パレスチナ問題の責任は米英が負うべきなのに
読売新聞《駐日英国大使、長崎の平和祈念式典は欠席へ…「イスラエル招待されずロシアと同様の扱いされている」》[掲載日 2024年8月7日] から下に引用する.
《広島市で開かれた平和記念式典に参列したジュリア・ロングボトム駐日英国大使が6日、広島市内で報道陣の取材に応じ、長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典(9日)に参列せず、大使館から代理が出席すると明らかにした。パレスチナ自治区ガザでの戦闘を続けるイスラエルが招待されていないことを理由に挙げた。
広島の式典にはイスラエルの駐日大使が出席したが、長崎市は式典で不測の事態が発生するリスクを考慮する必要があるとして招待していない。ロングボトム大使は「自国を守る権利を行使するイスラエルが、ロシアやベラルーシと同様の扱いをされていることに懸念を感じている」と説明。一方で、「長崎における原爆の惨禍を忘れないように、平和へのメッセージを発信することの重要性は変わらない」と話した。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
世界史で大学受験しようとする高校生なら知っていることだが,二千年も前にローマ軍がユダヤ人の王国を滅ぼして以降,現在のイスラエルのある土地にはユダヤ人の国家は存在しなかった.
しかるにイギリスが陰謀を巡らせて,この地域におけるイギリスの権益を守るために純朴なアラブ人を騙して土地を奪い,ここに無理矢理にユダヤ人たちにイスラエルを建国させた.紛うことなき「力による現状変更」であり,侵略であった.
この歴史的事実に関しては,もしかすると高校世界史の教科書に「三枚舌外交」という歴史用語が載っているかも知れない.
Wikipedia【三枚舌外交】から引用する.
《イギリスは第一次世界大戦中に戦後の中東問題に対して、以下の三つの協定を結んでいた。それぞれ、アラブ・フランス・ユダヤに配慮した内容であった。
1915年10月 - フサイン=マクマホン協定(中東のアラブ独立・公開)
1916年5月 - サイクス・ピコ協定(英仏露による中東分割・秘密協定)
1917年11月 - バルフォア宣言(パレスチナにおけるユダヤ民族居住地建設・公開)
これにより第二次世界大戦後のパレスチナ問題や、1921年3月21日のカイロ会議ではガートルード・ベルの意見が採用されて現在も不自然な国境で分断されているクルド人問題など多くの問題を生じた。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
《それぞれ、アラブ・フランス・ユダヤに配慮した内容であった》は理解しにくい表現だが,「配慮した」とは要するにアラブ・フランス・ユダヤそれぞれに対して,相反する約束をして嘘を吐き,三者を欺いたのである.
すなわち現在も続くパレスチナ問題のタネを撒いたのは他ならぬイギリスである.そしてイギリスが撒いた憎悪と戦争のタネを,ここまで大きく育てたのがアメリカだ.
このようにしてパレスチナ問題が生じた経緯は,高校で習う世界史の基礎知識である.(入試には出ない;もし出題した大学があったら文科省が黙っていない)
ジュリア・ロングボトム駐日英国大使は,恥というものを知らぬイギリスという国こそが,パレスチナ問題の原因を作ったという事実を,日本人は知らないとナメているのだろうが,私たちは大使が思うほどの無知ではない.高校でちゃんと世界史の教育を受けているし,なんなら公共放送が国民にわかりやすく中立的立場からの解説をしてくれている.(NHK《クローズアップ現代取材ノート パレスチナ問題がわかる イスラエルとパレスチナ 対立のわけ》[掲載日 2023年10月11日])
しかるにこの嘘つき英国大使は,いけしゃあしゃあと《自国を守る権利を行使するイスラエル》と言っている.かくも日本人はイギリス人にナメられているのだ.
駐日大使という公人がイギリス政府を代表して真っ赤な嘘を吐く.よく恥ずかしくないものである.
自分たちの土地 (ヨルダン川西岸) に住む権利を行使しようとしただけのパレスチナ人を,イスラエルは何千人も裁判なしで刑務所に叩き込んで暴行しておきながら,ハマスが拉致したイスラエル人の二百五十一人の人質のことは戦争開始の口実にした.
