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2024年7月

2024年7月18日 (木)

虐げられた者の側に立たない教員と教育委員会 それを放置する文科省 /工事中

 毎日新聞《不登校の小4に退学届要求 「就学義務違反」と誤解した区教委が陳謝》[掲載日 2024年7月17日] から下に引用する.
 
東京都目黒区の公立小学校で不登校になった男子児童が2023年、フリースクールに通うと決めた際、区教育委員会が保護者に対して「退学届」を提出するよう求めたことが判明した。不登校が理由の場合、フリースクールは学籍を残したまま通えるが、区教委が「就学義務違反になる」と誤った解釈をしていた。退学届を提出していたら中学校入学に支障が出た可能性もあり、区教委は不適切な対応と認め「申し訳ない」と陳謝している。
 男児の保護者などによると、男児は小学3年だった22年春ごろから同級生に暴力を振るわれるなどし、登校を渋るようになった。心配した保護者がフリースクールを探し、男児は小学4年の23年5月から区外のフリースクールに通い始めた。
 当初、保護者は学校側から「フリースクールに通っても学籍は残せる」と説明を受けたというが、1カ月後の同年6月、学校側が一転して保護者に電話で「二重学籍は認められず、退学届を出してほしい」と要求。驚いた保護者が区教委に問い合わせると「フリースクールに通わせることは就学義務違反に当たる」との説明を繰り返し受けたという。
 退学届を提出し、学籍が取り除かれた場合は就学義務を果たさないことになり、学区に関わらず公立中学校への入学が認められないなどの不利益が生じる可能性がある。保護者は「子どもを守ろうとしてくれないと感じ、ショックだった」と振り返る。
 保護者から相談を受けたフリースクールが区教委と交渉した結果、学籍を残すことになった。区教委の担当者は「不登校の場合は就学義務違反に該当しないのに、誤った対応をした。子どもの状況に合った判断ではなく、申し訳ない」と述べた。
 
 私はこのブログで何度も書いたが,教員の基本的な姿勢は「いじめられる生徒には,いじめられるだけの理由がある」というものである.
 クラスから異分子は排除する.これが教員の態度である.
 これは昔,私の子が学校でいじめられた際に,担任教員からはっきりと言われたことである.
 あれから数十年が経ったが,教育現場ではいまだに同じことが行われている.
 教員だけではない.教育委員会も同じ穴のムジナである.
 全国の学校で今日もいじめが行われているのは,生徒たちによる生徒へのいじめを是認する教員が,いじめの原因だからである.もっと悪い事には,自らいじめの先頭に立つ教員もいる.
 
 上の記事の例では,校長ならびに教育委員会が,フリースクールへ通う生徒を学校から排除することを目的として《二重学籍は認められず、退学届を出してほしい》と保護者に要求したのは,面倒ごとをなくしたいからである.
 いじめられる生徒を学校から排除すれば,いじめはなかったことにできるからだ.
 そして我が子の窮状を訴える保護者に「いじめられる側に,いじめられる理由がある」「
 こういう学校と教育委員会が全国に蔓延している.
 そして命を絶つ子供たちが後を絶たない.

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2024年7月16日 (火)

年金生活者のための激安PC /工事中

 現役会社員だった頃は,パソコンにちょっとおカネをかけていた.
 用途別 (音楽用,画像処理用,ウェブ閲覧用,ゲーム用など) にカスタマイズした数台が稼働していた.
 しかし年金暮しになると,そうも言ってられない.
 少し前に古い一台が寿命を迎えたのを機会に,これからは激安PCを使っていくことにしようと思ったのである.
 そこでアマゾンを物色していたら,Panasonic Let's note CF-SZ6 (Core i5, メモリ 8GB/SSD, ストレージ 512GB/SSD) の中古品が出品されていた.厚くて重い無骨な筐体の,昔は人気のあったマシンだ.
 商品説明には「整備済み品」と書かれていた.どんな整備をしたかは書いてないので不明だが,OSは Windows11 pro である.
 
