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2026年8月

2026年8月31日 (月)

茶豆あれこれ

 昭和の昔話をする.
 関東地方ではそら豆が出回る期間は短くて,六月になると八百屋とかスーパーの店頭に並ぶが七月にはもう見かけなくなる.
 七月になれば今度は枝豆がどっと店頭に出てくる.
 枝豆といえば,昔は夏の風物詩の屋上ビアガーデンとセットだった.
 仕事を早めに切り上げて,まだ明るいうちに何人かで連れ立ってビアガーデンに繰り出し,枝豆でジョッキの生ビールをグイグイと飲むのが痛快だった.
 私見だが,そら豆と生ビールは相性が悪い.生ビール中ジョッキ (生チュー) の相方はやはり枝豆だ.
 
 私がまだ若かった頃の夏のある日,会社の同僚で関西出身の男が,居酒屋で枝豆を注文した.
 彼は,指先で莢を押して豆を口に入れたとたん「うっ」と言って吐き出した.
 そして「この枝豆はヘンなにおいがする」と言った.
 ヘンなにおいとは足の裏のにおいだと言う.
 そう,この居酒屋で出された枝豆は「茶豆」だったのである.
 
 茶豆は,枝豆用として栽培される大豆のうち,「莢に生えている毛」と「豆を包む薄皮」が茶色をしている系統の品種群であり,代表的な品種は,山形県特産である「だだちゃ豆」と新潟県特産の「くろさき茶豆」である.
 おもしろいのはこの二品種の起源来歴で,Wikipedia の記述に混乱がある.
 Wikipedia【だだちゃ豆】には次のように書かれている.
 
だだちゃ豆(だだちゃまめ)は、枝豆用として栽培されるダイズ(大豆)の系統群である。山形県庄内地方の特産品。江戸時代に越後(現在の新潟県)から庄内に伝わった品種を選抜育成したものと考えられている。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 また Wikipedia【くろさき茶豆】には下のように記載されている.
 
明治末期または大正10年に、黒埼村の小平方(こひらかた)(現在の新潟市西区)の農家の姉妹が山形県鶴岡市に嫁いだことで、里帰りの際に白山だだちゃ豆の種子を持ち帰ったことが始まりとされている。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 つまりWikipedia【だだちゃ豆】は,庄内の茶豆は越後にルーツがあるといい,Wikipedia【くろさき茶豆】は,越後の茶豆は庄内にルーツがあるとしている.
 越後も庄内も「茶豆はうちが本家だ!」とは主張せず,逆に起源を譲り合っている格好だ.
 これとは反対に私の郷里である群馬は何かと「うちが本家だ!」と言いつのる土地柄で,例えば北海道ローカルフードだった札幌ラーメンが昭和四十年代に関東地方に進出した頃,ほとんど同じパチモンを目敏く「上州ラーメン」と称し,県内国道沿いにラーメン屋が林立し,「上州ラーメンが本家元祖だ!」と宣伝した.
 また東京界隈でソースカツ丼が流行すると,「うちがソースカツ丼を初めて売り出した」と称する食堂が県内のあちこちに割拠し,「本家がたくさんあるのはおかしい」と東京人のヒンシュクをかった.(諸説あるが,ソースカツ丼は東京の早稲田にあった店が発祥だとする説が有力)
 上州は,他人の真似をしておきながら「俺が俺が」という土地なのである.まことに恥ずかしい限りである.
 これに比べると越後も庄内も奥ゆかしい.県民性だろう.
 
 さて,この稿の冒頭のエピソード《私がまだ若かった頃の夏のある日,》に戻る.
 茶豆は他の枝豆用大豆品種と大きな違いがある.茹でると特有のニオイがするのだ.
 私の会社の同僚が枝豆を口に入れたとたんに吐き出してしまったのは,その枝豆が茶豆だったからである.
 一般に食品のニオイは多数の香気成分が関与しており,特定の単一化合物がニオイの特徴を決定していることは少ない.
 もちろん例外はあって,例えば松茸の香りはほとんど 1-octen-3-ol (Wikipedia【1-オクテン-3-オール】)が寄与している.
 茶豆の特有のニオイは多数の成分が関与しているために品種によって「ゆらぎ」があり,茶豆の風味を好む人には「加熱したトウモロコシ的な香り」と表現されることが多いが,茶豆を嫌う人には「足の裏のニオイだ」と酷評されたりもする.
 トウモロコシと足の裏では随分な違いであるが,「足の裏のニオイだ」という酷評には一理がある.
 茶豆のニオイの微量成分の一つにイソ吉草酸 (3-methylbutanoic acid;Wikipedia【3-メチルブタン酸】) があるのだが,これは足の裏のニオイ (「靴下臭」とも呼ばれる) を特徴づける主成分である.
 そのため,イソ吉草酸に敏感な人は,茶豆から足の裏のニオイを連想してしまうのであろう.
 実は私も茶豆よりも普通の枝豆の淡白な風味が好きだ.ビールがなくても皿に山盛りの枝豆を食べてしまう.
 だから個性の強い茶豆を積極的に買って食べようとは思わない.
 高級品である茶豆を好まないのは,食べるものが安上がりでよいと思っている.
 
