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2025年12月22日 (月)

観測気球

 戦後日本の保守政治家は,絶対的に戦争反対の立場を堅持した.
 それは彼らが戦争体験を有していたからであり,派閥領袖の中で最もタカ派といわれた中曽根康弘でもそうだった.
 ところが戦争体験を持たない派閥領袖として安倍晋三が頭角を現すと状況は一気に変化した.
 公然と核武装の論議をする者が現れてきたのである.
 高市首相は「非核三原則は邪魔」発言で知られるが,その延長線上には日本の核武装がある.
 現首相が公然と「将来は日本も核武装します」とは言えないから,いわゆる観測気球を打ち上げるわけだ.
 これは歴代自民党首相の常套手段である.
 そこで今回の,首相側近の「核武装発言」が行われたのである.
 読売新聞オンライン《首相官邸幹部「日本も核を持つべきだ」とオフレコ発言、木原官房長官「非核三原則を堅持」…公明代表「罷免に値する」》[掲載日 2025年12月19日] から下に引用する.
 
木原官房長官は19日の記者会見で、核兵器に関する政府見解について、「非核三原則を堅持している。唯一の戦争被爆国として『核兵器のない世界』の実現に向けて取り組みを進めていく」と強調した。安全保障政策を担当する首相官邸幹部が18日に「日本も核を持つべきだ」と発言しており、政府見解との整合性を問われて答えた。
 官邸幹部の発言に対し、立憲民主党の野田代表は19日の記者会見で、「こうした考えを持つ人が(首相の)そばにいることに問題がある。早急に辞めていただくのが妥当だ」として更迭を求めた。公明党の斉藤代表も記者団に「 罷免ひめん に値する重大な発言だ」と批判した。
 18日の官邸幹部の発言はオフレコを前提とした記者団とのやり取りの中であった。核保有について「議論すべきことだ。議論しておくことが抑止力になる」と述べた。政府としては核保有を検討しておらず、核拡散防止条約(NPT)との兼ね合いから実現は難しいとも説明していた。
 
 ステップとしては,まず官邸の首相側近に《日本も核を持つべきだ》と発言させる.
 続いて官房長官が《非核三原則を堅持している。唯一の戦争被爆国として『核兵器のない世界』の実現に向けて取り組みを進めていく》とメディアに述べて,側近の発言を否定する.
 これで「側近の勇み足,あるいは無断の勝手な発言」という体裁が整うわけだ.
 こうして世間の反応を観る.これが「観測気球」ということである.
 するとただちに,橋下徹などの核武装賛成論者がワラワラと出てきて,核武装賛成論をメディアで述べて,日本核武装への道を耕してくれる.(日刊スポーツ《橋下徹氏「核保有は必要だと思っているし、議論の対象にすべき」政権幹部の発言めぐり私見》[掲載日 2025年12月19日]
)
 これを何度も繰り返せば,日本核武装に対する国民の意識を調査できるのである.
 
 さて立憲民主党,公明党,共産党などは首相側近の発言を咎めたが,国民民主党の玉木代表はピント外れだった.
 産経新聞《「オフレコの話を記事にするメディアも問題では」国民・玉木氏 官邸筋の核保有発言》[掲載日 2025年12月19日] から下に引用する.
 
国民民主党の玉木雄一郎代表は19日、自身のX(旧ツイッター)を更新し、安全保障政策を担当する官邸筋が「核を持つべきだ」と発言したことを巡り、「オフレコの話を記事にするメディアも問題では」と投稿した。発言は、官邸筋がオフレコを前提にした記者団の非公式取材を受けた際に出た。
 
 長いこと政治家をしているのに,玉木代表は「観測気球」という自民党の手法を知らないと見える.
 オフレコの話がメディアに漏れて記事にならなかったら,発言した甲斐がないではないか.
 高市首相は核武装発言がメディアに漏れて記事になるのを期待して,側近に発言させたのである.
 それがわからぬとはまことに情けない.
 
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