 かつて Windows11 がリリースされた際に,Windows10 には無償アップグレードの特典があった.
 しかしすべての機種が無償アップグレードの対象ではなく,発売が2016年7月以前の製品 (自作マシンはまた別の話だが) はシステム要件が満たされていないため,マイクロソフトから提供されたチェッカーが「システム要件を満たしていません」と警告することがあった.
 ここで「ことがあった」というのは,このアラートを回避する方法があったからだが,詳細は検索されたい.
 いずれにせよ,今回購入したPanasonic Let's note CF-SZ6 は2017年秋冬モデルなので,Win11不適格モデルにWin11をインストールしたものではない.
 また,アマゾンのレビューに“「一般の会社が機種更新のために多数放出した中古マシン」を一括購入した中古品ベンダーが,ボリューム・ライセンスのOSを入れてバラ売りしてるのではないか”と疑っているユーザーがいたが,そう思うのであれば,確認してみればいい.(買う前に確認できないという大きな問題があるが)
 確認しないで文句を垂れている人の気が知れないが,確認方法はウェブにアップされているので探すのは容易だ.
 方法は簡単なワンステップだ.コマンドプロンプトに“slmgr /dli”と入力すると,ライセンスの種類が表示されるのだ.
 私の購入したLet's note CF-SZ6 を確認してみると,
 
 Windows(R), Professional edition
 Windows(R) Operating System, OEM_DM channel
 
 と表示された.
 つまりこのOSは正規品であり,ライセンスの問題はない.
 購入価格は約22000円.OEMライセンスのOSを搭載してこの値段であるから,良心的な中古機ベンダーであったということだ.
 きっと一台千円とか二千円で叩き売られたマシンに,OEMの Windows11 をインストールして,まだ充分使えるように再生したのだろう.
 
 ただし,アマゾンに出品している中古機ベンダーがすべと良心的かというと,その保証はない.
 またアマゾンで売られている激安品の中には,その機種の発売年が書かれていない場合が多いのだが,モニターとの接続端子がDVIだけしかない (エプソン,デル,HP など) なんて骨董品があって,こういうのは中古品にしても古すぎだ.
 OSのライセンス問題以前に,買ってすぐ不調になる可能性が高いから敬遠したほうがいい.
 といつつ更に物色を続けていたら,デルの中古で,何とまあ懐かしのシリアルポート搭載という機種があった.
 若い人はシリアルポートなんて見たことないのではあるまいか.レガシー中のレガシーだ.これくらいレアだと,欲しがっている人がいるような気がする.一体いつリリースしたモデルだろう.
 
 ところで,新品で激安ないわゆる「中華PC」はどうか.
 モニターの後ろ側に取り付けられるくらいの小型PCだ.
 実は四年前に,テレビに装着する目的で購入した激安「中華PC」をそのまま放置していたのである.
 これを引っ張り出して起動し,ライセンスの状態を調べてみたら,案の定ボリューム・ライセンスだった.
 既にご承知とは思うが,Windowsのライセンスは以下の通りである.
 ITmedia《あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック!》[掲載日 2023年10月20日] から下に引用する.
 
Windowsのライセンスにはどんなものがある?
 パッと見では分からないかもしれないが、Windowsには複数のライセンス(利用許諾)形態がある。具体的には、以下の形態が用意されている。
フルパッケージ(FPP)ライセンス:OSを“単体で”購入したもの
  ライセンスは購入者に付与
  いわゆる「パッケージ版」や「デジタルライセンス版」(※1)が当てはまる
 「リテール(Retail)ライセンス」とも呼ばれる
OEMライセンス:PCメーカーや販売代理店を通して供給される
  ライセンスはハードウェアに付与
  細かく分けると「DSP版」(※2)と「OA3版」(後述)の2種類がある
ボリュームライセンス(VL):法人に付与(販売)される
  その名の通り、法人がOSのライセンスを複数個用意する際に使われる
  ライセンスは法人に付与される(個人ユーザーは利用できない)
  EnterpriseエディションはVL限定となる
(※1)Microsoft Storeを含む一部のECサイトで販売されている、パッケージを伴わないFPPライセンス(インストールメディアはWebからイメージをダウンロードして入手:参考記事)
(※2)PCパーツ等と同時に購入する場合に限り購入できる(ライセンスは、セット購入したハードウェアに付与される

 
 ここで少し注釈をする.
 上の《(※2)PCパーツ等と同時に購入する場合に限り購入できる(ライセンスは、セット購入したハードウェアに付与される》は事実ではない.
 アマゾンで販売されている《DSP版》,例えば下のスクリーン・ショットの商品《Windows11向け DSPライセンス日本語 (Pro)》は,購入するとライセンス・キーだけが販売業者から送られてくる.
 DSP版の抱き合わせ販売商品は,この商品では不必要だということになっている.
 DSP版の建前上は,OSと同時に購入したDRAMとか懐かしのフロッピーディスク・ドライブをPCに組み込むことになっているが,事実上は単なる抱き合わせ販売であるため,セット販売しているパーツは実際に使用しなくても問題はなく,例えばPCの筐体に粘着テープなどで貼り付けておくだけで,ライセンス違反にはならないと,以前はいわれていた.「いわれていた」というのは,秋葉のショップ店員が客に小声でそう説明していたからである.
 さて実際の作業は,マイクロソフト公式サイトからWindows11のインストール・プログラムを,別途用意したUSBメモリにダウンロードし,このUSBメモリからPCを起動してインストールを開始する.
 すなわち《(※2)PCパーツ等と同時に購入する場合に限り購入できる(ライセンスは、セット購入したハードウェアに付与される》は事実ではない.
 かつて存在していた《PCパーツ等と同時に購入する場合に限り購入できる》という縛りが,現在でもDSP版のライセンス契約上は存在しているとしても,その条件を,このHOKUTO-STARという販売業者は無視している.
 
