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2024年7月24日 (水)

タッチパネル /工事中

 マガジン9《雨宮処凛がゆく! 第684回:「時代についていけない高齢者」予備軍の一人として、タッチパネルにキレた高齢男性に思わず同情してしまう。の巻 (雨宮処凛)》「掲載日 2024年7月24日] から下に引用する.
 
《……
 おそらくタッチパネルを導入したこの店の利用客の年齢層は、明らかに下がるだろうなとも。
 ちなみにその店は、いつ行っても高齢のお客さんが多かった。それなのに導入したということは、ある程度、高齢の常連客離れも想定しているということなのだろうか。
 というか、最新機器を導入することによって一定の世代や層を排除することが可能、ということに気づき、ちょっと怖くなった。それが「悪用」された先には、どんな世界が待っているのだろう?
 そこで思い出すのは昨年知った、韓国のノーキッズゾーン
 韓国には、そのようなエリアが存在するらしい。その名の通り、お子様お断りの場所。カフェやレストランなどで掲げられているそうで、なんだかこの言葉の「強さ」に驚いたのだが、韓国にはノーシニアゾーンを掲げる店もあるという。
「子どもNG」なら、まだ安全のためとか理由が想像できる。が、高齢者お断りって、剥き出しの差別に思えるのは私だけではないだろう。
「でも、子どもも高齢者もいない場所でくつろぎたい」という人もいるかもしれない。
 しかし、特定の層を排除する場所は、あっという間にあなたを排除する場所になるだろう。
 そして突き詰めれば、多くの人が素敵だと思うような場所は、健康で清潔で、体脂肪率が一定以下で収入とルックスが一定水準以上の「誰もが素敵だと思う人」しか入れない、なんてことになっていくと思う。
 ……》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上の引用文中の《韓国のノーキッズゾーン》は,飲食店における子供が原因のトラブルで,訴訟案件が発生することを防ぐためのものらしい.
 訴訟については例えば朝鮮日報《「女性がドアを開けて待ってくれなかったからうちの子どもが手を挟まれた」 賠償請求に韓国ネット民から批判殺到》[掲載日 2024年7月26日] が最近の事件.
ノーシニアゾーン》は私は初耳だが,これが出現したのは,高齢社会の日本の後を追うようにして韓国も高齢化が進行しているからだろう.
 高齢社会,高齢化社会は,ただ単に年寄りの数が増えるのではない.いわゆるキレる年寄りが増えるのである.
 年寄りがキレるのは,科学的な説明がなされている.加齢と共に大脳前頭葉が萎縮し,そのために感情のコントロールが困難になって「不寛容」になるからだという.
 韓国のキレル年寄りのことはあまり頻繁には報道されないが,意識して報道を拾うと,日本と同様に韓国の年寄りもかなりキレているようだ.
 韓国の《ノーシニアゾーン》は,そういう迷惑な年寄り対策なんじゃないかと私は思う.
 この韓国の《ノーシニアゾーン》ほど明示的ではないが,日本でも「高齢者お断わり」の風潮は密かに進行している.
 それは,雨宮処凛さんが指摘するように,タッチパネルなどのデジタルツールが私たちの日常生活,とりわけ飲食店にかなり強引に普及させられている現状が示している.
 私の記憶では,飲食ではないが,カラオケ屋ではかなり昔から選曲はタッチパネルだった.
 その他には大手の回転寿司チェーンや居酒屋チェーンのタッチパネル導入も早かった.
 回転寿司店で,注文をタッチパネルで行い,注文した寿司が直行レーンで客の席に届けられる方式は,客にも店にもメリットがあった.店側としては,誰も皿を取らずにそのまま廃棄ロスになってしまう鮨を回転レーンに流すことを避けられる.
 客側としては,タッチパネル方式は食べたいものすぐ注文して食べることができるので歓迎だ.
 カラオケでは,これはもう圧倒的にタッチパネル選曲が便利である.
 タッチパネル方式が登場する前は,歌詞カードをクリアファイルにファイリングしたもの (若い人は目にしたこともないくらいの昭和レトロだ) とか,製本した歌詞本などを使って,歌いたい歌を探した.カラオケボックスにタッチパネル式が普及したら,歌詞カードのファイルは瞬く間に席捲された.
 カラオケや回転寿司のような初期のタッチパネル方式の導入は私たちに歓迎された.
 だが,居酒屋チェーンでのタッチパネル・オーダー方式は客側に何かメリットがあったのだろうか.
「とりあえずビールね」とか「今日のおすすめは何かなー」などという客と店員の会話がなくなっただけである.客は黙って酒と食いたいものをタッチパネルで注文し,暫くすると店員がやってきて酒肴の皿を無言で席に置いていく形になった.
 居酒屋チェーンの客層のうち,若い人たちは同僚知人たちの数人で居酒屋にやってきて,目的は仲間内の会話で楽しむことだから,店員との接触は端からする気がない.
 その場合は.タッチパネルを使って店員との会話なしに酒や肴を注文することにはメリットもデメリットもないから,それでいい.
 しかし年寄りたちは,オシボリで手を拭きながら「とりあえずビールね」の時代を生きてきたから,何か釈然としない.若い人たちに誘われても行く気がしない.そして行かなくなった.
 
 この辺りから,タッチパネルに老人排除の雰囲気が漂い始めた.
 それが明らかに目に見える形になったのは,スーパーのレジだ.
 
 

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