食品の話題

定年まで食品会社の技術者として生きてきました.食品科学や食品の法律,食品事件など.

2019年6月 3日 (月)

なとりの珍味の嘘 /工事実況中 6/6 更新

 自宅のすぐ近くにファミリーマートがある.さすがにスーパーに比較すると値段はかなり高いのだが,野菜が販売されているので「あ,薬味のネギがないっ」なんて時は重宝している.
 少し前のネット記事で,コンビニ店主たちの覆面座談会の記事を読んだ.最近の新聞やテレビ報道で国民によく知れ渡ってしまったが,コンビニ本部の中で一番極悪 (フランチャイズの店主にとって) なのはセブンだそうだ.狭い地域に同じセブンを集中投下的に乱立させ,店舗数で他のコンビニを圧倒し,駆逐するという戦略なんだそうである.もちろんセブン同士の競争が生じるから,つぶれるセブンの店も多いと言う.要するに本部だけ儲かれば,フランチャイズ店がどうなろうと構わない,という話だ.
 それに比較すると,ファミマはかなりコンビニ店主の利益も考慮してくれるらしい.昔からそういう評判だから,私はコンビニが何軒も並んでいたら,まずファミマが第一選択で,次がローソンだ.セブンみたいな過酷なビジネスでなければ業界トップにはなれないのだろうが,人間でも,やりたい放題好き放題のタイプのやつは私の友ではない.
 先日,近所のそのファミマに買い物をしに行ったら,棚の入れ替えをしていた.おそらく本部から来た社員と思しき人が,酒のつまみ類 (各種乾き物やチーズ類) を棚から棚へ移動した結果,焼酎の棚の対面につまみ類の棚が配置された.私の場合で言うと,黒霧島紙パック1.8Lをカゴに入れてそのままの位置で振り向くと,目の前にズラッとおつまみが並んでいるということになった.これは便利だと思った.菓子類の棚にも少しずつ変化があり,こっちは私にはよくわからないが,客の動線を考慮した変更がなされたのだろう.
 さて,いつものように黒霧島紙パック1.8Lをカゴに入れ,そのままの位置で振り向いたら,目の前にファミマオリジナル商品の「ピリ辛焼かまぼこ」があった.ファミマのブランドだが,販売者は株式会社なとりである.
 買う前に習慣的に裏面の表示を読んだのだが,買ってからスキャンした画像を下に示す.(ファミマの公式サイトでは,パッケージ裏面表示は開示されていない)
 この画像に文字で書かれていることは,法で定められた記載事項であるから,これは著作物に当たらない.従ってこの画像の掲載は引用に相当しない.
 
ピリ辛焼かまぼこ
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 これがどんな商品かというと,「チーズかまぼこ」は細い棒状にカットしたチーズ加工品をタラすり身で作ったシート状のもので挟んだ食べ物だが,そのタラすり身シートだけを細い紐状にカットしたものだ.つまりチーズがないチーズかまぼこである.言葉で説明するのは難儀だから,パッケージに印刷されている画像を下に載せる.この画像は著作物であるが,どのような商品であるかを一目瞭然に説明するために不可欠であるから,これは正当な引用に相当する.
 
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 で,この手の珍味類は炭水化物が少ないのが普通だが,「ピリ辛焼かまぼこ」の栄養成分は圧倒的に炭水化物だ.
 これが炭水化物の多い原材料で作られているなら不思議はないが,「ピリ辛焼かまぼこ」の主たる原材料は「鱈すり身」であり,「鱈すり身」の主成分は,タンパク質だ.普通に考えれば,これはおかしい.タンパク質が主たる栄養成分になるはずである.ならば「ピリ辛焼かまぼこ」の主成分たる炭水化物は,一体どこからやってきたのか.
 実はこの商品の類似品 (糸柳焼かまぼこ) が,なとりオリジナルで販売されている.そこで,その類似商品に関して「原材料表示と栄養成分表示に矛盾があるがなぜか」という質問を送ってみた.なとりから回答が来たらこの続きを書くことにする.(下の書きかけ部分は,続きを書くのに必要な資料を,予測で掲げてある)
 なとりから回答がきた.下に全文を引用する.
 
お問い合わせいただきました件、弊社製品「糸柳焼かまぼこ」のパッケージに記載している「栄養成分表」の数値は、製品の栄養成分分析結果でございます。
同製品(糸柳焼かまぼこ)は、魚肉(鱈すり身)のほか、原材料名欄に記載の副材料を使った「魚肉練り製品」で、炭水化物欄の数値はでん粉や砂糖など、製品に使用した材料による糖質量でございます。
なお、栄養成分表示の順番は、「熱量(エネルギー)・たんぱく質・脂質・炭水化物・ナトリウム(食塩相当量)」の基本5項目については、この順番で表示することが定められています。
ご連絡ありがとうございました。
 
 私は現役会社員時代,対消費者窓口と食品関係諸法に関するコンプライアンスを所管する品質保証部門の長を務めた.その私が,いわゆる「お客様相談室」のスタッフに「これだけはしてくれるな」と指導したところの,極悪な回答の典型例が,上記のなとりからの回答である.つまり上の回答は,消費者からの質問を読みもせず,全く無関係の回答 (単なる用語の定義) を機械的に返信したものだ.
 すなわちこれは「あなたたち愚かな消費者は何も知らないでしょうから教えて差し上げますが,栄養成分表というのは…」という,いわゆる上から目線で書かれている.そして質問には答えない.これは食品企業として最低の慇懃無礼な行為である.
 しかも重大なことに,ここでこの担当者は《炭水化物欄の数値はでん粉や砂糖など、製品に使用した材料による糖質量でございます》と,法に違反していることを白状してしまった.
 加工でん粉と,でん粉は全く別物である.でん粉は植物 (イモ類やトウモロコシなど) から抽出された食品であるが,加工でん粉は「でん粉に対して人為的に化学反応を施して製造した」食品添加物である.かつて加工でん粉と,でん粉を区別しない時代があった.それをいいことに,加工でん粉は,化学反応に使用した薬品の残留などの危険性を考慮せずに製造されてきた.これに対する批判が高まったため厚生労働省は,加工でん粉を食品添加物として規制することにした経緯がある.
 話を戻すと,「糸柳焼かまぼこ」には,加工でん粉は使用されているが,でん粉は書かれていない.つまり,「糸柳焼かまぼこ」には,原材料表示に書かれていない「でん粉」が実際には使用されていることを消費者窓口担当者は書いてしまったのだ.私の最初の質問に対する回答に《炭水化物欄の数値はでん粉や砂糖など、製品に使用した材料による糖質量でございます》とあるが,表示上は砂糖もでん粉も使われていないことになっている.実際に使われているのは,人工甘味料のソルビトールであり,物性改良剤の加工でん粉であるが,消費者にはそんな区別は判るまいと侮っているのである.
 このような,消費者を馬鹿にしているとしか言いようのない,なとりの回答に,私はムッとしたので,ただちに次の趣旨の返信を打った.
「鱈の可食部には炭水化物はほとんど含まれていないが,工業的に製造される冷凍鱈すり身は,タンパク質の他に少量のソルビトールを含む(*註).しかし「糸柳焼かまぼこ」はタンパク質5.8gに対して,多量の炭水化物15.6gを含み,これはタンパク質の2.68倍にもなる.このようなものは鱈すり身とは呼べない.鱈すり身の加工品である」
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(*註) 「加熱ゲルの物性値とそのタンパク質濃度依存性から見た各種の等級のスケトウダラ冷凍すり身の加熱ゲル形成能」
(北上誠一 et al. 日本水産学会誌 75(2), 250-257 (2009) ) のTable 1 を下に引用する.

