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2025年5月19日 (月)

全農にとって米の高騰は千載一遇のチャンスである

 大学農学部出身者とか食品産業従事者とか,日本の食糧生産に多少なりとも知識のある人たちには常識だが,毎年の米の生産高を正確に知る方法はない.
 米の生産高とは,作付けした面積とその後の生育状況 (作柄と作況指数) に基づく推計値である.(参考資料:クボタ《データで見る田んぼ》)
 従って,実際に収穫が始まってみたら,思いのほか収量が少なかったということがあり得るのだ.
 令和6年産米がおそらくそうであったと専門家は見ている.
 このことも精密な数字はないから推測なのだが,たぶん数十万トンが前年 (令和5年) 産米よりも少なかったようだ.
 しかし農水省はこの状況を認めようとせず,令和5年産米よりも18万トン多かったと言い張っている.
 昨日のNHK《日曜討論》でも,自民党総合農林政策調査会長の宮下一郎氏は,司会者の「米不足についてどう考えるか?」という問いに対して,「生産高は前年よりも多かったが,生産者と流通と消費者の各段階で在庫が積み増された結果が,現在の米不足だ」と言い切った.
「生産者が在庫を積み増した」とは「農家が売り惜しみをした」との意味である.
「消費者が在庫を積み増した」とは「消費者が買占めをした」という意味である.
 農水相はこれまで,「流通で米がスタックしている」と国民に説明をしてきたが,自民党総合農林政策調査会長はこれに加えて,農家と消費者にも責任があるとしたのである.
 だがしかし私たち国民は知っている.
 農水省が最近明らかにしたデータによれば,現在の精米価格の高止まりと米不足は,まず第一に政府備蓄米のほとんどを落札した集荷業者であるJA全農が,トラック運送が手配できないとの理由で意図的に遅々として卸業者に出荷をしない (サボタージュ) ことと,第二にJA全農の出荷先卸業者である全農パールライスが,精米能力の不足を理由としてわずかしか出荷せず,しかも例年よりも多い経費と利益を仕入れ価格に上乗せして販売していることによるものだと判明した.(NHK《備蓄米の流通 円滑化に向けた改善策を公表 農林水産省》[掲載日 2025年5月16日])
 つまりいわゆる令和の米不足,米の高騰は,自民党と農水省,JA全農,全農パールライスの合作によるものだ.
 既に行われ,七月まで継続される政府備蓄米の放出は高い価格をつけた業者に販売される「入札方式」だから,元々安い価格で買い入れて備蓄している政府にしてみれば,これは一種の転売である.
 産経新聞によれば,この備蓄米転売によって,政府は七月までに一千億円の利益を手にすることになるという.(産経新聞《備蓄米放出によるコメ値下がりを阻む入札制度 落札額高止まり、政府が「転売ヤー」に?》)
 農水省はこのことを承知していたはずで,識者は最初からこの入札方式に異議を唱えていた.(私もこのブログで異議を唱えた)
 だが農水省は入札方式を強行し,備蓄米放出によって一層の米不足と価格高止まりが促進されたのである.
 にもかかわらず米高騰の責任を消費者に転嫁した宮下一郎氏の発言に,国民は呆れるしかない.
 江藤農水相はようやく,JA全農と全農パールライスを外して,スーパーや小売の米穀店に備蓄米が届くように事態の改善に着手したが,JA全農と全農パールライスの批判は避けている.全農を支持基盤とする議員だからである.
 
 昭和の中頃の昔,全農は天皇よりもエライといわれた.世界に冠たるノーキョーともいわれた.
 自民党の大票田であったノーキョーの圧力によって事実上,農家は所得税徴収を免れた.いわゆるクロヨン税制である.
 さらに政府は都市部勤労者から吸い上げた税金を源資として,農業補助金を湯水のように農村に与えた.
 こうして農村地帯には豪壮な農家の邸宅が建ち並んだ.都市部の勤労者がネズミ小屋だかウサギ小屋に住んでいた時代に,である.
 農閑期になると羽田飛行場から,ノーキョーの小旗を列の先頭で振るツアコンに引率されて,農家の団体が続々とハワイやグアムへと「海外農業視察旅行」に飛び立っていった.都市部の会社員には海外旅行なんて夢のまた夢だった時代に,である.
 1970年代の「狂乱物価」の時に,石油元売りのゼネラル石油 (現東燃ゼネラル石油) は「石油危機は石油製品の大幅値上げを図り利益を得ることができる千載一遇のチャンスである」と社内に文書で通達したことが国会で暴露されて,国民は「企業性悪説」を確信したが,今また国民は全農性悪説を確信した.全農にとって米不足と米価格の高騰は,千載一遇のチャンスだということが暴露されたからである.
 
 宮崎県選出で八期当選のいわゆる「農政通」である江藤農水相は講演会で《私もコメは買ったことありません,正直.支援者の方々がたくさんコメをくださるんですね.まさに売るほどあります.私の家の食品庫には》と放言した.(YouTube《江藤農水相「コメ買ったことない」と発言 「家に売るほどある」》)
 この報道を聞いた地元延岡市の米作農家,大神玄暉氏は朝日新聞の取材に《農家の苦労も、消費者の暮らしも分かっていない、国民心理を逆なでする無神経なもの》と語った.(朝日新聞《「ばかたれ」「国民心理を逆なで」農家らが憤り、農水相コメ発言で》)
 だが私たち国民に言わせれば,そういう「ばかたれ」を八期も国会に送り込み,江藤大臣の家の食品庫に米を積み上げ続けてきた宮崎県農家の一人である大神氏がいまさら何を言うか,である.農家はまずは会社員と同じように所得税を払え.話はそれからだ.
 
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