20240717a2
 
 上に示した商品は,DSP版のライセンス契約に違反している.
 私は若い頃,PC自作派だったので,秋葉原のドスパラでよくWindowsのDSP版を購入した.
 ドスパラは実店舗の店だからきちんとDSP版の販売縛りを守っていて,私は最小容量のメモリを一枚買ってOSを買ったものだ.
 そんな小さなRAMは実用品ではないので,私はPC筐体にそれをビニールテープで貼り付けていた.
 余談だが,当時,秋葉原電気街に近い神田明神ではPCの無病息災ウイルス退散を祈願する有難いお札「IT情報安全守護」を授与していた.
 メモリモジュールやCPUをデザインしたシールで,PC自作派界隈ではかなり有名なお守り札だった.(ITmediaNEWS《「何もしていないのに壊れた」に効く? 神田明神には20周年を迎えたITお守り「IT情報安全守護」がある》[掲載日 2022年4月22日])
 自作派は
 お守り札はさておき,現在でもこの抱き合わせ販売 (PCパーツ業界では「抱き合わせ」ではなく合法的だとの意味を込めて「バンドル」という) はDSP版購入の縛りになっている.
 ツクモの公式サイトの《DSP版とは?》には次の記載がある.
 
DSP版は、OEM製品のひとつで、PCを構成するパーツとセット(バンドル)の場合だけ購入が可能なOSです。一緒にご購入いただくパーツは、CPU、メモリ、HDD、SSD、マザーボード、DVD-Rなどのドライブ、拡張ボード、CPUクーラーなどで、DSP版 OSをインストールするPCに組み込んで使用していただく必要があります。
Windows 11 Pro 64bit DSP版 + 指定内蔵LANカードバンドル限定セット
 ¥26,400(税込)
 Windows 11 Pro 64bit DSP版 + 指定SSDバンドル限定セット
 ¥27,200(税込)》 
 
 正規のリテール版 Windows Pro はマイクロソフトストアで約24000円,Home は約17000円だ.
 それを勘案すると,ツクモのDSP版価格 (通販) は高いように思える.
 年金暮しでコスパ重視の私だったら,Home を買う.
 話を元に戻すと,上に示した HOKUTO-STAR という販売業者は,マイクロソフトと HOKUTO-STAR との契約に違反している.
 その違反をマイクロソフトが咎めるとすると,インストールした Windows11 を認証しないというペナルティを課することができるわけだが,実際には認証されている (アマゾンのユーザー・レビューを見る限りでは).
 私が思うに,もともとこの契約は,マイクロソフトの周辺でメシを食っているパーツ分野のサードパーティが,マイクロソフトに頼んで作ったものではないか.
 というのは,マイクロソフトには,そんな製品を売る義理はないからである.売るのは正規のリテール版だけでいいのだ.
 しかしパーツ業界は,パーツの販促ツールとして

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2024年7月13日 (土)

中国の危険な食用油

 Reuters《中国、食用油の燃料トラック輸送で汚染疑惑 当局が調査と報道》[掲載日 2024年7月10日] から下に引用する.
 
[北京 9日 ロイター] - 中国国務院の食品安全委員会は、食用油の輸送に燃料タンクローリーが使用されたとの疑惑が浮上し、食品汚染の恐れがあるとして調査を開始する。国営メディアが9日に報じた。
 国内紙の新京報は先週、穀物備蓄大手の中国儲備糧管理総公司(シノグレイン)の燃料タンクローリーが、食用油、大豆油、シロップなどの食品を洗浄を毎回行わずに輸送していたと伝えた。
 国営の中国中央テレビ(CCTV)は、食品安全委が国家発展改革委員会(NDRC)や国家食糧物資備蓄局などと特別協議を開き、調査を行うと報道。「違法企業と関連する責任者は法律にのっとり厳重に処罰され、容認されない」と伝えた。
新京報は食用油問題は輸送業界の「公然の秘密」とし、CCTVは「毒を盛るのに等しい」と伝えた。
 シノグレインは先の声明で、倉庫に出入りする運送業者が食品安全規則を順守しているか調査すると説明している。
 
 中国の富裕層は,中国製の食品が危険であることは重々承知だ.
 それ故,自分たちは自国製の食用油は絶対に口にしない.
 それは愛国心とか習近平と共産党にに対する忠誠とは別の話だ.当然だね.
 しかし情報弱者である中国の一般国民は,自国の食品は安全だと信じているからどんどん食べる.
 むしろ「日本の水産物は危険だ」と信じている.
 私たちにはどうにも理解しがたいのだが,隣国においては共産党に対する忠誠心は,食品の安全より上位にある.
 
