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2024年10月26日 (土)

嘘つき管理栄養士マリー秋沢

 プレジデントオンライン《だから日本は世界一の長寿国になった…管理栄養士が「とりすぎ」くらいが丁度いいと話す"栄養素の種類"》[掲載日 2024年10月25日] を書いたのはマリー秋沢という管理栄養士である.
 管理栄養士という資格は,元々は国民栄養に資するために設けられた国家資格である.
 しかるにこの資格を持っている大嘘つきたちがウェブ上でデタラメを吹きまくってきたために,今では持っているのが恥ずかしい資格になってしまった.
だから日本は世界一の長寿国になった…管理栄養士が「とりすぎ」くらいが丁度いいと話す"栄養素の種類"》から二ヶ所を下に引用する.
 
[1]
体を構成するたんぱく質は、日々つくり替えられています。合成と分解がくり返されているのです。脳などの臓器や筋肉のたんぱく質は、古くなると分解され、再利用されるか体外へ排出されます。
 一方で、体内に貯蔵されたたんぱく質の一部と、食事から摂取した新しいたんぱく質が、アミノ酸に分解されたあとに必要な場所へ届けられ、新たにつくられる細胞の材料になっていきます。
 
・たんぱく質は「とりすぎ」くらいが、ちょうどいい

 
 では、たんぱく質の摂取量が少ない日が続くと、どうなるか。

 まず筋肉量が減ります。筋肉のたんぱく質が、新たな細胞を生み出すための材料として、真っ先に分解されてしまうからです。たんぱく質不足の状況では、脳細胞の再生もうまくいかず、機能の低下が起こってくるでしょう。
 すると、気分の不安定や集中力の低下、精神的な疲れなどが引き起こされます。さらに、免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすくなるでしょう。
 なお、口からとったたんぱく質は、体内にためておけない、という性質があります。吸収されなかったものは、排出されてしまうのです。よって、「夕食に肉を食べるから、朝と昼はたんぱく質がなくても大丈夫」ということにはなりません。
 
 朝・昼・晩の1日3食、たんぱく質はそれぞれの食事でしっかりとること。

 
 現在、栄養士の合い言葉は「たんぱく質」といわれるほど、その不足に危機感が高まっています。日本人の食事摂取基準でも、たんぱく質には上限が設けられていません。
》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
(中略) 
 
★マリー秋沢の大嘘1.
口からとったたんぱく質は、体内にためておけない、という性質があります
 
 経口摂取したタンパク質はアミノ酸に分解されたのち,「アミノ酸プール」に入る.
 アミノ酸プールは「細胞内および細胞外体液中に存在する遊離アミノ酸の総量」という概念であって,臓器等の実体があるわけではない.
 そのアミノ酸プールに,入ったアミノ酸はどうなるか.
 下図は《第3回「日本人の食事摂取基準 (2015年版)」策定検討会資料別紙》である.
 この図で赤い枠で囲まれている「アミノ酸プール」「体タンパク質」「グリコーゲン」「中性脂肪」が,ヒトの体における貯蔵物質である.
 下図に書かれているように「体タンパク質」は,マクロに体の構造を維持する骨格・筋肉・皮膚と,ミクロに生理機能を維持する酵素・ホルモンなどに分類される.
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 つまり「アミノ酸プール」に入ったアミノ酸は「体タンパク質」として貯蔵されるのである.
 ただし貯蔵物質としての「体タンパク質」は,中性脂肪 (体脂肪) と性質が異なる.
 消化吸収されたアミノ酸によって「体タンパク質」が作られると,それとほぼ同量の「体タンパク質」が分解されて「アミノ酸プール」に戻り,その一部は排出され,あるいは一部は「体タンパク質」に再利用されたり,または糖質と同じようにエネルギー源として利用されることもある.
「体タンパク質」の合成速度と分解速度がバランスしていると,あたかもアミノ酸が《体内にためておけない》ように見える.
 しかし「体タンパク質」の合成と分解は動的平衡状態にあるのだ.
 すなわちマリー秋沢が書いている《口からとったたんぱく質は、体内にためておけない、という性質があります》は,タンパク質の代謝を理解していないことを露呈している.
吸収されなかったものは、排出されてしまうのです》も,マリー秋沢がタンパク質の消化・吸収・代謝を静的にしか見ていないことを示している.これではまるで腸管で能動的なタンパク質の吸収阻害が生じているかのようだが,実は吸収され,吸収された分だけ代謝され,入れ替わっている (「代謝回転=ターンオーバー」という) のである.ここが静的な貯蔵物質である脂肪と異なる点だ.
 
