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2026年5月18日 (月)

アドミラル山本

 読売新聞《自衛隊幹部の階級呼称を変更へ、幕僚長は「大将」・1佐は「大佐」に…旧日本軍の負のイメージから「曹」や「士」は変更せず》[掲載日 2026年4月25日] から下に引用する.
 
政府は、自衛隊幹部の階級の呼称を変更する方針を固めた。将官の中で陸海空それぞれのトップとなる幕僚長らは「大将」、それ以外の将は「中将」、1佐を「大佐」など諸外国の軍隊に準じた呼称にする。呼称変更は1954年の自衛隊発足以来、初めて。自衛隊は「軍隊」ではないなどの理由から他国と異なる呼称を使い続けてきたが、大きな転換点を迎える。
 複数の政府関係者が明らかにした。今年度中に自衛隊法などの改正案を国会に提出する予定だ。「名誉と誇りを持って働ける環境」(政府高官)を整え、人材確保につなげる狙いがある。
 対象は「准尉」を除く尉官以上の幹部で、将補を「少将」、2佐を「中佐」、3佐を「少佐」、1尉を「大尉」などに変更する。数字の階級表記は、国民から1佐と2佐でどちらが高位なのか分かりにくいとの指摘が出ていた。
 一方で、現役自衛官からの意見も踏まえ、「曹」や「士」は変更しない見通しだ。名称を「軍曹」や「二等兵」に変更すれば、旧日本軍の負のイメージが広がる可能性があると判断した。
 自民党と日本維新の会は昨年の連立政権合意書で、自衛隊の階級について「国際標準化を2026年度中に実行する」と明記した。与党内には、普通科を「歩兵科」、幕僚を「参謀」などに変更する案もあったが、現在の名称が定着しているため見合わせる方向だ。
 変更には自衛隊法のほか、防衛省職員給与法や関連する政省令の改正なども必要で、複数年かかる可能性がある。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 自民党と日本維新の会は連立合意書で《自衛隊の階級について「国際標準化を2026年度中に実行する」と明記した》とあるが,連立合意書の作成をリードしたのは実質的に高市首相と維新の吉村洋文代表である.
 高市首相は,自民党政府の従来の公式見解を逸脱して暴発した例の台湾有事発言の際に,戦艦と軍艦の区別がわからぬことを世界中に晒した軍事オンチである.
 吉村代表は,コロナ禍の最中に,ポビドンヨード含有うがい薬 (記者会見では「イソジンうがい薬」をアピールした) で新型コロナに立ち向かおうと大阪府民に呼び掛け,科学オンチだとして世間の嘲笑を浴びた.
 こういうレベルの二人が作った連立合意書の中身が阿呆レベルなのは理の当然である.
 
 まず世界中の軍隊の階級制度は各国独自のものであり,例えばフランス軍にはフランス語による階級制度があり,ドイツ軍にはドイツ語による階級階級制度があることは小学生にも理解できる.
 イギリスとアメリカの場合は,英語と米国語が近い言葉なので,軍の階級制度も似ているが,同じではない.
 さらにはアメリカ軍の場合は,陸軍・海兵隊・空軍・宇宙軍と,海軍とでは,異なる階級制度が敷かれている.
 世界最大の軍隊であるアメリカ軍でも,階級制度は標準化されていないのだ.
 関心ある向きは詳細を Wikipedia あたりで確認して頂きたいが,そもそも軍隊の階級制度に国際標準なんか存在しないのである.
 そこら辺の中学生ならばいざ知らず,大学受験する予定で世界史を勉強している高校生なら《自衛隊の階級について「国際標準化を2026年度中に実行する」と明記した》と聞けば,高市&吉村の知的レベルにあきれるだろう.
 すなわち彼らは,旧日本軍の階級制度に対する郷愁からその復活を目論んでいるのであり,その意図を隠すために,そもそも存在しない軍隊階級制度の《国際標準》なるものをデッチ上げて国民を欺こうとしているのだ.
 まあ日本国民の大半は高等教育を受けているので,その程度のすぐバレる嘘に騙されはしない.
 というより,その程度の嘘で国民が騙されると思っているところが,無知無教養な高市&吉村の浅はかさである.
 
 またこの二人の屁理屈は筋が通っておらず「大将」などの名称は復活させるが「二等兵」は《旧日本軍の負のイメージが広がる可能性がある》だとする無節操ぶり.
 だが戦後すぐの生まれである私たち後期高齢者には「大将」「中将」も「軍曹」「二等兵」も《旧日本軍の負のイメージ》を与える点では同じだ.
 その《旧日本軍の負のイメージ》については論考がある.有名な『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』である.(単行初版はダイヤモンド社/現在は中公文庫にある)
「負のイメージ」とは,愚かさと無責任である.
 先の戦争では要所要所で愚将たちが敗北を重ねて日本は負けた.
 ミッドウェー海戦で支離滅裂な指揮を執った南雲忠一海軍中将 (サイパンで敗北自決後に大将に特進) や,インパール作戦で三万人を超す兵員を病死ならびに餓死させた牟田口廉也陸軍中将や,南京攻略では「チェストーっ」と叫びながら日本刀を振りかざして南京市民を殺しまくった挙句に沖縄戦では九万人の島民を死なしめた牛島満陸軍中将(自決直前に大将に昇進) らをいなかったことにして歴史から抹消しない限り,「大将」「中将」には《旧日本軍の負のイメージ》しかない.
 高市&吉村の二人にしても,自衛隊の階級としては「幕僚長」とか「陸将」「海将」に慣れ親しんできたはず.
 しかるに彼らがいまさらのように旧日本軍の階級「大将」「中将」を持ち出してきたのは,たとえ自衛隊に《旧日本軍の負のイメージ》を与えてもいいから自衛隊の在り方を旧日本軍に近づけたいとの思いからに違いない.
 だがしかし,いかに優秀な陸将海将でも,高市首相の戦前ノスタルジーのおかげで「中将」と呼ばれるようになれば,南雲や牟田口や牛島と同じ愚将のイメージを背負うことになる.お気の毒としか言いようがない.
 
