« 熊の手 /工事中 | トップページ | なかったことにする »

2025年11月18日 (火)

根本的なクマ対策は森にクマを追い返すことであると小池教授は述べている

 ABEMA TIMES《クマ遭遇で“うつ伏せ防御”は危険…ハンターが指摘「あくまで最終手段」「頸動脈をパッと切られて終わり」》[掲載日 2025年11月15日] から下に引用する.
 
クマと遭遇した際に身を守る姿勢として、よく聞くのが“うつ伏せ防御”。しかし、北海道猟友会 砂川支部長の池上治男氏は、この姿勢に対して注意喚起する。
 池上氏は、クマについて「(人間を)食べ物として襲ってくること。やっぱり人間を見たら襲ってくる」と語る。
 人間をエサと思っているというヒグマと遭遇した時、よく言われるのは“うつ伏せ防御”の姿勢。この姿勢は環境省の対応マニュアルにも記載され、ポイントは頭部や腹部を守ることだとしている。
 しかし池上氏は、この姿勢は「あくまで最終手段で最初からこの姿勢と覚えるのはかえって危険だ」という。
「その防御姿勢が何かいいなみたいなことを、これは当たり前のような感じになっていたら、これちょっと大変。頚動脈がパッと切られて終わり。結局そういう体勢をした時に、ツキノワグマも同じだけどヒグマだと簡単に引き起こされる。生きたままかじられる。爪で引っ掛けられたり。腹や内臓に手が入って引っ張り出されたら内臓ごと出る。生きたまま食われる」(池上氏)
 まずはゆっくり後ずさりして逃げる。それでも襲われた場合、この姿勢をとるべきだと主張する。
「戦うって気持ちを忘れないで。なんでも武器になる。木の棒を持つことで、自分のところで振り回して守るということ。鉛筆だって武器になるんだから。目を狙う、やっぱり(クマも)嫌がりますから」(池上氏)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
「うつ伏せ防御」については,私は「ほんとかなあ」と疑問に思っていたのであるが,現役の経験豊かなハンターが「うつ伏せ防御」は《あくまで最終手段で最初からこの姿勢と覚えるのはかえって危険だ》と言うのだからこれは説得力がある.
 ある動物生態学のフィールドワーカーが「クマと接近遭遇したときに無抵抗なら間違いなく殺される.それなら敵わぬまでも戦うべきだ.鉛筆一本でも眼を突けば武器になる.戦え」と書いている.これも実践的な見解ではないか.
 東京農工大学農学研究院の小池伸介教授は著者『ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら?ツキノワグマ研究者ウンコ採集フン闘記』(辰巳出版) の中で,クマ除けの鈴が逆効果になる可能性を指摘している.
 小池教授によると,鈴の音は,飢えたために野生小動物やシカを食べて肉食化したクマを呼び寄せてしまう可能性があるのだ.
 
 テレビ番組でクマ対策としてよく紹介されるのは,激しい刺激性を有するカプサイシンを噴霧するスプレーだ.
 秋田県に派遣されている陸自の隊員も装備している.
 しかし私は,これは役に立たないと思う.
 なぜならこれには二つの致命的な欠陥があるからだ,
 一つは,テレビ番組で実演を見たところによると,このスプレーは噴霧距離がわずか数メートルしかないこと.
 家の中のゴキブリ退治ならともかく,眼前三メートルのクマに突進されたら,悠長にスプレーを構えて噴霧する時間はない.
 私はスズメバチ用のスプレーを所有 (スズメバチ処理業者に教えてもらった製品) しているが,これは十メートル先のスズメバチの巣をピンポイントで噴射攻撃できる.
 そういうすぐれたスプレーがあるのに,なぜ市販のクマ除けスプレーはあんなにヤワな噴射力なのか理解に苦しむ.
 もう一つは,クマの風上に位置どりして噴霧しないと,自分がカプサイシンを浴びてしまうこと.
 仮にクマに気づかれずにクマの風上に回ることができたとすると,それは嗅覚にすぐれるクマに自分の位置をわざわざ教えてしまうことになる.
 要するに市販のクマ除けスプレーは役に立たない画餅である.
 