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2026年8月28日 (金)

優先席の風景

 昨日,藤沢駅の周辺で食料品などを買い求めて,その帰路のこと.
 駅北口に,藤沢駅からあちこちへ向かうバス路線の停留所が集まっているバスセンターがあり,私は戸塚駅方面行のバス停に行った.
 バス停には既に十数人の人たちが列を作っていた.
 私が列の一番後ろに並ぶとすぐにバスがやってきた.
 並んでいた乗客たちはバスの中扉から乗り込み,バスの後ろ半分にある二人掛けシートに着席していった.
 二人掛けシートがうまると乗客たちは,バス前半分にある「優先席」に順序よく着席していった.
 左側の「優先席」には,前のほうから若い女性,学生風の若い男,まだアラフォーくらいの中年女が座り,右側「優先席」には髪に白いものが目立つ年配女性,男子小学生,それに続いて見た感じでは五十代の男性,八十は過ぎていそうな老女性が腰かけて,それで「優先席」は満席になり,私は荷物を手に提げて立つことになった.
 五十代の男性は左脚の膝が不自由らしく,バスに乗り込むときにも辛そうな様子だった.
 老女性も元気いっぱいという印象ではなかった.
 私は白髪でよぼよぼの老人だが,それでも立ってバスに乗ることは苦にならない.
 だから,いかにも「優先席」を必要としている風の脚が不自由な男性と,あまり元気とはいいがたい老いた女性の二人が席に着くことができたのはよかったと思った.
 だが,それからすぐにバス運転士が脚の不自由な男性と老女の席にやってきて「申し訳ありませんが車椅子の人が乗りますので席をお譲りください」と言った.
 その二人が着席していたのは車椅子用のシートだったのである.
 開いたままになっている中扉の外を見ると,車椅子に乗った若い女性がいた.
 
 運転士は車椅子用「優先席」二つを跳ね上げて固定し,スロープを使って車椅子を車内に入れてベルトで固定した.
 それはいいのだが,そのおかげでいったんは「優先席」に着くことができていた老女性と脚の悪い男性は席を立つことになってしまったのである.
 この状況を見て,左側「優先席」の一番前に着いていた若い女性が立ち上がり,老女性に「ここにどうぞ」と言った.
 すると老女は「わたしは大丈夫ですよ」と答え,脚の悪い男性に「あなたがお座りになって」と言った.
 脚の悪い男性は,ずっと歳上の女性に席を譲られることに少しためらいをみせたが「ありがとうございます,それじゃあ遠慮なく」と,ホッとした表情で着席した.
 こうして結局,バスには爺さんの私と八十過ぎと思われる老女,それから「優先席」を譲った優しい若い女性の三人が立って乗車することになった.
 席を譲りあった彼ら三人のやり取りを,既に「優先席」に着席していた学生風の男,アラフォー女,髪の白い年輩女性,小学生の四人は無関心の態で眺め,誰も老女に席を譲ろうとはしなかった.それどころか男子小学生はゲーム機を取り出し,足をバタつかせながら遊び始めた.
 
 しかしこの状況で「最近の若い連中は高齢者や体の不自由な人に対する優しさがない」と怒ってはいけない.
 見た目ではわからないけれども実際には「優先席」を必要とする乗客がいることはよく指摘されるところだからである.
 例えばアラフォー女と髪の白い年輩女性は超高齢妊娠の妊婦かも知れないし,学生風の男は心臓にペースメーカーを埋めているかも知れない.
「優先席」に座ってゲーム機で嬉々として遊んでいる男子小学生は,実は頭の中がとても不自由なのかも知れないのだ.というか「知れない」ではなく確実に.
 交通機関の「優先席」をめぐる以上のような光景は日常茶飯事であるから,私たち爺いは怒ってはいけない.静かに受け入れることが必要だ.
 
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2026年8月24日 (月)

スペーシアX事故について

 私はこの秋に東武鉄道スペーシアXを使って日光観光する予定だった.
 旅行プランを検討している最中だったので,今回の東武鉄道事故にショックを受けている
 テレ朝news《「見張員はベテラン」関係者証言 “業務上過失致死”の疑いで捜査へ 4人死亡》[掲載日 2026年8月23日] から下に引用する.
 
東武日光線の新鹿沼駅で、作業員4人が特急にはねられ死亡した事故。警察は21日、特 別捜査班を設置し、業務上過失致死の疑いで捜査を進めています。
 事故当日、現場に見張員を派遣した警備会社の関係者が取材に応じました。
(中略)
 
 運輸安全委員会 横飛雅俊調査官
「(Q.痕跡は見つかったか)確認できたものはいくつかあるが、個別のものについて、コメントは差し控えたい。午前中は、運転士と車掌の2人から当時の状況を聞いた。どこがポイントになるのかは、今後の分析による」
 
 当時、スペーシアXは、新鹿沼駅に停車するため、時速52キロで進入。運転士は、作業員らに気づき、非常停止措置をとりましたが、間に合いませんでした。
 亡くなった4人がいたあたりは、ホームの下に逃げ込める構造にはなっていませんでした。
 そもそもの問題は、作業員に列車の接近が伝わっていなかった可能性があることです。
 東武鉄道によりますと、現場の315メートル手前に中継見張員を、80メートル手前に列車見張員を配置していました。ところが、見張員同士は「意思疎通できる状況ではなかった」といいます。さらに、列車見張員は、作業員らの待避が完了した合図を出していたとの証言もあります。
 
東武鉄道施設部 佐藤晃一部長(20日)
「(Q.合図は待避を確認したうえで出す)そうです。(Q.待避ができたと列車見張員は認識か)運転士の証言の通り、列車接近了解合図を出したとなると、おっしゃる通り」
 
東武鉄道運輸部 亀山昇司部長(20日)
「何をもって合図を出したかは、現時点では把握してないところがある」
 
栃木県警は、21日までに見張員を含む現場にいた全員から事情を聴いたそうです。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 事故直後のテレビ中継報道で東武鉄道側責任者の記者会見を視聴したが,隔靴掻痒の印象を禁じ得なかった.
 栃木県警は事故直後に業務上過失致死の疑いで捜査を開始したとテレビ報道されているが,上に引用した記事にあるように,現場で勤務していた見張員二人 (中継見張員と列車見張員) は警察の事情聴取下にあると思われ,東武鉄道は限られた情報しか持っていない.
 そのため東武鉄道側責任者が記者会見で意味不明の発言に終始したのは仕方ない.
 最大の謎は《意思疎通できる状況ではなかった》である.抽象的で意味不明だ.
 東武鉄道では見張員同士の意思疎通を手旗で行っているというが,235メートルも離れた中継見張員と列車見張員が,合図の手旗を認識できるものだろうかという疑問がある.(グーグル検索によれば,手旗の認識限界は150~200メートルだという)
 戦時中の海軍でもあるまいに「中継見張員と列車見張員が手旗で意思疎通を行う」は物理的に無理なのが事実ではないか.
 また今時,即時性に優れた情報伝達手段であるトランシーバーではなく思いっきりアナクロな手旗が使われているという事実に驚く.
 見張員から走行列車への合図は視認しかないから手旗だとしても,見張員同士は無線通信が確実ではないか.
 
