《あんぱん》の時代考証の瑕疵
NHK《あんぱん》のヒロイン柳井のぶのモデルである暢さんは大正七年の生まれである.私の父よりも一つ年上だ.
今再放送している《とと姉ちゃん》のヒロイン小橋常子のモデルは大橋鎭子さんで,彼女は大正九年の生まれ.暢さんと大橋さんはほぼ同世代だ.
《あんぱん》と《とと姉ちゃん》を比較すると気が付くのは,戦後すぐの時期に柳井のぶの着ているブラウスが,デザイン (特に襟) こそ古めかしいが,衣料品メーカーによる上質の既製品のように見えることだ.
だが事実は,戦中から戦後しばらくの時代に一般女性の洋装衣服はすべて手作りだった.
洋装品店は戦争で壊滅したからだ.
そのため戦後,洋裁の腕を持つ女性が,布生地をどこからか手に入れて作って売ったのである.
その時代の考証を,小橋常子の着ているヨレヨレのシャツブラウスがよく表現している.
上の画像は《とと姉ちゃん》の放送画面をカメラ撮影した画像をトリミングしたものである.
木綿のシャツの襟はアイロンをかけないとシワシワになる.
ミシンを踏むことはできる女性でも,型紙を作れなければ自分の着る服は作れない.
だから,大橋鎭子さんは女性のための生活雑誌に,洋服の型紙を付録にしたのである.
戦後の柳井のぶが着ている服は,生地も仕立ても上質すぎる.もっとヨレヨレでなければ,時代考証として不出来と言わざるを得ない.

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