とした.
 瓶に日本語表示された原材料は以下の通りである.
 
[原材料名] 砂糖,植物油脂,ピスタチオ,脱脂粉乳,ホエイパウダー/乳化剤,香料
 
 つまりこの製品は,主原料の砂糖に植物油を加え,これにピスタチオとその他を加えたものである.
 配合割合の多い順に表示するのがルールだから,ピスタチオの配合割合は最大でも1/3以下である.脱脂粉乳とホエイパウダーも配合しているから,ざっとした印象ではピスタチオは全体の20%くらいではなかろうか.
 今時,砂糖が主原料の食品は各種果実のジャム類が代表であるが,このピスタチオスプレッドは,ジャムより加工度の高い食品だと考えられる.
 ピスタチオは堅果なので,私はついピーナッツバターに近いイメージをこのスプレッドに抱いてしまったが,これは大きな誤解だった.
 同じスプレッドでも,パンに塗って食べるアヲハタのピーナッツクリームではピーナッツが主原料なのに,えらい違いである.
 とにかく評判を聞いただけで進物にしてしまったのは間違いだった.会った時に謝っておかねばなるまい.

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2022年2月 6日 (日)

インチキ蕎麦 /工事中

スーパーで最も高価な生そば。安曇野麺匠「信州安曇野道祖神そば」に惣菜コーナーのかき揚げを乗せて食べてみた感想》[掲載日 2019年11月19日] を読んで,愚かな消費者が馬鹿なことを書いていると思った.
 この記事を書いたのは「ななし」というペンネームの人で,自己紹介欄に《関東在住、アラフォーニートの独身女子(?)です(^v^)。笑って言うことじゃねーだろって気もしますが、究極の自由人として人生を謳歌中。 学生時代の偏差値は測定不能か38前後をウロチョロしていました》と書いている.まあそのような偏差値レベルの記事だ.
 
二食で三百円超えなだけあり スーパーの他の安価な商品と比べ しっかりそばの味がする。好みでかき揚げなどを加えるとなお美味しい。トッピング次第では、駅中にある蕎麦屋の味を軽く凌駕する。
 
 この人が絶賛している「信州安曇野道祖神そば」は,スーパーでよく見かけるインチキ&ボッタクリ食品である.
 加工食品を購入する時は必ずパッケージの裏面に印刷されている「原材料」表示を読まねばいけない.
 これを読めば,大抵のインチキ食品に騙されることはなくなるからである.(「大抵の」と書いたのは,食品業界の内実を知らないと騙されることがあるから)
 まず,製造者である「安曇野麺匠」の公式サイトを見てみよう.トップページに次の文言が掲載されている.
 
MESSAGE
 美しい自然が産み出す本場安曇野からの信州そば。当社では、添加物、合成保存料を一切使用せず、安曇野ならではの信州そばを自信を持ってご提供しております。信州そば品評会において数々の賞を頂きました。「信州安曇野道祖神そば」「信州安曇野山麓そば」と銘打ち、包装に工夫を凝らし、「生そば」を冷蔵庫保存で二週間の賞味期限を可能にしました。
 
 次に「信州安曇野道祖神そば」の商品情報欄を調べる.すると下の画像に《330円 (税込)》と価格が書かれているだけで,他に何の情報もない.
 
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 食品の特性における安全情報の重要性は改めて言うまでもない.
 安全性情報とは,原材料とアレルギーに関する情報である.
 しかるにこの安曇野麺匠という製造者は,宣伝文句には《当社では、添加物、合成保存料を一切使用せず》と書きながら,使用原材料もアレルギー情報も商品情報に掲載していない.こういうことをする業者は,まず間違いなく「掲載したくない」から掲載していないのだ.隠したい,ということである.
 しかし実際の商品のパッケージには,原材料表示等が法で義務付けられているので,隠したくても書かざるを得ない.
 そこで,安曇野麺匠とやらが消費者の目から隠したいと思っている原材料表示を,実際の商品から下に転記する.
 
原材料:(そば) そば粉,小麦粉,小麦蛋白食塩 
 
 蕎麦 (蕎麦切り) という伝統食品は,蕎麦粉と「つなぎ」を原材料とする.(ただし十割蕎麦は蕎麦粉だけで打つ)
 つなぎには一般には小麦粉を使用するが,海藻類やを用いることもある.(ex. 越後のへぎ蕎麦など)
 では,なぜ「信州安曇野道祖神そば」には,伝統的な「つなぎ」ではない小麦タンパクと,本来は蕎麦に添加しないはずの食塩が添加されているのか.
 