 今朝のNHKニュースによれば,中継見張員は走行してくるスペーシアXに手旗合図をすることになっているが,実際には合図がなかったらしい.
 このことから,中継見張員は所定の位置 (踏切) にいなかったという可能性が出てきている.
 東武鉄道側の意味不明な《意思疎通できる状況ではなかった》は,中継見張員が所定位置にいなかったために,走行してくる列車にも列車見張員にも手旗合図をしなかったという事実を抽象的に表現したものと考えられる.
 また中継見張員からの合図がなかったにもかかわらず,なぜ列車見張員はスペーシアXの運転士に「作業員退避済」の手旗合図をだしたのかも不明だ.
 いずれにせよ,重要参考人たちが警察の捜査下にあるため,今後の事故情報は東武鉄道側から出てくることはなく,警察発表 (あるいはリーク) だけになる.
 したがって東武鉄道の安全管理に問題があったか否かの情報は送検までわからないことになる.(国の調査結果判明はもっと先になるだろう)
 私が秋に予定していた旅行は中止したほうがよさそうだ.
 
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2026年8月19日 (水)

包装米飯のメーカー在庫処分が始まったかも

 精米の販売競争が激しい東京都では精米価格が下落しているとテレビは言うが,私の住んでいる神奈川県南部のスーパーでは,ようやく2025年産のブレンド米が5キロで3000円を切ったところだ.
 これに対して,人気のある銘柄米は依然として高い.
 それにも増して,高値安定を続けているのは包装米飯 (レンチンご飯,パックご飯) である.
 ここで高値「安定」は言葉のアヤで,食パンとの競争力を完全に失った包装米飯は販売不振だ.
 そのためかどうかわからぬが,藤沢駅北口にある中堅スーパー「サミット」で,マルちゃんの「あったかごはん」が叩き売りされた.
 それまでは「1個200グラム入り,1袋に5個包装」が通常価格1200円台だったのに,突然598円でワゴンセールされたのである.
 東洋水産は不良在庫処分を始めたのかも知れない.
 これから市場に出てくる2026年産の原料米は安価であるから,2025年産の原料米を使用した製品はコスト高の不良在庫であるからだ.
 
 包装米飯を災害時のためにローリングストックしている私は,4袋 (合計20個) を購入した.現状ではストックが減ってしまっているからである.
 秋口にはさらに値崩れして一昨年の価格帯 (5個入り1袋が500円以下) に戻るだろうから,そうなってからさらに買い足すつもりだ.
 
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2026年8月14日 (金)

過失致死事件か

 TBSがイオンモール熊本に入っていたテナント各社にアンケートを実施したところ,爆発事故で人命が失われたことは,イオン側社員による人災だった可能性が判明した.
 地震後に一旦避難したテナント従業員たちが再入館を希望したときに,イオン側社員がこれを意図的に許可したことが既に明らかになっているが,驚いたことに,再入館した人たちが戻ってきていないにも関わらず,イオン側社員が出入口を閉めてしまったのである.RKK熊本放送《「レジ金や貴重品、補償できない」イオンモール側に言われ店内に戻り閉じ込められた…間一髪で爆発から逃れた店員の証言
 閉じ込められた人たちが出口を探して右往左往しているうちに爆発が起こったという.(爆発現場から遠いところにいたために幸運にも死を免れたテナント従業員の証言)
 これは刑事事件になるだろう.
 
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2026年8月12日 (水)

バッドエンド

「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」がウェブ上で評判になっているので,映画館に出かけた.
 平日の午前の上映回だったが,案の定というかなんというか,観客席に子供は一人もいなかった.
 みんな私と同じく,このアニメの評判を聞きつけてやってきた大人たちと思われた.
 確かにこの作品は,小学生くらいの子供が鑑賞するには難しすぎるダークファンタジーだ.
 特にラストシーン (人魚の肉を食べた二人の村人が逃げた島へセイレーンが襲撃に向かう場面) が示唆する凄惨なバッドエンドは,大人でも拒否する人が多いだろう.私も見たくない.
 
 この悲惨な物語にただ一つ救いがあるとすれば,エンディング曲「机さする」だろう.
 音楽配信サイトから有料で購入することはできるが,残念ながらネット上に,違法に撮影されたスクリーンと音楽のコピーがあふれている.
「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」の観客層の低コンプライアンスを眼前に見るようだ.(脚注)

 攻撃的でもマニアックでもない穏やかな解説サイトを一つ下に紹介しておく.
 リアルサウンド《『映画ちいかわ』が描いた残酷で美しい世界と展開の謎を考察 不穏な幕切れに抱いた“希望”》[掲載日 2026年7月30日]
 
 (註) 映画館から帰宅したあと,このアニメ作品について書かれた考察的な文章をいくつも読んだ.
 その中に「あとで考察を書くために録音していたら,隣の客が違法だからやめろとクレームをつけてきた」と堂々と書いているブログがあった.
 録音するだけでネットにアップしなければ「映画泥棒」ではないという理屈だ.
 
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アニメ「銀河鉄道の夜」を観ながら今年は花巻に聖地巡礼にでかけようかなと思った

 今年は宮沢賢治 (明治二十九年八月二十七日生まれ) 生誕百三十年だが,関連番組を放送するのはNHKだけのようだ.
こころの時代〜宗教・人生〜 ファンタジーに秘められた宗教 (4)『銀河鉄道の夜』》とアニメ映画「銀河鉄道の夜」(Eテレで8/11再放送) の二本だ.
 アニメ映画「銀河鉄道の夜」は劇場公開された昭和六十年七月に観た.
 記憶不鮮明だが,藤沢駅の北側にあった小さな映画館に小学生だった長男を連れて行ったと思う.
 あれはもう四十一年も前になるのか.Eテレの再放送を観ながら感慨深かった.
 このアニメ作品は名作として知られるが,宮沢賢治の原作とは別の世界のものとして鑑賞すべきだろう.
 
