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2025年10月 8日 (水)

公明党よ平和の党たれ

 もう一昔前のことになったが,2014年7月1日に安倍晋三内閣は,これまで集団的自衛権は保持するが行使できないとしてきた政府の憲法解釈を変更し,限定的行使は可能とする新たな見解を閣議決定した.
 この限定的行使とは,(1) 密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある (2) 国民を守るために他に適当な手段がない (3) 必要最小限度の実力の行使,の3要件が満たされた場合に限って容認するという意味だ.
 周知のように,日本国憲法の平和主義を「戦後レジーム」として葬り去ることを意図した安倍晋三の目論見に対して,閣議決定において歯止めをかけたのは公明党である.
 この例のように,自公連立が始まって以来,公明党の存在意義はひとえに同党の平和主義であったと言ってよい.
 公明党が,自民党の戦前回帰を,連立内閣の内側から押しとどめてきたのである.それが今,危うい.
 高市自民党新総裁は今,少数与党の現状から旧に復するために,連立政府の新しい枠組みの構築に水面下で動いているが,連立条件の一つに集団的自衛権の拡大がある.
 故安倍晋三の思想的後継者である高市総裁としては,安倍晋三が志半ばで倒れて成しえなかったこと,すなわち「戦後民主主義」(Wikipedia【戦後民主主義】) の清算をしたい.
 それには公明党の平和主義が障害となるのだ.
 
 高市新総裁誕生直後,参政党神谷代表が連立に前のめりの発言をした.
 しかしすぐに「ダメな自民党」と捨て台詞を吐いて連立を否定した.
 たぶん高市新総裁に連立を打診してはみたが,全く相手にしてもらえなかったのであろう.
 そこら辺の若いのを街頭演説で扇動するのはうまいが政策立案能力が全く無い神谷代表を,政策通の高市新総裁が相手にするわけがないのは,私のような一般国民でもわかる.
 
 右派政党である維新との連立について,橋下徹氏は「連立協議が水面下で進行している」と発言したが,その後次第に吉村代表がトーンダウンしている.
 総裁選で小泉農相を敗北させた麻生・高市コンビによって,維新と自民のパイプ役だった菅義偉副総裁の影響力低下したからというのがNHK解説委員の見立てである.
 
 麻生副総裁が連立相手の本命に想定している国民民主党は,平和とか歴史認識について公明党のように政党としての確固とした思想信条があるわけではない.ご都合主義の大衆迎合政党だから,自民党としては連立相手として都合がよい.
「手取りを上げる」政策でご機嫌を取ればよいので,まことに御し易い.
 そういうわけで,麻生副総裁は公明党を無視して国民民主党との連立工作を進めている.
 
 歴代首相の中で最もタカ派である高市次期首相は,いずれ集団的自衛権の限定条件を外すだろう.
 安倍晋三が望んだ「交戦権」は外交に必要となる様式的なものだったろうが,高市早苗は,場合によっては本気で交戦する気だからである.
 冒頭に記した2014年のとき,本来は国会での論議が必要な集団的自衛権の範囲を,安倍晋三は閣議だけで変更してしまったのだが,公明党は,創価学会内の慎重論を押し切って,結果的に安倍の暴挙の片棒を担いだ格好になった.
 そういう過去の経緯があるから,公明党がこのまま自民との連立を続け,高市首相に閣議のみで集団的自衛権範囲を拡大されてしまうと,公明党は創価学会に対して顔向けができない.「それ見たことか」と言われてしまうどころか,解党的危機を迎えることになる.
 
 昨日行われた自公の連立に関する協議では,両党の溝は埋まらずに協議は持ち越しとなった.
 おそらく公明党斉藤代表は,自公連立を解消しても止む無しという心境だろう.
 そこを見て立憲民主党野田代表は,自民・国民 vs 公明・立憲という構図を描いているようだ.
 
 戦後すぐに生まれて「戦後民主主義」と共に生きてきた私たちの世代は,日本国憲法の価値観が骨の髄まで染みついている.
 それ故,参政党の塩入清香議員のような,日本の核武装と徴兵制の復活を主張する若い政治家が登場してきたことに私は驚きと空恐ろしさを感じる.
 私たち高齢者世代に限らず,核兵器について非人道的な殺傷力のイメージを持っている人は多いだろう.
 しかし塩入清香議員は核兵器について「核武装は安上がり」だという.
 彼女は,戦場で人が人を殺すことについて,罪とか非人道性などの視点ではなく,経済性で論じる.
 これは論外としても,過去の発言から判断して,高市次期首相もまた戦後民主主義の影響下にないことは確からしい.
 
 かつて我が国には,左派労働運動 (総評) を支持基盤とした旧社会党,共産党とその影響下の諸団体,公明党,被爆者団体などの広範な平和勢力があり,憲法九条を守る運動を展開した.
 しかし左派労働運動と旧社会党はほぼ壊滅し,共産党も衰退した.
 また被爆者団体は高齢化した.
 今や憲法九条の擁護を掲げる平和勢力は,公明党と,右派労働運動 (連合) を支持基盤とする立憲民主党だけである.
 だが公明党の退潮も明らかである.
 このまま高市次期首相のもとで急激に右傾化する自民党と連立を組んでいては,公明党の立党精神が空洞化する.
 そうなる前に公明党は連立から離脱して,平和主義に立ち返るべきである.
 
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