インバウンドによる米の消費増加を過大に評価するJA関係者
ABEMA TIMES《コメ価格急騰は「正直うれしい」「農家からすれば今までずっとコメ離れ。今さら感がすごい」備蓄米投入で話題の“米騒動”生産者の本音》[掲載日 2025年6月1日] から下に引用する.
《コメ価格の急騰を食い止めるべく、政府は備蓄米の放出を続けている。小泉進次郎氏が農水大臣に就任後、入札から随意契約に切り替え4年前の2021年産“古古古米”まで放出し、価格も5キロあたり1800円程度になる見通しを示している。古古古米を試食した小泉氏は「率直に僕は、どれを食べてもおいしくいただける」と表現。国会では「特に急激な上がり方をしているのがお米。このお米を備蓄米で1回落ち着かせていく」と述べた。
……(中略)……
JA稲敷で理事を務めた大塚則昭さんは、インバウンドとの関連を指摘する。政府は2018年度まで約50年に渡り減反政策によって、コメの生産を抑えてきた。一方で海外からの観光客はコロナ禍だった2020年から2022年を除いてずっと右肩上がり。2024年には過去最多を更新する3687万人を数え、2025年も1~3月で1000万人を超えるなど最多を更新するペースだ。大塚さんは「インバウンドのおかげで年間3500万人が来て、みんな日本食を食べに来る。農水省は(日本の人口)1億2000万人で考えたが、そこに3500万人も来るならコメがなくなるのは当然だ。旅行業界も儲かっているが、農業もインバウンドのおかげで潤った」と説明した。
成田氏はコロナ禍とインバウンドというアップダウンの影響を考えた。「海外の人からすれば、コメの価格が倍になろうが(海外で食べるよりも)相対的に安いからどんどん食べるので、寿司などでも価格が上がる現象が起きている。コロナ禍で一気に旅行者数が減り、コメの生産量も減って、農家も苦しくなった。ここから一気に旅行者数が回復してしまったので構造の急速な変化に耐えられず、価格が一気に跳ね上がった」と分析した。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
上に引用した文中で《JA稲敷で理事を務めた大塚則昭さん》は,日本の人口が《1億2000万人》のところにインバウンドが《3500万人も来るならコメがなくなるのは当然だ》と述べている.
だがこれはペテンである.
日本にやってきた合計3500万人もの旅行者たちが,1年間もずっと滞在したわけではないからである.
そこで例えば次の計算をする.
日本にやって来る旅行者の1日あたりの平均人数は,3500万人/365日=9.6万人/日 である.
この人たちが1週間,日本に滞在すると仮定すると,1日あたり日本に滞在している旅行者の合計は9.6×7万人=67.2万人だ.
この旅行者たちが昼と夜に日本食を食べるとすると,海外からの旅行者たちが日本滞在中に消費する日本食は1日あたり134.4万食である.
日本国民も,1日のうちの2食に日本食を食べるとすると,合計は1日あたり2億4000万食である.
以上をまとめると,
・昨今のインバウンド増加の前:1日あたり日本食の消費数=24000万食
・インバウンドが増加した現在:1日あたり日本食の消費数=24000万食+134.4万食
である.
従って,精米の消費量がインバウンド増加によって受ける影響は (2億4000万食+134.4万食)/2億4000万食=1.0056である.
実際には日本人も,一日の三食とも米飯を食べてはいないし,旅行者も米飯食の他にラーメンなどのコナモン日本食を楽しんでいると思われる (テレビ番組の取材に応じた旅行者が食べたい日本食の代表はラーメンという印象だ)
また日本の人口のうち,米飯食を好んで食べる人を1億2000万人とするのはちょっと乱暴であるが,調べても統計資料が存在しないので仕方なく1億2000万人とする.この点はJA関係者の大塚氏と同じ数を使用せざるを得ない.(現在の後期高齢者は戦後のパン給食の影響か,パンが大好きだという調査資料がある.私も麺類とパンが主食で,米の飯を口にしない日が多い)
で,旅行者が増えたことによって,見かけ上の精米の消費増は比率にして1.0056 である.百分率にして0.56%だ.
しかるに《JA稲敷で理事を務めた大塚則昭さん》は,日本の人口が《1億2000万人》のところにインバウンドが《3500万人も来るならコメがなくなるのは当然だ》と述べて,あたかも日本食を食べる人数が1億5500万人にも増えたという印象を読者に与えようとしている.これは小学生にもわかる数字のすり替えだ.
だがインバウンドが米の消費に与えている影響は,上に計算を示したように微々たるものである.
インバウンド年間合計3500万人が一年中日本にいて,日本食を毎日食ったわけではないのだ.
インバウンドは,1日あたりの日本滞在者数にするとわずか67.2万人しかいないのである.
また精米は日本中のいたるところで消費されているが,海外からの旅行者は主に都市部や観光地にいるのであり,身の回りに旅行者なんか見かけないというところで生活している日本人がほとんどだ.
すなわちインバウンドによる米の消費増は局地的である.
このことは私の他にも指摘している農業経済の専門家はいて,ネット上にその記事はあるのだが,JA関係者らの「米不足と価格高騰はインバウンドのせいだ (JAの売り惜しみのせいじゃない)」という大合唱にかき消されている.
ほんとにJA関係者という人たちの言うことには嘘が多い.
政府備蓄米がなかなか消費者に届かない (スーパー店頭に出て来ない) 理由としてJA全農は,
1. 備蓄米倉庫が東北地方に偏在しているので,都市部の全農系卸売精米業者に輸送するトラックの手配が困難だ.
2. 全農系卸売精米業者の精米能力が不足している (瞬発力がない) ため,なかなか店頭に供給されない.
などと言っていたが,農相が農林族議員の江藤からアンチ全農の小泉に交代して備蓄米放出が入札方式から随意契約に変更された途端,自前の精米設備を持っているアイリスオーヤマや,イオンやドンキなど委託精米をした企業の手にかかれば,あっという間に店頭に米の袋が並び,全農を支持基盤とする農林族議員である前農相と全農のコンビが主張していた「流通段階でのスタックがおきているようだ」が嘘であることがバレてしまった.
石破首相が政府備蓄米放出を随意契約にしようとしたら,江藤前農相らが「備蓄米は国の財産であるから随意契約で放出するのは法律違反です」と嘘を主張して一蹴したことは既にメディアによって暴露されている.
言い換えると,現在の米不足と価格の高騰は,江藤前農相と全農グループの企みだったのである.
自民党の農林族議員と全農が振りまいているもう一つの嘘は「精米の価格が上がれば農家の収入が増える」だ.実際には「精米の価格が上がれば全農の収入が増える」なのだが,これは稿を改めて書くことにする.
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