「銀河鉄道の夜」を読み直してみたいと思ってアマゾンで探したら,ハルキ文庫の「280円シリーズ」に収録されていた.
 いまどき驚きの格安価格である.早速注文した.
 青空文庫にも入っているのだが,モニターで読むのは老人の視力ではつらい.文庫本の活字も小さいが,天眼鏡片手にならなんとか読める.
「銀河鉄道の夜」は賢治晩年まで推敲が繰り返され,未定稿として残された.このハルキ文庫の底本はなんだろうと奥付を見ると,筑摩書房「新校本宮澤賢治全集」だとある.
 現在入手できる文庫としては最後に出版されたもののようだ.
 
 花巻には一度行ってみたいと若い頃から思いつつ果たせていない.
 寄る年波で腰痛がつらいのだが,歩けるうちに聖地巡礼に出かけてみようか.
 
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2026年8月10日 (月)

医院待合室が年寄りのサロンだったのは昔のことだ

 最近,ウェブ上の文章を読んでいると「これは取材することなくAIで捏造した文章だな」と思われるものが多い.
 そういう文章は,文章自体はうまく作文できているのだが,内容にリアリティがない.
 そういう例を一つ下に紹介する.
 THE GOLD ONLINE編集部《「必要ない人は来ないでほしい」…〈年金月15万円・82歳〉病院の“常連おばあちゃん”に向けられた20代会社員の本音。それでも通い続ける理由》[掲載日 2026年8月5日] からその前半を下に引用する.
 
「病院で長話をする高齢者がいて困る」。そんな声を耳にすることがあります。75歳以上の多くは後期高齢者医療制度の対象となり、外来受診の自己負担は1割~3割。「医療費が安いから何度も通うのでは」と見られがちですが、実際には、年金生活に余裕がある人ばかりではありません。混雑する町の内科で見えたのは、お金だけでは語れない高齢者の孤独と社会保障が抱えるもう一つの課題でした。
 
 病院に現れた82歳女性、目的は「診察以外のこと」
 午前9時半。住宅街にある内科クリニックの待合室は、すでに座る場所がほとんどありません。夏風邪で咳き込む会社員や腹痛を訴える学生、高熱を出した子どもを抱えた母親など。
 患者が次々と訪れる慌ただしい空気のなか、自動ドアが開き、一人の高齢女性がゆっくりと入ってきました。

「おはよう! 今日も混んでるわね」
 女性は佐藤和子さん(仮名・82歳)。スタッフとはすっかり顔なじみです。「まだ喉が少し痛くってねぇ」とはいうものの、前回の受診はたった2日前。軽く喉が腫れていると診断され、薬も1週間分処方されています。
 待ち時間が長くても、和子さんは気にする様子もありません。受付のスタッフ声にをかけ、世間話をしながらゆっくりと順番を待っています。
この前できた、そこのケーキ屋さん。おいしかったわ!
「そうなんですね。よかったです」
 まるで近所の知人と話すような、和やかなやり取りです。そして診察に呼ばれると、体調の話は一瞬で終わりました。
まだ喉が痛いのよ、どんな感じか念のため診てほしくてね。それより先生、今日は暑いわね。先生は夏バテしてない? 今朝テレビでもね……
 テレビ番組、近所のスーパー、物価高……。症状の確認が終わると、佐藤さんは堰を切ったように話し始めました。
 待合室には、診察室のドア越しに医師と患者の声がかすかに聞こえていました。内容まではわからないものの、時折聞こえる佐藤さんの明るい声や笑い声は、深刻な診察を受けているようには感じられなかったでしょう。
 医師は時計を気にしながらも、笑顔を崩さず耳を傾けています。
「今日はお薬も残っていますし、もう少し様子を見ましょう。熱が出たり、症状が悪くなったらまた来てくださいね」
 診察室を出た佐藤さんは、満足そのものでした。
 しかし、会計時に「お買い物して帰るわ」とスタッフに最後の声かけをして病院を出ようとしたときです。苛々したような声が聞こえたのです。
「あとどれぐらいですか? もう1時間以上待ってるんですけど。仕事があるから立て込んでいるから早く戻りたくて」
 声の主は20代くらいの会社員女性。喉が荒れているのかかさついた声で、マスク越しでも疲れた表情が伝わってきます。
「あと5人ですね。順番にご案内しておりますので……」
 そう答える受付スタッフに会社員女性は頷きながら、くるりと振り向き小さくつぶやきました。
「はぁ、必要ない人は病院に来ないでほしい。こっちは忙しいのに……」
 独り言であろうその声は、和子さんの耳にも届いていました。しかし、和子さんは何も言うことなく、静かに病院を後にしました。(以下略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 昭和の昔,軽妙な話芸で人気のあった桂米丸という新作落語家がよく使ったマクラに次のようなものがあった.
 
 病院の待合室に年寄りの婆さんが寄り集まって世間話に興じている.
 そのうち一人の婆さんが「あら,今日はタカハシさんの顔が見えないねえ」
 するともう一人の婆さんが「ほんとだ.どっか体の具合が悪いのかねえ」
 
