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2025年3月 8日 (土)

数字に弱い人が計算をして赤恥をかく

 DIAMOND online《【「400÷50%」の意味、瞬時に説明できる?】できない人は二流。数字に強い“一流”はどう考える?》[掲載日 2025年3月8日] から下に引用する.引用した記事の筆者は,堀口智之氏.
 
「自分も、もっと数字に強ければ…」
 日々の買い物や職場で「数字コンプレックス」を感じたことはないだろうか。「算数や数学は大キライ…」「できるだけ見たくない…」中には「数字はもう諦めた」という人もいるだろう。
 しかし実は、「数字に強い」は生まれつきの才能ではない。数字に強い人は、無意識のうちに九九などの「頭を使わないラクな計算」を使って、面倒な計算をうまくサボっているのだ。
 新刊『「数字がこわい」がなくなる本』は、数字に強い人の脳内を解明した一冊。数字に強い人が無意識にやっている「頭を使わないサボり計算テク」を知れる本書の中から、今回は「数字のとらえ方」について紹介したい。
 
「小数の割り算」一瞬でできますか?
 問題 400÷50%=?
 皆さんはこのような計算、いつもどのように対処していますか? 計算するのも面倒ですよね。スマホ・電卓を使ってしまう人は多いと思います。
 ここですぐに「スマホを使ってしまえばいいじゃん!」と思う方もいるかもしれませんが、それではいつまでもスマホに依存することになってしまいます。これでは残念ながら、「数字に弱い人」のままです。
 今回は、「数字に強い人」がどう考えているのか、を考えていきましょう。
 
 数字に強い人は「割り算をそのまま割らない」
 実は割り算は、次の3種類の考え方をすることができます。
(A)分ける:10個のものを、5人で分けると何個? →2個
(B)回転数:10個の中に、5個分はいくつあるか? →2つ分
(C)1基準:5個に対しての20個は、1個に対しての何個分か? →2個分
 それぞれ、ちょっとした考え方の違いなのですが、実はこの考え方を使ってみると、今回の計算もうまくできるようになります。
 早速(A)からやってみましょう。
(A)(分ける)400を50%で割る
 50%は0.5と同じなので、今回の場合、A(分ける)だと、0.5等分…、つまり、「1より小さい数で分ける」ということになります。(A)では意味がわかりづらいですね。
 意味がよくわからない場合は、無理にAで解釈する必要はありません。
 数字に強い人は「自分にわかりやすい考え方」を使う
 ではここで、B(回転数)やC(1基準)で考えてみましょう。
(B)回転数:400の中に0.5が何個入っているか?
(C)1基準:0.5に対しての400は、1に対してのいくつか?
 このままだと何がなんだかよくわからないですね。「%」の割り算でピンと来ない時は、いったん小数にしてみましょう。50%は0.5と同じですね。

(B)(回転数)0.5(=50%)で割ることは、「400の中に0.5が何個入っているか?」ということです。何個入りますか? 数えてみましょう。
 まずは、4の中に0.5が何個入るか考えるとわかりやすいですね。8個です。よって答えはその100倍ですから、800が答えになります。
 なお、4という数が0.5で割ることによって8になっています。つまり、0.5で割ることは2倍することと同じなのです。
(C)(1基準)「0.5に対して400。これは1あたりどのくらいの量か?」という意味です。
 速さ・時間・距離の関係でたとえてみれば、「0.5時間で4km進む。このとき、1時間あたりどのくらい進むか?」と解釈してみるとよいでしょう。0.5時間は30分ですから、1時間だと8km進む、ですね。これも同様に8と出たので、その100倍で800と導けます。(以下省略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上に引用した記事を読んで,あまりの情けなさに腰が抜けるほど驚いた.
 そもそも《「小数の割り算」一瞬でできますか? 問題 400÷50%=?》の《「小数の割り算」》が中学生レベルの誤りである.
 この計算式のどこにも「小数」なんか出てこないからである.
 高校数学 (高校物理でも同じ) では,“400÷50%”の意味を次のように学ぶ.
 “400”や“50”は単位を持たない「無次元数」である.
 “÷”は算術演算子で,その逆数を掛ける (“×”) 操作を意味する.
 “%”は百分率という「単位」であるが,「物理学的単位」ではなく,“100”という数を掛ける操作を意味する.
 つまり,“400÷50%”は,“(400) × (1/50) × (%)”を意味する.
 ここで大切なことは,「単位」は「無次元数」と等しく扱えるという理解である.これがわからないと高校の数学でつまずく.
 少し余談だが,距離とか長さの「五メートル」は“5m”と表記するが,これは“(5) × (m
)”または“(m) × (5)”を意味する.
 (m) は長ったらしい定義があって,いちいち書くのがめんどくさいから単に (m) と表記するが,要するに「単位」は「無次元数」と乗算ができるのである.(ちなみに除算は逆数を掛けるという操作である)
 さて数式を計算する際の規則だが,括弧などを用いて計算順序が指定されていない場合は,左から右へ実行する.
 以上をまとめると,まず計算順序の規則に従って最初に“400÷50”すなわち“(400) × (1/50)”を計算する.
 結果は“8”である.
 次に同様に計算順序の規則に従って“8 × (%)”すなわち“8 × 100”を計算する.
 結果は“800”である.
 以上が“400÷50%”の論理的な計算方法である.
 ただし,a × b = b × a という乗算の交換法則に従って式を変形すると,計算順序が変わることになる.
 例えば“400÷50%” は“400%÷50”と変形することができる.この場合は“400 × 100 × (1/50)”を計算することになる.
 デキのよい高校生なら“%÷50 × 400”も同じ計算結果を得ることを理解するだろう.(普通は,単位を左側に書くこのような式の変形は行わないが,頭の中で「単位」というものを理解するには役立つ)
 
 
 さてところが堀口智之氏は,驚いたことに式の変形を行わずに《50%は0.5と同じなので》と勝手に計算順序の規則を変更してしまった.
 計算順序規則を破って先に“50%”を計算し,その計算結果
0.5》を得たのだ.
 計算式“400÷50%”には小数は出てこないのに,氏が文中に《「小数の割り算」一瞬でできますか?》と書いているのは,計算順序規則を無視するという幼稚な誤りを犯しているからである.
 
 堀口智之氏については,Wikipediaに以下の記述がある.
 
堀口 智之 (ほりぐち ともゆき、1984年 - ) は、日本の経営者。新潟県出身。
 人物・略歴
 新潟県南魚沼市出身。 山形大学理学部物理学科卒業。東京、大阪・オンライン教室などを展開する「大人のための数学教室 和®(なごみ)」の創業者。一般社団法人ビジネス数学協会理事。和から株式会社を2011年に創業。代表取締役。
 
 堀口氏は,上に示したように高校の数学と物理がからっきし理解できていないところをみると,山形大学理学部物理学科に入ったのは全くのフロックだったのであろう.大学での成績は推して知るべし.
 しかるに氏は卒業後に数学教室を主宰するという悪い冗談をやっている.
 また氏には『一瞬で数字をつかむ!「概算・暗算」トレーニング』 などの著書もあるのだが,数値計算は結果が合っていればいいというものではない.つまり氏は《概算・暗算》はできても,計算という操作の意味がわかっていない.
 こういうお方の本を買って読んでしまったビジネスマン諸兄がかわいそうでならぬ.
 
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