 昔から,うどんには,ふんわりと柔かな食感のもの (大阪のうどん,博多うどんなど) と,小麦タンパクと食塩でグルテン形成させて強い「コシ」を示すものがあった.
 それが,讃岐うどんブームの頃から,消費者が強い「コシ」のうどんを好むようになった.
 今では,テレビのグルメ番組では麺類に「コシがある」は誉め言葉になっている.口の悪い人は博多うどんを「腰抜けうどん」とか「弱腰うどん」などと貶すありさまだ.
 そして,そんな風潮が蕎麦に波及した.
 蕎麦粉よりも,本来は「つなぎ」である小麦粉を多く配合し,うどんと同じ食感を消費者が求めるようになった.蕎麦 (蕎麦切り) はいつの間にか「よく噛んで食べる」ものになったのである.
 ではあるが,これは好き好きであって,普通の二八
 

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2021年12月18日 (土)

似非ほうとう

 突然「ほうとう」が食いたくなった.
 そこら辺のスーパーにもデパ地下にも見当たらなかったので,アマゾンを見てみたら酷い商品を発見した.
麺が本気で旨いほうとう 平打ち 生麺》だ.
 
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 上の商品の原材料には《小麦粉、食塩、加工でん粉、……》と書かれているが,「ほうとう」には食塩を入れてはいけない.食塩を使用したものは「ほうとう」ではなく「うどん」である.
「ほうとう」には加工でん粉も使用してはいけない.「ほうとう」の原材料は小麦粉だけである.「ほうとう」は山梨県の伝統的郷土食であるが,香川県の通販業者 (ぼくの玉手箱屋) が,「ほうとう」の偽物をアマゾンに出品して全国に販売するのは,山梨県民を愚弄することだ.
 また,全国各地のまともな「うどん」の中で,加工でん粉を入れているものは一つもない.食品添加物である加工でん粉をしこたま入れているのは讃岐うどんだけである.つまり讃岐うどんは日本の伝統食である「うどん」ではない.
 昔から香川には伝統的製麺技術が育たなかったのに,観光業振興のために「うどん県」を思い立った.製麺技術がなくても「うどん」的なものを作ることができる加工でん粉を使って「うどん」に似た「讃岐うどん」を作り出し (「うどん」と「讃岐うどん」は別の食べ物である),あたかも香川県が「うどん」の本場であるかのような宣伝を行ってきた.
 従って,この「麺が本気で旨いほうとう 平打ち 生麺」は,「ほうとう」でも「うどん」でもない何か,すなわち「讃岐うどん」である.
 こういうインチキ食品に☆一つを付けている人が《ぺらっぺら、ほうとうじゃなくて、きしめん、近所にほうとうを置いているところがなく楽しみにしていただけ残念、二度と注文しません》とレビューを投稿している.正しい評価である.
 ☆四つのレビューは無見識も甚だしい.これがステマでないとしたら,原材料表示を読まない消費者がいかに多いかということである.

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2021年11月 4日 (木)

ワサビ愛

 オトナンサー《刺し身の「ワサビ」はしょうゆに溶くか、身にのせるか どっちがいい?》[掲載日 2021年11月4日 08:10] に愚かなことが書いてあった.
  
刺し身の薬味の代表格が「ワサビ」です。独特の辛さと香りで、刺し身のおいしさを引き立ててくれる名脇役ですが、刺し身を食べるとき、ワサビをしょうゆに溶いて食べる人と、刺し身にのせてからしょうゆにつけて食べる人と、大きく2つの食べ方があります。
 味や栄養を考えたとき、最も効果的なのはワサビをしょうゆに溶く食べ方でしょうか。あるいは刺し身にのせてからしょうゆにつける食べ方でしょうか。料理研究家の長田絢さんに聞きました。
  
