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2026年8月10日 (月)

医院待合室が年寄りのサロンだったのは昔のことだ

 最近,ウェブ上の文章を読んでいると「これは取材することなくAIで捏造した文章だな」と思われるものが多い.
 そういう文章は,文章自体はうまく作文できているのだが,内容にリアリティがない.
 そういう例を一つ下に紹介する.
 THE GOLD ONLINE編集部《「必要ない人は来ないでほしい」…〈年金月15万円・82歳〉病院の“常連おばあちゃん”に向けられた20代会社員の本音。それでも通い続ける理由》[掲載日 2026年8月5日] からその前半を下に引用する.
 
「病院で長話をする高齢者がいて困る」。そんな声を耳にすることがあります。75歳以上の多くは後期高齢者医療制度の対象となり、外来受診の自己負担は1割~3割。「医療費が安いから何度も通うのでは」と見られがちですが、実際には、年金生活に余裕がある人ばかりではありません。混雑する町の内科で見えたのは、お金だけでは語れない高齢者の孤独と社会保障が抱えるもう一つの課題でした。
 
 病院に現れた82歳女性、目的は「診察以外のこと」
 午前9時半。住宅街にある内科クリニックの待合室は、すでに座る場所がほとんどありません。夏風邪で咳き込む会社員や腹痛を訴える学生、高熱を出した子どもを抱えた母親など。
 患者が次々と訪れる慌ただしい空気のなか、自動ドアが開き、一人の高齢女性がゆっくりと入ってきました。

「おはよう! 今日も混んでるわね」
 女性は佐藤和子さん(仮名・82歳)。スタッフとはすっかり顔なじみです。「まだ喉が少し痛くってねぇ」とはいうものの、前回の受診はたった2日前。軽く喉が腫れていると診断され、薬も1週間分処方されています。
 待ち時間が長くても、和子さんは気にする様子もありません。受付のスタッフ声にをかけ、世間話をしながらゆっくりと順番を待っています。
この前できた、そこのケーキ屋さん。おいしかったわ!
「そうなんですね。よかったです」
 まるで近所の知人と話すような、和やかなやり取りです。そして診察に呼ばれると、体調の話は一瞬で終わりました。
まだ喉が痛いのよ、どんな感じか念のため診てほしくてね。それより先生、今日は暑いわね。先生は夏バテしてない? 今朝テレビでもね……
 テレビ番組、近所のスーパー、物価高……。症状の確認が終わると、佐藤さんは堰を切ったように話し始めました。
 待合室には、診察室のドア越しに医師と患者の声がかすかに聞こえていました。内容まではわからないものの、時折聞こえる佐藤さんの明るい声や笑い声は、深刻な診察を受けているようには感じられなかったでしょう。
 医師は時計を気にしながらも、笑顔を崩さず耳を傾けています。
「今日はお薬も残っていますし、もう少し様子を見ましょう。熱が出たり、症状が悪くなったらまた来てくださいね」
 診察室を出た佐藤さんは、満足そのものでした。
 しかし、会計時に「お買い物して帰るわ」とスタッフに最後の声かけをして病院を出ようとしたときです。苛々したような声が聞こえたのです。
「あとどれぐらいですか? もう1時間以上待ってるんですけど。仕事があるから立て込んでいるから早く戻りたくて」
 声の主は20代くらいの会社員女性。喉が荒れているのかかさついた声で、マスク越しでも疲れた表情が伝わってきます。
「あと5人ですね。順番にご案内しておりますので……」
 そう答える受付スタッフに会社員女性は頷きながら、くるりと振り向き小さくつぶやきました。
「はぁ、必要ない人は病院に来ないでほしい。こっちは忙しいのに……」
 独り言であろうその声は、和子さんの耳にも届いていました。しかし、和子さんは何も言うことなく、静かに病院を後にしました。(以下略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 昭和の昔,軽妙な話芸で人気のあった桂米丸という新作落語家がよく使ったマクラに次のようなものがあった.
 