 中国の食用油が危険なのは昔からのことで,上に引用した記事に書かれている《食用油の輸送に燃料タンクローリーが使用》されているのは日本では周知の事実である.これは中国の食品企業が,私がまだ若かった四十年以上も前からやってきた公然の秘密だ.だから私にしてみれば「中国人はまだそんなことをやっているのか,懲りない連中だなあ」と思うしかない.
 しかし当の中国人にしてみれば「タンクローリーを洗浄なんかしていたらコストアップするじゃないか!何か問題あるのか!」ということだ.彼らにしてみれば「燃料油で汚染された食用油よりも,日本産の水産物のほうが余程危険ではないか」ということなのである.
 日本のニュースでは,この汚染食用油の問題について《国民から激しい怒りの声が上がっている》(JIJI.COM《灯油運んだタンクローリー、洗浄せず食用油を輸送 中国》)などと報じられているが,その怒りの声が次々にSNSから削除されている (無論政府よって) と報道しているメディアもある.
 ほんとのところはどうなんだろう.
 私は,中国の国民は食品安全にそれほどの関心はないとみている.政府が「日本の水産物は危険だ」と言えば何も考えず調べもせずに「そうだそうだ」と大騒ぎする程度の関心レベルだ.
 十年ほど前に大騒ぎになったあの「どぶ油 (地溝油)」だって,今の人々は無関心だ.事件後の今も時折摘発されることはあるが,もう誰も騒いだりしない.騒いでも,中国の食品が安全になることはないと,誰にもわかっているからだ.
 
Wikipedia【地溝油】
地溝油 (ちこうゆ、英: Gutter oil, sewer oil、中国語: 地沟油 / 地溝油、拼音: dìgōu yóu, 餿水油 (sōushuǐ yóu)) とは、主に中国において闇市場で流通している再生食用油のこと。工場などの排水溝や下水溝に溜まったクリーム状 (あるいはスカム状) の油を濾過し、精製して食用油脂として使われる油。日本では下水油 (げすいあぶら) と紹介されることも多い。また、ドブ油 (どぶゆ) などとも言われる。
 地溝油の収集、処理、再販売に特化した違法なサプライチェーンが、中国の規制当局によって発見された。中国の複数の高級レストランが、不法にリサイクルされた地溝油で調理していることが判明している。2012年に中国政府は、中国の製薬会社がセファロスポリン系抗生物質の製造の前駆物質として地溝油を使用したとして非難した。中国においては、石鹸、ゴム、バイオ燃料、プラスチック、化粧品などの製品を製造するための原料としても地溝油が使用されている。上海市では、2,000台以上のバスが地溝油から作られたバイオディーゼルで走っていたと報告されており、上海の多くのガソリンスタンドは地溝油から部分的に作られたガソリンを提供していた。
 販売価格が正規の食用油の半額以下の価格であるため、地溝油ビジネスは2011年時点で年間2億元もの規模にまで成長しており、中国では社会問題化している。2011年には、中国のレストランで使用されている油の約1割が再生油であると推定された。中国の一部の露店やレストランにおいては、食用に適さない再生油を違法に使用して食品を調理したと報告されており、中国政府によるそのような施設に対する取り締まりへとつながった。2014年には地溝油を製造している2つの製造業者が北京市工商局によって摘発され、2.3トンの地溝油と違法な製品が発見されたことを人民日報が報じている。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った.以下も同じ)
 
 なぜこんな危険な食用油が流通しているかというと,「どぶ油」の製造や販売をしている人々は「どぶ油」の流通経路とかメーカー名,商品名を承知しているから,自分や家族が間違って買ったり食べたりしないように気を付けているからである.
 これについてWikipedia【地溝油】には次の記述がある.
こうした危険な油が蔓延する背景には、下水から地溝油の製造に携わる人々の平均月収がエリートサラリーマン並の1万元にもなり、原料の収集から製造工程も含め地溝油で生計を立てている人々が多数存在することなどがある。購入する外食業者側も、調理に使って売却すれば自分の口には入らない
 