Q.味や栄養の面を考えたとき、ワサビをのせてからしょうゆにつける食べ方のメリットとデメリットは何ですか。
長田さん「メリットはまず、ワサビの香りや風味を直接楽しめることがあります。また、魚の種類や食べる人の好みによって、ワサビとしょうゆのバランスを調整できることもメリットです。さらに、ショウガなど他の薬味もある場合、使い分けやすいこと、すりおろした直後であれば、ワサビの栄養成分を効果的に摂取できることなどが挙げられます。
デメリットは、子どもやワサビの刺激が苦手な人にとっては、せっかくの新鮮な刺し身でもおいしいと感じられないことでしょうか」
 
 長田絢さんという「料理研究家」のプロフィルは,ここ
 驚いたことにこのかたは,刺身を食べるときは何が何でもワサビをつけねばならぬと主張している.
 ワサビを醤油に溶いて刺身につけるか,刺身に直接ワサビを載せて食うか,この二つしかないと言うのである.
 普通の大人であれば,刺身を食う際の薬味には色々なものがあることを常識として知っている.
 代表的なものはおろした生姜であるが,地方によってはスダチやカボスなどの柑橘果汁だけで食べることもある.
 一味唐辛子やニンニクを好む人もいる.もちろん薬味なしで,醤油だけで食べてもよい.塩締めにして,醤油なしで食べたって,それはもう好き好きである.
 しかるに長田絢さんは,サビ抜きを認めない.ワサビを醤油に溶くか,刺身に載せるかして食えというのである.
 醤油だけで刺身を食うのは許さない.生姜醤油も認めない.ワサビを併用せよと言う.
 だから,刺身に直接ワサビを載せると《子どもやワサビの刺激が苦手な人にとっては、せっかくの新鮮な刺し身でもおいしいと感じられない》から,その場合は醤油にワサビを溶いて食べろと言う.
 小さな子供がワサビを嫌がって泣こうがわめこうが,ワサビ抜きで刺身を食うのは許さないのだ.
 まことに感服すべきワサビ愛である.

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2021年11月 2日 (火)

サイテーなたくあん

 先日の記事《昭和期の弁当を拵えてみる》に補足する.
 
 昭和初期の弁当を再現する際にネックとなるのは,おかずに添える漬物だ.
 梅干しは,伝統的な製法で作られたものが,それほど探し回らなくても手に入る.
 しかし,たくあんは,そもそも伝統的な製法自体が忘れられつつある.家庭で作ることがなくなってしまったからである.
 昔の流儀のたくあんの作り方と,味を覚えているのは,高齢者になってしまった.YouTubeでは味まではわからないから,若い人たちが自作する場合にも隔靴掻痒の感がある.(たくあん用のぬか床が市販されているので,それを利用すれば何とかなるかも知れないが…)
 
 たくあんは,糠漬けである.調味液に漬けて作ったものは,干し大根の浅漬けである.こういうものをたくあんとして売っていいものか.
 いいはずがない.食品偽装である.
 そういう偽装たくあんにも程度の善し悪しがあって,Amazonで販売されている下の画像の商品なんかは,最も悪質な例である.
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 原材料表示を最初から見て行こう.
 まず,甘味料として「ぶどう糖果糖液糖」を使うのは許容範囲だが,そのあとがひどい.
 糠漬けであれば,漬け原材料の最初に「米糠」が書かれるはずだが,干し大根の浅漬けである上の商品は,「梅酢」の次に「ぬか類」となっている.「本干したくあん」と書くといかにも本格的なたくあんのように聞こえるが,嘘をつくんじゃない.
 で,表示されている「ぬか類」とはなにか.
 食品の世界で単に糠と言えば通常は米糠を指す.大麦の糠は麦糠,小麦の糠は「ふすま(麬)」というが,これらは家畜飼料や工業原料として用いられる.
 もしかすると,この製造者は米糠に,麦糠および (あるいは) ふすまを混ぜ込んでいるのかも知れないが,その理由がわからない.
 コストダウンのためであるとすると,もうこの段階で,伝統的なたくあんの製法を踏み外している.鋸のおが屑だって,珪藻土だって,安ければ糠の代わりに使うかも知れない.
 漬け原材料の次から,もう狂気の沙汰としか思えぬ原材料が列記されている.
 実はスーパーの店頭でも,これに類するたくあんが堂々と売られている.
 諸兄は,くれぐれもこのような道を踏み外したたくあんをうっかり買わぬように,ご注意あれ.