 病院の待合室に年寄りの婆さんが寄り集まって世間話に興じている.
 そのうち一人の婆さんが「あら,今日はタカハシさんの顔が見えないねえ」
 するともう一人の婆さんが「ほんとだ.どっか体の具合が悪いのかねえ」
 
 確かに,特に内科医院の待合室が老人たちのサロン化していた時代があり,そんな待合室風景が長く続いた.
 ところがこの状態がコロナ禍で一変した.
 どこの病院でも一斉に予約診療性を採用したのである.
 目的は「待合室が密状態になって感染源となってしまうのを防止する」ことだった.
 予約制とすることで,待合室の患者数を医師がコントロールできるようにしたのである.
 もちろん予約なしでも診てもらえるが,その場合は電話で自分の症状を説明して窓口担当者に来院時刻を指定してもらわねばならない.
 自分の都合で勝手に医院に押しかけて診察させることができなくなったのである.
 元々の予約制の導入は「待合室が密状態になって感染源となってしまうのを防止する」ことだったが,これは副次的な効果をもたらした.
 待合室が老人たちのサロンと化していた状態を一掃したのである.
 これにより医師は,必要のない診察を求める迷惑な老人たちに無駄に費やされてきた診察時間を,本当に医療を必要とする患者に振り向けることが可能となった.
 そしてこの予約制のメリットが医師に認知されるや数年で医療機関に予約制が普及した.
 現在では予約制を採用していない医療機関は少ない.ある調査では医療機関の八割が予約制だという.(《【医師調査】約8割が外来診療の予約制を導入していると回答》[2024年12月18日])
 事実,私が診察券を持っている医療機関はすべて予約制である.
 さあ,そこでだ.冒頭に示したTHE GOLD ONLINE編集部《「必要ない人は来ないでほしい」…〈年金月15万円・82歳〉病院の“常連おばあちゃん”に向けられた20代会社員の本音。それでも通い続ける理由》に描かれている《午前9時半。住宅街にある内科クリニックの待合室は、すでに座る場所がほとんどありません。夏風邪で咳き込む会社員や腹痛を訴える学生、高熱を出した子どもを抱えた母親など》は実在する光景なのだろうか.
 仮にこういう感染症拡散リスクが高い状態の待合室 (咳き込む会社員がいる三密状態/その咳の原因が夏風邪であると確定診断したのは医師ではなく実はTHE GOLD ONLINE編集部のライターであるというツッコミはさておくw) を改善せずに放置している非常識な内科クリニックが存在するとして,そのような医療水準が低く数も少ないクリニックをわざわざ探してまで《仕事があるから立て込んでいるから早く戻りた》い若い会社員女性が来院するものだろうか,いや決して来院しない. (←反語表現)
 町中に多数存在する予約制の内科クリニックに電話して当日予約を取り,指定された時刻にクリニックに行けば待合室でイライラせずに済むからである.これは医師の診察を受ける者にとって常識だ.(ただし緊急処置が必要な患者にはまた別の受診方法がある)
 そのように考察すると,THE GOLD ONLINE編集部《「必要ない人は来ないでほしい」…〈年金月15万円・82歳〉病院の“常連おばあちゃん”に向けられた20代会社員の本音。それでも通い続ける理由》は医療現場を取材せずにこしらえた捏造記事だと考えていい.
 このTHE GOLD ONLINEの記事を書いたライターは,そもそもは「老人の孤独」をテーマにしようとしたのだろう.
 その意図はよしとして,しかし現実の内科クリニックにおける待合室の様子を調べることなく,ありもしない光景を想像でデッチ上げてしまったのはライターとして恥ずべきである.
この前できた、そこのケーキ屋さん。おいしかったわ!》とか《まだ喉が痛いのよ、どんな感じか念のため診てほしくてね。それより先生、今日は暑いわね。先生は夏バテしてない? 今朝テレビでもね……》とか,どれだけ図太い神経があれば,「老人の孤独」をテーマにしてこんなコント台本並みのフィクション丸出しの嘘を平気で書けるのか.小説家志望の中学生みたいなライターに好き勝手させる編集長も同罪だ.恥を知れ.
 
 バカ 知的レベルが低いライターには嘘で読者を騙すことは難しい.
 AIでこしらえた文章はいくらもっともらしくても,リアリティのない嘘作文はすぐばれるのだ.
 嘘はばれる.そういうことを理解していないライターが増殖しているようだ.
 
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