kangnamtimes《「トランプ、歴史抹殺を始める」奴隷制告発資料を国立公園から撤去…“偉大なアメリカ”とはこのことか?》[掲載日 2025年9月19日] から引用する.
《ドナルド・トランプ米政権が国立公園に設置されていた奴隷制に関する展示物の撤去を開始した。歴史的事実を消し去ろうとする「記憶の政治」が本格化したとの批判が出ている。
『ワシントン・ポスト(WP)』は16日(現地時間)、政権関係者の話として、国立公園局(NPS)を所管する内務省がこの作業を主導していると報じた。今回の措置は、トランプ大統領が今年3月に署名した大統領令に基づくものだ。大統領は当時、「米国の歴史的人物を貶める思想を含む展示物を国立公園から除去せよ」と指示していた。
これを受け、ウェストバージニア州のハーパーズフェリー国立歴史公園では奴隷制に関する史料が大量に撤去された。同公園は1859年に奴隷制廃止論者ジョン・ブラウン氏が率いた武装蜂起を記念して整備された場所で、奴隷制の悲惨な実態や人種差別の弊害を告発する資料が展示されていた。しかし、これらは「米国の歴史を貶める」との理由で撤去されたという。
ある国立公園では、奴隷への暴力を告発する目的で1863年に撮影された有名な写真にも撤去命令が下ったとされる。この写真は南北戦争当時、北部の住民に奴隷制廃止の正当性を認識させた歴史的資料と評価されてきた。また、フィラデルフィアにある初代米大統領ジョージ・ワシントンの邸宅跡では、大統領が所有していた9人の奴隷に関する資料が修正された。ワシントン氏が「独立の英雄」である一方で奴隷所有者であった事実が、否定的に映る恐れがあると判断されたためだ。(以下略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
アメリカ合衆国は歴史的に新しい国だから,アメリカ史における歴史的事実を「なかったことにする」のはかなり大変だ.
そんなことをしても,アメリカの歴史は学校で勉強して世界中の皆がよく知っているから,隠しても意味はない.
トランプは一応大学は出ているけれど,いわゆる地頭が悪いからそういうことが理解できない.
《ワシントン氏が「独立の英雄」である一方で奴隷所有者であった事実》を「なかったことにする」場合,アメリカにおける奴隷制や南北戦争そのものを「なかったことにする」必要があるが,その辻褄合わせは大変である.
北米大陸に上陸したヨーロッパからの移民たちが,西へ西へとアメリカ先住民 (ネイティブ・アメリカン,いわゆるインディアン) をて大量虐殺,民族浄化をしながら移動して,アメリカを建国した.
アメリカ建国の歴史過程で多数の先住民部族が滅ぼされ,生き残ったわずかなアメリカ先住民は保留地に強制移住させられ,これに抵抗する者は殺された.
話は逸れるが,今のアメリカ人も民族の強制移住を非道とは思わない.
トランプはガザ地区のパレスチナ人を強制的に地区外に追い出して跡地にリゾートを作ると明言しているが,これはアメリカ人の感覚からすると国際法違反ではないのである.
イスラエルの極右政権はいずれガザ地区のパレスチナ人をイスラエル外に強制移住させて民族浄化を行うだろうが,トランプと共和党支持者たちはこれに大賛成するだろう.
さて私の少年時代は,ハリウッド映画のジャンルに「西部劇」があり,これはもうストーリーが極悪非道で,アメリカ先住民はいくら殺しても構わぬという感覚で作られていた.
西部劇はアメリカ先住民大虐殺の証拠のようなものだ.
しかし当時作られた西部劇がどのようなものだったかを知るアメリカ人は,もう年寄りしかいない.
だから近い将来,アメリカ人によるアメリカ先住民虐殺の歴史は「なかったことに」されるだろう.
すでにトランプは手を付けているが,アメリカ先住民の悲惨な歴史を展示している国立アメリカインディアン博物館は閉鎖される可能性がある.
このまま共和党政権が続き,トランプが永世大統領にでもなった日には,第二次世界大戦時に行われた日系人強制収容 (Wikipedia【日系人の強制収容】参照) の事実も「なかったことに」されるに違いない.
アメリカ先住民の虐殺と奴隷制はアメリカの二大黒歴史だが,もっとすごいことがある.
共和党の岩盤支持層である福音派キリスト教徒は,「神が最初の人間の男を作り,男の骨から女を作った.これがアダムとイブである」と信じているのだ.
彼らは旧約聖書の記述を絶対視しているから,アダムとイブのお話もノアの箱舟も事実だと信じている.
これが有名な「進化論裁判」の根底にある.(Wikipedia【進化論裁判】参照)
Wikipedia【進化論裁判】には下の記述がある.
《2009年2月11日に米世論調査企業ギャラップが発表した調査結果によると、米国で「進化論」を信じる人は39%にとどまり、全く信じない人が25%だった。36%は進化論に対して意見を持っていなかった。なお、この調査では若年・信仰心の薄い者ほど進化論を信じる割合が高くなっている。過去10年間に行われた調査においても、44~47%の人が、神が過去1万年ほどの間に、人間を現在のような形で創造したと信じていると答えている。》
アメリカ人のほぼ半分は《神が過去1万年ほどの間に、人間を現在のような形で創造したと信じている》から,一万年以上古い地層から出土する人類の化石を認めない.
つまり彼らは「ネアンデタール人は実在しない.フェイクだ」と信じている.
それどころか彼らは,エデンの園にティラノザウルスなどが闊歩していたと認めたくないので恐竜は「なかったことにする」のだ.
それどころか福音派キリスト教徒には地動説を認めない者がかなりいるらしい.一説には六人に一人いるという.
「認めない」とはどういう意味かというと, 彼らは,地球は円盤のような形をしていて,最外周の縁から海水が滝のように宇宙に流れ落ちていると考えている.メソポタミア人かよ.
こういう反科学の宗教国家が世界最強の軍隊を持ち,アメリカ第一主義で世界を脅しているのである.
これからも彼らアメリカ人は様々な歴史的事実や科学的事実を「なかったことに」していくことだろう.
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