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2025年3月 4日 (火)

年寄りは「お得感」によわい

 今の時代は,未婚でも既婚でも女性は有職が普通なので,サザエさんみたいな昔のマンガは読んでも理解できないことが多いのではないか.
 そういうことの一つだが,既婚の専業に近い主婦が,少しでも安価な食材を買い求めようとしてスーパーを廻りまくるということがあった.
 十円や二十円の節約のためにクルマを使ったのでは赤字になって意味がないから,サザエさんみたいな主婦たちは自転車に乗ってスーパー廻りするという描写が定番だ.
 そのような主婦の境遇に,年金暮しの高齢者は似ている.
 私がまさにそれで,イーロン・マスクがドル札をばら撒いて子供たちがカネに群がる光景などの下品な動画を見つつ,キャベツの値段が少し下がってきたななどと考えている.
「少しで安いものを買う」という行為には中毒性があって,これを続けていると金銭感覚がおかしくなってくる.
 例えば,藤沢駅北口にあるスーパーの「サミット」だが,冷蔵ケースに貼ってあるポップに「甘塩銀鮭2切れ X円」「甘塩銀鮭3切れ Y円」と書いてあるとする.
 このポップを読んで「甘塩銀鮭3切れ」は割安なんだと思ってしまうのは間違いだ.
 面倒くさがらずに暗算すると,Y=1.5X-3 だったりするからである.
 つまり切身を一切多く買ったのに,たったの三円しか割安になっていないのである.
 とまあ,それは「サミット」ではよくあること (他のスーパーはあまりサミット的ペテンはやらない) なのだが,自分の消費行動は冷静に判断すべきだろう.「お得感」に惑わされずに,必要なものを必要なだけ買えばいいのだ.
 
 賞味期限切れ食品もこれに似たところがある.
 先日,藤沢駅北口のデパ地下にあるスーパー「ライフ」で,紀文の肉まんに値引きシールが貼られていた.
 その日が賞味期限切れ当日だったからである.
 私はその賞味期限切れギリギリ値引き肉まんを買って食べたのだが,コンビニの肉まんよりずっとおいしかった.
 それ以来,私は,紀文の賞味期限切れギリギリ値引き肉まんを買いたいと思うようになってしまった.
 昨日もライフに行ったら,賞味期限切れ当日なのに値引きをしていなかった.
 それで,賞味期限切れ当日なのに値引きをしないのはけしからぬと思った.そのせいで売れ残ったら捨てるのか,そんなことでいいのか,と怒った.
 ならば金輪際,紀文の肉まんは買ってやらぬぞと思った.(値引きの権限はライフにあって,紀文は悪くないのであるがw)
 だが値引きといっても大した金額ではないのだから,賞味期限切れ当日品を買うことは社会的には食品ロス低減につながることなのに,それが個人的損得勘定で悔しくてできなかった.
 ということは,冷静に考えれば大したことはない値引きの「お得感」を,私は過大評価してしまっていたのである.
 そう思って,反省した.
 上に例示した「サザエさん」的主婦が「一円でも安い商品」を購入するために,自転車であちこちのスーパーを走り回って大切な「時間」を消費してしまっているのも,この「お得感の過大評価」のためだろう.
 そんな時間があるなら本でも読むのが人生のためにずっと「お得」なのに.
 
 次も「ライフ藤沢店」でのできごと.
 このスーパーはパン売り場がかなり広い.
 食パンの「超熟」「ロイヤルブレッド」「本仕込」などは上のほうの棚に並べられ,一番下の棚に低価格品である「ライフ」オリジナルの食パンが並んでいる.
 最下段は腰をかがめないと取りにくいのだが,売れ筋商品を手に取りやすいところに並べるのは鉄則だから,これは致し方ない.
 で,私が食パンを買おうと思ってパン売場に行ったら,棚の前で高齢の女性が両膝と右手を床について這いつくばっていた.
 彼女が何をしているかはすぐわかった.この這いつくばった姿勢で,左手で最下段の棚の奥から食パンの袋を取り出し,消費期限を調べているのである.
 このスーパー「ライフ」では,「食品ロスを減らすために,並べてある商品の前のほうからお取りください」旨のポップが貼られている.
 それなのにこの老女は,消費期限がたった一日長いだけの食パンを手に入れるために,床に這いつくばって,奥のほうに置かれている食パンを引っ張り出して 一つ一つ期限表示を確かめているのである.
 彼女が邪魔で,私は食パンを取ってカゴに入れることができない.
 私は暫くその老女の行為を眺めていたのだが,いつまで経っても這いつくばりを止めようとしないので「私も食パンを買いたいのですけど,もうそろそろいいですか?」と床に這いつくばった彼女の頭の上から言った.
 するとその老女は,自分の行為がとても情けないものであることにはっと気が付いたのか,食パンを一袋つかむと脱兎のごとくレジ方向に走って逃げていった.
 この老女は「消費期限が迫っている商品を買うのは損だ」と思い込んでいる.
 だが,消費者に信頼されているすべての製パン会社はその開発研究力と生産技術力を基礎にして,消費期限内であればおいしくて衛生的なパンであることを消費者に約束している.
 消費期限が翌日だろうと三日先であろうと,一般消費者にとっては同じ品質なのである.(品質差はよほど訓練されたテイスターでなければ区別がつかない.かつて食品会社に勤めていた私はそう考える)
 それが信じられないのであれば,買わなければいいのだ.
 そうは思うものの,あの老女は今日もスーパーの床に這いつくばって,食パンの消費期限を調べているような気がする.
 残念ながら年寄りはなかなか自分の消費行動を改めることはないのである.
 
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