手刀を突き出して前方に進行するじいさん
私が食料品などの買い物をする主な行動範囲はJR藤沢駅の周辺だ.
駅の南口にある小田急デパートや駅に隣接した藤沢名店ビルなどであれこれ購入したあと,北口にあるスーパー数店でも必要なものを買うのがいつものことである.
そんな時は藤沢駅の改札口 (駅ビルの二階にある) の前を通ることになるのだが,そこで先日おどろいたことがあった.
私が改札口前を通りかかった時,前方から右手の手刀をまっすぐ突き出したじいさんが歩いてきた.
このじいさんは,身長は私とおなじ170センチちょっとくらいで,背筋は伸びている.
手刀というのは,掌を開いて縦にした状態のことで,例えば大相撲で勝った力士が行司の軍配に載せられた懸賞金をチョンチョンと「切る」ような動作をするあの掌のことである.
別の言い方をすると,小中学校で「前倣え」(あるいは「前へ倣え」とも) と号令をかけて縦に整列するときに両手を前に突き出すが,あの手を右手だけにした形である.
こういう不思議な格好で,じいさんがズンズン歩いてくるのである.
私が推測するにこのじいさんは「ワシはまっすぐ進みたいのじゃからして,何びとたりともワシの前に立ってそれを妨げてはならぬのじゃ」という無言のメッセージを周囲にまき散らしているのだ.(この場合の「じゃ」はじいさんを表す慣用表現である)
駅の改札口の前の混雑の中で数人に一人はスマホの画面を見ながら歩いているから,爺さんの手刀を避けることができずに突かれてヨロケてしまうことになる.
このじいさんの行動は,スマホ歩きに対する抗議の表明なのか,あるいは体はピンシャンしているが自分のしていることの意味が理解できない認知症なのか,どちらなのだろうと私は考え込んでしまった.

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