 確かに,特に内科医院の待合室が老人たちのサロン化していた時代があり,そんな待合室風景が長く続いた.
 ところがこの状態がコロナ禍で一変した.
 どこの病院でも一斉に予約診療性を採用したのである.
 目的は「待合室が密状態になって感染源となってしまうのを防止する」ことだった.
 予約制とすることで,待合室の患者数を医師がコントロールできるようにしたのである.
 もちろん予約なしでも診てもらえるが,その場合は電話で自分の症状を説明して窓口担当者に来院時刻を指定してもらわねばならない.
 自分の都合で勝手に医院に押しかけて診察させることができなくなったのである.
 元々の予約制の導入は「待合室が密状態になって感染源となってしまうのを防止する」ことだったが,これは副次的な効果をもたらした.
 待合室が老人たちのサロンと化していた状態を一掃したのである.
 これにより医師は,必要のない診察を求める迷惑な老人たちに無駄に費やされてきた診察時間を,本当に医療を必要とする患者に振り向けることが可能となった.
 そしてこの予約制のメリットが医師に認知されるや数年で医療機関に予約制が普及した.
 現在では予約制を採用していない医療機関は少ない.ある調査では医療機関の八割が予約制だという.(《【医師調査】約8割が外来診療の予約制を導入していると回答》[2024年12月18日])
 事実,私が診察券を持っている医療機関はすべて予約制である.
 さあ,そこでだ.冒頭に示したTHE GOLD ONLINE編集部《「必要ない人は来ないでほしい」…〈年金月15万円・82歳〉病院の“常連おばあちゃん”に向けられた20代会社員の本音。それでも通い続ける理由》に描かれている《午前9時半。住宅街にある内科クリニックの待合室は、すでに座る場所がほとんどありません。夏風邪で咳き込む会社員や腹痛を訴える学生、高熱を出した子どもを抱えた母親など》は実在する光景なのだろうか.
 仮にこういう感染症拡散リスクが高い状態の待合室 (咳き込む会社員がいる三密状態/その咳の原因が夏風邪であると確定診断したのは医師ではなく実はTHE GOLD ONLINE編集部のライターであるというツッコミはさておくw) を改善せずに放置している非常識な内科クリニックが存在するとして,そのような医療水準が低く数も少ないクリニックをわざわざ探してまで《仕事があるから立て込んでいるから早く戻りた》い若い会社員女性が来院するものだろうか,いや決して来院しない. (←反語表現)
 町中に多数存在する予約制の内科クリニックに電話して当日予約を取り,指定された時刻にクリニックに行けば待合室でイライラせずに済むからである.これは医師の診察を受ける者にとって常識だ.(ただし緊急処置が必要な患者にはまた別の受診方法がある)
 そのように考察すると,THE GOLD ONLINE編集部《「必要ない人は来ないでほしい」…〈年金月15万円・82歳〉病院の“常連おばあちゃん”に向けられた20代会社員の本音。それでも通い続ける理由》は医療現場を取材せずにこしらえた捏造記事だと考えていい.
 このTHE GOLD ONLINEの記事を書いたライターは,そもそもは「老人の孤独」をテーマにしようとしたのだろう.
 その意図はよしとして,しかし現実の内科クリニックにおける待合室の様子を調べることなく,ありもしない光景を想像でデッチ上げてしまったのはライターとして恥ずべきである.
この前できた、そこのケーキ屋さん。おいしかったわ!》とか《まだ喉が痛いのよ、どんな感じか念のため診てほしくてね。それより先生、今日は暑いわね。先生は夏バテしてない? 今朝テレビでもね……》とか,どれだけ図太い神経があれば,「老人の孤独」をテーマにしてこんなコント台本並みのフィクション丸出しの嘘を平気で書けるのか.小説家志望の中学生みたいなライターに好き勝手させる編集長も同罪だ.恥を知れ.
 
 バカ 知的レベルが低いライターには嘘で読者を騙すことは難しい.
 AIでこしらえた文章はいくらもっともらしくても,リアリティのない嘘作文はすぐばれるのだ.
 嘘はばれる.そういうことを理解していないライターが増殖しているようだ.
 
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2026年8月 9日 (日)

嘘つきの表情

 高市首相は就任前に非核三原則のうちの「持ち込ませず」を廃止することを主張していた.
 なぜそう主張していたかというと,「持ち込ませず」を廃止することによって,事実上,日本が核兵器を保有できるようにするためである.
 高市首相が非核三原則に反対であることは私たち国民の常識であるし,多数のメディアが指摘してきたことでもある.
 また高市首相が,麻生副総理の不興を買ってまで,国民民主党との連立ではなく日本維新との連立を続けたいかというと,日本維新が「持ち込ませず」に反対しており,国民民主党が非核三原則の維持を主張しているからである.
 自民党と国民民主党の連立が成立すると,高市首相のかねてよりの持論である「持ち込ませず」の廃止が遠のいてしまうのである.
 
 こういう首相が,今年の広島と長崎の式典でいけしゃあしゃあと「核兵器のない世界」と述べた.
 この式典中継でNHKのカメラが首相の表情をアップで放送したことが話題になっている.
 もしも中継カメラが,平気で嘘をつく人間の表情を放送しようと試みたとすれば,首相の機嫌を損ねたことになる.
 高市首相はかつて総務大臣だったとき (2016年) に,政府が好まぬ内容の放送に対しては電波停止を命ずることがあると主張した.(資料:東京弁護士会《高市早苗総務大臣の「放送法違反による電波停止命令を是認する発言」に抗議し、その撤回を求めると共に、政府に対し報道・表現の自由への干渉・介入を行わないよう求める会長声明》)
 これから高市首相のNHK攻撃が始まるかもしれない.
 
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傀儡が続投宣言

 朝日新聞《高市首相、27年4月の消費減税を表明「2年後責任もって元に戻す」》[掲載日 2026年7月30日] から下に引用する.
 