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  上表のAdditiveはソルビトールとポリリン酸Naの合計値である.この表では,ソルビトールとポリリン酸Naの内訳が不明だが,次の論文のTable 1 に明細が示されている.すなわちAdditivesはほんどがソルビトールである.
「冷凍すり身の加熱ゲル形成の耐凍性に及ぼすソルビトール と重合リン酸塩の協調作用」
(加藤登 et al. 東海大学紀要海洋学部「海─自然と文化」第10巻第1号 1-10頁 (2012) )
 
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 さてどんな再回答が来るか.私の予想では、また完全無視の回答がくるような気がする.w
 
 高橋徳治商店
なぜこんなにもたくさんの添加物が?それは原料の魚の量の違いによるものです。市販品は原料の魚が約30%。増量剤と水と油を混ぜて、すりみもどきを作る。乳化剤で水と油をくっつけ、なめらかさをだす。魚じゃないから、アミノ酸やいろいろなエキスや甘味料で味もつける。弾力剤で歯ごたえを、着色料と発色剤でおいしそうに見える色をつけ、保存料や酸化防止剤で長持ちさせる。
 
紀州名産「あしべ焼」蒲鉾本舗丸濱「かまぼこの豆知識」
副材料的な足の補強材としては、でんぷんが良く使われる。澱粉は足の強い魚では逆に足を落とすが、 足の弱い魚ではでん粉を 5~20%使用することで量を増やすとともに、ある程度足を強くする。

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2019年5月13日 (月)

三角おむすび

 先週放送の『チコちゃんに叱られる!』で,例のインチキな「食文化史研究家」の永山久夫が,例によって例の如く,支離滅裂な「独自研究」を開陳した.
 この日の放送の最初の出題は,お握りが三角なのはなぜか,というものだった.そしてこのチコちゃんの質問に対する解説をしたのが,嘘デタラメを平気で放言する永山だった.まず永山は,お握りは弥生時代からあったと主張した.それが下の画像 (テレビ画面をカメラ撮影したもの) である.永山は昭和六十二年に石川県中能登町で発見された「杉谷チャノバタケ遺跡」から出土した炭化した飯の塊が,最古のお握りだと言うのだ.
 
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 確かに,この炭化物が発掘された当初は,日本最古のお握りだとして報道され,地元では町おこしのようにして盛り上がった.ところがよく調べてみると,これはお握りではなく,呪術に用いられたもので,餅米を粽 (ちまき) 状に包んで蒸してから,さらに焼いたものだと判明した.そのため現在は,学術的には「粽状炭化米塊」と呼ばれている.この出土品についての石川県埋蔵文化財センターのコンテンツから,下に引用する.
 
ご紹介する「チマキ状炭化米塊」は、1987年 (昭和62年) 11月22日、鹿島郡中能登町 (旧鹿西町) に所在する杉谷チャ ノバタケ遺跡から、弥生時代中期 (約2,000年前) の竪穴建物 (住居跡) の壁際より単独で出土したものです。底辺が約5.0㎝、他の二辺が約8.5及び8.0㎝の平面略二等辺三角形を呈する炭化米塊 (厚さ約3.5㎝) は、加工・調理されたものとしては日本最古の出土品として、翌月 (22日) の報道発表以来、「日本最古のおにぎり」(の化石:生物の痕跡を指すという広い意味では、確かに本品はイネの化石 とはいえるのかもしれません) として話題を集め、地元においても町おこしの各種イベント等が開催されてきました。米粒の解析結果により、短粒・極小粒の日本型を呈する水稲品種の晩稲の糯米 (もちごめ) で、おそらく蒸されたのち焼かれたものとされ、形状等からも、炊かれて握られた握り飯 (=おにぎり) というよりは、包まれて蒸された (あるいは煮られた) ものに近いという意味で、チマキ (粽) 状炭化米塊とされたものです。 建物の壁際からの単独出土であることや粽の民俗事例などから、本品については、食用というよりは魔除け等呪的な用途が想定されますが、食べられるものであることに変わりはなく、食に関する体験講座等を支える重要な「証人」ともなっています。》(文字の着色はこのブログの筆者が行った)
 
 中能登町は「おにぎりの里」を自称して町おこしに取り組み,地元の諸々の観光案内系サイトも,いまだにこの出土品を「最古のお握り」として町を応援しているが,学術的にはもう決着がついたことで,この出土品はお握りではなく粽なのだ.町おこしの材料にしたい地元の気持ちは理解できるが,そろそろ諦めたほうがいいのではないだろうか.そして自称「食文化史研究家」の永山久夫は,公共放送でテキトーなことを言うでないと非難されるべきであるが,永山の放言はとどまるところを知らない.何としてでも粽状炭化米塊がお握りだと言い張る永山は,これは粽ではなく,三角お握りの先端が尖ったものだと主張する.
 
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 この出土した炭化米塊が「お握り」であることの説明として永山は,ここら辺へんから独自の境地に立って御託宣を宣う.考古学の専門家が粽であるとした形を,いや違う,これは神のおわします山を象ったものである,とする.何となればお握りは神饌だからであるという.(下の三枚の画像)
 
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 次に永山は,神饌としてのお握りは三角形だったが,人々が口にした食べ物のお握りは三角形ではなかったと述べた.(下の二枚の画像)
 
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 そしてここから突如,永山の支離滅裂な妄想が爆発する.神饌の三角お握りは何処かに行ってしまい,昔のお握りは丸かったという話になる.粽状炭化米塊はお握りだったとする主張を忘れてしまったかのようである.
 そして古来,お握りは丸かったとする根拠に源氏物語を持ち出した.
 
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 番組の画面では全く説明がなかったが,下の画面で「屯食」と書かれているのが,お握りだという.書物を引用するなら,最低でも書物の名称くらいは示さねばならぬが,永山にはそんな常識はない.下の画像の書籍は書誌事項が不明だが,現代語訳だ.読み取りにくいが,潤一郎訳と表紙に書かれているから,三つある谷崎源氏のうちの最初に刊行されたものだろう.谷崎源氏には同じテキストでも普及版やら愛蔵版などがあり,私はこの表紙の本を見たことがないので,どれであるかはわからない.ただし出版社は中央公論社で,国会図書館の蔵書だ.この現代語訳では,屯食は現代語に訳さず,屯食のままにしている.
 
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 しかし,この引用箇所は比較的よく知られたところであり,源氏物語の読者には「源氏物語 桐壺 第六段 源氏元服」であるとわかる.
 そこで下に,源氏物語の原文と,与謝野晶子による現代語訳を示す.

[原文]
 その日の御前の折櫃物 籠物など  右大弁なむ承りて仕うまつらせける 屯食 禄の唐櫃どもなど ところせきまで 春宮の御元服の折にも数まされり なかなか限りもなくいかめしうなむ

[与謝野晶子訳]
 この日の御饗宴の席の折り詰めのお料理、籠詰めの菓子などは皆右大弁が御命令によって作った物であった。一般の官吏に賜う弁当の数、一般に下賜される絹を入れた箱の多かったことは、東宮の御元服の時以上であった。
 
 実は永山久夫の学歴はよくわかっていない.もしかするとそのためかも知れないが,古典文学を読む基本姿勢ができていないようなのである.というのは,屯食が現代のお握りを意味するようになったのは江戸時代なのだ.これは我が国の食文化の常識である.食文化に関する常識がない「食文化史研究家」の永山は,高校生がそうするように,古語辞典を調べてみるべきであったのだ.すなわち平安時代の屯食は,酒食一般,あるいはそれを盛った台のことである.無知無学の永山は,江戸時代の屯食はお握りだから,平安時代もお握りだったと思い込んだのである.今なら大学入試に失敗するに違いない.
 源氏物語の現代語訳はいくつもあるが,与謝野晶子は屯食を「弁当」としている.さすがにこれは,なかなかこなれた訳文である.源氏の元服の祝いの席で,唐櫃と一緒にお握りが並べられているはずがないではないか.絹を収めた唐櫃と,食べ物を詰めた引出物の弁当箱が所狭しと並べられたのである.もちろん弁当箱に詰められたのは,質素なお握りなんかではなく,山海の御馳走であったに相違ない.
 この点について昨年,同志社女子大学の吉海直人先生 (日本語日本文学科教授) が《「おにぎり」と「おむすび」の違い 》と題したエッセイを同大学のサイトに載せておられる.その一部を下に引用する.
 
なおここにあげられている「屯食」は、平安時代から用いられている古い言葉ですが、既に意味が違っています。もともとは酒食のこと、あるいは酒食を載せた台のことだったのですが、江戸時代には公家社会において「握り飯」の意味で用いられるようになっているようです。そのことは『松屋筆記』の「屯食」項に、「公家にては今もにぎりめしをドンジキといへり」とあることからも察せられます。
 
 永山の高校生以下の思い込みは,江戸時代の有名な『守貞漫稿』の「握飯」項に「にぎりめし古はとんじきと云 屯食也 今俗或むすびと云 本女詞也」とあるのを読み齧ったからであろう.だがこれは,永山の無教養だけを指摘すればいいというわけではない.Wikipedia【おにぎり】も,次のように同じ間違いをしでかしている.
 
