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2025年3月28日 (金)

後期高齢者にはATMを使わせるなと警察庁は主張する

 唐突に,後期高齢者の銀行キャッシュカードの使用を制限するという話を警察庁が持ちだした.
 それを伝えたNHK《75歳以上の高齢者 “1日のATM利用上限額30万円”制限で検討》[掲載日 2025年3月25日] から下に引用する.
 
特殊詐欺の深刻な被害状況に歯止めをかけるため、警察庁が75歳以上の高齢者を対象に、1日のATMの利用上限額を30万円に制限する方向で検討していることがわかりました。利用者の利便性に影響することから例外を設けることも検討しているということで、必要な規則の改正に向けて関係省庁や業界団体などと調整を進めていくことにしています。
 警察庁によりますと、去年1年間に確認された特殊詐欺の被害は2万987件にのぼり、被害額は721億5000万円と、統計を取り始めた2004年以降で最も多くなりました。
 こうした深刻な状況に歯止めをかけるため、現在、それぞれの金融機関で設定しているATMの利用上限額について、警察庁が75歳以上の高齢者を対象に、「振り込み」と「引き出し」をともに1日30万円に制限する方向で検討していることがわかりました。
 ただ、75歳以上のすべての人を一律で対象とした場合、個人事業主など利用額が多い人の利便性が大きく低下することから例外を設けることも検討しているということです。
 警察庁は必要な規則の改正に向けて関係省庁や全国銀行協会などと調整を進めていくことにしています。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上のNHKの記事では,ATMの利用制限を課する対象がなぜ75歳以上なのかの説明がない.
 しかしその理由を読売新聞オンラインは示している.
 読売新聞オンライン《75歳以上のATM利用、上限30万円に…特殊詐欺対策で警察庁検討》[掲載日 2025年3月25日] から下に引用する.
 
特殊詐欺被害の急増を受け、警察庁が、75歳以上によるATM(現金自動預け払い機)の1日あたりの利用限度額について、引き出し、振り込みとも30万円に制限する方向で検討していることがわかった。犯罪収益移転防止法の関連規則の改正に向け、全国銀行協会などと調整を進めている。
 ATMの利用限度額は現在、各金融機関の自主的な取り組みとして、「引き出しは1日50万円」「振り込み・振り替えは1日100万円」などと決められている。制度で一律に制限すれば初めてとなる。
 特殊詐欺事件では、犯罪組織が高齢者らを電話でATMに誘導し、指定口座に振り込ませる手口が長年続いている。被害は年々深刻化しており、昨年の特殊詐欺被害は前年比1・6倍の約721億円(暫定値)に上り、過去最悪となった。
 特に高齢者が狙われており、昨年は被害者2万951人(法人を除く)のうち、約45%に当たる9415人が「75歳以上」だった。
 政府は特殊詐欺被害の急増を受け、昨年6月の犯罪対策閣僚会議で、高齢者のATMの利用制限や、金融機関による口座のモニタリング強化を推進する方針を明らかにしていた。
 ただ、支店の統廃合を進める金融機関側からは、窓口業務の負担増を懸念する声もある。利用者にとっては、利便性の低下につながりかねない。このため、警察庁は、年金支給額などを考慮して制限額を1日30万円とした。出入金が多い個人事業主らについては、例外的に制限の対象外とすることも検討している。
 今後、同法施行規則などに、利用制限の内容を盛り込み、意見募集を経て改正したい考えだ。警察幹部は「利用者の利便性に配慮し、金融機関側の負担も抑えられるよう、引き続き協議していく」としている。
 一方、大阪府議会では24日、過去3年間にATMで振り込んだことがない70歳以上は、振り込み限度額を1日10万円以下にすることを義務化する条例改正案が可決・成立した。府内で高齢者が携帯電話で通話しながらATMを操作することも禁じ、事業者に必要な措置を義務付ける。通話禁止の義務化は全国で初めて。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 なぜ後期高齢者がATM利用制限を受けるのかは《昨年は被害者2万951人(法人を除く)のうち、約45%に当たる9415人が「75歳以上」だった》からだという.これは読売の見解ではなく警察庁発表によるものだ.
 しかしすぐ私たちは気が付くが,特殊詐欺被害者の55%は74歳以下なのである.
 後期高齢者の被害者は少数派なのだ.
 従って論理的には,ATM利用制限を受けるべきは,被害者の多数派である74歳以下の人たちなのである.w
 
 ではなぜ警察庁は《75歳以上によるATM(現金自動預け払い機)の1日あたりの利用限度額について、引き出し、振り込みとも30万円に制限する》ことにするかというと,「75歳以上の国民はすべてボケている (認知機能が衰えている) ので簡単に騙される」と思い込んでいるからだ.
 だとすると,麻生太郎や菅義偉など自民党重鎮はボケていると警察庁は考えていることになる.実際にこの二人はボケているから仕方な まことに失礼極まりない.
 それはそれとして,もちろん「論理的には,ATM利用制限を受けるべきは74歳以下の人たちなのである」も理屈としておかしい.
 なぜなら,特殊詐欺に引っかかるかどうかは,被害者の年齢と無関係だからである.
 騙されない人は騙されないし,騙されるやつはすぐ騙される.本人の性格や知識レベルや情報収集能力あるいは資産状況や家庭の事情などによっても被害者となるかどうかは影響される.
 それを無理やり非論理的に年齢と関連付けるから,被害者のうちの少数派である75歳以上の後期高齢者にATM利用制限を課し,多数派である74歳以下は無制限にする矛盾が生じる.
 誕生日を境にして,昨日までATM一日利用限度額が200万円だった人が,突然今日から限度額30万円になってしまうという事態がどれだけ理不尽かは考えるまでもない.
 しかるに警察庁幹部は,特殊詐欺事件は,犯行グループの逮捕によって防止するのではなく,後期高齢者のATM利用制限で防止するという.
 それって頭わるいんじゃないか.
 銀行キャッシュカードに関して,年齢による利用制限を端末で新設するとすると,ATMシステムの改修が必要となる.
 これがどんなに大変なことか,容易に想像がつく.
 莫大なコストが発生する可能性が高い.
 それを年金暮しの後期高齢者に転嫁するつもりか,警察庁は.(この種の事は受益者負担が原則であるから,システム改修費用を銀行が負担するのは筋違いだ)
 また後期高齢者がキャッシュで30万円以上の高額の買い物をするとして,代金や手付金の引き出しあるいは送金は銀行窓口でするしかないが,ただでさえ支店の数を減らしている都市銀行は業務に多大な負担がかかる.
 そのコストも,後期高齢者に転嫁するつもりか,警察庁は.
 そういうことをよく考えてから施策を発表しろと言いたい.
 
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