高市早苗首相は30日、食料品の消費税率を2027年4月から2年間、8%から1%に引き下げる方針を正式に表明した。さらに1%分を所得に連動して給付することで「実質ゼロ」とする。政府は、来週にも消費減税の方針を閣議決定し、今秋にも開かれる臨時国会に関連法案を提出する意向だ。実現すれば、1989年の消費税導入後、初めての税率引き下げとなる。
【自民党内から反発も】小渕氏は税調辞任、河野氏「反対」
 首相は30日に首相官邸で記者団の取材に応じ、食料品を対象に消費減税を行う必要性について説明した。首相は「物価高や税、社会保険料の負担に苦しんできた中所得、低所得の方の負担軽減が最重要課題」としたうえで、「最も望ましい方法を考え抜いた末、最善と考えられるものを選択した」と語った。
 2年後に消費税率を戻すかどうかについては、「私が責任を持ち、確実に税率を戻す」と明言した。経済状況によっては減税を続ける「景気条項」は関連法案に盛り込まない方針を明らかにした。(以下略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 高市自民党総裁の任期は2027年9月であるから,《私が責任を持ち、確実に税率を戻す》は9月の総裁選で勝利し,食料品消費税率1%期間が終了する2029年3月時点で高市総裁が首相であることを意味する.
 その点を記者団に問われた高市首相は,責任を持つとは首相の座にあることを意味しないと釈明したが,じゃあどうやって税率復帰に責任を持つんだという明言は避けた.
 しかし首相でないのに税率を戻すことに責任を持てるはずがないので,《私が責任を持ち、確実に税率を戻す》は事実上,高市首相は現任期終了後も続投するとの宣言である.
 しかしそううまく行くか.
 キングメーカーの麻生副総裁は日本維新が嫌いだという.
 日本維新との連立に固執する高市首相は,皇室典範改正 (*) が済んだ今では麻生氏にとっては御用済みだ.
 現在の自民党党内の力関係では,高市首相は任期終了後に使い捨てになる可能性が高い.
 これから高市首相と麻生派との暗闘が始まるだろうが,そもそも麻生氏の傀儡となることを承知の上で権力の座に就いた高市首相に勝ち目はない.傀儡でもいいから生き残りたいなら,日本維新との連立を解消するしかない.
 
 (*) 時事通信《「麻生氏は藤原道長か」 旧宮家養子案巡り中道・野田氏
 
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2026年8月 8日 (土)

AIを使っても頭の悪いライターに論理的な文章は書けない

 カスハラ男を退治したというストーリーの文章はAIで作るのに適していると見えて,リアリティのないゴミ作文がウェブ上に掃いて捨てるほど存在する.
 昨日は「フルセルフレジを使えなくて怒ってカスハラをした爺い」という設定の作文を紹介した.
 この作文を書いた漫画家は文章作成AIの条件設定が下手だったらしく,出来上がった作文の主文と結論に矛盾が生じてしまった.
 文章作成AIをうまく利用するには,条件設定が大切である.
 昨日に続いて,どんなに高機能のAIでも,バカライターが使うと矛盾内包のバカ文章が出力されてしまうという例を下に紹介する.
 日刊SPA!《「紙のメニューを持ってこい!」スマホ注文ができず店員に怒鳴る高齢男性。親切な若者が手を差し伸べた結果…》[掲載日 2026年7月6日] の前半部を下に引用する.執筆者はmakiというライターである.多分女性だろう.
 
「ちょっと面倒だな」と、飲食店のスマホ注文にためらった経験はないだろうか。人手不足の現場を支える便利な仕組みだが、操作に戸惑う客がいるのも確かだ。調査では利用経験者が6割を超える一方、シニア世代には拒否感も強いという。今回は、そんな新しい仕組みをめぐる、ある夜の居酒屋での出来事を紹介したい。
 
 スマホで注文する店でのひと悶着
 山本聡さん(仮名・22歳)は友人4人と、いつもの居酒屋で楽しい時間を過ごしていた。
 隣のテーブルにスーツ姿の男性3人組が入ってきたのは、山本さんたちが2杯目を頼んだ頃だった。
「最初は普通のサラリーマングループという印象で、特に気に留めていませんでした。定年間近に見える3人組でした」と山本さんは振り返る。
 ところが数分後、そのうちの1人が突然「なんだこれは」と声を荒らげた。
「実は以前まで卓上にあったメニュー冊子が消えて、今はQRコードが貼られた小さなプレートだけになっていたんです」
 一覧できるメニュー表がないことに、男性は相当戸惑っている様子だった。
 
 年配には無理だと店員に怒鳴りはじめ…

 男性はスマホを取り出してコードにかざしたものの、操作がうまくいかない。苛立ちのあまり、スマホをテーブルに叩きつけるように置いた。
 そのまま近くを通った若い店員を呼び止め、「どうやって頼むんだ」と詰め寄る。
 店員は横に寄り添い、丁寧に説明を始めた。しかし、男性の表情は一向にほぐれない。操作でつまずくたびに、小さく舌打ちを繰り返す。
「おい、もう紙のメニューを持ってこい。こんなんじゃ頼めない」
 店員が「当店はQRコードのみの対応でして」と答えると、男性の声はさらに大きくなった。
「客のことを考えていない店だな。年配には無理だろ、こんなの。不便すぎる」
 同席していた同僚たちは苦笑いを浮かべるばかりで、誰も止めようとはしない。面白がっているのか、それとも困っているのか、判然としない表情で見守るだけだった。
 奥から店長らしき人物が駆けつけ「申し訳ございません」と頭を下げたが、それが逆効果だったのか、謝罪を受けるたびに男性の勢いは増していく一方だった。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 ライターのmakiは,上に引用した文章を作るにあたって,《定年間近に見える3人組》の《普通のサラリーマングループ》が,QRコードで注文する安居酒屋チェーンに来たという設定をした.
 だが,若い世代向けに営業している店に,還暦くらいの年齢の客が本当に来るものだろうか.設定にかなり無理がある.w
 もしかするとライターのmakiは,自分がQRコードで注文する居酒屋チェーンしか知らないために,リアルの年輩のサラリーマンたちがどういう店で酒を飲んでいるのか知らぬのではないか.
 しかしまあ,そういう設定で話を進めてもいいが,ストーリーの後半でこのお話は破綻するのだ.
 その箇所を次に引用する.
 
