ロシアの真空管 /工事中
乗りものニュース《またもトランプ大統領が爆弾発言!? “情報漏洩リスク”あるアジアの大国に最新戦闘機F-35購入を提案 その目論見とは》[掲載日 2025年3月11日] から下に引用する.引用した記事の筆者は航空軍事評論家の関賢太郎氏.
《ロシア製ミサイルの導入がネックに
アメリカのドナルド・トランプ大統領は2025年2月13日、インドのナレンドラ・モディ首相と会談した際、衝撃的な発言をしました。彼はインドに対し、F-35戦闘機の購入を提案したのです。
F-35は、アメリカの最先端技術を駆使したステルス戦闘機で、輸出先はすでに20か国にも達していますが、導入できたのは親米国に限られていました。アメリカの国防戦略において、F-35の輸出先を慎重に選定することは、ただの武器供与の枠組みを超えて、政治的な信頼や戦略的な位置付けを意味します。
インドは冷戦時代から東西(米ソ)陣営どちらにも属さない第三極として独立した外交政策をとってきた経緯があり、長年にわたり西側だけではなくソ連/ロシアからも多くの兵器を導入してきました。特に戦闘機については東西両方の最新鋭機を満遍なく持つなど、かなり特異な状況です。そうしたことを鑑みると、アメリカのトップがF-35の供与をあえて提案するというのは、極めて異例だといえるでしょう。
ただ、同国はロシア製のS-400地対空ミサイルシステムを保有しているため、これが引き渡しに際してネックとなる可能性があります。
インドのF-35導入を考えるうえで、トルコの事例を引き合いに出すことは避けられないでしょう。トルコは、アメリカとの防衛協力関係において重要な位置を占めており、F-35の共同開発にも参画していましたが、トルコがロシアからS-400を導入することを決定すると、アメリカはF-35の技術的な機密漏洩のリスクを高めると警告し、最終的にはトルコをF-35計画から外す決定まで下しました。
このような前例があるため、インドがF-35を導入する場合、同じようなリスクが指摘されることは間違いありません。インドがロシア製兵器を保持しつつF-35を受け入れることが、技術的、戦略的に問題を引き起こすのではないかという懸念が残ります。(以下省略)》
上に引用した記事にあるように,戦闘機は軍事技術の塊であり,軍事技術の漏洩に関して少しでも信用できない相手国には渡さないというのが鉄則らしい.
そこで昔話.
私が青年時代にソ連の将校が北海道に強行着陸する事件が起きた.ベレンコ中尉亡命事件である.
Wikipedia【ベレンコ中尉亡命事件】から下に一部引用する.
《ベレンコ中尉亡命事件は、冷戦時代の1976年9月6日、ソビエト連邦軍(ソ連防空軍)の現役将校であるヴィクトル・ベレンコ中尉が、MiG-25(ミグ25)迎撃戦闘機で日本の函館空港に強行着陸し、アメリカ合衆国への亡命を求めた事件である。ミグ25事件とも呼ばれる。
この事件により低高度侵入の有効性とルックダウン能力の重要性が浮き彫りになった他、それまで西側諸国に知られてこなかったMiG-25の性能が分解調査によって判明した。また、航空自衛隊の防空体制を根幹から揺るがし、日本における防衛論議の流れに変化が生じるきっかけとなった事件である。》
《また、この事件によって低高度侵入の有効性と、ルックダウン能力の低い戦闘機の問題点が浮き彫りにされてしまったため、当のMiG-25自身を時代遅れにしてしまうという皮肉な結果を招いた。MiG-25は高高度・高速侵入する敵機の迎撃が主目的で、低高度侵入する敵機への対処能力は空自のF-4EJよりさらに劣るからである。後にソ連は、大幅に改良したMiG-31を開発することになる。
アメリカは、それまでMiG-25を超高速戦闘機として恐れており、それを意識する形もあってかF-15を開発していた。しかし、調査分析の結果、実際にはMiG-25はそれほどの脅威と呼ぶに値しなかったことが判明した。特にそれまで耐熱用のチタニウム合金製と考えられていた主翼や胴体にステンレス鋼板が多用されていたこと、電子機器が真空管などを多用した、当時の水準としても著しく時代遅れなことに驚愕し、対ソ軍事戦略にも大きな影響を及ぼした。しかし「真空管を使うのは時代遅れ」との説や「MiG-25をアメリカが脅威視していた」という説には異論もある。→詳細は「MiG-25 (航空機)」を参照 (以下省略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
函館空港に侵入したMig-25を解体して分析した米軍関係者からメディアに「Mig-25は時代遅れの張子の虎だ」という趣旨のリークがなされた.それが《「真空管を使うのは時代遅れ」との説》である.