そして米英両国はそれを容認している.
この事実についてNHK《“イスラエル 拘束したパレスチナ人に暴行 拷問”国連など報告》[掲載日 2024年6月9日] から下に引用する.
《イスラエル軍はガザ地区での軍事作戦を続ける一方で、ハマスとの関連を調べるためなどとして、これまでに数多くのパレスチナ人を拘束しています。地元の人権団体によりますと、イスラエルとハマスの戦闘が始まった去年10月7日以降、ガザ地区ではこれまでに推定で4000人、ヨルダン川西岸では、9000人以上のパレスチナ人が拘束されたということです。
これについて国連などは先月釈放された人たちや医療関係者の証言などから、イスラエル当局が拘束したパレスチナ人に対し暴行や拷問を行っているなどとする報告書を公表しました。
報告書では拘束された人たちが、外部から隔離され、非人道的な状況に置かれているとしたうえで性的な暴行や激しい殴打、さらに犬にけしかけられる脅迫や水責めなどを受けていると指摘しています。
国連はパレスチナの人々に対する暴行や拷問などについて、徹底的な調査と再発防止のための措置を求めています。
……以下略》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
ガザ地区を拠点にしていたハマスが二百五十一人のイスラエル人を人質にした理由は,イスラエルがヨルダン川西岸の九千人にも及ぶ一般人のパレスチナ人を逮捕拘禁し,拷問と性的暴行の限りを尽くしていることへの報復である.報復というには,ささやかな抵抗であるが.
国際紛争における報復合戦に,喧嘩両成敗はあり得ない.
紛争当事者国のどちらに道理があるかと同時に,どちらが先に武力で手を出したかが重要だ.
その点では,ヨルダン川西岸を侵略して占領したのはイスラエルが先だった.侵略されたパレスチナ人はイスラエルの軍事力に抵抗できなかった.
そしてイスラエルはパレスチナ人の殲滅に乗り出した.領土拡張のためである.
こうしてイスラエルによる周辺国侵略と領土拡張は現在に至るのだが,国連報告も認めた「イスラエルによって一万数千人のパレスチナ人人質が受けている暴行と拷問」のことを,加害者である当のイスラエル政府とイスラエル国民はもとより,米英両国政府も全く知らぬふりだ.
というより,イスラエルの非人道的行為を,完全に容認している.これはいかに米英両国におけるユダヤ人の政治的圧力が強力であるかを示している.
バイデン大統領も本心ではイスラエルの非人道的行為に怒り心頭である (米国メディアの報道ではバイデンはネタニヤフに電話で「アメリカ大統領を甘く見るな!」と言ったと伝えられている;下記註) が,しかし民主党は,大統領選に勝つためには国内政治的な理由でイスラエルを支援せざるを得ないのだ.
(註) 読売新聞《バイデン氏、ハマスと停戦交渉進めているというネタニヤフ氏に「でたらめ言うな」「米大統領を甘く見るな」》[掲載日 2024年8月4日]
イスラエルの極右政権は最近,人種差別と民族差別,そして他国を侵略する国家としての性格をいよいよあからさまにしている.
イスラエルとヒズボラは,このところ小競り合いの状態にあったが,イスラエルは,ハマスを殲滅するにはヒズボラも同時に叩く必要があるとして,レバノンとイランに対する全面戦争を準備中だ.まずイランにいたハマス幹部を殺害し,次にレバノンを空爆した.
明らかに挑発であるが,イスラエルは,ヒズボラは攻撃したがレバノンは攻撃していないと言う.
イスラエルの屁理屈はいつもこれだ.
ガザ地区の住民を三万人以上も殺し,そのうちの一万人以上は子供たちであるが,イスラエルの理屈では,ハマスの戦闘員を殺しただけであると主張している.イスラエルは,普通の子供たちは殺していないと言う.死んだ幼い子供たちはハマスの戦闘員だったから殺害したというのである.
こんなばかげた論理を認めているのが米英両国だ.
一万人余の子供たちを殺したイスラエルの鬼畜の所業を,ジュリア・ロングボトム駐日英国大使は《自国を守る権利を行使》しているのだと主張しているのだ.
もとより米英と欧州各国の政府は「非戦闘員は殺さない」という考えを持っていない.
