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2024年7月 4日 (木)

新紙幣狂騒曲 /工事中

 今日 (7/3) から新札が発行されると,NHKの朝のニュースが報じていた.
 山田アナが,埼玉りそな銀行の支店に朝っぱらから出向いて,支店長と新紙幣について話をしたところ,新紙幣をATMに入れるのは昼になるという.
 山田アナは「私がNHKで最初に新紙幣を見る人間かと思ったのですが残念です」とか言ったが,そんなに今回の新紙幣発行が価値あることなのか,視聴者には全く伝わらなかった.
 日本銀行によると二十年前 (2004年) の新紙幣発行時には一年間で約六割が新紙幣に入れ替わったという.
 日本銀行はルーティンとして,市中に出回っている紙幣を新しく印刷した紙幣に交換する作業を行っている.
 今回は,市中から日本銀行に戻って来る旧紙幣をどんどん新紙幣に交換するわけだから,そりゃ一年間で約六割が新紙幣に入れ替わるのもわかる.
 しかし新紙幣対応のために自販機界隈の業界は大変なコストを負担させられたという.
 
 今回はどうだろう.
 夕方の民放テレビニュースによると,老いも若きもATMや銀行の窓口に殺到して新紙幣を手に入れようと大騒ぎだった.
 中には窓口で分厚い札束を受け取っていた人もいて,その様子をカメラがとらえていた.セキュリティもへったくれもないなあと呆れた.
 評論家の加谷珪一氏によると,自宅に現金を保有している「タンス預金」が約六十兆円あるという.
 銀行の窓口で新紙幣の札束を手に入れた人は富裕層であり,きっと「タンス預金」の一部を新紙幣にしたのだ.
 だって,実際に使用するのなら旧紙幣でいいわけだから.
 
 またそのニュースでは,何万円もATMで新紙幣を手に入れた若い人にインタビューしていた.
 その青年が新紙幣を早速自販機に入れたところ,紙幣投入口からヌーと戻ってきてしまったことに驚いていた.
 飲料などの自販機はまだまだ新紙幣に対応していないということを知らなかったとみえる.
 若いくせにどんなに情弱なんだと,ニュースを見ていた私が驚いた.
 鉄道券売機や大規模小売店のレジでは既にほとんど新紙幣対応は済んでいるが,飲料自販機界隈の業界とか,大衆飲食店の食券券売機などは新紙幣対応はかなり遅れている (後述) とのこと.
 
 これは当然のことだ.新紙幣対応は後ろ向きの投資であり,付加価値を産まないからだ.
 例えば「新紙幣が発行されたからその記念に北陸観光にでかけよう」とは誰も思わない.
 旅行に行く人は新紙幣になろうがなるまいが旅行に行くから,鉄道会社にも旅行業者にも観光地にも,新紙幣発行は売上増をもたらさないのだ.
 また何かこの種の大規模イベントがあると必ず「経済効果は○兆円」とかいう狸の皮算用が出てくるのだが,その通りになった試しがない.
 莫大な経済効果を謳った東京五輪もそうだった.あれで日本経済が上向いたか.
 あの大騒ぎの後も,五輪後も国民の実質賃金は下がり続け,購買力も減った.国民は貧しくなった.
 今度の万博も同じ轍を踏むに違いない.
 なぜあの手のイベントの「経済効果」予測が,獲らぬ狸の皮算用に終わるのか.経済効果どころか,なぜ負の遺産として醜状を晒すのだろうか.
 それは,五輪や万博が単なる娯楽的な消費であって,生産性の向上に役立たないからだ.
 新紙幣対応も同じ.新しいデザインの紙幣が,日本の科学技術振興に役立つのか.
 先端工業製品どころか国内では日用品の不織布マスク一つまともに作れなくなって中国からの輸入に頼っている「物作り日本」を新紙幣で再興できるのか.
 繁華街に設置されていてそれなりの売り上げがある飲料自販機は別として,そうでなければ,新紙幣対応自販機への交換は投資の回収が難しい.だから新紙幣対応が進まないのである.
 ならば飲料自販機界隈の業界はどうしたらいいか.
 新紙幣対応をいっそのことやめてしまえばいいのだ.
 これまでも飲料自販機は,新五百円硬貨や二千円札への対応を無視してきたではないか.(ただし沖縄県は特殊で,二千円札が紙幣として使われているという)
 だったら今回の新紙幣も無視すればいいのである.
 飲料自販機や食券券売機は,少額硬貨とキャッシュレス決済専用にすればいい.
「紙幣は使えません」と貼り紙すればそれで済む.
 
 ローカルな路線バス会社も新紙幣対応に苦慮しているらしい.
 車内の両替機を新紙幣対応機に更新する費用のことだ.
 私は現役会社員の時から通勤にバスを利用してきたのでよく知っているが,小銭も交通系ICカード (モバイルを含む) も持たずに乗車し,降りる時になって五千円札を出して「両替してください」というやつがいるのだ.
 中でも悪質なのは,乗務員が「両替は千円札だけです」というと「これしかないんですよ,困ったなあ」とか言うやつだ.
 仕方なく乗務員が「今度乗った時に払ってください」と言うと,しめしめと嬉しそうに「わかりました」と言った.
 こいつは無賃乗車の常習者なのであるが,バス車内に「無賃乗車常連客」の顔写真を貼るわけにもいかないから困りものだ.
 こういう悪質な連中のことも含めた対応について,私は思うに,車内での紙幣両替をやめてしまえばいいのだ.
 報道によると,新紙幣の両替を申し出た乗客には「釣り銭引換券」を渡すアイデアがあるらしい.
 この「釣り銭引換券」はバス会社の営業所に持って行くと現金にしてくれるというのだ.
 新紙幣を相手にしないというのはなかなかよいアイデアだと思う.
 
 ファストフードやファミレスなど資金力がある業界は新紙幣に対応すればよいが,ラーメンとか蕎麦の小さな飲食店で券売機を設置している店は困っているだろう.新紙幣対応のために多額の投資が必要だからである.
 評論家はこういう無意味な投資を「経済効果」に勘定して騒いでいればいいが,その経済効果を負担させられる側はたまったもんじゃない.
 ならば,バスとおんなじで,こういう店も新紙幣を無視すればいい.券売機の紙幣投入口をガムテープでふさいで,使えるのはキャッシュレス決済と硬貨だけにすればいいのだ.
 政府はキャッシュレス決済を推進していたはずだが,それと新紙幣発行とは整合性が取れているのか,疑問だ.

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