勧善懲悪譚にするかハッピーエンドにするかを考えてから書け
女子SPA!《「人間のレジだけにしろ!」セルフレジができなくて怒鳴り散らす男性。現れたシニア女性の“鮮やかな仕草”で空気が一変》[掲載日 2026年8月3日] から下に引用する.
《「分からない」「できない」と感じた時、あなたはどうしていますか?
今回は、スーパーのセルフレジで起きたトラブルと、そこから考えたい現代の問題についてご紹介します。
◆店内に響いた怒鳴り声
ある平日の夕方。塚地麻里子さん(仮名・34歳)は、仕事帰りに駅前のスーパーへ立ち寄りました。
「その日は疲れていて、とにかく必要な物だけ買って、早く帰ろうと思っていたんです」
買う物を選んだ麻里子さんは、レジへ向かいました。店内は仕事帰りの客でほどよく混雑していましたが、セルフレジは数台空いており、会計はすぐに終わりそうな雰囲気だったそう。
「その時『こんなの年寄りにやらせるなよ!』と、店内に怒鳴り声が響いたんです。振り返ると70代くらいの男性客が、セルフレジの前で腕を組みながら店員さんに怒鳴り散らしていたんですよ」
男性は不機嫌そうな表情でセルフレジの前に立ち「何で俺が自分で機械なんか使わなきゃいけねぇんだ!」「人間のレジだけにしろ!」「説明が分かりづれぇんだよ!」と次々に不満をぶつけていました。
店員さんが「ご案内しますので一緒にやってみましょうか」と丁寧に声をかけても「だから分かんねぇって言ってんだろ!!」と怒鳴り返す始末。
さらに後ろに並んでいる客たちにまで「こんなの便利だと思ってんの若い奴だけだ! 年寄りは来るなって言いたいのか!」と絡み始め、周囲の空気は一気に重苦しくなりました。
「店員さんもかなり困っていて、周囲もどうしたらいいのか分からない空気になっていましたね」
◆誰も言えなかったことを代弁した女性
誰もが様子をうかがうばかりで、なかなか声を上げられない。そんな状況の中、列の後方にいた60代くらいの女性が一歩前へ出たそう。
「するとその女性は『いい加減にしたら? 騒ぐ暇あるなら覚えればいいの! 私だって最初は分からなかったわよ』とおじさんに負けない声量で言い放つと、続けて『年寄りだからできないんじゃないの。“覚える気がない人”ができないの!』とセルフレジをピッ、ピッと鮮やかに操作して見せたんですよ」
そのあまりの勢いに、その場にいた人たちは思わず目を丸くしました。
◆おばさんの正論におじさん撃沈
しかし女性の説教はそれで終わらず「店員さんに怒鳴るなんて最低よ。『教えてください、お願いします』でしょ? あと後ろ見なさい。みんな待っているの!」そう言って後ろの列を指差しました。
すると並んでいた客たちの何人かが、無言でうなずいたそう。
完全に孤立した男性は顔を赤くしながら「二度と来るかよ、こんな店」と吐き捨てるように言うと、商品の入った買い物かごをその場に残したまま、逃げるように店を後にしました。
「するとおばさんは何事もなかったように『最近、怒鳴れば誰かがやってくれるって人多いのよねぇ』と私たちに笑顔を向けてくれて。その瞬間、張り詰めていた空気が一気に和らぎ、店員さんまで思わず吹き出していたんですよね」
麻里子さんも思わず笑ってしまったそう。
(引用終わり.以下省略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
上に引用した記事の前半は,スーパーのフルセルフレジの使い方がわからず,店員に怒鳴り散らかして迷惑行為に及んでいた爺さんの話である.
このテのカスハラ話は,まず間違いなく爺さんがカスハラをすることになっている.
コミックエッセイでも文章でも,似た話はウェブ上にたくさん書かれているから,もはや陳腐だといっていい.
筆者は鈴木詩子という漫画家だが,同工異曲の話が「AIによる作文」だとかあるいは「実話をもとにしている」と断り書きをしているのに,この漫画家はそういうキャプションを書いていないところを見ると,こういう創作をアップすることに慣れていないのだろう.
それはそれでいいとして,話の前半《「その時『こんなの年寄りにやらせるなよ!』と、店内に怒鳴り声が響いたんです。振り返ると70代くらいの男性客が、セルフレジの前で腕を組みながら店員さんに怒鳴り散らしていたんですよ」
男性は不機嫌そうな表情でセルフレジの前に立ち「何で俺が自分で機械なんか使わなきゃいけねぇんだ!」「人間のレジだけにしろ!」「説明が分かりづれぇんだよ!」と次々に不満をぶつけていました。
店員さんが「ご案内しますので一緒にやってみましょうか」と丁寧に声をかけても「だから分かんねぇって言ってんだろ!!」と怒鳴り返す始末。
さらに後ろに並んでいる客たちにまで「こんなの便利だと思ってんの若い奴だけだ! 年寄りは来るなって言いたいのか!」と絡み始め、周囲の空気は一気に重苦しくなりました。》は爺いのカスハラ場面だ.
