古里を追われ もはや帰る希望もなく
三月十一日,今朝のNHKニュース《おはよう日本》で,大谷舞風アナが「あの日の事は鮮明に覚えています」と語った.
だが私は,あの大津波が堤防を越えて押し寄せ,逃げる乗用車を次々に飲み込んでいく光景をテレビで目撃したあとの,その日の記憶が飛んでしまっている.
それほどの衝撃だった.
今でも写真集などの出版物,あるいは記録映像を見ても,当日のことだけがよく思い出せない.
その後に詳細が報道された福島第一原発の事故は記憶が鮮明だ.
この事故に関する出版物は今も書架にある.
牛や豚を畜舎に置き去りにせざるを得なかった原発被災地の農家の人々,一緒に暮らしていた犬猫をそのままにして県外に避難した人々が語った悲しいインタビュー映像は,それこそ「鮮明に覚えて」いる.無人となった町のなかをさまよう動物たちの姿も.
古里を追われて,帰還することのできなかったフクシマの人々のことを深谷かほるさんが《夜廻り猫【第一〇〇五話】手荷物》[掲載日 2025年3月10日] に描いている.現在も,追われた人々の大部分は未帰還者である.
深谷さんは福島県石川郡の出身.夜廻り猫の多くの作品と同じく,この第一〇〇五話もおそらく読者から寄せられたエピソードではなかろうか.
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