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2021年10月 3日 (日)

素材の味を台無しにする酸味料という添加物

 アフロ頭の稲垣えみ子さんが,食品添加物過敏症になってしまったという話を書いている.
 東洋経済ONLINE《「添加物と無縁な生活」は許されないという現実 「普通のサンドイッチ」で胃腸がパニック?》[掲載日 2021年10月3日 06:30] から引用する.
 
始まりは、数年前のある朝のこと。とある大手コーヒーチェーン店で何気なくヘルシーな野菜サンドとコーヒーを食べながら仕事をしていると、どうも胸のあたりがムカムカしてきた。全身もだるい。
 あれ、なんか体調悪い? お腹でも冷やしたのかしらと思ってやり過ごしたんだが、その後もその店に行くたびに、同じ症状に見舞われるのであった。
(中略)
 いや……これはどう考えても、添加物に体が過剰反応しているのではないだろうか。
 
私、いつの間にやらめちゃくちゃピュアな食生活! うっかりすると、添加物など1ミリも摂取せぬまま何日も過ごしているのであった。狙っているわけでも意識しているわけでもないのに、そうなっちゃっているんである。
 
「ピュアな食生活」は自然食品店に通わずとも、質素な暮らしをしていればものすごくフツーに手に入る。つまりはまったくお金などかからない。具体的には一食150~200円程度である。
 その2。現代では「ピュアな食生活」を送っていると、社会生活に支障が生じる。友達と楽しく食事に出かけた後で、倒れて寝込むということにもなりかねない。
 ……ということで、うっかり安くピュアな食生活を送っている私としては、普通の社会生活を送る必要上、定期的、意識的に、添加物入りのものを少しずつ摂取するよう心がけることとなった(個人的には「服毒」と呼んでいる)。どうにもこうにも妙な話だが、それが現代社会のミもフタもない現実なのである。
 
 ありそうな話である.
 調理済食品,加工食品の世界で,添加物まみれの食品は数あるが,サンドイッチもその一つだ.味付けに塗ってあるソースがもう無茶苦茶なのである.
 あまりにソースの添加物まみれが酷いので,コンビニなんかは公式サイトに載せるべきサンドイッチの原材料表示を隠している.消費者が必要とすることが全く書かれていない無意味な商品情報欄になっている.(例;ローソンのシャキシャキレタスサンド)
 カフェのサンドイッチを食べると体調を崩すので,仕方なく時々「服毒」しているというのだが,それはもったいない.せっかく「ピュアな食生活」をおくれるのだから,調理済食品を買って食べるのはやめたほうがいい.
 サンドイッチなんか,自作すれば添加物を無視できるくらいに減らせる.食パンではなくフランスパンに,マヨネーズを塗って,チーズと洗っただけのレタスをはさめばいい.これを弁当にして外出時の弁当にするのだ.これ,カフェのサンドイッチより遥かに安上がりだし.
 
 さて私はカフェやコンビニのサンドイッチで体調を崩したことはないのであるが,スーパーで売られている漬物は買わない.
 浅漬け風の漬物 (本来の漬物ではなく調味液に浸して作る即席食品だ) はまだマシだが,高菜とか野沢菜を漬けたもので,ポリ袋に包装されて売られているものの多くは,サンドイッチよりも酷いからだ.
 しかもまずい.
 まずい漬物に必ず入っているのが酸味料というやつだ.口に入れると感じるいやーな味のもとは酸味料であることが多い.
 私が忌避する添加物は,合成着色料とソルビン酸塩はもちろんだが,酸味料と加工デンプンも避けている.
 のであるのに,先日大失敗をした.
 あるスーパーの野菜コーナーを見て歩いていたら,皮を剥き下茹でして真空パックになっているサトイモがあった.
 こういうものを買うのは初めてだったのだが,何気なく手に取ってカゴに放り込んで買ってしまった.
 帰宅して翌日,ざっと水洗いして,醤油味で煮ころがしにした.
 そして口に入れて咀嚼して,私は腰を抜かした.
 思わず吐き出したほど異様な酸味だったのである.
 包装容器のポリ袋はゴミに出してしまったあとで,仕方なくスーパーまで出かけて同じ商品の原材料表示を確かめたら,酸味料が表示されていた.
 生のサトイモを料理するのはかなり手間がかかるし,サトイモには旬があるので,冷凍食品のサトイモを使うこともある.
 その冷凍サトイモとの連想で,真空パックのサトイモを買ってしまったのであるが,自分の迂闊さを歯噛みするほど後悔した.
 世の中にカット野菜や蒸した豆など,野菜を加工した食材は色々あるが,下茹でしたサトイモは,それらと一線を画する.
 なにしろ食い物とは思えぬ味がするのだ.他山の石とはこのこと.料理をする老人諸兄におかれては,くれぐれも真空パックのサトイモは購入されぬようご注意申し上げる次第だ.
 