おにぎりの直接の起源は、平安時代の「屯食」(とんじき) という食べ物だと考えられている。この頃の「屯食」は大型の楕円形 (1合半) で、使われているのは蒸したもち米であった。「屯食」が意味するものは時代によって異なり、江戸時代に入ると公家社会では現在のおにぎりのことを「屯食」と呼ぶようになった。
 
 上の引用の前半が間違いである.平安時代には,台の上に蒸した餅米を盛ったものを屯食と呼んだが,屯食はそれに限定されるものではなかった.吉海先生がお書きになっているように,食べ物一般を屯食といったのである.そしてその平安時代の屯食,一合半ものおこわを台に盛ったものは,手にもって食べられる現代のお握りとは無関係である.いずれにせよ,弥生時代にお握りが存在したという証拠はなく,また平安時代の屯食はお握りではなかった.『チコちゃんに叱られる』で永山久夫がしゃべったことは大嘘なのである.
 
 以上のことだけなら永山は視聴者を騙せたかも知れないが,再び永山の説は暴走を始めた.
 永山は,ここまでの説明で《実は三角形だったのは神様にお供えするおにぎりだけ 》《人々が日常的に食べていたのはより簡単に作れる丸いものが多かった 》としていたが,江戸時代になると《三角おにぎりも日常的に食べるように》なったと述べた.(下の漫画中の赤い矢印は,このブログの筆者が描き入れた;実は私はこの漫画は初見であるため,出典を示せないのが残念である)
 
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 視聴者は,この漫画と永山の説明を聞いて,江戸時代には三角形のお握りが庶民に食べられるようになったのだと思うだろう.
 ところが永山の解説はアクロバット的に急転する.
 江戸時代には三角お握りが日常的にたべられるようになったと言ったすぐあとで,永山が子供の頃,三角お握りはなかったと前言を翻したのだ.なんだそりゃ,である.
 
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 そして,三角お握りが普通になったのはコンビニの影響だと語った.
 
20190514r
 
 下の写真で《思うんですよ》などと言っているが,そういうのを独自研究というのだ.思うのではなく,コンビニ本部に取材に行けと言いたい.
 
20190514s
 
 下の写真で,コンビニが三角形お握りを販売したので《全国的におにぎり=三角形に変化 》と永山は言うが,そんなことはない.今でもコンビニでは,丸い形のお握りが販売されている.中に具を入れて海苔で巻いたお握りを作る製造ラインでは,コンビニにお握りを供給している業界で普及しているお握り成型機の,米飯を充填する型が三角形なのである.フィルムのあいだに海苔を挟んでおいて,食べる時に海苔を巻くタイプのお握りは,三角形に成形するのが都合がいいのである.これについては,お握りの包装に関する技術史をネットで調べると大変に面白いので,関心ある向きはどうぞ検索して頂きたい.
 一方,赤飯とか鶏飯とか,あるいは刻んだ野沢菜を混ぜこんだものとか,要するに海苔で巻かないお握りは丸い形のものが多い.海苔を巻かないタイプのお握りは,成型機の型を交換して自由な形に成形できるのだ.永山はお握りの自動成型の製造ラインを見たことがないのだろう.
 また,現在の主要なコンビニは1970年代に実験店や一号店を出店し,1980年代に店舗数が拡大したのだが,それ以前,私の大学生時代に,立ち食い蕎麦屋やスーパーの食品売り場でお握りが売られていた.東京ではそれらのお握りはすべて三角形であった.三角お握りは,コンビニが普及させたわけではない.お握りの形には地方性があり,関東,特に東京では,コンビニの出店が増えるずっと前から,お握りは三角形だったのである.永山は,自分の母親が作ったお握りが丸かったからというだけの理由で,三角お握りを普及させたのはコンビニだと言うが,世間が狭すぎる.この爺さんは,その歳になるまで一体全体,世の中のどこを見てきたのか.
 ちなみに,私が中学生だった頃,三角のお握りを上手に作れない人のために,木製のお握りの型枠があった.これに飯を詰めてから抜き取ると,今のコンビニお握りのような三角お握りができる.それから,ちょっと角ばったところを丸みをつけるように軽く握れば,きれいな形のお握りができるという次第.やがて木製の型枠はプラスティック製に取って代わられた.合成樹脂製の型は,抜き取っただけでフンワリと丸みを帯びているので,手で形を整えることが不要で,大変に便利なものだ.これが画像の一覧
 
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 下の写真では,まるで丸い形のお握りはコンビニで販売されていないとでも言いたいようだ.丸いお握りが運搬や陳列の際に安定せず不都合があるなどとは,食品業界にいた私には初耳である.不都合があるなら,もうとっくにお握りは三角形だけになっているはずで,永山はここでも,取材せずに妄想で語っているのだ.
 
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『チコちゃんに叱られる!』に永山久夫がたびたび出演するが,いい加減にNHKは公共放送であることを自覚し,このような嘘吐き爺さんを登場させないで欲しい.幼い視聴者が多いこの番組で永山に解説をさせるのは,嘘を吐いてギャラをもらう生き方を見せることになり,児童教育的に大きな問題である.

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2019年5月 2日 (木)

低糖質ナポリタン

 およそ料理の発祥店とか,ウチが元祖だと称する話は眉唾が多い.いわゆるスパゲッティ・ナポリタンは,横浜の山下公園に面して建つホテル・ニュー・グランド (先の戦争が終わったとき,厚木に降り立ったD.マッカーサーが東京へ進駐する際に立ち寄ったことで知られる.マッカーサーの新婚旅行の思い出のホテルであった) の二代目料理長が考案したと一般に思われている (テレビの雑学番組など) が,よく調べてみると,彼の考案した料理は,ケチャップで味付けした日本の大衆料理「ナポリタン」ではなく,トマトソースを使用したちゃんとしたパスタ料理であった.そりゃそうだよね.ホテルのシェフなんだもの.ちなみにホテル・ニュー・グランドのレストランは,フレンチの「ル・ノルマンディ」とイタリアンの「イル・ジャルディーノ」だが,ホテル・ニュー・グランド流の「スパゲッティ・ナポリタン」は,コーヒーハウスの「ザ・カフェ」の献立だ.
 
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 レトルトパウチに包装されたパスタソースで「ナポリタン」を標榜する製品がカゴメやマ・マーマカロニから,あるいは同様の缶詰がハインツから出ている.Wikipedia【ナポリタン】に次のように書かれている.
 
マ・マー マカロニでは、1964年(昭和39年)にソース入りゆで麺のパックを「イタリアン」という商品名で販売しており、その後1983年(昭和58年)にイタリアンのソースをグレードアップしたものを「ナポリタン」という商品名で発売するようになった。
 
 昭和四十年代の洋食屋や喫茶店の献立であった「ナポリタン」はほんのわずかの玉葱とウインナ・ソーセージをフライパンで炒めて,これに茹でて作り置きしてあるスパゲッティを投入し,ケチャップで味付けしたものだ.うっすらと記憶しているのだが,確かにマ・マーマカロニ (日清フーズのブランド) のソース入り茹で麺のパックで「イタリアン」というのがあった.その影響だろうか,かつて関西圏と中京圏では,関東地方で「ナポリタン」と呼んでいた料理を「イタリアン」と呼んだ.しかし私たち関東地方の者は「そもそもスパゲッティはイタリアンだろうがw」と,その製品のネーミングを嘲笑した.それがあってか,日清フーズは「イタリアン」を「ナポリタン」と変更したのであった.紛らわしいが,これが日清フーズ式の「ナポリタン」の始まりである.そのパスタソースの名称が現在もレトルトパウチのパスタソースとして生き残っているのであるが,もちろんこれは関東地方の大衆料理の「ナポリタン」とは無関係である.
 家庭で「ナポリタン」を作るのなら,レトルトのトマトソースを使えばいいようなものだが,それらはいかにも現代風においしくて,昭和四十年代の首都圏における洋食屋あるいは喫茶店の「ナポリタン」のチープ感に欠ける.高齢者の爺さん婆さんはきっと覚えているだろう,皆さんが青春時代に通ったサ店のマスターは,オープンキッチンでトマトピューレとスパイスを炒めてソースを作ったりはしなかった.彼らは堂々と,私たちの目の前で業務用のケチャップで味付けしていたのだ.だから以下の記述において私が作る「ナポリタン」は,ケチャップを用いた「正統ナポリタン」である.
 
