遺族年金に関する嘘ネタ話
THE GOLD ONLINE《「年金月20万円」75歳夫が心筋梗塞で急逝。想定の7分の1の「遺族年金」に72歳妻、絶望。さらに「老人ホーム月料金値上げ」の追い打ちに「どう生きていけばいいのか」》(掲載日 2025年5月22日) から下に引用する.
《「まさに理想通りのホームに入居できて、安心だな」
ホームでは同年代の友人もでき、楽しく、そして穏やかな毎日が過ぎていく――ただ幸せな日々はいつまでも続くわけではありません。入居から2年ほどたった残暑厳しい日、朝食後に「ちょっと具合が悪い」とバルコニーの椅子に腰を掛けた浩一さん。恵子さんが気づいたときには、すでに息を引き取っていました。急性心筋梗塞。長年連れ添った夫との突然の別れに、恵子さんはただ悲しみに暮れるしかありませんでした。
「遺族年金は4分の3もらえるはず…」の誤算
浩一さんの死後、ホームからは1人部屋への転居を提案されました。月額費用は23万円だといいます。
今後のことを考えているとき、恵子さんは「遺族年金は夫の年金の4分の3がもらえる」と聞いていたことを思い出します。浩一さんは月20万円の年金を受け取っていた。つまり自分が受け取っている年金と合わせて月31万円になり、老人ホーム費用は十分払っていけるとホッとしたといいます。しかし現実は違いました。
年金の手続きをしに年金事務所を訪れたとき、遺族年金制度の概要と、おおよその年金額を教えてもらいます。結果、想定していた金額の7分の1でしかなかったのです。
「遺族年金は夫の年金の4分の3がもらえる」。これは正しくは「遺族厚生年金は夫の老齢厚生年金の4分の3がもらえる」。つまり月20万円から老齢基礎年金を引いた額の4分の3ということになります。
さらに受け取る人が老齢厚生年金を支給されている人であれば、「①亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3」と、「②亡くなった人の老齢厚生年金の2分の1と、自身の老齢厚生年金の2分の1を足した額」を比べて多いほうが、遺族厚生年金額になります。恵子さんの場合は②となり、月11万円。
しかしこれで終わりではありません。原則、遺族年金を受け取る人の老齢厚生年金は全額支給。遺族厚生年金は老齢厚生年金との差額分しか受け取ることができません。単純計算、11万円のうち、2万円程度しか受け取れないということになります。》
上に引用した記事と同趣旨のウェブ・コンテンツはウェブ上に掃いて捨てるほどあって,しかも性懲りもなく頻繁に再生産され続けている.
再生産とはどういうことかというと,最初の記事がいつ頃に書かれたかは不明だが,その元記事から何度も同工異曲の文章が作文され掲載され続けているのだ.
その同工異曲の最新版である上の記事は,高橋浩一さん (仮名・75歳) と恵子さん (仮名・72歳) 夫婦の話だ.
夫の浩一さんは私と同い年で,心臓疾患で突然死したという.
夫が亡くなった時に《恵子さんは「遺族年金は夫の年金の4分の3がもらえる」と聞いていた》から《浩一さんは月20万円の年金を受け取っていた。つまり自分が受け取っている年金と合わせて月31万円になり》《ホッとした》というのだが,上の記事には「夫婦二人が貰っていた年金は合計で36万円だった」ことがちゃんと書かれている.
つまり一人分の年金は18万円である.
それなのに,寡婦になった恵子さんは「年金を31万円もらえる」(つまり年金が増える) と思ったのだが実は違った,というのが上の THE GOLD ONLINE の記事の趣旨だ.
繰り返すが,これと同じ趣旨の記事は掃いて捨てるほどある.まず間違いなく,THE GOLD ONLINE のライターは取材なんぞせずに,過去記事をいじくって《「年金月20万円」75歳夫が心筋梗塞で急逝。想定の7分の1の「遺族年金」に72歳妻、絶望。さらに「老人ホーム月料金値上げ」の追い打ちに「どう生きていけばいいのか」》を書いて掲載した.
高橋 (仮名) 夫婦は私と同世代である.
しかも,妻の恵子さんがずっと専業主婦で生きてきて世の中の仕組みに無関心だったというなら話は別だが,長年職業に就いて働き,リタイアしたあと厚生年金を受給している女性が,しかも私と同世代の女性が,国の年金制度ならびに遺族年金の趣旨を知らないはずがないのである.
すなわち《「遺族年金は夫の年金の4分の3がもらえる」と聞いていた》から《浩一さんは月20万円の年金を受け取っていた。つまり自分が受け取っている年金と合わせて月31万円になり》《ホッとした》恵子さんは,無知である上に強欲である.
考えてみるがいい.
夫が生きていた時には一人分18万円の年金をもらっていた恵子さんが,夫が死んだら一人で31万円の年金を受け取れるなんてことが本当にあるのなら,世の中の年金受給者女性は全員が夫の死を願うだろう.w
そんな不道徳な制度を国が作るわけがないのである.世の中に理不尽な制度はたくさんあるが,妻を不道徳に走らせる制度を立法府の男たちが作るわけがないのだ.w
そもそも遺族年金制度は「基礎年金しか受給していない女性が,厚生年金受給者であった夫が死んだあと路頭に迷う」ことがないように作られたものだ.
夫が死んだら妻が「ラッキー!」と喜ぶような制度ではないのである.
もう少し説明すると,遺族年金は,夫が遺した金融資産ではない.従って死んだ夫から相続できる性質のものではないのである.
ここが,いわゆる「個人年金」や「企業年金」などの個人資産と,公的年金の違いだ.
言い換えれば遺族年金は,年金制度の中でもセイフティ・ネットの性格が強いものなのである.
このことは,女性の勤労者が年金生活に入るとき,必ず身に着ける知識である.
ずっと専業主婦だった女性ならその知識がないこともあるかも知れぬが,勤労者女性なら遺族年金制度の仕組みは必ず知っている.
さらに言うなら,ずっと専業主婦だったために年金制度の知識がない妻の場合に対しては,夫が「俺が死んだら遺族年金の手続きをしなさい.もらえる金額と手続きの方法はエンディング・ノートに書いておいたから今から読みなさい」と言うはずだ.後期高齢者である私はそう断言する.(そういうことをしてくれない思いやりのない夫は定年退職と同時に離婚されているはずだ w)
すなわち《「遺族年金は夫の年金の4分の3がもらえる」と聞いていた》から《浩一さんは月20万円の年金を受け取っていた。つまり自分が受け取っている年金と合わせて月31万円になり》《ホッとした》無知で強欲な恵子さんの話は,ライターがデッチあげた作り話である.
実際にはありもしない話を取材せずに拵えて原稿料を稼ぐライターは恥ずかしいと思え.

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