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2025年6月 7日 (土)

米の卸問屋 vs 小泉進次郎 /工事中

 小泉農相が一昨日の衆院農林水産委員会で,米の大手卸の営業利益率について,過大ではないかと発言した.
 この発言をすぐに報道したのはウェブメディア「デイリー」だった.(デイリー《小泉進次郎大臣「社名言いませんけど米の大手卸売業者の営業利益500%ですよ」国会で公表→この高騰は異常、ブラックボックス指摘ある「よく!お考え頂きたい」》[掲載日 2025年6月5日])
 ちなみに「デイリー」は株式会社デイリースポーツ社が編集し,基本的にはスポーツ紙であるが発行元は神戸新聞社である.
 さてこの小泉農相の発言は衆院農林水産委員会におけるものであるから,別に特ダネをデイリーが抜いたわけではないのに,一般日刊紙のウェブメディアはすぐには報道せず,翌日に回した.
 なぜなんだろうと不思議に思ったのだが,あとから考えると,農相の《社名言いませんけど》が,各社の掲載可否判断を遅らせたのだろう.
 農相が社名を言えば質疑の中で事実の公表を行ったことになるが,社名を秘したのでは事実かどうかわからないからだ.
 実際,デイリーはこの記事のジャンルを「ゴシップ」としている.w
 
 しかし翌日になって事実確認が取れたようで,一斉に小泉発言が各紙に掲載された.
 産経新聞《「社名明かさないが…」小泉農水相「対前年500%利益の卸も」 コメの流通「複雑怪奇」》[掲載日 2025年6月6日] から下に引用する.
小泉進次郎農水相は5日の衆院農林水産委員会でコメの流通実態の解明に意欲を示した。「小売り(業者)側からも『他の食料品に比べ、コメの流通は極めて複雑怪奇、ブラックボックス』と指摘が寄せられている」と述べ、「コメの流通はどういう状況なのか可視化させたい」と語った。
 国民民主党の村岡敏英氏の質問に答弁した。
 小泉氏は「社名は言わないが、ある大手卸の売上高は対前年比120%、営業利益は対前年比500%、他の大手卸の営業利益も250%を超えている」と明らかにした。
 村岡氏も「これは政府の備蓄米だ。税金で買ったものに対し、これだけの利益とは。流通革命は必要だ」と問題視した。
 
 農相は《社名言いませんけど》と述べたが,翌日のNHKニュースは次のように「社名」を明らかにした.
 
 ・木徳神糧 (2025年1~3月) 
   営業利益 19億2900万円 (営業利益は対前年比で4.8倍=480%)
 ・ヤマタネ (2024年4月~2025年3月)
   営業利益 23億5100万円 (営業利益は対前年比で3.6倍=360%)
 
 ところが,産経は大手卸問屋の反論も次報に掲載した.
 産経新聞《小泉農林水産相、コメ流通で「500%の利益って」 卸は猛反発「悪者扱い我慢できない」》[掲載日 2025年6月6日] から下に引用する.
 
コメの価格高騰について、小泉進次郎農林水産相は6日の閣議後会見で「ある卸は利益が500%。どういうことなんだろうと、普通は思う」と述べ、集荷や卸など流通事業者の利益構造を明らかにする考えを示した。ある卸の担当者は「これまで低い利益率でやってきた。切り取りで悪者にされるのは我慢ならない」と猛反発する。小泉農水相は政府のコメ政策の失敗について、「民間の有識者による検証は考えていない」とし、身内に甘い姿勢をみせた。
 小泉農水相は6日、「集荷業者、卸、小売り、それぞれの役割や現状をつぶさに説明していく」と述べた。木徳神糧が2025年1~3月期連結決算で、コメ事業の営業利益が約4・9倍になったことを念頭に、「なかなか500%の利益って」と批判した。
 ただ、木徳神糧の24年1~3月期の営業利益率はわずか1・4%で、25年1~3月期は5・0%だった。営業利益率は一般的に、5%で優良企業、10%で超優良企業、15%だともうけすぎの懸念があるとされる。
 小泉農水相はコメの流通について「複雑怪奇」というが、木徳神糧の利益の急増は、もともとの利益幅が小さいためにわずかの上昇で、上昇率が大きくみえるという〝簡単な算数〟の話でしかない。
(中略)
 こうした小売の状況を受け、卸も薄利多売のビジネスモデルとなっている。「なかなか価格転嫁に応じてくれなかった規模の大きいコンビニや外食チェーンが、やっと、タイムリーに反映してくれるようになった。これまでは低い利益率、時には赤字を出しても、ルールを守ってきた」と悔しさをにじませた。(以下略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 産経新聞は《木徳神糧の利益の急増は、もともとの利益幅が小さいためにわずかの上昇で、上昇率が大きくみえるという〝簡単な算数〟の話でしかない》と書いているが,しかし長年にわたって営業利益1%程度の薄利で経営してきた同社が,突然今年の1~3月だけで5% (19億2900万円) の利益を上げて《優良企業》にのし上がったのは《上昇率が大きくみえるという〝簡単な算数〟の話》ではない.
 単に見かけ上《上昇率が大きくみえる》という話ではなく,実際に「大きい利益」を上げたのだ.
 ここらへんはいかにも産経らしい印象操作である.
 この数字を見れば当然,木徳神糧がわずか今年の1~3月だけで約20億を儲けた理由は何なのだ,という話になる.
 それを小泉農相は指摘したのである.更迭された江藤前農相が用いた 歪曲 婉曲表現をするなら「流通過程での米のスタック」だが,あからさまに言えば「家庭向け精米の不足とその価格の高騰は,彼ら卸問屋が仕組んだことであり,その結果,卸問屋は大儲けした」ということなのである.
 三流メディア産経如きがどう話をすり替えようが,そのことを「複雑怪奇」だと指摘した小泉農相の感覚がまともだ.
 
 しかも,だ.
 この突然の20億円の営業利益は,経理上の操作が行われた可能性が高い.
 経費を過大に計上することによって,営業利益を圧縮したようだと農水省は判断したと思われる.
 

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