昭和の凍死者
先月あたりから時折,陋屋の窓の下の日当たりがよいところで猫が寝ている.
私が傍にいても,目をつぶったまま陽を浴びている.
そして数時間経つとどこかに行ってしまう.
猫は一日の大半を眠っているわけだが,私の家の次はどこに行くのだろう.
丸まっている寝姿を見た限りでは痩せているのだが,食べるものはどうしているのか.
冬は昆虫も蛙もトカゲもいない.
冬は野良の猫には厳しい.
そのためか,一説には野良猫の寿命は数年だという.
冬が厳しいのはひとの場合も同じで,大都会では路上生活者の凍死が発生する.
昔は定まった住居を持たない人々を広く「ホームレス」と呼んでいたのだが,今の行政はホームレスを狭く定義 (厚労省《ホームレスの実態に関する全国調査(概数調査)結果について》) しているため人数が昔に比べて激減している.(一説にはホームレス問題を過小評価するためだと言われている)
そのためかホームレスの凍死者はかなり少なくなっている.
政府はいわゆるネットカフェ難民をホームレスとは認めないから,ネットカフェ難民が路傍で凍え死んでも,「ホームレスの凍死者」にはカウントしないのである.
この問題の詳細は「見えないホームレス」等で検索していただくとして,私が覚えているのは,かつて都知事であった青島幸男のことだ.
青島都知事は都内からホームレスを一掃したいと考え,新宿駅西口からの道路沿いに数多く存在したホームレスたちのダンボールハウスを,警察を動員して撤去した.
いま思い出しても,ホームレス支援者たちの眼前で,警官が路上生活者たちをゴボウ抜きにして排除していく光景は酷かった.
情け容赦ない,とはこのことだと私は思った.
この時,市民派とか言われて人気のあった青島幸男のほんとうの顔がバレたのであった.
青島は新宿西口だけでなく,池袋や渋谷でもホームレスの追い出しをやった.
探してもウェブ上に記録が見つからないが,その年の池袋駅周辺では二桁の凍死者が出たと覚えている.
この頃から,行政はなんでもかんでも「自己責任」で片づけるようになり,今に至る.
テレビでは,昭和歌謡だとか昭和レトロなどと昭和を冠した放送が作られるが,昭和はそれほどいい時代じゃなかった.
少なくとも貧しい者にとっては.

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