 記事《低糖質スパゲッティ》で試食したポポロの「低糖質ミートソース CarbOFF」は,パッケージの「調理例」写真と実物が大きく異なる内容貧弱な製品であった.これは同社経営者の見識の程度を示している.モノ言わぬ消費者をなめているのである.だから私はもう二度と「低糖質ミートソース CarbOFF」を買わないつもりだ.このブログ読者で,まだこのミートソースを買ったことのない人には,買わぬようアドバイスしたい.
 だが,同社製「ポポロスパ CarbOFF 1.4mm」は話が別だ.これは「緩い糖質制限食」の食材として価値があると私は思う.
 ただし,これは麺としておいしいというものではない.有体にいえば「うまくない」のだが,それを如何にして普通のスパゲッティ並みの味の料理にするか,これが消費者の腕の見せ所だ.何となれば,低糖質という付加価値は捨てがたいからである.
「うまくない」理由の一つは,茹でても硬いことだ.主原料はデュラム・セモリナではあるが,これに水不溶性の食物繊維からなるブラン (糠) を加え,押し出し製麺法で圧力をかけて成形してある.しかも成形後に乾燥工程を経ている.これは喩えてみれば,セメント (小麦粉) に水と砂利 (繊維質) を加え,圧を加えてから乾燥したようなものだ.非常に堅固なコンクリート構造物ができあがっているのである.w
 この記事の前では,この麺を15分茹でてみたが,やはり「博多ラーメン的バリカタ」状態であった.そこで今回は20分に延長してみた.茹で途中の一本を取り出して噛んでみたら,少しは食感が改善されたように思えたが,これ以上に長時間茹で続けるのは,煮込み料理ではあるまいし,浪費というものだ.Amazonのレビューに,圧力鍋で茹でた人の感想が掲載されているが,それが正解かも知れないと思った.
 今回はバリカタでも致し方ないと諦めて,20分で茹で上げた.
 この麺が「うまくない」理由の二つ目は,この麺にはブラン特有の臭気があることだ.もし20分以上茹でるのであれば,臭いが溶け出し,かつ煮詰まった湯を捨てて,新しい湯で茹で続けるとよいと思われる.
 具材だが,昔の喫茶店ではピーマンは入れなかったと思う.ピーマンを嫌いな人が多かったからだろう.野菜は玉葱のみが正調である.あとはウインナ・ソーセージだが,これはいわゆる赤ウインナを数ミリの厚さにカットして用いるのが正しい「ナポリタン」の在り方であるが,安価なハムの切り落としでもよろしい.ところが残念ながら私の冷蔵庫には赤ウインナの買い置きがなかった.そこで近所のファミマに出掛け,代替に「お母さんシリーズ」のチョリソを買ってきた.使ったのは二本である.赤ウインナなら三本ちょっとくらいに相当するか.
 まずフライパンで玉葱を炒め,火が通ったらチョリソの輪切りを加えて少し炒める.続いて茹でておいた低糖質スパゲッティ (まだ冷めていない) を投入し,塩と胡椒で軽く味をととのえる.次いでカゴメのチューブ入りケチャップを加えて,全体が均一に見えるように混ぜ合わせる.
 塩胡椒をしたのは,ケチャップだけだと糖分が多くなってしまうからである.それでは何のために低糖質スパゲッティにしたのかわけがわからなくなるからだ.以上で,上に掲載した写真のナポリタンの出来上がりである.
 食べた感想を正直に書けば,前回の記事で紹介した五木食品の低糖質うどんをケチャップで味付けした方がよほど「ナポリタン」に近い.ポポロの低糖質乾麺は,商品として失敗作だと思う.

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2019年5月 1日 (水)

低糖質スパゲッティ

 熊本県の製麺会社「五木食品」が,三菱食品の健康志向ブランド「からだシフト」シリーズで,うどん,そうめん,蕎麦を製造販売している.(「五木食品xからだシフト」でAmazonを検索すると出てくる)
 実際に食べてみると,これらがなかなか出来がよく,普通の乾麺と比較しても遜色ない.重度の糖尿病治療のために厳格な糖質制限を実行している場合は麺類は実際上食べられないが,糖尿病予備軍の人が健康のために,山田悟医師 (北里大学北里研究所病院糖尿病センター長) が提唱している「緩やかな糖質制限」をしている場合ならば,麺類を諦める必要はないことを実証してくれている.麺好きにはありがたい製品だ.
 ところが残念ながら,低糖質のパスタを五木食品はラインアップに持っていない.パスタと日本の麺類では,原料の小麦粉も製麺方法も技術的に全く異なるからだろう.
 しかし調べてみたら,はごろもフーズが,低糖質のパスタとパスタソースを販売していた.
 そこで「ポポロスパ CarbOFF 1.4mm」と「低糖質ミートソース CarbOFF」を購入して試食してみた.
 ここで私は失敗したのだが,スパゲッティの内容量を確認せずに目分量で半分に分けて茹でてしまった.つまり茹でたのは120gであるが,これは多すぎた.下の写真は大皿 (22cm径) に溢れるほどである.これではソースが明らかに足りない.従って一人前は一袋の三分の一,80gだ.
 
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 で,Amazonのユーザーレビューを読むと,酷評と好意的評価が相半ばしている.
 実はこのスパゲッティは,標準の茹で時間が10分なのであるが,これでは固くてまずい,として低評価である.
 しかし最近のレビューは好意的で,茹で時間を15分に延長すると,普通のパスタのアルデンテになる,と書いている人もいる.そこで私は15分間茹でてみた.
 しかし,その茹であがりは,明らかにアルデンテとは異なる食感であった.単に硬いのである.おまけに,咀嚼すると舌触りがボソボソしている.そこで,包装に表示されている原材料を下に書く.
 
原材料名 デュラム小麦粉のセモリナ、小麦たんぱく、とうもろこしでん粉、難消化性でん粉、米糠、オーツブラン / 加工でん粉 (小麦由来)、増粘剤 (キサンタンガム)
 
「難消化性でん粉」は最近はやりの食品素材で,レジスタントスターチともいう.ただし内容的には色々なものがあり,このスパゲッティに使用されているレジスタントスターチが食感を悪くしているかどうかはわからない.だが米糠とオーツブランがボソボソ感に寄与していることは確実だ.これらは食物繊維であり,いくら長時間茹でても,軟化することがない.「ポポロスパ CarbOFF 1.4mm」の食感が悪いのは,米糠とオーツブランの配合量が多すぎるからだろう.この硬くてボソボソな食感は,たぶんソースを工夫することでマスキングできるのではないかと私は思う.
 ところが「低糖質ミートソース CarbOFF」は,缶詰によくあるタイプの濃厚な食感ではなく,むしろ逆方向で,ゆるくてシャバシャバなのである.これでは全く麺にからまない.
 ついでだが,下の画像はミートソースのパッケージに印刷されている「調理例」の写真だ.右下に小さく「調理例」と書いてある.
 
20190501b
 
 実際の商品は,一番上の画像の通りで,ほとんど挽肉が入っていない.これのどこがミートソースなんだか不明な商品だが,パッケージの「調理例」は,まあまあミートソースっぽい.これだけ「調理例」と実際が異なると,購入した消費者は不信感を持つ.はごろもフーズは,そこら辺をどう考えているのだろうか.しかも,食塩 (相当量) が2.4gもあるのに,味がいわゆる「ボケている」のだ.不勉強な病院の給食のようである.
 この商品の実際の製造者は,はごろもフーズと同じく静岡市清水区の山梨缶詰株式会社である.すなわち,はごろもフーズからの受注生産品であるが.レシピは,はごろもフーズが作成したはずである.またスパゲッティの方は,群馬県太田市にある赤城食品株式会社だ.これも原料配合は,はごろもフーズが指定したはずだ.
 しかるに,この二つの製品の相性の悪さは何としたことか.「ポポロ」ブランドで世に知られた,はごろもフーズの製品とはとても思えない.もしかすると,「からだシフト」のブランドホルダーである三菱食品の意向が働いているのだろうか.
 いずれにせよ,いささかがっかりした.麺が残っているので,ナポリタンでも作ってみる.実行したらまた記事にしようかと思う.

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2019年3月31日 (日)

カップ麺のスープ後入れ方式

 カマタミワさんの新刊『ひとりぐらしこそ我が人生』が出たので早速購入 (Kindle版) した.
 最初の方に次のような四コマがあった.
二コマ目《初めてお高いのを買った時 あとに入れる液体スープも先に入れちゃったんだよな だがもはやそんな失敗はしない私だよ
三コマ目《お湯も注いだし さて何分待てば…
 ここでカマタミワさんは「粉末スープもお召し上がり直前に」とカップの「調理方法」に書かれていることに気が付いた.
 これについてのミワさんの感想は以下の通り.
最近のは粉も後入れのやつがあるの!? 知らんかったけど!? よく食べるのはドラッグストアで買う安売りのシーフードヌードルで、お高いの買うの数年ぶりだから知らんかったんだけど!? ここ数年の変化?
 