そこで次に,Wikipedia【MiG-25 (航空機)】から下に引用する.(下の画像は同項目に掲載されているパブリックドメイン画像)
《ベレンコのMiG-25は函館空港から百里基地に米軍のC-5ギャラクシーで移送され、格納庫の中で日米共同による調査が行われた。なお、函館空港では運搬のために最小限の解体が行われたが、その際、電子機器類に自爆装置がセットされていることが確認されている。自爆装置はアメリカ軍技術者の手により解体された。
高速飛行での高熱に曝される部分において、レアメタルのチタン合金を大量に使用していると見られていたが、実際にはニッケル鋼が多く使われていた。主成分のアルミニウムが600 ℃台で融けてしまうジュラルミンなどのアルミニウム合金よりは耐熱性に優れているが、これでは機体表面を常時300℃に加熱させるマッハ3での飛行に耐えられず、MiG-25 が安全に飛行できる最高速度は実際にはマッハ2.83程度だった。チタン合金に比べニッケル鋼は大幅に重いため、機体の通常重量は36,720 kgと重くなり、機体にアルミニウム合金を使用していた西側のF-4の18,825 kg(運用時重量)と比べ2倍近い重量があった。機体重量を減らすため、コックピットの座席には非常時に脱出するための射出座席は装備されておらず、大型の主翼は機動性を高めるためでなく、その重量を浮かび上がらせるための揚力を得るためであることが判明した。
迎撃に特化した戦闘機であり、機体の運用制限荷重(≠破壊荷重)が5G、改良型のPD型で5.5Gと通常の戦闘機よりも低い傾向にあり(他参考、F-14A=4.8G、F-14D=6.3G、F-4E=7G、F-15C及びSu-27S=9G)機体重量も相まって、見かけによらず、機動性などはそれほど高くない。ソ連の防空システムにおける航空機の役割は、地上管制による誘導を受けながら広大な国土の上空を航行し、長射程ミサイルを目標付近まで輸送したのちに発射するというものである。つまり純然たる迎撃機であるが本来の設計思想と異なる戦術・制空戦闘目的で運用された中東諸国のMiG-25は高速性を活かして戦うことで制空も一定以上こなせることを証明し、例えばイランイラク戦争においては敵対戦闘機19機を撃墜しMiG-25は2機損失のみであり、イラク軍にとって圧倒的劣勢下であった湾岸戦争においても空対空戦闘において戦果と損失がどちらも2という状況から鑑みて高い生存性を見せた。
巨大なエアインテークとノズルは特徴的な外見であるが、さらにエアインテーク内には整流板が取付けてあり、空気の流れを整えてエンジンの燃焼を安定させる効果があった。当初予想されたエンジンは当時としては新型のターボファンエンジンやターボラムジェットではなく、高速飛行時のラム圧縮効果をあらかじめ見込んでエンジンの圧縮機の圧縮比を低く設定した従来型のターボジェットエンジンの採用によるものだった。
電子機器はアメリカ以上のハイテクを駆使していると見られていたが、実際にはオーソドックスな真空管が多く使われており、先進性より信頼性を重視したものとなっていた。それでも、旧式ながらレーダーの出力は 600 kW と極めて大きいものであり、相手方の妨害電波に打ち勝って有効であったと伝えられている。ほかにも、半導体回路を使用すると核爆発の際に発生する電磁パルスで回路が焼損するおそれがあるため使用しなかったとの説もある。
機体設計においては、MiG-25は特にその機体構成要素において、革新性よりは信頼性に重点をおいた堅実な設計に基づいた機体であった。
以上の事から、MiG-25は西側の懸念したような格闘戦用の制空戦闘機ではなく、ソ連の防空システムに完全に組み込まれる、領空防衛を主目的とする典型的な(ロシア・旧ソ連型の)迎撃戦闘機であると考えられた。これにより、西側への侵攻が行われた際にMiG-25が前線に現れ脅威となるような状況は想定されなくなり、調査班は西側諸国の不安が「過大評価」であったとの結論を下した。(以下省略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
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