 飲食店側は《調理に使って売却すれば自分の口には入らない》から平気だ.
 地溝油を使用した料理を食うのは何も知らない客たちであって自分たちではないから,地溝油の使用をやめようとはしない.
 しかも,燃料油も地溝油も一緒くたに,同じタンクローリーで運ぶのだ.
 燃料油ならまだマシで,劇毒物だったりする可能性が捨てきれない.
 それくらい中国という国とその国民は,ヤバイのである.
 自分さえよければ他人がどうなろうと知ったことか.これが,かつて社会主義国であった国の国民の到達点なのである.
「一人は万人のために,万人は一人のために」(ソビエト共産党綱領) を標語にして経済的に平等な社会を目指した国々が,悉く「万人は一人のために,その一人は自分のために」となってしまったのは,そもそも経済的平等という概念にそうなる必然性が孕まれていた,というような話はさておき,「中国のヤバい油」は地溝油だけではない.
 
 日本ではあまり馴染みがないが,中国から東南アジア諸国では比較的メジャーな植物油に落花生油がある.
 中華料理では多用される食用油だ.
 この油自体に危険性があるのではないが,原料の落花生はアスペルギルス・フラブス (Aspergillus flavus) などのカビが増殖しやすく,アスペルギルス・フラブスの生産する猛毒 (アフラトキシン) が油溶性であるため,製品の落花生油を汚染することが多い.
 しかし地溝油の例にみられるように,中国という国は食品の安全性に関心が薄いから,アフラトキシンに汚染された落花生油が堂々と流通しているのが現状だ.
 
 さて話はここからである.
 私が大学の農学部を出てから,豊年製油という食用油メーカー (今はもう消滅している) に就職したことは別稿に書いた.
 この豊年製油の油脂販売部門が昭和六十二年,中国産の落花生油を輸入して家庭用に販売する企画を立てた.
 豊年製油には一応研究所があったのだが,食用油部門は食品安全には全く関心がなく,技術者には何の相談もなく中国産の落花生油を輸入してしまった.荷姿はドラム缶で,これを卓上用のガラス小瓶に充填して家庭用新商品とした.
 落花生油はそれほど知名度が高くないが,「中華料理に最適」という触れ込みだった.
 販売エリアは東京と大阪のみであったと記憶している.
 
 販売開始してから暫くして,味の素株式会社の研究所員から豊年製油の技術部 (清水工場内) のIさん (当時技術部の管理職だった先輩社員) に緊急の私信が入った.
 二人は植物油業界団体の技術部会の委員で,親しかったのである.
 緊急私信とは,味の素の研究所が,東京の店頭で販売されている食用油を買い上げて諸項目について分析を実施したところ,豊年製油の家庭用落花生油からアフラトキシンが検出されたという内容であった.
 連絡をくれた味の素の研究所員は,植物油中のアフラトキシン分析法を親切に豊年製油のIさんに教えてくれた.
 それは,当時はまだあまり普及していなかった微量有機化合物の分析法で,高速液体クロマトグラフ (略称高速液クロ) 法といった.
 豊年製油の技術部では低感度の公定法 (薄層クロマトグフ法) は可能だったが,高速液クロ分析はできなかったので,Iさんは味の素社が開発したアフラトキシン分析法のプロトコル (指示書) 私の研究室に持ってきて,問題の落花生油に含まれているアフラトキシンを分析して欲しいと言った.
 私はすぐにそのプロトコルに従って高速液クロ分析を実施した.試料は,大阪と東京に出荷されて店頭にある豊年の落花生油である.
 プロトコルに従って実際にやってみると,味の素社が開発したアフラトキシン分析法は,感度が高くてしかも定量性に優れていた.
 しかし問題の豊年製油製の落花生油について言えば,高感度性は必要なかった.
 なぜなら,国が定めたアフラトキシン規制値の数百倍もの濃度の多量のアフラトキシンが検出されたのである.
 驚いた私はただちにこの結果をIさんに報告した.Iさんは,輸入して既に出荷してしまった中国産落花生油が法違反であることを本社に報告して対策を立てると言った.
 それからしばらくして,私はIさんに「例のアフラトキシン汚染落花生油の件はどうなりました?」と訊ねた.
 Iさんは苦渋に満ちた表情で,本社が決定した驚くべき「対策」を私に答えた.
 
