米がなければブリオッシュを食べればいい
朝日新聞《備蓄米、14.2万トン落札 平均2万1217円で業者間価格下回る》[掲載日 2025年3月14日] から下に引用する.
《農林水産省は14日、流通の目詰まりを理由とする備蓄米放出の入札で、予定していた15万トンのうちの14・2万トンが落札されたと発表した。60キロあたりの平均落札価格は2万1217円だった。落札した事業者への引き渡しは来週以降に本格化する見通しで、高騰した米価が反転するかが焦点になる。
流通するコメが不足するなか、今回の入札でおおむね予定していた数量を放出できることになる。平均落札価格は税込みにすると2万2914円で、直近1月の業者間取引価格(60キロあたり2万5927円、税込み)をやや下回った。
江藤拓農水相は、「これだけの量が市場に出れば当然需給は一定程度改善され、消費者の方々にご理解いただける結果が生まれると期待している」と述べた。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
農水相は《これだけの量が市場に出れば当然需給は一定程度改善され、消費者の方々にご理解いただける結果が生まれると期待している》と頓珍漢なことを語ったが,このおかたの頭は大丈夫か.
高い価格の米が市場に供給された場合は,米不足状態は改善されても《消費者の方々にご理解いただける結果》は生まれないからである.
消費者が納得しないのは当たり前だ.私たち消費者が困っているのは米の価格が約二倍に高騰したからである.
だから「いくら価格が下がるのか」に消費者は期待していた.
しかし今回の備蓄米放出の結果から単純計算すると,22914/25927=0.884 だから,米の価格は12%しか下がらない.
銘柄米の現状価格を五キロで約四千円とすると,4000 x 0.884=3536 だから,下がったとしても約三千五百円だ.
これ以下には下がらない.
落札に参加した (参加させられた) 集荷業者はこの価格に正当な利益を乗せて卸業者に販売するだろう (これは農水省が販売経過報告を求めることになっているので阿漕なことはできない) が,その先の卸業者がどれくらいの価格で売るか,売り惜しみするかしないかを,農水省はコントロールできない.
米の業界関係者や農業経済研究者が「売り手市場が続いているから,備蓄米放出による米価格低下は限定的」と一様に述べているのはそこだ.
従って農水相は,「消費者の方々にご理解いただける結果が得られなければ,さらに備蓄を放出し,売って売って売り浴びせる覚悟だ」と言うべきだった.
そもそも高値を入れた業者が落札する方式にしたのがよくない.高値落札方式では,原理的には現状の業者間取引価格より高くなる可能性もあったのである.つまり落札価格が現状の業者間取引価格を下回ったのは,古米が含まれているから価格を下げる必要があったからである.
高値落札方式ではなく,精米価格換算にして五キロ二千円で,玄米を量的制限なく,備蓄米購入を希望する集荷業者に「売り渡す」べきだった.
それなら確実に末端価格は一昨年の水準まで下がったであろうに.
余談だが,私は米の価格が高騰し始めてからパンばっかり食べている.
今は一時よりも小麦価格が米より安定しているせいで,パンや麺類が購入しやすい.
先日は,あるスーパーで,一袋六個入りのロールパンが百二十円で売られていた.二百グラム入りの包装米飯 (レンチンご飯) の特売価格が百二十円ほどだから,パンのほうが安い.
丼飯を平らげる食い盛りの子供がいる家庭ではパン食というわけにはいかぬだろうが,もはや老いて食が細くなった私ら団塊世代の高齢者はパンが好きなので,米不足でも痛痒を感じない.
爺様婆様,米が高ければパンを食べよう.そのパンもなければブリオッシュを食べればいい.Qu'ils mangent de la brioche.
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