次に筆者の鈴木詩子は下のようなシーンを描いた.
《◆誰も言えなかったことを代弁した女性
誰もが様子をうかがうばかりで、なかなか声を上げられない。そんな状況の中、列の後方にいた60代くらいの女性が一歩前へ出たそう。
「するとその女性は『いい加減にしたら? 騒ぐ暇あるなら覚えればいいの! 私だって最初は分からなかったわよ』とおじさんに負けない声量で言い放つと、続けて『年寄りだからできないんじゃないの。“覚える気がない人”ができないの!』とセルフレジをピッ、ピッと鮮やかに操作して見せたんですよ」
そのあまりの勢いに、その場にいた人たちは思わず目を丸くしました。
◆おばさんの正論におじさん撃沈
しかし女性の説教はそれで終わらず「店員さんに怒鳴るなんて最低よ。『教えてください、お願いします』でしょ? あと後ろ見なさい。みんな待っているの!」そう言って後ろの列を指差しました。
すると並んでいた客たちの何人かが、無言でうなずいたそう。
完全に孤立した男性は顔を赤くしながら「二度と来るかよ、こんな店」と吐き捨てるように言うと、商品の入った買い物かごをその場に残したまま、逃げるように店を後にしました。》
爺いのカスハラを見かねた「おばさん」が非の打ちどころのない正論《年寄りだからできないんじゃないの。“覚える気がない人”ができないの!》をぶちかましてさらに《セルフレジをピッ、ピッと鮮やかに操作して見せ》て,爺いを孤立無援に追い込んだ.
世の中についていけない爺いに関する他のカスハラ話では,この「おばさん」以外にかっこいい若い男だったり強気な若い女性だったり,突拍子もない場合は子供が出てきて,カスハラ爺いを木っ端みじんに粉砕する.
鈴木詩子はこのシーンで,超人的レジ打ち「おばさん」を登場させて《店員さんに怒鳴るなんて最低よ。『教えてください、お願いします』でしょ?》と爺に説教するという新機軸を打ち出した.
そして「おばさん」は《逃げるように店を後に》した爺いを《最近、怒鳴れば誰かがやってくれるって人多いのよねぇ》と嘲り,スーパーの店員は吹き出し,麻里子さんは笑った.
というのが,鈴木詩子が作ったカスハラ爺い退治のお話だ.
カスハラ爺いは逃げて行き,店員も麻里子さんも笑ったという勧善懲悪な結末に,読者が「よかったよかった」と思ったとたん,鈴木詩子は読者を裏切る.
《◆私たちもいつか“分からない側”になる
確かに、店員や周囲の客に当たり散らす男性の態度は褒められたものではありません。しかし一方で、セルフレジやタッチパネル注文など、新しい仕組みに戸惑う人が少なくないのも事実でしょう。
「できない」と感じることは「恥ずかしい」という感情につながります。そしてその恥ずかしさが、時として怒りや攻撃的な態度として表れてしまうこともあるんじゃないでしょうか?
今回の男性も、本当は操作方法が分からず不安だっただけなのかもしれません。
だからこそ社会全体としては、「できない人」を切り捨てるのではなく、誰もが利用しやすい環境づくりを考えていく必要があるでしょう。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
カスハラ爺いが,実は世の中の新しい仕組みについていけない弱者だったかもしれないと鈴木詩子はいう.
そして《「できない人」を切り捨てるのではなく、誰もが利用しやすい環境づくりを考えていく必要がある》と結論する.
だがしかし,そういう結論を書くのだったら《店員さんまで思わず吹き出していた》《麻里子さんも思わず笑ってしまった》は余分だ.
逃げて行ったカスハラ爺いを笑った店員と麻里子さんは,弱者の感情に思いを至いたすことができない人間だということになってしまう.
最後に余計な描写《店員さんまで思わず吹き出していた》《麻里子さんも思わず笑ってしまった》を付け足したために,首尾一貫しない話になってしまった.
これを「九仞の功を一簣に虧く」という.論理的な作文を作る力のない人間のしがちな失敗である.
ちなみにウェブ上には「他の客にカスハラを諫められて反省した爺いが,フルセルフレジの使い方を教えられてうまくできるようになりました」というハッピーエンドのお話もたくさんある.
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