「戦争にもルールが必要だ」という戦時国際法 (ハーグ陸戦条約など) の思想は,絵空事に過ぎない.
かつて第二次大戦の最終局面のノルマンディー上陸作戦で,米英軍は上陸作戦支援を目的とする上陸前の空爆で,ノルマンディー地方の住民三千人を情け容赦なく殺した.そして米英が上陸した後,本来なら友軍であるべき米英連合軍に殺されたフランス国民は二万人にのぼる.(Wikipedia【ノルマンディー上陸作戦】)
石ころのように米英連合軍に殺された多くのフランス人たちのことは,未だにフランス国民の心にわだかまりを残していると言う.(Wikipedia【ノルマンディー上陸作戦】)
昭和二十年三月九日深夜から十日にかけての東京大空襲で無差別殺戮された日本国民の死者は約八万四千人に及んだ.(昭和三十七年警視庁史昭和前編)
ヒロシマの原爆投下で即死した非戦闘員市民は十四万人とされる.
ナガサキは七万四千人だ.当然だが,いずれも,被曝したことによる死者はこれに含まれない.
朝鮮戦争で米軍は.自軍兵士に十四万人の死者を出しつつも,七十二万人の中国民間人を殺した.
ベトナム戦争でアメリカに殺されたベトナム人は三百万人とされる.
その後,アラブ世界における戦争でもアメリカは非戦闘員を殺しに殺してきた.
国際法もへったくれもない.アメリカは非戦闘員を容赦なく殺害する.
今またガザ地区でイスラエルは一万人の子供たちを殺害したが,子供たちの頭上に降り注いだ爆弾はアメリカが供給したものだ.
その非道の国の駐日大使が,長崎の平和記念式典をボイコットして「ロシアは侵略する側で,イスラエルは侵略された側であり,同等に扱ってはならない」と述べて,G7各国およびEUの大使と歩調を合わせて長崎の式典をボイコットした.
しかし私たち日本人の目から見れば,ロシアもイスラエルも侵略者だ.
そして子供たちを集中的に殺しているという点からすると,イスラエルのほうがロシアより人でなしの極悪非道だ.
G7とEUが平和祈念式典に出席したくないと言うならそうすればいい.
彼らのホンネは「広島と長崎に原爆を投下したのは日本を降伏させるためであり,非戦闘員二十一万人を爆殺したのは戦争終結に必要な正しい行為であった」だ.
彼らがこれまで両市の式典に出席してきたのは外交上のオツキアイに過ぎない.(広島サミットでは,核戦争否定のシンボルである原爆資料館訪問に米英仏が強く抵抗したことを思い出そう)
だったらもう平和祈念式典に嫌々出席なんぞしてもらわなくても結構だ.世界中のあちこちで戦争をするがよい.
G7とEUは「イスラエルは侵略された側だ」というが,これからイスラエルがレバノンとイランに軍事侵入しても「イスラエルは侵略された側だ」と主張するのだろうか.
もしそうなら日本は,米英とEUによるウクライナ支援に協力するのをやめるべきだ.
戦争を仕掛ける国に与しないこと.これが日本が敗戦後に目指したことであるからだ.
余談だが,広島市市長は,職員研修の訓示の中で,皇国史観を象徴する教育勅語を引用するという皇国史観を持つ人物だ.
この広島市長は式典にイスラエルを招待して平然と「平和宣言」を読み上げた (つまりイスラエルの鬼畜のごとき戦争を免責したのだ) が,長崎市長は,イスラエルを招かぬことで平和に対する見識を示した.
かつてヒロシマは平和運動の拠点であった.
しかし今,広島市は皇国史観を持つ市長が市長の座にある.
この事実に,私は戦後昭和から令和に至る平和観の風化を観る.
米英とEUがイスラエル (ネタニヤフ政権の極右閣僚はガザ地区に戦術核兵器を投下する可能性に言及している) を擁護するのなら,私はウクライナを応援したくない.そこで今回からコラム末尾にウクライナ国旗を掲載するのをやめることにした.
それに代わり,生まれてから死ぬまで争い事と無縁だった愛犬 (昨秋没) の写真を文末に掲載することにした.
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