 昭和の終わり頃,コープ神戸は食品の安全性に強い関心を持っていて,阪神圏の店頭から種々の食品を買い上げて,食添などの分析を実施し,違法性があれば公表していた.
 従って,遅かれ早かれ問題の家庭用落花生油がアフラトキシン汚染されていることは,コープ神戸が分析して結果は公表されるだろう.
 営業部門は,阪神圏の小売店や問屋に適当な理由をつけて製品を回収した.
 そこまではまともな対応であったが,そのあとが酷かった.
 技術部のIさんは,営業部門を束ねる筆頭専務である嶋雅二 (のちに社長) に,店頭から回収した油の処理方法を具申した.廃油から石ケンを製造する業者に売って処分するのがよいという案を稟議書にして嶋の部屋に持って行った.アフラトキシンはアルカリで分解されるからである.
 稟議書の説明を聞いた嶋は,Iさんを「これだから技術屋はバカなんだ」と叱責した.
 Iさんによると,嶋は「回収した油を廃棄したら丸損じゃないか.こういうことはバレなければいいんだ.大阪で店頭から引き上げた製品は,東京で売ればいい.それなら損はない.お前たち技術屋はそういう損得勘定ができんのか!」と罵倒したという.
 そう言うと嶋は,Iさんが書いた稟議書を床に放り投げた.
 Iさんは役員室の床に膝をついて,散らばった稟議書を拾った.
 
 結局,アフラトキシンに汚染された中国産落花生油は,首都圏ですべて売りさばいたと聞いた.
 こうして図らずもIさんは,嶋雅二という悪徳経営者の違法行為に屈服することになったのである.
 
 今と違って労働力市場は流動的でなく,転職は容易でなかった.
 いったん会社に入ったら,経営者の命令に異を唱えることは,クビを覚悟するのでなければ,できない相談だった.
 内部告発という言葉すらまだなかった時代だ.心ならずも法の遵守を果たせなかった会社員として,Iさんは無念だったであろう.
 Iさんも嶋も,既に物故して久しい.私はIさんの供養の意味で,嶋雅二の犯罪をここに記しておく.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


 

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2024年7月10日 (水)

恥ずかしいことに東陽証券の杉野光男は大卒で著書もあるのに無知だ どんな本だよ

 中国の古い格言に「下井投石」がある.これは「井戸に落ちた者に石を投げつける」という意味で,欧米流のフェアプレイ精神なんぞには価値を認めない中国人の国民性を示している.
 もしそうでなければ,格言として今に伝えられてこなかっただろう.つまり中国人にとってフェアプレイ精神は建前に過ぎず,ホンネは「勝負事は勝ちゃいい」のである.花より団子,勝ってナンボ,儲けてナンボだ.そしてそれは日本人だって同じである.
 しかし中国人全員がホンネ主義者かというとそうではないようで,評論家の林語堂は,中国の週刊雑誌「語絲」(1924~1930) に「フェアプレイ (費厄溌頼) とは下井投石を肯定しないことだ」と書いて,中国人のアンチ・フェアプレイ精神を批判した.
 ところがこれに魯迅が横やりを入れた.というか,林語堂の文章を歪曲して反論した.
 林語堂の元の文章は「フェアプレイ (費厄溌頼) とは『不下井投石』だ」なのに,魯迅はこれを「林語堂は,フェアプレイとは『不打水落狗』だと言っている」と書いたのである.
 私は中国語ができないので,林語堂と魯迅の論争の詳しいことはわからないが,識者の解説によると,魯迅は「不下井投石」を「不打水落狗」にすり替えたのである.
 相手の言葉を別の言葉にすり替えて叩くのは論争の常套手段だから,魯迅は林語堂の言葉を意図的にすり替えたのであろう.まことにフェアプレイ精神に反するアンフェアな手口であるなあ.魯迅は論破王かよ.w
 つまり,誤解している向きがあるらしいが,「打水落狗」は中国の古い言葉とか故事格言ではなく,魯迅が勝手にこしらえた言葉である.
 
 さてこれに私の註釈を加えると,魯迅の言葉「打水落狗」の「狗」は,シーズーとかトイプーなどの実際の犬ではない.
「権力の走狗」の「狗」である.革命の敵だ.
 林語堂も魯迅も,動物の犬の話をしているのではない.革命論争をしているのである.
 つまり魯迅は,革命闘争においては暢気にフェアプレイ精神などと言っている場合ではない,敗北して水に落ちた走狗 (階級敵) は二度と立ち上がれぬように完膚なきまでに叩けと言っているのだ.
 そうしないと,死に損なった走狗は息を吹き返して再び噛みついてくるぞと魯迅は言っているのである.
 これに対して林語堂は「私たちが攻撃すべきは思想であって,人それ自体 (革命闘争の敗北者) ではない.敗北者を追い詰めるのはフェアでない」と言ったのである.これが魯迅と林語堂の「打水落狗」論争の骨子だ.
 