 実は私もつい最近,このことに気が付いた.
 味付き即席麺の嚆矢である日清チキンラーメンが世に出たあと,じきに麺には味を付けず,粉末スープを小袋に入れて添付する方式になった.その方が,本物のラーメンに少しでも近いからだろう.
 それからあと,「粉末スープ+ごまラー油」は「出前一丁」の独自方式だったが,スープが粉末と液体の二つが主流になり,さらには調味油も別添になってスープ三袋別添方式まで出てきた.たしか高価格帯のカップ麺では,具の袋と香辛料なんかまで付いて五袋方式まであったような気がする.
 さすがに今は具とスープ二袋に落ち着いたが,この場合は具と粉末スープを先に入れてから湯を注ぎ,食べる直前に液体スープ (中に調味油が一緒に入っている) を加えるという時代が長く続いたはずだ.
 それが,最近は先入れは具だけ (まれに具も後入れ方式の製品がある) で,スープは粉末も液体も後から入れる方式になっている.全即席カップ麺がそうかは知らぬが.
 これは生ラーメンの作り方と同じで,麺自体に味がつかなくて私の好みではこれがいいと思うのだが,それでは,なぜ以前は粉末スープを先入れにしていたのか,それが疑問だ.
 これについては昨年辺りからネット掲示板やブログに情報が現れている.それを読むと「粉末スープを後入れにすると,先入れよりも風味がよいから」との記事あるいは質問への回答が散見されるが,これでは「なぜ以前は粉末スープを先入れにしていたのか」の答えになっていない.後入れの方が味がいいなら,後入れにすればいいからである.現時点で,日清チキンラーメン以外の袋入り即席麺はすべて,粉末スープを後から入れる調理方法だから,カップ麺も後入れにして何の不都合もないはずである.
 一つ考えられるのは,粉末スープにデキストリンとか食添増粘剤を入れ,トロミで「濃厚さ」を増強するためではないか,ということ.この場合は,後入れにせざるを得ない.先入れにすると,デキストリンあるいは食添増粘剤が不均一に固まってしまいやすいからである.この解釈では,カップ麺の場合は,袋入りラーメンと異なり,メーカーとしては先入れにしたい (理由はわからない) のだが,「濃厚さ」を優先すると,後入れになってしまう,ということだ.
 これはもう即席麺メーカーに問い合わせるしかないかも.あるいは『チコちゃん』にでも質問葉書を出してみるか.

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2019年3月26日 (火)

戸塚 「そば処 しら石」

 数年前に「成熟そば」の話をどこかで知った.
 その時は変な言葉だなと思った.成熟と熟成はどう違うのか.蕎麦が成熟するってのは日本語として違和感があるぞ,と思った.
 日本の国語辞典中,最も信用できる日本国語大辞典 (日国) にある「成熟」の語義によると,
 
(1) 果物や穀類が十分にみのること。よくうれること。また、人の心やからだが十分に成長すること。
(2) 上達すること。熟練していること。熟達。
(3) 情勢や機運などが最も適当な時期、あるいは充実した時期に達すること。
 
とある.次に「熟成」の意味はどうかというと,
 
(1) 十分にでき上がること。また、機会が熟すること。成熟。
(2) 化学物質、配合原料、中間的な半製品などが、特定条件のもとで内部から自然に化学反応を進め、必要とする物理的または化学的性質を獲得していくこと。食品工業、窯業、肥料工業、ビスコース工業などでいう。
(3) 動物体の蛋白質、脂肪、グリコーゲンなどが、酵素や微生物の作用により、腐敗せずに適度に分解され、特殊な香味を発すること。なれ。
 
である.
 では「成熟そば」とは何かというと,狭義には秋に収穫して脱穀してから半年近く低温で保存されたソバの子実 (「丸抜き」という) を指すが,広義にはそれを挽いた蕎麦粉,さらにはその蕎麦粉で打った蕎麦を意味しているらしい.
 草本植物全般に言えるかどうかよく知らないが,栽培作物では,それが有限伸育性であるか,無限伸育性であるかが重要である.
 有限伸育性とは,イネが代表的な作物で,開花すると茎や葉の成長が止まり,光合成した貯蔵物質を種子に集中する性質のことである.この場合は,一本の稲穂の米粒全部同時に完熟するのみならず,同時に栽培されてきた他の個体も同時に完熟する.イネにはこのような性質があるので,期が熟したら田圃の稲を一斉に稲刈りできるわけだ.
 これに対して無限伸育性の作物は,開花して結実しても,その植物個体の成長は止まらない.また新たな開花と結実が生じる.その結果,普通のトマトを見ればわかるように,一本の茎に赤く熟した実とまだ緑色で熟していない実がついている状態となる.従って無限伸育性の作物は,全部の実が熟したところで一斉に収穫するということができない.トマトのように熟したものを順に一つ一つ収穫していくことになる.実はこれは,ある種の野菜にとっては有利な性質で,収穫時期の幅が広くなる (店頭に出回る期間が長い) のである.
 余談だが,ダイズのように品種によって有限伸育性のものと無限伸育性のものが存在する作物がある.この場合のように品種に関しては有限伸育性型,無限伸育性型と呼ぶことがある.有限伸育性型のダイズは種子が大粒であり,収穫される種子の数は少ない.無限伸育性型のダイズは種子が小粒で,収穫できる種子の数が多い.言い換えると,結実した種子の数が多いから小粒になるのである.実際は用途によって,この二種類の作付けを仕分けている.日本に米国から輸入されている大豆は搾油用であり,小粒の品種である.
 さて「成熟そば」のことに戻る.栽培作物のソバは,無限伸育性なのである.これを私は,農学部出身のくせに,この歳になるまで実は知らなかった.知識がないことの言い訳にはならないが,実際のところ,収穫期のソバ畑を目で見たことはなかったからである.
 で,ソバはトマトと異なって,ああいう作物だから,熟したものを順に収穫するということができない.一斉に収穫せざるを得ないのだが,都合の悪いことに,後から結実した種子が完熟するまで待っていると,先に成った実が地面に落ちてしまうのである.すると結果的に収量が減ってしまう.そのため,秋の最大収量の時期に収穫されたソバの子実 (玄米と同様に玄蕎麦という) には,完熟した粒と未熟の粒が混在することになる.いわゆる「新蕎麦」は,このような状態の玄蕎麦を挽いて作った蕎麦粉を打った蕎麦なのである.
[註;玄蕎麦の構造は,一番外側に黒い殻 (果皮) があり,その内側に甘皮 (種皮),内部に胚乳部・子葉部 (胚芽) がある.玄蕎麦から殻を取り除いたものを「抜き」とか「丸抜き」と呼び,この状態で保蔵する.製粉業者はこの丸抜きから数種類の蕎麦粉を篩分しながら製造するが,子実のどの部分が含まれているかで蕎麦粉の色や風味が異なる]
 例えば米の場合,言葉の定義からいうと新米とは,それが収穫されてから,次年度産米が収穫されて市中に出回るまでのものをいう.次の年の米が出回ると新米から古米に呼び方が変わるのである.
 しかし私たちの習慣では,秋に収穫された米が新米と呼ばれるのはせいぜい年内である.なぜかというと昔は,米の保蔵技術が低く設備 (温度管理できる倉庫) もなかったため,年を越すとどうしても品質劣化が進み,食味が明らかに低下したからである.高齢者は記憶しているように昔は,夏場の米は品質が悪かったから,一層新米の旨さが引き立ったものである.しかし現在では保蔵条件が進歩したから,一年中おいしい米が食えるようになった.ありがたいことである.
 実は蕎麦も米と同じなのである.いわゆる新蕎麦は,ソバの子実が晩秋に収穫 (ちなみに北海道産が一番早く出回り,かつ北海道が最大産地であるため,蕎麦にはハシリがなく,一気に旬が到来する) されてからせいぜい年内の蕎麦をいう.理由は米と同じで,昔は年を越した蕎麦の実は品質が低下したからである.ところが,保蔵技術が格段に進歩した現在では,新蕎麦よりも,むしろ年を越して二月から三月あたりの蕎麦のほうが旨いじゃないかという説が,蕎麦職人の中から現れた.
 神奈川県川崎市の「幸町満留賀」と同市「石臼挽きそば 長寿庵」の二店の店主たちが上の説を提唱し,年を越してから製粉した蕎麦粉の蕎麦,すなわち「成熟そば」が美味であるとする宣伝活動を始めた.そして次第にこの説に賛同する店が増えてきたのが現状である.
 ただし,現時点では「成熟そば」は少数派である.老舗の名店は新蕎麦を善しとして,「成熟そば」には無関心ではないかと思う.
 また,「成熟そば」には食品科学的エビデンスがない.あくまでも経験的かつ感覚的な話にすぎない.私見だが,「成熟そば」は食品科学分野の恰好な研究テーマになるのではなかろうか.「成熟そば」が旨いという説が事実なら,これは「丸抜き」状態の蕎麦子実において一種の追熟現象が起きているのかも知れない.あるいは香気成分の化学的変化が生じている可能性も考えられる.とすると,「追熟そば」または「完熟そば」が日本語として正しいのであるが,オリジナリティを尊重して,本稿では「成熟そば」としておく.現役の食品科学研究者がこれに関心を持って,「丸抜き」の追熟あるいは完熟現象を科学的に解明してくれないものかと思う.
 