 余談だが,ホルムズ海峡に自衛隊を出兵せよというトランプの要請に高市首相は応じるつもりだったらしい.(高市首相の側近が諫めたという雑誌記事があるが,首相とその側近は双方がこれを誤情報だと否定している.しかしそのこと以来,その側近は遠ざけられたという噂がくすぶっている)
 出兵は結局は見送られたが,もしそのような事態になったら,自衛隊員の階級をアメリカ兵にもわかるようにしなければいけない.
 将官などの軍幹部たちは双方の階級制度を承知しているから問題ないが,アメリカ軍と自衛隊が共にイランに侵攻する場合,双方の兵士が入り乱れて戦う局地戦戦場では階級が上の者が部隊の指揮を執る.
 これは第二次大戦の時に,ノルマンディから上陸したイギリスとアメリカの兵士あるいはフランス兵が最前線で一つの混成部隊に編制される場合に行われたルールである.
 軍隊では階級の上下が絶対的だ.
 上官よりも軍人としては遥かに有能であっても,上官の命令に部下は従う義務がある.
 アメリカ陸軍第361歩兵連隊第3大隊K中隊に属する第2小隊の隊長ギルバート・ヘンリー少尉の命令には,少尉麾下の一分隊を率いるに過ぎないチップ・サンダース軍曹は絶対に従わなければいけないのである.(高齢者には懐かしの元ネタ)
 もし従わなければ処罰される.それが戦場のルールだ.
 従って,日米混成部隊が戦場で混乱なく イランを侵略する イランのイスラム革命防衛隊と戦闘するためには,両軍の階級制度を整備しておく必要がある.
 そこで,もし高市首相が自衛隊の階級制度を国際的に (英語圏に) 通用するものにしたいのであれば,ありもしない「国際標準」とか言わずにアメリカ軍の階級制度をそっくりそのまま導入すればいい.
 自衛隊では階級名に接頭辞「一」「二」「三」を付けている (一佐,二佐,三佐,一尉,二尉,三尉など) が,これが国際的に通用しないのと同様に,旧軍のように接頭辞「大」「中」「小」を付ける (大佐,中佐,少佐,大尉,中尉,少尉など) のも同様にガラパゴス的だ.
 英語圏の人を相手に「Yamamoto Isoroku Taishou」と言っても理解してもらえないのは,「大将」が日本語だからである.
 例えば陸上自衛隊と航空自衛隊であれば,国際的すなわち英語圏で通用するようにするには,アメリカ陸軍 (Army) の階級 (下記) で呼べばいい.
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 General
 Lieutenant General
 Major General
 Colonel
 Lieutenant Colonel
 Major
 Captain
 First Lieutenant   (*)
 Second Lieutenant  (*)
 Gunnery Sergeant
 Master Sergeant
 Staff Sergeant
 Sergeant
 Corporal
 Lance Corporal
 Private 1st Class  (*)
 Private
    [註] 上記の階級名称のうち,(*) だけは数詞が用いられているが,あとは以下のように雑然としている.
        Major はあるが Minor はない.
        Private 1st Class はあるが,その下は Private であり,Private 2nd Class ではない.
       また自衛隊の一等陸曹はアメリカ海兵隊 (Marine Corps) にはない.
       そしてアメリカ空軍 (Air Force) と海軍 (Navy) には上記と別の階級制度がある.
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 つまり,「大将」などという日本人にしか理解できないガラパゴス的階級名称を廃して,国際的に通用する「ジェネラル」「アドミラル」にするのだ.アドミラルは旧日本軍の海軍大将に相当するが,もちろん Admiral は Admiral であって,Admiral は「大」という概念を持っていない.意味的には「司令官」である.
 (ここでは便宜的に「アドミラル」と片仮名で記したが,実際は英語 Admiral だ)

 例えば「山本五十六大将」は「アドミラル山本五十六」にするのだ.(実際は「Admiral 山本五十六」)
 これを最下級まで行う.
「高市三等陸士」は「プライベート高市」となる.(実際は「Private 高市」)
 できれば,戦闘服に付ける階級章は日米双方で統一することが望ましい.そうすれば一目で階級の上下がわかる.
 ここまで自衛隊の国際化を徹底すれば,高市首相は何の不安もなくトランプの命令に従ってイランに出兵できるというものである.
 
 ちなみに,戦時中の昭和十九年四月に文部省が発行した中等学校英語教科書二年用に「ADMIRAL YAMAMOTO AND HIS HOUSE」という英文が載っている.
 山本大将の家が質素な家屋だったという話であるが,高島俊男『広辞苑の神話』(文春文庫,2003年第1刷) に載っている.
 この英語教科書は高島先生の蔵書だったと思われるが,先生の逝去後,蔵書は非公開である.
 国立教育政策研究所教育図書館「近代教科書デジタルアーカイブ」にも収録されていないようだ.
 
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