 と,ここまで述べて,魯迅の言葉「打水落狗」に関する最近目にした一つの誤解について書く.
 小池知事が圧勝した今回の都知事選挙に関する,ひろゆき氏の発言のことである.
 下にひろゆき氏の投稿のスクリーン・ショットを示す.
 
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 実は私たち年寄りは学生時代に「打水落狗」を日本語化した「水に落ちた犬を叩け」を,学生運動活動家のアジテーションでよく耳にしたから,割とよく知っている.この「犬」は政府だったり対立するセクトだったりするが,要は敵とは徹底的に対決しなければいけないという意味だ.
 だから,上に引用したひろゆき氏の《池に落ちた犬は叩け》は,米山隆一氏のおかげで無知無教養がバレて論破王の座から失脚したひろゆき氏らしい間違いだなあ,と思ったのだが,一応調べてみた.
 すると,ひろゆき氏の他にも,正しくは「水に落ちた犬を叩け」を,勝手に言い換えて「川に落ちた犬は叩け」とか何とかウェブに書いている無教養者がいることがわかった.水があるところには違いないが,原文は水だ.それなのに池とか川とか,そんな語がどこから出てきたのか不思議だ.
 そういうやつは書く前に「調べる」ことをしないから,きっとこの言葉が魯迅のものだなんて知らぬに違いない.
 たぶん,ひろゆき氏も無教養者の一人だから,魯迅の言葉がソースだなんて知らないだろう.ああ恥ずかしい.
 
 だが世の中は広い.
 ひろゆき氏よりもっと無知なのがいるのだから面白い.
 それは,東陽証券のサイトで「中国株コラム」を執筆している東陽証券株式会社主席エコノミストの杉野光男という人物である.
 同社のサイトに掲載されているプロフによると,氏は一橋大学商学部卒 (1974年) で, 三菱信託銀行 (現三菱UFJ信託銀行) 入社,上海華東師範大学へ留学,同行北京駐在員,上海駐在員事務所長,理事中国担当部長を経て2007年から現職だとのことである.
 著書に「日本の常識は中国の非常識」(時事通信社),「中国ビジネス笑劇場」(光文社) 等がある.
 年齢非公表のようだが大学卒業が1974年だから,私とほぼ同世代だと思われる.
 中国関係の仕事一筋に生きてきた杉野氏がどんなことを書いているか,同社サイト掲載の《ひと息コラム『巨龍のあくび』第197回:水に落っこちた張さん》から下にテキストとスクリーン・ショットで引用する.
 
中国の故事に曰く、「打落水狗(=溺れる犬は石もて打て)」と。一説によると、本来のことわざは「“不”打落水狗(水に落ちた犬を打つな)」、つまり卑怯な真似はやめようと云う格言を、魯迅先生が「論『費厄溌頼』応該緩行(“フェアプレイ”はまだ早い)」と云う題名のエッセーのなかで、皮肉を込めてひっくり返して使ったのが由来だとか。最近中国や北朝鮮・韓国が執拗に日本を批判しているが、日本は野蛮国で、自分たちは悠久の儒教文化を有する立派な文明国と思っているようだ。だから、水に落ちた犬を小突きまわす伝統が、あの国々にはあるはずがないと、つい先日まで思っていたのだが・・。年の瀬に突然飛び込んできた北朝鮮ナンバー2の張成沢国防委員会副委員長の粛清事件には驚いた。(以下省略)》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った/以下も同じ)
 
