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2024年9月28日 (土)

「ジェネリックを嫌う患者にペナルティを!」by 厚労省

 ここ最近,調剤薬局では下の画像に示すチラシを配布している.
 
20240928a1
 
 下に一部をテキストで引用する.
令和6年10月からの医薬品の自己負担の新たな仕組み
 
 後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるお薬で、先発医薬品の処方を希望される場合は、特別の料金をお支払いいただきます。
 この機会に、後発医薬品の積極的な利用をお願いいたします。
 • 後発医薬品は、先発医薬品と有効成分が同じで、同じように使っていただけるお薬です。
 • 先発医薬品と後発医薬品の薬価の差額の4分の1相当を、特別の料金として、医療保険の患者負担と合わせてお支払いいただきます。
 • 先発医薬品を処方・調剤する医療上の必要があると認められる場合等は、特別の料金は要りません。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 政府は,2021年 (令和3年) 6月の閣議決定において「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性確保を図りつつ,2023年度末までに全ての都道府県で80%以上」とする目標を策定した.(惨憺たる結果は後述する)
 この目標達成のために,厚労省は既に,ジェネリック医薬品の販売に熱心でない調剤薬局にはペナルティを課している.
 これは,医療費削減を大義名分にして先発医薬品を完全に日本市場から払拭し,我が国の先発医薬品メーカーの開発力と競争力を低下させ,もって海外メーカーの製品輸入を増やそうという国賊政策である.
 新しい医薬品の開発には莫大な研究開発費が必要だ.その開発費は既存の先発医薬品で稼ぐしかない.
 しかるに政府は,先発医薬品メーカーの利益源を奪うことにした.
 この政策の結果として,日本の製薬会社の新規医薬品開発力が低くなった.これはコロナワクチンの開発を見れば明らかだ.巨額のワクチン代が海外メーカーの利益と化して,日本から失われた.政府としては「してやったり」というところだろう.
 
 しかし医師は,患者の要望がなければ投薬効果が確かで安全な先発品を処方する.
 そのため政府は,処方箋に記載された先発医薬品名を患者の承諾なしに,勝手に調剤薬局がジェネリックに書き換えることを認めた.
 明らかに有印文書の改竄であるが,気弱な患者は異議を申し立てることができないようにした.(私は薬剤師に「勝手に書き換えないでくれ」と言ったことがあるが,そしたら「先発が欲しけりゃ他の薬局に行け」と暴言を吐かれた w)
 しかしそれでも先発品を撲滅できない.
 業を煮やした政府は,今度は患者にもペナルティを課することにした.
 それが上の画像に示した新政策である.
 
 ではなぜ多くの医師と患者がジェネリック医薬品を嫌うか.
 理由は,当たり前すぎて嫌になるが,ジェネリック医薬品の品質が低いからである.
 厚労省は《後発医薬品は、先発医薬品と有効成分が同じで、同じように使っていただけるお薬です》と言うが,これが嘘.
 先発品とジェネリックは単に有効成分が同じだけであり,製造技術が異なる.
 製造業で働いている諸兄には周知のことだが「材料が同じなら,できた製品の品質も同じ」ということは絶対にないのである.
 ジェネリック医薬品の製造現場は,先発医薬品企業のそれと大して変わらぬと思うひとがいるかもしれないが,違う.
 小林製薬が紅麹サプリで重大事故を起こした時,ニュースで小林製薬のオンボロ工場を見て愕然とした人が多いだろう.
 小林製薬は一般医薬品メーカーだが,ジェネリック医薬品の工場というのもあれと同程度である.
 私が製造現場を実見した工場では,一般には企業名を知られていないが,サプリやジェネリックの打錠を下請けする会社があって,それはもう酷いものだ.常識人は見たら愕然とすること確実だ.(打錠とは,主たる成分に添加物と増量剤を混ぜて錠剤に成形すること)
 現場設備がオンボロだけではない.製造に従事している作業員もポンコツで,あろうことか経営者までもがポンコツなのが,ジェネリック医薬品業界の現状なのである.
 最近の例について,NHK NEWS WEB《【詳しく】製薬会社の行政処分相次ぐ メーカーに何が?(更新)》[掲載日 2022年5月15日] から下に引用する.
 