 というわけで,今年も「成熟そば」の時期がやってきたのだが,つい先日,横浜市戸塚区と藤沢市が接する辺りで「成熟そば」と染めた幟を見つけた.箱根駅伝第三区のランナーたちが,右手に藤沢バイパス入口を見ながら藤沢橋交差点へ向かって走る地点だ.この幟は,造酒屋が新酒の時季になると軒に杉玉を下げるのと似ていて,「成熟そば」をお出しできる時季となりました,との意味であると言う.その幟を立てていたのは,「幸町満留賀」や「石臼挽きそば 長寿庵」とは違ってほぼ無名の「そば処 しら石」という店である.川崎まで蕎麦を食いに出かけずに済むのはありがたい,と私は早速店に入った.
 普通の蕎麦屋なら客で混雑が始まる午前十一時半の少し前だったが,店内に先客は一人もいなかった.だが,掛かってくる電話に出る女将さんと思しき女性は「一時間待ちです」と答えていた.どうやらこの蕎麦屋は,店に来る客よりも出前が中心の店のようであった.
 私は天ざるを注文したのだが,できあがるのに二十分近くを要した.厨房は出前をこなすのに大忙しであるのだろう.
 やってきた蕎麦には海苔が載っていたが,これは邪魔なので,まずは海苔だけを食べてしまい,続いて蕎麦を数本,口に入れて噛んでみた.そして「おお,なーるほど」と膝を打った.確かに,新蕎麦とは異なる風味があったのである.「成熟そば」説は事実だろうと私は思う.実際に私は,蕎麦つゆなしで半分ほどを食べてしまった.残り半分にはほんの少しの蕎麦つゆを付けて食べたから,蕎麦つゆは天ぷらのために使ったようなものだった.出前中心でやっている無名店でも馬鹿にはできないなあと感じた次第である.
 ただ一つ,文句がないことはない.エビの天ぷらがいわゆる「蕎麦屋の天ぷら」で,衣がサクッではなく,バリバリに固い.もしかすると薄力粉に重曹を加えているのかも知れない.つまり温かい天ぷら蕎麦用に揚げる衣と区別がされていないのだ.しかも衣をできるだけ大きくなるように揚げている (いわゆる「花を咲かせる」だ;動画はここ) ため,前歯で噛むとバキと煎餅のような音がした.w
 蕎麦は旨かったが,天ぷらは落第点である.この店で蕎麦を賞味する場合は,蒸籠だけにするのがお勧めである.言うまでもなく,かけ蕎麦や温かい種ものは,蕎麦の旨味もへったくれもないので,富士そばでよろしい.w
 
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2019年3月21日 (木)

年寄り向けのオヤツ

 今の高齢者というものは,特に会社員の男だが,体に良くないことばかりして生きてきた人が大半であろう.戦中生まれで無能だが権力欲は強い上司と,言われたことしかやらない部下たちとの板挟みになり,その結果のストレスが故に大酒を飲み,〆のラーメンを食いながらタバコを吸い,資産は蓄えずに大量の内臓脂肪を蓄えてきた.
 会社員の場合,勤務先の健康診断では普通は動脈硬化の診断はしてくれない.しかし,そこら辺の内科医でも頸動脈の狭窄はエコー検査で診てくれるし,少し大きめの病院に行けば,心臓冠動脈の造影検査をしてくれる.そこで高齢者諸兄,それらの検査を行い,結果を見て驚くがよい.私と同様に,貴兄の血管はボロボロである.
 思い出ぼろぼろは胸にしみるが,血管ぼろぼろは,やがて狭心症の胸痛をもたらす.この血管老化の大きな原因は喫煙と高血糖だと考えられる.それは現在では常識だが,私が若い頃は喫煙は肺がんとの関係を指摘されていたが,動脈硬化の原因だとは私は知らなかった.それで一日に二十本も吸うスモーカーになってしまった.そして狭心症の症状が出てから,ようやく喫煙をやめた.
 喫煙は自らを律すれば禁ずることができるが,高血糖は自覚がないので,コントロールするには病院で検査 (通常は食後1時間の血糖値と,HbA1c値) をしてもらうしかない.だが食後血糖値もHbA1c値も検査結果であって,食事の指針にはならない.検査値が,現在の定説である食後血糖値 140mg/dl,HbA1c 6 以上であった場合は,糖質制限をする必要がある.
 また,検査値が正常範囲内にあっても,必要以上に糖質を摂らないほうがいいことは今では常識だ.必要な糖質量とは,筋肉と肝臓に蓄えることのできる糖質の最大量のことである.これ以下にするのは避けたほうがいいという.なぜなら,このような状態で筋トレをしても,筋肉が増えることはないからである.
 重度の糖尿病の治療のために糖質摂取を厳しく制限すると,筋肉が衰える.一昨年の夏に私は糖尿病を発症したが,厳しい糖質制限と有酸素運動を実行し,三ヶ月で治癒した.その当時は,筋肉量が減った自覚もあったし,体から力が抜けたような状態で,速く走ることが全くできなくなった.筋肉に糖質が枯渇すると,無酸素運動ができなくなるのであると言われていたが,それが実感できた.厳しい糖質制限は,糖尿病の治療法であって,治療が終わったらやめたほうがいい.
 私は今,筋トレと緩やかな糖質制限を行っているが,これでHbA1c値も食後血糖値も正常である.
 緩やかな糖質制限食のいいところは,食いたいものが全く食えないというストレスがないことだ.米の飯やパンを腹いっぱい食ったりしなければ,天ぷらやトンカツを食いながら酒を飲んでも大丈夫だ.ジャンクフードの雄,ケンタッキー・フライドチキンもOK.お茶の時間に,お菓子もつまんでもいいが,しかしお菓子のためにトンカツを諦めたくはないので,低糖質のお菓子を愛用している.そのいくつかを紹介する.
 下の画像は,アサヒ食品グループの「乳酸菌ビスケット チョコチップ入り ココア味」「乳酸菌ビスケット 豆乳の甘味 プレーン味」,グリコ「SUNAO ビスケット 宇治抹茶」,ファミマ「RIZAP ミニチョコチップスコーン」である.
 
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 Amazonの中を検索すると「おから」を材料にしたクッキーがいくつも出てくるが,はっきり言わせてもらうが,マズイ!
 あるものは異常に硬くて歯が欠けそうだ.またあるものは異常にボソボソで,高齢者は誤嚥必定である.
 やはり技術力の高いメーカーはいいものをつくっているなあと言わざるを得ない.中でも上に挙げた「乳酸菌ビスケット」は,素朴なビスケットで,紅茶に添えるのにいい.グリコのSUNAOビスケットは,甘味料の後味に問題があると思う.RIZAPのミニスコーンは,従来は大きいサイズだったのを小さいサイズにリニュアルしたものだ.これを二つ三つ,コーヒーに添えるのも,スコーンが嫌いでなければお勧めだ.
 ただし,これらは酒のつまみにはならない.一日の摂取糖質量が少なかった日には,柿ピーをつまみながらハイボールを晩酌 (といっても深夜だが) している最近の私である.