 あとは音や光による対策が考えられている.
 毎日新聞《「クマが人里に出てきたら“負け戦”」 AIや音響で寄せ付けない》[掲載日 2025年11月8日] から下に引用する.
 
《(前略)
 こうした疲弊する現場をバックアップしようと、山本さんは会津大と連携して、AI(人工知能)カメラを活用した実証実験を進めている。
 山際に設置したカメラがクマやイノシシが近づいてきたのを検知すると、野生動物が嫌う音や光を発して追い払う仕組みだ。
 人里に近づこうとする個体の画像は、地元自治会や自治体にも即座に共有され、住民へ注意を促すこともできるという。
 さらに、民間の研究チームとは、クマが嫌がる特殊な音を発する装置の実験も行っている
私たち人間が聞いても、耳をふさぎたくなるような不快な音で、クマが好む養蜂箱の近くに設置して、その後2年間はクマが寄りつかなかったという結果も出ています」という。
「AIや音響技術を組み合わせて、地域全体でリスクを下げる取り組みが必要です。技術開発にとどまらず、すぐにでも現場への実装が求められる時代になりました」(以下略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 クマが増えて市街地にまで出没している現状に,自治体も猟友会も疲弊している.
 これに対して山本麻希・長岡技術科学大准教授は民間研究チームと共同で《クマが嫌がる特殊な音を発する装置の実験》を行っているというのが上の記事である.
 山本教授は《私たち人間が聞いても、耳をふさぎたくなるような不快な音で、クマが好む養蜂箱の近くに設置して、その後2年間はクマが寄りつかなかったという結果も出ています》と言うが,私はこの実験の三年後の結果がどうなったか知りたい.
 三年目以降もクマが養蜂箱に寄りつかなかったか,あるいは三年目にはクマが不快音に慣れてしまって効果がなくなったか,ということである.
 この強烈な音に対して肝心のハチたちは無傷で済んだかも気になる.
 ハチは聴覚に特化した器官は持たないが,振動には敏感に反応するという.
 《私たち人間が聞いても、耳をふさぎたくなるような不快な音》に反応したハチは逃亡する,あるいは攻撃行動を起こすと思われるが,それについて山本教授が触れないのは合点がいかない.
 いずれにせよ,《私たち人間が聞いても、耳をふさぎたくなるような不快な音》では実用性はなかろう.クマも人間もハチも耐えられない音では,養蜂はできない.w
 山林に生息している小動物や鳥,昆虫類に悪影響が考えられる手段は最初からダメだと思う.
 
 元自衛官だという識者が書いていたことだが,陸自の小銃ではクマに歯が立たないとしても,人海戦術で繰り出す「山狩り」は有効ではないか.武器は銃剣を装備する.
 陸自隊員の戦闘服は軽装であるが,治安出動する警察機動隊並みのフル防護装備 (乱闘服) を装備すれば,ツキノワグマなら何とか集団戦的に「山狩り」をしてクマたちを本来の生息地に追い込むことができるのではないだろうか.
 前記の小池教授は《私は、クマは森の中になら何万頭いてもいいと思っている。増えすぎたらエサが足りなくなって淘汰され、当然共食いだって起こるだろうし、生態系の中で辻褄が合っていくはずだ。大切なのはクマを増やさないことではなく、山からクマを出さないことだ》と述べている.(All About《研究者が懸念する、クマよけの鈴の"逆効果化"。その兆候が2025年の「住宅・倉庫侵入」で見え始めた》)
 これは説得力がある見解である.
 
Photo_20240810084301

|

« 熊の手 /工事中 | トップページ | なかったことにする »

新・雑事雑感」カテゴリの記事