「あの、すみません」と山本さんは笑顔で声をかけた。男性の顔をまっすぐ見つめ、「スマホで頼めますよ。よかったら、一緒に操作しましょうか?」と申し出る。
 顔を真っ赤にして怒っていた男性は、一瞬、言葉に詰まったように沈黙した。静寂のなかで、ふと我に返ったような表情を浮かべる。
「身体の力がすっと抜けたみたいでした。さっきまで店員さんに向けていた剣幕が、目に見えて引いていったんです」
 店員も、同僚も、周囲の客も、誰もが固唾をのんだ数秒間。沈黙を破るように、男性は絞り出すような声で言った。
「……頼む」
 その言葉を聞いた山本さんは男性の隣に移動。スマホを借りると、手慣れた様子であっという間に注文を完了させた。
「終わりましたよ。このボタンを押すだけなので、次からも大丈夫だと思います」
 山本さんが伝えると、男性は「……ありがとう」と小さくつぶやき、深く頭を下げた。それ以降、さっきまでの怒声が嘘だったかのように、静かに過ごした。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
「山本さん」という若者が《スマホで頼めますよ。よかったら、一緒に操作しましょうか?》と言ってカスハラ会社員と一緒に操作すると,店員が一所懸命に教えても全くできなかったQRコードオーダーなのに,何故かカスハラ会社員はできるようになってしまったのである.
 これは一体どういうことだ.
 makiの作文ではその理由の説明がない.読者はキツネにつままれる思いだ.
 そしてmakiは,呆気にとられる読者をそっちのけにして次のような説教を垂れる.
 
わからないと言えるようになりたい
 山本さんはこう振り返る。
「怒鳴ったって、QRコードの操作が急にできるようになるわけではないじゃないですか。最初から『わからないから教えて』と一言あれば、それだけで済んだ話だと思うんですよね」
 責めているわけでも、見下しているわけでもない。ただシンプルにそう感じたのだという。
「時代の流れに逆らうんじゃなくて、ただ教えてもらえばいいだけなのに。本当にそれだけなんですけどね」
 怒鳴って場を動かそうとした男と、笑顔のひひとことで場を収めた22歳。あの夜、どちらが頼もしく見えたかは、その場にいた全員がわかっていたはずだ。
 できないことを「できない」と言える人間が、じつは一番強い。怒鳴ることで誰かを動かそうとする前に、その一言が言えるかどうか。それが、今の時代の「大人の器」を測る基準になっているのかもしれない。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 ライターのmakiは《最初から『わからないから教えて』と一言あれば、それだけで済んだ話だ》と書いているが,カスハラ会社員は店員に注文方法を教えてくれと頼んだのに注文できなかったのだ.
 それなのに「山本さん」は,会社員が注文できるようにしてしまった.多分魔法を使ったとしか話の辻褄の合わせようがない.
 このようにmakiの作ったカスハラ会社員退治のお話は破綻しているのだが,自分の作文が破綻しているという自覚のないmakiは平気で《できないことを「できない」と言える人間が、じつは一番強い》と読者に上から目線で説教を垂れる.
 辻褄の合わない作文を平気で投稿する人間にそう言われても説得力ゼロだ.
 結局,頭の弱いライターにAIは使いこなせないということである.
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2026年8月 7日 (金)

勧善懲悪譚にするかハッピーエンドにするかを考えてから書け

 女子SPA!《「人間のレジだけにしろ!」セルフレジができなくて怒鳴り散らす男性。現れたシニア女性の“鮮やかな仕草”で空気が一変》[掲載日 2026年8月3日] から下に引用する.
 
「分からない」「できない」と感じた時、あなたはどうしていますか?
 今回は、スーパーのセルフレジで起きたトラブルと、そこから考えたい現代の問題についてご紹介します。
 
◆店内に響いた怒鳴り声
 ある平日の夕方。塚地麻里子さん(仮名・34歳)は、仕事帰りに駅前のスーパーへ立ち寄りました。
「その日は疲れていて、とにかく必要な物だけ買って、早く帰ろうと思っていたんです」
 買う物を選んだ麻里子さんは、レジへ向かいました。店内は仕事帰りの客でほどよく混雑していましたが、セルフレジは数台空いており、会計はすぐに終わりそうな雰囲気だったそう。
「その時『こんなの年寄りにやらせるなよ!』と、店内に怒鳴り声が響いたんです。振り返ると70代くらいの男性客が、セルフレジの前で腕を組みながら店員さんに怒鳴り散らしていたんですよ」
 男性は不機嫌そうな表情でセルフレジの前に立ち「何で俺が自分で機械なんか使わなきゃいけねぇんだ!」「人間のレジだけにしろ!」「説明が分かりづれぇんだよ!」と次々に不満をぶつけていました。
 店員さんが「ご案内しますので一緒にやってみましょうか」と丁寧に声をかけても「だから分かんねぇって言ってんだろ!!」と怒鳴り返す始末。
 さらに後ろに並んでいる客たちにまで「こんなの便利だと思ってんの若い奴だけだ! 年寄りは来るなって言いたいのか!」と絡み始め、周囲の空気は一気に重苦しくなりました。
「店員さんもかなり困っていて、周囲もどうしたらいいのか分からない空気になっていましたね」
 
◆誰も言えなかったことを代弁した女性
 誰もが様子をうかがうばかりで、なかなか声を上げられない。そんな状況の中、列の後方にいた60代くらいの女性が一歩前へ出たそう。
「するとその女性は『いい加減にしたら? 騒ぐ暇あるなら覚えればいいの! 私だって最初は分からなかったわよ』とおじさんに負けない声量で言い放つと、続けて『年寄りだからできないんじゃないの。“覚える気がない人”ができないの!』とセルフレジをピッ、ピッと鮮やかに操作して見せたんですよ」
 そのあまりの勢いに、その場にいた人たちは思わず目を丸くしました。
 
◆おばさんの正論におじさん撃沈
 しかし女性の説教はそれで終わらず「店員さんに怒鳴るなんて最低よ。『教えてください、お願いします』でしょ? あと後ろ見なさい。みんな待っているの!」そう言って後ろの列を指差しました。
 すると並んでいた客たちの何人かが、無言でうなずいたそう。
 完全に孤立した男性は顔を赤くしながら「二度と来るかよ、こんな店」と吐き捨てるように言うと、商品の入った買い物かごをその場に残したまま、逃げるように店を後にしました。
「するとおばさんは何事もなかったように『最近、怒鳴れば誰かがやってくれるって人多いのよねぇ』と私たちに笑顔を向けてくれて。その瞬間、張り詰めていた空気が一気に和らぎ、店員さんまで思わず吹き出していたんですよね」
 麻里子さんも思わず笑ってしまったそう。
 (引用終わり.以下省略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上に引用した記事の前半は,スーパーのフルセルフレジの使い方がわからず,店員に怒鳴り散らかして迷惑行為に及んでいた爺さんの話である.
 このテのカスハラ話は,まず間違いなく爺さんがカスハラをすることになっている.
 コミックエッセイでも文章でも,似た話はウェブ上にたくさん書かれているから,もはや陳腐だといっていい.
 筆者は鈴木詩子という漫画家だが,同工異曲の話が「AIによる作文」だとかあるいは「実話をもとにしている」と断り書きをしているのに,この漫画家はそういうキャプションを書いていないところを見ると,こういう創作をアップすることに慣れていないのだろう.
 
