大福を手で一口サイズに割るのは難しい

　ftn-fashion trend news《大福の食べ方で赤っ恥！？「子どもじゃないんだから（呆）」大人なら知っておきたい【正しい食べ方】》[掲載日 2024年10月24日] から下に引用する．
　
《和菓子の正しい食べ方に自信はありますか？
　普段から食べ慣れている物でないと、マナーが分からないことがありますよね。
　今回は大福の食べ方を知らなかった為に、赤っ恥をかいたエピソードを知人から聞きました！》
　(次にマンガの六コマ目↓で)
《粉をササッと落として…一口サイズに割って食べる》
《あ…そうやって手で食べるのか～～～》
　
　この漫画には，訪問先のお宅で大福を出されたとき，黒文字がついていなかった場合には手で一口サイズに割って食べよと書いてある．
　ほんとか？と私は思った．
　だって大福は大福餅というくらいで餅菓子だ．基本的には小豆餡を，もち米を搗いて拵えた餅で包んで作る．(いちご大福などの変化形はある)
　餅は手指で引っ張ると伸びる (この性質を粘弾性という；Wikipedia【粘弾性】) から「割」ることができない．
　手で「割」れる和菓子は大福ではなくて，粘弾性をあまり示さない饅頭 (材料は小麦粉など) だ．
　ただし，大福の餅は時間経過と共に「老化」して粘性を失い，「割」れはしないが「ちぎれる」ようにはなる．
　それが下の画像である．
　

　
　スーパーで販売されているような廉価な大福は老化を防止する添加物を使用する場合が多く，製造から二日ほど経つと上の画像のようにちぎることが可能になるが，和菓子屋さんで売られているような無添加の大福は翌日には老化してしまう．
　老化した大福を両手指で引っ張るとちぎれて一口大にすることはできるが，ちぎれた大福は上の画像のように見苦しい様子となる．
　ちぎった大福の片方を食べている間，残った見苦しい片割れを菓子皿に載せておくのは，いささか憚られる．
　ではどうしたらいいのか．
　下に引用したスクリーン・ショットは「北の菓子 菓風」という菓子屋さんのサイトのブログ記事である．(掲載日 2021年8月6日)
　

　
《茶道の席で生の和菓子を食べるときは、基本的に「黒文字（くろもじ）」と呼ばれる小さなスティック状の菓子楊枝で切り、そのまま刺して口に運びます。しかし、餅が伸びる大福は黒文字では切りにくいため、黒文字ではなく懐紙を添えましょう。懐紙は薄い和紙で、百貨店や茶道具店、文房具店などで売られています。懐紙で大福をくるんで手で掴むのが一番簡単。大福の粉が飛び散ることもなく食べやすいです。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
　
　きちんとした御茶席でも《懐紙で大福をくるんで手で掴むのが一番簡単。大福の粉が飛び散ることもなく食べやすいです》とあるように，無理にちぎったりせず，懐紙で包んで口に運んで一口二口ずつ食べてよいという．
　この点は大人気のマナー講師西出ひろ子さんも同意見だ．(私は西出ひろ子さんのファンで，仰ることを信用している)
《マナーコンサルタントに「和菓子をエレガントに食べるコツ」を伺いました　大福はかぶりついてもいい？今さら人に聞けない「和菓子の上手な食べ方のコツ」７つ》 から下に引用する．
　
《「大福にかぶりつくのはマナー違反とはいえません。たしかに、かぶりつくよりも、一口サイズに割ったものを口に運ぶほうがきれいに見えるようにも思えますが、皮がもちもちと伸びて、うまく割れないことも多いのではないでしょうか。
　その場合は、無理に割ろうとせずに、直接かぶりついてもよいでしょう。大福の粉が散ったり、口の周りを汚したりしないように、懐紙にくるむと美しく食べることができます」》
《大福は懐紙でくるめば粉を落とさず食べることができますが、もし懐紙がない場合、美しく食べるにはどうすればいいのでしょうか？
「大福や最中は懐紙にくるまずに食べると、表面の粉や皮がポロポロこぼれ落ちるおそれがあります。それを受け止めようと、左手を下に添える手皿をするのはNGです。
　和食では小さい皿は持ち上げてもよいので、粉や皮の食べこぼしが気になるときは、手皿をするのではなく、皿を持ち上げて食べるとよいでしょう」》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
　
　以上，ftn-fashion trend news《大福の食べ方で赤っ恥！？「子どもじゃないんだから（呆）」大人なら知っておきたい【正しい食べ方】》は《粉をササッと落として…一口サイズに割って食べる》とか書いているが，菓子屋さんも西出ひろ子さんも，大福はかぶりついて食べてもいですよと述べている．
　その理由は，大福は引っ張ると伸びるから一口サイズにきれいに「割」ることは難しい (上述のように私は実験してみた) し，黒文字でも切りにくいからである．
《大福の食べ方で赤っ恥！？「子どもじゃないんだから（呆）」大人なら知っておきたい【正しい食べ方】》の作者は，嘘マンガを描く前に実際にやってみるなり，マナー専門家の指南を調べればよかったのである．