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2019年3月11日 (月)

グルテンフリー

 食物アレルギー現象は複雑 (厚労省サイトのコンテンツ《食物アレルギー 》) で,発症時の年齢によって小児型と成人型に分類されるなど,発症メカニズムの生化学的理解は簡単ではない.
 生化学的理解は難解だが,現象的には鶏卵,牛乳,小麦,大豆,米が五大食物アレルゲンとされている.
 このうち,小麦と米は主食的な食材であるため,そのアレルギーがある場合は食生活に大きな影響がある.
 日本人で小麦アレルギーを有する人がどれ位いるかという大雑把な数字はないように思われるが,種々の資料から推測すると,全人口の 1% 以下ではなかろうか.
 米アレルギーはそれより少ないと推定されるが,低アレルゲンの米が機能性食品の第一号 (1993年に東大農学部の荒井綜一先生らが開発した) であったことは,あまり知られていない.この研究成果は資生堂から市販されたが,やはり市場性が余りにも低かった (すなわち高価にならざるを得ない) ためだろう,現在は販売終了している.
 小麦アレルギーに話を戻す.小麦は私たち日本人でもそうだが,欧米人の食生活では特に小麦に対する依存度が高いので,小麦アレルギー対応食品の市場は日本よりずっと活性化している.(《小麦大国のグルテンフリー食品 》)
 グルテンフリーとは,グルテンフリー・ダイエットのことで,本来の意味は「グルテン除去食」であり,小麦アレルギー対応食品であったのだが,米国のいわゆるセレブ層が近年「グルテンフリーは健康にいい」として大きな流行になりつつある.日本では最近,メディアが流す情報の中に「痩せる」という意味で「グルテンフリー」という言葉が散見されるようになった.
 単に「グルテンフリーは健康にいい」というと,フード・ファディズムとかオカルト栄養学 (筆者の造語 w) のようであるが,Wikipedia【グルテンフリー・ダイエット】は次のように述べている.
 
結局グルテンが含まれる食品を除去することであり、米などの他の炭水化物に置き換えない限り、炭水化物の摂取量を減らすことになる。
 
 婉曲な記述だが,つまり,痩せるという目的でのグルテンフリー・ダイエットは,小麦の忌避に意味があるのではなく,結果的に糖質制限食なのだと言っていて,おそらくそれは正しい.
 上に挙げた《小麦大国のグルテンフリー食品 》には次のように書かれている.
 
小麦アレルギー・セリアック病・グルテンに敏感な人々はグルテンフリー商品を切実に必要とするが、マジョリティの消費者ではない。グルテンフリー商品を消費する真のマジョリティは、小麦を摂取しても何の問題もない人々であり、その理由は単なるダイエットである。数年前に、グルテンフリーダイエットを提唱する『Wheat Belly』という本がベストセラーになってから、多くのセレブがこのダイエット方法を真似するようになった。そのダイエット効果について疑問視する声も多いが、健康ブームとして、大勢の人々がグルテンフリーダイエットを行うようになったのは事実である。現在の市場規模は一〇億ドルであるが、二〇一九年には現在の倍以上に成長するとみられている。
 
 テレビの報道によれば,最近の米国におけるグルテンフリー食品展示会では米が注目されているそうだ.ただ,それは小麦アレルギー対応食品としての意味であって,小麦の代わりに米を摂っていたのでは,「痩せる」意味でのダイエットにはならない.従って米を原材料に用いる加工食品は,「痩せる」グルテンフリー食品のメインストリームにはならない.
 いずれ日本でも「痩せる」グルテンフリー・ダイエットがよく知られるようになるとは思うが,この点を誤解すると失望する人が出てくるだろうと予想される.

 話は別のことになるが,糖質制限向けの即席麺は種類が少ない上に,どういうわけか味が濃い.そして含有食塩量も多い.これでは高齢者の食事に常用するのは無理である.ところが米粉を使った麺料理にいいものを見つけた.かなり気に入ったので紹介する.エースコックの「鶏だしフォー」だ.古参の即席麺メーカーとしては,若い人たちは,NHKの朝ドラが安藤百福をモデルにしたこともあって,日清食品が一番有名だろうが,実はエースコックも昔から即席麺業界では大健闘している.特にベトナムでは,即席フォーのトップメーカーなのである.
 
 栄養成分と原材料を以下に示す.出典はエースコックの公式サイトである.
 
[標準栄養成分表1食(48g)当たり]
エネルギー 168kcal
たん白質  3.6g
脂質    1.6g
炭水化物  34.8g
食塩相当量 3.7g (米めん・かやく/スープ;0.9g/2.8g)
 
[原材料名]
米めん(ベトナム製造(米,でん粉,食塩)),スープ(食塩,香味油,植物油脂,香辛料,動物油脂,砂糖,でん粉,香味調味料,ねぎ,ネギエキス,酵母エキス,チキンパウダー)/加工でん粉,調味料(アミノ酸等),乳化剤,増粘剤(グァーガム),酸味料,甘味料(スクラロース,アセスルファムK),香料,酸化防止剤(ビタミンE),(一部に卵・大豆・鶏肉・豚肉を含む)
 
 以上の表示事項のうち,《調味料(アミノ酸等) 》は,商品の特性からして,日持ち向上剤であるグリシン製剤ではなく,グルタミン酸製剤だと思われる.ただし,全体的にもう少し食品添加物を減らせないものかという点が残念ではある.
 で,それはそれとして,何はともあれ食品は味である.アマゾンで十個入りを買い求めて食べてみた.このフォーだけでは一食の食事とするには侘しいので,トッピングを何か追加しなければいけない.ハム,鶏唐揚げ,肉団子などが候補だが,今回は冷蔵庫にあった残り物の,スーパー惣菜の小振りな海老天 (\150) を載せてみた.麺のおよその量はこれでわかるだろうと思うが,少な目である.
 
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 エースコックのフォー自体の熱量が低いので,天ぷらをトッピングしてもエネルギーは大したことは無い.これでもいいが,もう少しきちんとした一食にするなら,天ぷらは止めて,フォーにサラダチキンと山盛りの野菜サラダを付ければ,高齢者の「緩やかな糖質制限」の一食として,なかなかいいものになると思われる.
 肝心のスープのお味だが,ヒガシマルの「うどんスープ」をエスニックにした感じで,袋麺の中で出色の出来だと思う.いや,ヒガシマルのスープが関西風と言いながら「とんがった」味なのに比較すると,もっとおいしいと言っていいかも知れない.さすがはベトナム一の即席麺メーカーであるエースコックだ.よくフォーの雰囲気を醸している.ただし,スープを飲み干すと,高齢者には塩分摂りすぎなので,四分の三は残すようにしたい.
 食べてみて思ったのだが,エースコックには,カンボジアに工場を建てて,米麺「クイティウ」の即席袋麺も作って欲しい.目指すマーケットは米国のグルテンフリー食品市場だ.きっとカンボジアのためになるだろう.
 先日 (3/5) 放送されたテレビ東京『ガイアの夜明け』に,かつて村上ファンドで名を馳せた村上世彰氏が登場した.氏は現在,シンガポールを拠点として東南アジアの不動産開発をしているが,カンボジアにも不動産投資しているという.だが,氏の方法,つまり不動産事業では,結局のところ華僑を利するだけになるのではないか,カンボジア人が嫌う中国にカンボジアを占領させるだけではないかと私は思う.貧しい国に必要なのは,実業,モノづくりだ.

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2019年1月13日 (日)

御苑を飲んでみた

 昨年七月,皇居の一般参観に行った.宮内庁の生協で黒糖焼酎「御苑」を買うためである.
 その時の記事 (《黒糖焼酎を買いに 》) に,次のように書いた.

黒糖焼酎「御苑」は宮内庁生活協同組合が発売元で製造元は町田酒造 (鹿児島県大島郡龍郷町) である.価格は二千六百円 (720ml) で,私が日頃飲んでいる焼酎 (1800ml の紙パック) や泡盛が千五百円前後だから,私にしてはかなりの高級酒である.もったいないから正月に開封することにした.

 その言の通りに,この正月に「御苑」を開封して飲んだ.
 これまで私は自宅でも外でも,「黒霧島」などのグビグビ飲める安い焼酎を愛飲してきたので,「御苑」のような高級焼酎 (需給のアンバランスで高価になっている二,三のブランド焼酎は除く;その手の異常に高価な焼酎は飲んだことがない) の評価にバイアスがかかっている可能性はあるが,水で割らずにグラスの氷に注ぎ,カラコロと少し揺らしただけで口に放り込むと,かなり強い芳香がある.(ような気がする)
 旨いのでたちまちボトル三分の一を飲んでしまったのだが,一本空けてしまうのが惜しくなって,そこでやめた.

