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2025年3月18日 (火)

奇策「全農のタダ働き」!

 日テレNEWS《JA全農、備蓄米「落札金額に最低限の費用のみ加えて販売」》[掲載日 2025年3月17日]
 
JA全農は、落札した備蓄米の販売価格について、「落札金額に最低限の費用のみを加えて販売する」と発表しました。
 JA全農は、政府から落札した備蓄米の販売を今月中にも開始するにあたり、「価格」や「時期」に関する指針を公表しました。
 JA全農米穀部 藤井暁部長
(備蓄米の)販売にあたっては落札金額に運賃、保管料、金利、事務経費など必要経費のみを加え適正に取り扱います
 JAは、卸売業者や小売店などに向けて可能な限り早く、価格を抑えて販売する方針です。
 また、小売店などに対し、「備蓄米」と明記せずに販売するよう依頼することを明らかにしました。備蓄米だけが売れてしまい、コメ全体の流通改善につながらない事態を避けるためだと説明しています。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 私は,先日掲載したこのブログの記事《米がなければブリオッシュを食べればいい》[2025年3月16日] に《落札に参加した (参加させられた) 集荷業者はこの価格に正当な利益を乗せて卸業者に販売するだろう (これは農水省が販売経過報告を求めることになっているので阿漕なことはできない) が,(以下省略)》と書いた.
 しかしこれは事態進行の予測を誤った.
 まさかJA全農が政府にタダ働きさせられるとは思いもしなかったのである.
 その理由は以下の通り.
 
 JA全農は集荷した玄米を卸売り業者に販売するが,これは不特定多数の業者に場当たり的に売っているのではない.
 卸売り業者と結んだ年間契約に基づいた販売計画に従って販売している.
 その点ではJA全農の2024年産米販売計画は予定通りだったという.
 そのため,農水省が備蓄米の放出を決めたとき,JA全農は入札に乗り気でないという観測が業界に流れた.
 なぜかというと,政府は,備蓄米の落札者から原則として一年以内に同量を買い戻すという条件を課していたのだが,もしも2025年産米が備蓄米よりも高かった場合,同量の米を農家から集荷して政府に売り戻す義務を負った落札者 (つまりJA全農) にとっては逆ザヤとなり,備蓄米を落札して販売したがために損失が発生してしまう.
 JA全農は,こんなギャンブルに手を染めるリスクは避けたいと思ったのだろう.
 だが蓋を開けてみたらJA全農は入札に参加して,しかも購入した米に自らの利益を乗せることなく卸に販売するというではないか.
 完全にタダ働きである.
 さあ,政府農水省とJA全農とのあいだで,どのような取引がおこなわれたのか.
 上に述べた「逆ザヤ」が生じないように「原則一年以内に買い戻す」という条件を有名無実とすることはもちろんだ.
 その他に,面倒をかけたJA全農に対して,政府は今後の農政において「特段の思し召し」をするに違いない.(参考資料:DIAMOND online《農業危機を生き抜くのは?農家1700人超のアンケートで判明した「儲かる」農業》[掲載日 2023年3月27日])
 
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