そもそもの発端は?
 一連の問題の発端となったのは、おととし2020年12月に発覚した福井県のジェネリック=後発医薬品メーカー「小林化工」が製造した水虫などの真菌症の治療薬に睡眠導入剤の成分が混入した不祥事でした。
 服用後に意識を失うなどの健康被害が出た人は240人以上に上り、中には車の運転中に事故を起こしてけがをするなど深刻なケースもありました。
 去年2月、小林化工は福井県から過去最長となる116日間の業務停止命令と業務改善命令の処分を受けました。
 その後も製造・販売の再開には至らず、事実上、経営の再建を断念し、ことし3月末に工場などを別のジェネリック大手が設立した新会社に譲渡しました。
 調査でわかった問題とは?
 小林化工については、国が承認していない工程での製造を行っていた実態も明らかになりました。
 睡眠導入剤の混入は「原料を継ぎ足す作業」を行うために別の薬の容器と取り違えたことで起きましたが、そもそもこの作業自体、国が承認していないものでした。
「小林化工」の記者会見
 同じように多くの医薬品で国が承認していない工程での製造や品質試験を行わずに結果をねつ造するなどの違反が行われていたうえ、県の査察に備えて「二重帳簿」を作成するなど不正の発覚を防ぐための組織的な隠蔽まで行っていました。
 当時の社長は処分後の会見で、そうした違法行為を15年以上前から認識しながら黙認していたことを明らかにしています。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 小林化工では多くの製品に関して,国の承認が行われていない工程で,国が認めていない作業を行い,品質試験を行わずに結果を捏造し,県の査察に備えて「二重帳簿」を作成して隠蔽工作を行うという不正が行われ,この不正を長年にわたり経営者が指揮していた.
 NHKの記事には《当時の社長は処分後の会見で、そうした違法行為を15年以上前から認識しながら黙認していた》とあるが,これは嘘だ.
 会社員だった人間は知っているが,社長が《違法行為》を《認識しながら黙認していた》なんてことはあり得ないのだ.事実は社長が陣頭指揮しているのである.
 実際に私は,かつて勤務していたホーネンコーポレーションという会社 (現存しない) で品質保証部長になった時,当時の社長だった嶋雅二 (Wikipedia【嶋雅二】) という男に社長室で「いいか,お前の仕事は不祥事を隠蔽することだ」と命令された.
 だが私は嶋の命令に反して,嶋と腰ぎんちゃくたちの起こした不祥事や犯罪を,経営会議において他の取締役の前で暴露しまくり,隠蔽をさせなかった.
 嶋は激怒し,私を社長室に呼びつけて「退職願を書け」と恫喝した.しかし嶋が専務時代に指揮した刑法犯罪の証拠を私は握っていたので,私が「私をクビにするならあの件を警察に通報するぞ」と言ったら嶋は押し黙った.ざまあ見ろだ.
 
 さて上に挙げた例は不正のオンパレードだが,これは小林化工だけの話ではない.
 他のジェネリック医薬品メーカーも不正をやってきた.
 不正が発覚して業務停止命令を受けたメーカー (NHK調べ) を下に示す.
▼2021年
 2月 9日 小林化工(福井) 116日間
 3月 3日 日医工(富山)32日間
 3月26日 岡見化学工業(京都) 12日間
 8月12日 久光製薬(佐賀) 8日間
 9月14日 北日本製薬(富山) 28日間
 10月11日 長生堂製薬(徳島) 31日間
 11月12日 松田薬品工業(愛媛) 65日間
 12月24日 日新製薬(滋賀) 75日間
▼2022年
 3月28日 共和薬品工業(大阪)33日間
▼2023年 業界最大手の沢井製薬の不正が遂に発覚.
 NHK NEWS WEB《沢井製薬 不正試験問題 本社などある2府県と厚労省が行政処分》[掲載日 2023年12月22日]
 
 この記事の冒頭に述べたように,政府目標 (2021年6月策定) は《後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性確保を図り》だったが,その後,立て続けにジェネリック医薬品メーカーの不正が発覚した.
 政府目標は,達成どころか《後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性》は崩壊したのであった.
 連続して業務停止命令が発せられたために,ジェネリック医薬品を調剤薬局が販売したくても,そのジェネリック医薬品が店頭になくなるという事態が起きたのは記憶に新しい.
 すなわち厚労省は,右手で調剤薬局に「もっとジェネリックを売らないとペナルティをきつくするぞ」と脅しをかけておきながら,左手でジェネリック医薬品メーカーに業務停止命令を行ったのである.辻褄が合わぬこと,この上ない.国民を愚弄するにもほどがある.
 
 話を新しいペナルティのことに戻す.
 年金暮しの高齢者が節約のために,処方箋に書かれている先発医薬品の代わりにジェネリック医薬品を欲したとする.
 ところがそのジェネリック医薬品が,メーカーの不正行為により厚労省が業務停止を発したために,供給が途絶えていたとしたらどうなるか.
 薬局に在庫があるのは先発品であり,処方箋には先発品が記されている.
 だったら処方箋通りに正規の価格で販売してくれるのか.
 違う.
後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるお薬》の《ある》とは先発医薬品とジェネリック医薬品が共に薬価基準に収載されているという意味であり,店頭在庫の有無ではない.
 従ってこの場合でも,患者は先発医薬品とジェネリック医薬品の差額の25%を国にペナルティとして払わねばならぬのである.
 患者は何も悪いことをしていないのに,お上の言う通りにジェネリック医薬品をくださいと言っているのに,ペナルティを課せられるのだ.
 調剤薬局にジェネリック医薬品の在庫がなくなったことは患者のせいではないのに,その罰を患者が受けるのだ.
 理不尽じゃないか.
 これは国家による詐欺だ.国家の国民に対する犯罪だ.
 ジェネリック医薬品を巡るメーカーの不正の手口と,行政による詐欺の仕組みを私たちはよく理解しておこう.
 
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