似ていない法廷画/川村被告の場合
世間の注目を浴びている裁判の場合,テレビ報道では裁判の様子 (特に被告人の様子) を描写するために,報道機関の依頼を受けた専門の画家 (法廷画家) が描いた似顔絵 (法廷画) が使用されることがある.法廷では原則として写真撮影が通常は禁止されている (法により裁判長の許可がある場合を除く) からである.
下の画像は,北海道江別市で集団暴行を受けた大学生が死亡した強盗致死事件の裁判員裁判で,川村葉音被告が無期懲役を求刑されたことを伝えるテレビ朝日のニュースの場面である.(録画映像からスクリーン・ショットを作成)
テレビの東京キー局は各局ともこの川村被告の似顔絵を使っているようだが,川村被告の自撮りした動画も報道されている.
下の画像もテレビ朝日のニュース映像から作成したスクリーン・ショットである.
似顔絵と自撮り動画の容貌を比較すると,少し違和感がある.というか,似ていない.
自撮り動画の川村被告は,化粧で大盛りに盛ったケバケバなバカ顔ではあるが,そうはいってもどこにでもある顔である.
それに比べると似顔絵は,厚い唇の口角が下がっていて,眉毛のラインが極端であり,上目遣いで睨むような三白眼である.
しかし実際の被告の目は三白眼ではないし,眉毛は法廷画のようではない.普通の女性はそのような極端に湾曲した眉を描かない.
これは一体どういうことか.
普通の法廷画は,法廷内の法廷画家席に腰かけた画家が裁判開始後の数分間でスケッチするのだという.
そのため,斜め後方からのクロッキー的描写になり,どの画家が描いても似たようなタッチの絵になる.
しかし上に示した川村被告の法廷画は,裁判官席からみた被告の顔になっている.
これが何を意味しているかというと,この絵を描いた画家は実際には見えないはずの川村被告の顔を想像で描いたということである.
従って,頬から顎にかけてのラインが本物より直線的で鋭角になり,口角は実際より下がっているように描かれている.
つまりこの法廷画家は,スケッチではなく,川村被告がいかにも悪人顔であるかのように漫画で描きたかったのだ.
被告入廷時にほんの数秒のあいだチラと見た川村被告の顔を,法廷から仕事部屋に帰った画家は,被告をいかにも悪人のような面構えに仕立てたのである.
被害者大学生をいたぶり,暴行して殺した極悪のワル.
にもかかわらず,三人の被告の中で「自分は三番目に悪い」と法廷で述べて責任を逃れようとするワル.
それを画家は描きたかったのだ.
しかしそれは法廷画家が被告の印象を操作しているといえる.
漫画ならばそれでいいが,報道に用いる法廷画としては異例のことだと思う.

| 固定リンク
« 麦とろ飯 | トップページ | 乙武洋匡氏の覚悟 »
「新・雑事雑感」カテゴリの記事
- 超熟食パンファンの要望(2026.10.13)
- 汚職で実刑をくらった鈴木宗男が簗農相に人の道を説いた場面をニュースでみて噴飯爆笑した(2026.10.11)
- 怠惰な検索者(2026.10.11)
- ビューカードの危機(2026.10.10)
- 日本語として公私の別をきちんと(2026.10.07)

最近のコメント