 これは一本常備しておくかと思ったが,再度入手するためにまた皇居に行くのは面倒くさいから,製造元である鹿児島の町田酒造のサイトを覗いてみた.たぶん「御苑」は,宮内庁生協が品質にあれこれ注文をつけて単独で蒸留している特注品ではなく,町田酒造のブランドで製造販売している焼酎を「御苑」のボトルと箱に詰めていると思われたからである.
 すると,同蔵の「里の曙 原酒」のアルコール分を調整 (四十三度→三十七度) したものか,あるいは「里の曙 白角」が「御苑」相当品と思われた.ただし「御苑」のボトルは「里の曙 原酒」と同じものである.また,アマゾンでの販売価格は「里の曙 白角」が prime価格すなわち送料込みで二千四百七十円,「里の曙 原酒」が三千二百四十円である.

 この二つを購入し,これをハレの酒として三月の私の六十九歳の誕生日と,平成最後の日に空けることにしようと思う.

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2019年1月 9日 (水)

何はなくとも餅なのだ (二)

 昨日の記事《何はなくとも餅なのだ (一) 》の末尾を再掲する.

冒頭の《なぜ爺婆たちは命を賭してまで餅を食うのだろうか 》の答えは「餅を食って自分が喉を詰まらせるなんてことは考えてもいないから」なのであった.

 「なぜ命を賭してまで」という疑問に対する答えとしては「実は命を賭しているつもりはない」でいいのだが,この疑問の元々の趣旨が「餅による窒息死を減らすにはどうしたらいいのか」という観点だとすれば,全く答えになっていない.

 前回の記事でも引用した東京消防庁のサイトに,下の図が掲載されている.

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 この図からすぐわかるように,暮れと正月に餅を食わなければ,餅による窒息事故は半分に激減する.従って餅窒息事故を減らすには「なぜ爺婆たちは正月になると餅を食うのだろうか」という問題が考察される必要がある.
 これについては,婦人画報社の通販サイトに《おせちは作る?それとも買う?調査結果発表 》(2015年9月17日掲載) と題したおもしろい記事がある.
 先ず,御節料理を購入するか否かという質問に対する回答の要点は,
 
Q おせちを購入しますか?(N=894)
   購入する(重箱入り、単品含む) 60% 
   購入しない38%  
   その他 2% (未定、いただく等)
 と、6割が「おせちを買う」という結果となりました。
 購入しない理由として「自分で作る」方は16%でした。

 
であった.次に,御節料理を購入する人たちが購入理由として挙げたのは以下の通りである.
Q おせちを購入する理由は? (N=540、複数回答)
   1 自宅では作れないような品目が味わえるから    44%
   2 有名店の味を味わえるから    30%
   3 年末は忙しく準備する時間がないから    25%
   4 華やかで高級感があるから    24%
   5 自宅まで届けてもらえて便利だから    22%

 
であった.私の場合はというと,もう長いこと御節はデパートで購入している.価格帯は一万~一万五千円で,二段か三段の重箱風の折箱に詰めたものである.購入理由は,私は一年中暇で準備する時間は余っているのだが,作るのは面倒くさいし,娘夫婦などがやってきても,これさえ出しておけば一応の供応っぽくなるからである.御節を作っている暇があるなら,本を読みながら酒を飲んでいたい.
 さて,Wikipedia【御節料理】には次のように書かれている.
 
御節料理の基本というのは、祝い肴三種(三つ肴、口取り)、煮しめ、酢の物、焼き物である。地方により構成は異なる。三つ肴の内容は関東では黒豆、数の子、ごまめ(田作り)の3種、関西では黒豆、数の子、たたきごぼうの3種である。
 
 昨年末にデパートで買った御節料理を仔細に点検してみると,これのどこがめでたいのかと首を傾げたくなるようなチマチマとした創作料理っぽいものが詰め込んであった.黒豆には小さな金箔が貼りついて
いたりしたが,そんな小細工に何の意味があるのか,私にはわからぬ.笹の葉にくるんだ親指の爪ほどの大きさの麩饅頭が入っていて,品書きには「甘味」と書いてあったが,小さすぎて食った気がしなかった.改めてこの御節を眺めていると,これはかつてのバブル景気の残光なんではないかと思えてきた.
 そんなことを考えながら,先日 (1/4) に放送されたテレビ東京《昼めし旅 新春開運SP~全国の豪華雑煮グランプリを決定!~ 》を観たら,奈良県奈良市大柳生町 (奈良市東部の農村地域) の旧家をレポーターの宍戸開が訪問し,その地域の伝統的な雑煮 (*脚註) の作り方を見せてもらっていた.
 その時に,旧家の主である御婦人 (私よりはお若い) が,雑煮と一緒に食べる御節について語ったのが下の画像である.(録画データの加工ではなく,テレビ画面をカメラ撮影してトリミングしたもの)
 
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 このかたのお話では,紅白なますに刻んだ干し柿を加えたなます,黒豆,田作り,祝いごぼうが正月の料理であるという.これを聞いて私は感じ入った.奈良市という歴史ある土地の旧家というものは,さすがである.御節の本来をきちんと押さえて緩むところがない.私のようにデパートで買ってきた御節の黒豆に金箔の切れっ端が貼りついていたのが軽薄だなどと文句を垂れている輩は恐れ入るばかりである.
 この家の主は昭和三十年代初めの生まれであり,現在は母上と二人暮らしのようであるが「昔は正月の料理は,女が立ったり座ったりしなくてもいいように,男がしたものです」と語った.それでも御節の作り方は,女性であるこのかたにも伝えられた.
 そして,どこの家でも正月の料理は自分の家で拵えた昭和をとうに過ぎ,御節がスーパーやデパートで出来合いを買うものとなった平成の終わりに,彼女のように自分で御節を作る人 (世帯) は遂にわずか十六パーセントの少数派となったのである.
 おそらく次の元号のうちに,御節そのものが日本の正月から姿を消すだろう.岩村暢子さんの『普通の家族がいちばん怖い ― 崩壊するお正月、暴走するクリスマス』(新潮文庫,2010年) を読むと,そんな気がしてくる.
 テレビの娯楽番組とはいえ馬鹿にはできない.奈良では私よりも若い御婦人が今でも御節を手づから拵えていると知り,来年の正月は,もし生きていればの話だが,デパートのバブリー御節を買うのは止めにしようと思ったことである.
 
[*脚註]
 この時の『昼めし旅』は各地の雑煮を紹介するのが目的だった.奈良の雑煮は,かつては土地の人は単に雑煮と呼んでいたが,2005年の文化庁「お雑煮100選」で「きな粉雑煮」と名付けられ,この名で全国に知られている.
 作り方は,まず最初に味噌仕立ての雑煮を作る.具は頭芋 (里芋の親芋のこと;京都で頭芋と呼ぶのは里芋とは別種の海老芋の親芋だと資料にある),大根,人参,豆腐.頭芋は関西の慣わしで「人の頭にたつように」との縁起担ぎ,豆腐は蔵の白壁に見立て (=繁盛) たものだという.大根と人参は丸い形に切るが,これも縁起担ぎ.
 頭芋は切らずにそのまま下茹でする.それから他の具を入れ,煮えたら合わせ味噌 (味噌の種類は地域により異なる) を溶き入れ,味噌仕立ての雑煮のでき上がり.
 これとは別に丸餅を焼いておき,雑煮椀に盛った芋などとは別に食卓に載せ,砂糖を混ぜ合わせた黄な粉を添える.(下画像)
 
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 用意ができた雑煮を見て,宍戸開が「餅は別なんですね」とか確認↓.
 
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 先ずは頭芋に箸をつける.そののち,餅を食べる↓.
 
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 しかし各自の椀に焼いた餅を入れてはいけない↓.
 
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 給仕係はそれぞれの前に置かれた餅を台所に運ぶ↓.
 
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 そして鍋の雑煮の中に,平らに潰した餅を投入し,煮て味噌味をつける.煮えたら各自の椀に盛りつける↓.
 
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 椀を再び食卓に運ぶ.各自は椀の餅にたっぷりと黄な粉をまぶして食べる.
 
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 宍戸開は「味噌味がついていることで,ただの黄な粉餅ではない特別感がある」と感想を述べ,「きなこ雑煮」の作り方を披露した婦人は「私たちは御馳走と思って食べていました」と語った.
 以上が『昼めし旅』で放送された奈良の雑煮についての内容であるが,実はこの雑煮は同日 (1/4) に放送されたNHK『チコちゃんに叱られる!』でも紹介された.しかしこちらの放送では,最初から餅を煮てしまう点で,『昼めし旅』の内容と大きく異なっていた.
 私見だが,これはやはり地元の人の言うことが正しいのではなかろか.
 
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