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2025年9月10日 (水)

入院経験がないのなら調べてから台本を書け

 NHK《いつか、無重力の宙で ≪超小型人工衛星≫で宇宙を目指す!30代女性たちの2度目の青春物語。》[初回放送日:2025年9月10日] の脚本と演出に呆れて声も出ない.
 番組宣伝サイトから下に引用する.
 
第三回
 飛鳥(木竜麻生)は、ひかり(森田望智)に誘われて久しぶりに星を見ようと、プラネタリウムに出かける。ひかりは、高校生のときに天文部の4人で交わした「宇宙に行く」という約束をただ一人追いかけていた。そして、宇宙飛行士選抜試験に挑戦しようとしてたが、その夢を諦めることになったのだった。「宇宙から地球を見たかった」と声を震わせて語るひかりに、飛鳥は自分に何かできることがないかと考え…。
 
 プラネタリウムの入り口で.ひかり は突然倒れてしまい,救急車で病院に搬送される.
 この時のひかりは明らかに苦痛で顔を歪めており,人気番組《総合診療医ドクターG NEXT》風に言えば,内臓系の発作で倒れたと思われる.
 ところが,病室で目覚めた ひかり は飛鳥に《がんなんだよね,わたし》と告げる.血液のがんだと.
 驚く飛鳥に ひかり は《でも大丈夫.さっきのは,貧血でめまいを起こしただけだから》と言う.
 
 その「貧血」というインチキ診断は誰が判定したのか.
 失神から回復してベッドの上で目を覚ましたばかりの ひかり が医師から聞いたはずがない.
 むしろ救急搬送に付き添った飛鳥が,診察を終えた医師から ひかり の病状を聞いているはずなのである.
 だから,ひかり が飛鳥に「わたし,プラネタリウムに入ろうとした時,どうしたのかしら」と訊くのが当然なのである.
 もしかすると,ひかり は「血液のがん」以外の,苦痛で失神するような深刻な内臓系の病気であるのかも知れなくて,それが今後のドラマ展開の伏線になっているのかも知れぬが,それならそれで,ひかり の《さっきのは,貧血でめまいを起こしただけだから》という突拍子もないセリフはおかしい.「血液のがん」で話を進めるのなら,こういうウソ描写をしてはいけない.
 
 ウソ描写の台本を書いたやつは明らかに頭がパアである.
 しかしシナリオライターがバカであることは,よくあることだから許してもいい.
 だが,その夜,ひかり と飛鳥が二人して病室を抜け出し,病院の庭のベンチでお気楽な会話をするのは許せぬ.
 
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上の画像は第三回の放送画面をカメラ撮影し,画像をトリミングしたものである.
 
 病院のナースセンターの前を,どうやって点滴スタンドをガラガラと引きずりながら通過できたのか.
 消灯前なら看護師がいたはずである.
 また夜間,患者が病棟から抜け出す時に正面玄関を通るのは不可能 (夜間は保安要員が監視している) で,庭に通じる通用口から出るしかないが,ここのドアのセキュリテイをどうやって突破したのか.
 ドラマの性格が現代のおとぎ話であるとしても,あまりにも非常識な描写である.全くリアリティがない.
 シナリオライターが入院経験がないとしても,それならなぜ病院の保安システムを調べてから台本を書かないのか.いくらバカでもそれくらいしろ.
 この「夜ドラ」枠には佳作が多いが,この《いつか、無重力の宙で》は滅茶苦茶である.
 
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