(実はマリー秋沢は《口からとったたんぱく質は、体内にためておけない、という性質があります》と書いているのに,そのすぐ後で《体内に貯蔵されたたんぱく質の一部と、食事から摂取した新しいたんぱく質が、アミノ酸に分解されたあとに必要な場所へ届けられ》と書いている.
 だとするならば,《食事から摂取した新しいたんぱく質》は《体内にためておけない》わけだから《体内に貯蔵されたたんぱく質》は一体どこからやってきて貯蔵されたのか.もう支離滅裂である)
 
 ではなぜ体内における動的な貯蔵物質であるタンパク質と,静的な貯蔵物質である脂肪とでは「貯蔵」の意味が異なるのか.
 臓器や筋肉などの器官は,生命活動の過程で物理的あるいは化学的な異常を生じるが,タンパク質の代謝回転はその異常の修復システムなのである.
 その詳細を述べることはこのブログの手に余る.タンパク質の代謝回転の簡単な解説は大学などのウェブサイト上に多くの資料がある.例えば《アミノ酸とタンパク質代謝》などを参考にされたい.
 
[2]
リラックスホルモン GABA(ギャバ)
 メンタルを穏やかにしてくれるGABAは、「リラックスホルモン」とも呼ばれます。イライラ感を抑えて、穏やかな精神状態をつくってくれるホルモンです。
 勉強に集中するには、メンタルの安定が大事。イライラしていたり、不安感が強くなっていたりすると、そのことで頭がいっぱいになり、集中できません。
 そこで大事になるのが「グルタミン」というアミノ酸の摂取です。グルタミンから「グルタミン酸」というアミノ酸ができ、最終的にGABAになります
 たんぱく質からGABAが合成されていく過程では、「ナイアシン、ビタミンB6」という2つのビタミンが使われます。
「最近、ちょっと怒りっぽくなっているな」「不安感が強そうだな」と感じるときには、グルタミンやグルタミン酸、ナイアシン、ビタミンB6が豊富なものを食べさせてあげましょう。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
★マリー秋沢の大嘘2.
グルタミンから「グルタミン酸」というアミノ酸ができ
 
 Wikipedia【グルタミン酸】から下に引用する.
生合成
 ヒトなどの体内では、グルタミン酸の生合成が可能である。TCA回路を構成する化合物の1つである2-オキソグルタル酸が、グルタミン酸トランスフェラーゼの作用により、他のアミノ酸からアミノ基転移を受ける方法で合成される。
 あるいは、グルタミン酸デヒドロゲナーゼにより、グルタミン酸からアミノ基を取り外して、2-オキソグルタル酸とアンモニアへの分解する反応を[注釈 4]、逆に進める方法により合成される。
 L-glutamate + H2O + NAD(P)+ → 2-oxoglutarate + NH3 + NAD(P)H + H+
 
 Wikipedia【グルタミン】から下に引用する.
20241028a2  

 GABAは血液脳関門を通過しない物質であり,体外からGABAを摂取しても,それが神経伝達物質として働くことはない.
 GABAは脳内では,グルタミン酸のα位のカルボキシル基がグルタミン酸脱炭酸酵素により除かれることによって生成される.
 脳内でグルタミン酸が生成する反応は以下の通り.
 (1) α-ケトグルタル酸から,アミノ基転移酵素によってアミノ基の転移を受けて生成.
 (2) α-ケトグルタル酸から,グルタミン酸デヒドロゲナーゼによって遊離アンモニアの添加を受けて生成.
 (3) オルニチンから,オルニチンアミノ基転移酵素さらにP5Cデヒドロゲナーゼにより生成.
 (4) グルタミンからグルタミナーゼの作用により生成.
 以上のうち (4) は,マリー秋沢が《グルタミンから「グルタミン酸」というアミノ酸ができ、最終的にGABAになります》と主張している経路であるが,これは神経伝達物質として一度使われたグルタミン酸の再利用経路である.
 すなわちグリア細胞の細胞膜に存在するグルタミン酸輸送体によりグリア細胞内に取り込まれたグルタミン酸は,一度グルタミン合成酵素によってグルタミンに変換された後,神経細胞に取り込まれ,その中で再度グルタミン酸に変換されてから再利用される.
 以上のことで理解されるのは《「最近、ちょっと怒りっぽくなっているな」「不安感が強そうだな」と感じるときには、グルタミンやグルタミン酸、ナイアシン、ビタミンB6が豊富なものを食べさせてあげましょう》が大嘘だということである.
 グルタミンもグルタミン酸も,血液脳関門を通過しないので,食事として摂っても「怒りっぽくなっている」とか「不安感が強い」などの精神状態に影響することはない.
 マリー秋沢がどこからこの素っ頓狂な主張を引っ張り出したのか,色々と調べて見たのだが根拠らしきものは見つからなかった.
「最近、ちょっと怒りっぽくなっているな」「不安感が強そうだな」と感じるときには》グルタミンやグルタミン酸を食べると効果があるという主張はマリー秋沢の妄想だろう.
 
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