コキア盛衰記
二年前のこと.
拙宅の近所に数年前に建売住宅が数軒できて,そこの一つに入居した人が,家と道路の隙間にホウキグサ (最近は「コキア」と呼ばれることが多い) の種を撒いたようだ.
その家は上物の周囲の敷地が全面的に舗装されていて,仕切りなく生活道路と直に接続しており,少しの土も露出していない.
それで,住人は何か植物のうるおいが自宅に欲しいとでも思われたのかも知れないが,その住宅の前の道路との境界に唐突にコキアがひと株生えた.
そんなわずかな隙間でも生えるのである.コキアは.
昨年,その家の向かい側にあるアパートの敷地にコキアがたくさん生えた.
コキアの種は小さくて軽いから,周辺に移動してどんどん増える.土地が広ければ最終的には大群落となる.そういう景観をウリにしている公園もあるくらいだ.
最初に種を撒いた人はそういうことを知らなかったのだろうか.
ともかくコキアの大繁殖が始まったのである.
そして今年,コキアはあたり一帯に拡大繁殖した.
これはどうなるんだろう思っていたが,しかし異変がおきた.コキアは枯れたのである.
拙宅の周辺には犬を飼っているひとが多い.
私がまだ暗いうちにゴミ集積場にゴミを出しにいくために外にでて歩いていると,イヌを散歩させている人と何人もすれ違う.
おそらくそのイヌたちが,増えはじめたコキアに小便をかけるのを朝のルーチンにしたとみえて,コキアはどんどん茶色く枯れ始めたのである.
最初にコキアを植えた住宅の「向こう三軒両隣」にまで拡がったコキアは,散歩イヌたちの放尿攻撃に耐えられず,ほぼ全滅した.
最後に残ったのは,最初にコキアを植えた家のもので,これは直径が三十センチ以上もあって,小型犬とか柴犬などが小便をかけるには大きすぎたとみえる.
だがまた次の異変が起きた.
数日前,その丸く大きくなったコキアはペシャンコになっていた.その様子から想像するにたぶん人間の靴で踏みつぶされたのである.
それで私は理解した.
ご近所さんたちにコキアの繁殖は迷惑がられていたのである.私もだけどね.
足で潰されたコキアはどうなったか.
最初に種を撒いた家の住人は,ペシャンコになったコキアを荷造りヒモを用いて丸く整形した.見るからに痛々しいが,もはや意地になっているのかも知れぬ.
「ご近所トラブル」化する前に抜いたほうがいいと思うけれど.

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