 それはそれでいいとして,話の前半《「その時『こんなの年寄りにやらせるなよ!』と、店内に怒鳴り声が響いたんです。振り返ると70代くらいの男性客が、セルフレジの前で腕を組みながら店員さんに怒鳴り散らしていたんですよ」
 男性は不機嫌そうな表情でセルフレジの前に立ち「何で俺が自分で機械なんか使わなきゃいけねぇんだ!」「人間のレジだけにしろ!」「説明が分かりづれぇんだよ!」と次々に不満をぶつけていました。
 店員さんが「ご案内しますので一緒にやってみましょうか」と丁寧に声をかけても「だから分かんねぇって言ってんだろ!!」と怒鳴り返す始末。
 さらに後ろに並んでいる客たちにまで「こんなの便利だと思ってんの若い奴だけだ! 年寄りは来るなって言いたいのか!」と絡み始め、周囲の空気は一気に重苦しくなりました。》は爺いのカスハラ場面だ.
 
 次に筆者の鈴木詩子は下のようなシーンを描いた.
 
◆誰も言えなかったことを代弁した女性
 誰もが様子をうかがうばかりで、なかなか声を上げられない。そんな状況の中、列の後方にいた60代くらいの女性が一歩前へ出たそう。
「するとその女性は『いい加減にしたら? 騒ぐ暇あるなら覚えればいいの! 私だって最初は分からなかったわよ』とおじさんに負けない声量で言い放つと、続けて『年寄りだからできないんじゃないの。“覚える気がない人”ができないの!』とセルフレジをピッ、ピッと鮮やかに操作して見せたんですよ」
 そのあまりの勢いに、その場にいた人たちは思わず目を丸くしました。
 
◆おばさんの正論におじさん撃沈
 しかし女性の説教はそれで終わらず「店員さんに怒鳴るなんて最低よ。『教えてください、お願いします』でしょ? あと後ろ見なさい。みんな待っているの!」そう言って後ろの列を指差しました。
 すると並んでいた客たちの何人かが、無言でうなずいたそう。
 完全に孤立した男性は顔を赤くしながら「二度と来るかよ、こんな店」と吐き捨てるように言うと、商品の入った買い物かごをその場に残したまま、逃げるように店を後にしました。
 
 爺いのカスハラを見かねた「おばさん」が非の打ちどころのない正論《年寄りだからできないんじゃないの。“覚える気がない人”ができないの!》をぶちかましてさらに《セルフレジをピッ、ピッと鮮やかに操作して見せ》て,爺いを孤立無援に追い込んだ.
 世の中についていけない爺いに関する他のカスハラ話では,この「おばさん」以外にかっこいい若い男だったり強気な若い女性だったり,突拍子もない場合は子供が出てきて,カスハラ爺いを木っ端みじんに粉砕する.
 鈴木詩子はこのシーンで,超人的レジ打ち「おばさん」を登場させて《店員さんに怒鳴るなんて最低よ。『教えてください、お願いします』でしょ?》と爺に説教するという新機軸を打ち出した.
 そして「おばさん」は《逃げるように店を後に》した爺いを《最近、怒鳴れば誰かがやってくれるって人多いのよねぇ》と嘲り,スーパーの店員は吹き出し,麻里子さんは笑った.
 というのが,鈴木詩子が作ったカスハラ爺い退治のお話だ.
 カスハラ爺いは逃げて行き,店員も麻里子さんも笑ったという勧善懲悪な結末に,読者が「よかったよかった」と思ったとたん,鈴木詩子は読者を裏切る.
 
◆私たちもいつか“分からない側”になる
 確かに、店員や周囲の客に当たり散らす男性の態度は褒められたものではありません。しかし一方で、セルフレジやタッチパネル注文など、新しい仕組みに戸惑う人が少なくないのも事実でしょう。
「できない」と感じることは「恥ずかしい」という感情につながります。そしてその恥ずかしさが、時として怒りや攻撃的な態度として表れてしまうこともあるんじゃないでしょうか?
 今回の男性も、本当は操作方法が分からず不安だっただけなのかもしれません。
 だからこそ社会全体としては、「できない人」を切り捨てるのではなく、誰もが利用しやすい環境づくりを考えていく必要があるでしょう。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 カスハラ爺いが,実は世の中の新しい仕組みについていけない弱者だったかもしれないと鈴木詩子はいう.
 そして《「できない人」を切り捨てるのではなく、誰もが利用しやすい環境づくりを考えていく必要がある》と結論する.
 だがしかし,そういう結論を書くのだったら《店員さんまで思わず吹き出していた》《麻里子さんも思わず笑ってしまった》は余分だ.
 逃げて行ったカスハラ爺いを笑った店員と麻里子さんは,弱者の感情に思いを至いたすことができない人間だということになってしまう.
 最後に余計な描写《店員さんまで思わず吹き出していた》《麻里子さんも思わず笑ってしまった》を付け足したために,首尾一貫しない話になってしまった.
 これを「九仞の功を一簣に虧く」という.論理的な作文を作る力のない人間のしがちな失敗である.
 
 ちなみにウェブ上には「他の客にカスハラを諫められて反省した爺いが,フルセルフレジの使い方を教えられてうまくできるようになりました」というハッピーエンドのお話もたくさんある.
 
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