 余談だが,稲垣えみ子さんのアフロ頭であるが,日本人の頭髪をあのようなスタイルにするには,薬物の作用を用いるのだろう.
 稲垣さんの食生活はピュアだというのであるが,頭髪は薬物まみれでもいいのだろうか.

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2021年9月27日 (月)

久助

 久助という言葉がある.人名ではない.
 Wikipedia【久助】から記述を引用する.
 
訳あり商品のひとつ。米菓業界でよく使われている業界用語のひとつであるが、包装された袋に表記されることもあるため、消費者の一部にも知られている。米菓以外では、小麦粉の甘煎餅、洋菓子のラスクなどでも同様に使用される例がある。
 割れていて、形状が不完全でも味覚的には正規品と比べて遜色なく、大きな煎餅の場合は、食べる際にわざわざ割ることもあるため、自分で食べるためには気にしない消費者も多い。また、たいてい複数の製品が混合されていて、大きめの包装となっているために、安価にいろいろな味を楽しむことができる。
 ただ、煎餅などでは、形状は完全でも、少し加熱しすぎたものなどが入れられる場合もあり、その場合は風味が正規品よりも劣る。
 正規の販売ルートでは流通せず、製造直売店や、菓子や食品の安売り専門店、道の駅、ネット通販などで限定販売されることが多い。》(文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 着色文字部分は,現在は事実と異なる.
 確かに昭和の昔は,上の説明の通り「久助」とは「割れていて形状が不完全」あるいは「加熱し過ぎて焦げた」米菓製品であったが,私の記憶では,平成の頃から「久助」の語義に変化が生じた.
 
 今,私の手元に根本製菓 (茨城県) の「やっぱり日本のお米 醤油ミックス煎 久助」がある.Wikipediaは《正規の販売ルートでは流通せず、製造直売店や、菓子や食品の安売り専門店、道の駅、ネット通販》としているが,私が買ったのは製造直売ではなく上野アメ横でもなく,スーパーで購入したものである.
 
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 包装のラベルに書かれたキャプションは以下の通りである.
 
昔ながらのたまり醤油で仕上げた醤油煎、黒胡麻煎、青のり煎のお徳用サイズ
 
 中身の煎餅は,全く欠けていない.味も焦げてはおらず,普通の煎餅である.
 つまり根本製菓は,久助を「お徳用サイズの煎餅詰め合わせ」だと定義している.
 しかしこの定義は米菓製造業者によってさまざまである.
 ざっと分類すると,
(1) 正常品質の煎餅を数種詰め合わせた徳用品
(2) 割れた形に成形して焼き上げた煎餅を包装した徳用品.割れた断面のフチが丸くなっているのですぐわかる.わざとらしい「断面」にも醤油がしみている.
(3) 正常な形状に焼いた仕掛品の煎餅を,わざと割り,これを醤油等で調味したもの.割れた断面にも醤油がしみているのですぐわかる.
(4) 正常な品質の煎餅をわざと割り,特売用にしたもの.断面に醤油はしみていない.
(5) 正真正銘の久助.Wikipediaの説明通りの訳ありレア品である.当然だが本来の久助は,スーパーに出荷できるほどの量は製造工程で発生しない.零細な手焼き煎餅屋で売られていたり,中小の米菓製造業者の工場に併設の売店で販売されている.
 
 似非「久助」は,米菓メーカーが販売者の求めに応じて特売品を製造する際に,正規品の価格を維持するために作るものだ.
 無理矢理に作った割れ煎餅だから,不良品なのではなく,消費者としては現在の「久助」はお値段安めで歓迎だ.
 しかし店頭で,手で割るのが難儀なくらい堅い厚焼き煎餅の「久助」を見かけると,これはちゃんと作った製品を割っているわけだから,ご苦労なことですなあと苦笑する.

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