20240711a2
 
 杉野光男氏は,中国関係のコラムを堂々と執筆公表しておきながら,まるっきりの嘘デタラメを書いて平然としておるなあ.どういう神経なのか.
 まずその嘘の第一は《中国の故事に曰く、「打落水狗(=溺れる犬は石もて打て)」と》だ.
 杉野氏が書いている《打落水狗》は間違いで,正しくは「打水落狗」だ.原典を知らないのがモロバレだし,銀行で中国担当部長だったのに,中国語を間違うって,どういうことだよ.
 しかも魯迅の言葉だから,《故事》ではない.もしかすると日本語も不自由なのか.
 Wikipedia【故事】には《故事(こじ)とは、大昔にあった物や出来事。また、遠い過去から今に伝わる、由緒ある事柄。特に中国の古典に書かれている逸話のうち、今日でも「故事成語」や「故事成句」として日常の会話や文章で繁用されるものをいう》と解説されている.
 近代人の魯迅の言葉が「故事」であろうはずがない.馬鹿なことを言うな,この無教養者めが.
 杉野氏は《一説によると ……が由来だとか》などと出所不明の伝聞形で曖昧な書き方をしているが,《だとか》とか書いてる暇があったら,とっとと岩波文庫を買ってきてちゃんと調べんかい,このあほんだら.あ,そうだ.あほんだらに氏を付けるのは日本語としてよくないから,以下は杉野と書く.
 で,嘘の二つ目.杉野は《本来のことわざは「“不”打落水狗(水に落ちた犬を打つな)」、つまり卑怯な真似はやめようと云う格言》と書いているわけだが,そんな格言は存在しない.
 あるのは魯迅の「打水落狗」だけである.しかもそれは昔からある格言なんぞではない.魯迅が林語堂を批判するために新たに作った言葉である.杉野は中国関係の仕事を生業にしてきたのに,そんな知識もないのか.これまでよくそれで商売ができたな.私は理系学部の出身の技術者だが,魯迅の「打水落狗」は知っている.杉野は一橋大学卒業だそうだが,学生時代に何を勉強してきたのだ.一橋大卒とか,聞いて呆れるぞ.
 ひろゆき氏は中国関係のことを商売にしたことはないから,中国の近代史について無知でも他人に迷惑をかけたわけではない.だから魯迅の言葉を間違ってSNSに書いても責める人はいないだろう.
 だが杉野は違う.魯迅のことは知らないし中国語も怪しい.それなのにこれまで中国の専門家のようなフリをして顧客を信用させてきたのは罪が深い.大いに責められるべきである.
 そんな杉野だが,今からでも罪滅ぼしに勉強したらどうか.
 メディアが蓮舫氏を「打水落狗」のように叩いていることについて調べていたら,最新の論文をみつけた.
 工藤貴正《周氏兄弟研究第1号 「五四」後の知識人の責任―「フェアプレイ」論を巡る魯迅・周作人・林語堂の言説を視座に》[掲載日 2023年年3月] がそれだ.論文の冒頭を下に引用する.
 
論文摘要:本稿では、「五四」後の知識人が社会に負うべき責任という観点から、中国の「文化伝統」に大きな闘争と動揺を巻き起こしたとされる「ボルシェヴィズム」と「自由主義」に関わり、『語絲』派の知識人の周作人が投げかけた「水に落ちた犬を打つ」(打水落狗)「フェアプレイ」(費厄溌頼)という二つの用語の波紋は、表面的には魯迅と林語堂の論争という形式を通して、前者が「反自由主義・反中庸主義」の戦闘精神を比喩した「ボルシェヴィズム」(共産主義)陣営を鼓舞する標語として、後者は「自由主義的中庸主義」の曖昧な精神を風刺した「自由主義」(資本主義)陣営を批判する標語となるも、その後は、「二つの階級」「二つの路線」の闘争を表す標語となるに至った。そこで、殷海光の「知識人」論と「自由主義」「ボルシェヴィズム」論を援用しながら、この二つ用語が中国の知識人に投げかけた問いへの考察を試みた。
 キーワード:「水に落ちた犬を打つ」(打水落狗)、「フェアプレイ」(費厄溌頼)、魯迅、周作人、林語堂、殷海光理論
 
(以下本文)
 はじめに
 ……》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った/以下も同じ)
 
 ひろゆき氏も,「水に落ちた犬は打て」は《大人の日本人の考え方じゃない》とかいう問題ではなく,隣の国における《
「反自由主義・反中庸主義」の戦闘精神を比喩した「ボルシェヴィズム」(共産主義)陣営を鼓舞する標語》なのだということは覚えておこう.
 
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2024年7月 9日 (火)

選挙結果を分析しても「蓮舫候補者が生理的に嫌われていたから」とは言いにくいだろう

 読売新聞《都知事選、蓮舫氏の大敗に立憲民主党内で衝撃広がる…「共産色強すぎた」との指摘も》[掲載日 2024年7月8日] から下に引用する.
 
立民の大串博志選挙対策委員長は7日夜、党本部で記者団に対し「非常に厳しい結果となった。(報道機関の)出口調査を見ると、無党派層に対する訴求が弱かった。これがどういう要因から出ているのかは、しっかり分析しなければならない」と語った。
 立民は都知事選を「与野党対決」と位置づけ、泉代表や岡田幹事長ら党幹部を連日投入。自民の「政治とカネ」の問題に照準を合わせたが、政権批判票の受け皿にはなれなかった。
 一方、立民とともに全面支援した共産党が蓮舫氏の顔写真を載せた政策チラシを配布するなど、選挙戦では共産の影響力も目立った。立民内では「『共産色』が強すぎて無党派層の支持が逃げたのが敗因の一つだ」との指摘が出ている。
 
 蓮舫氏の敗因について,タレントの東国原氏はTBS系《ゴゴスマ-GO GO! Smile!-》で《今回の敗因はいろいろ言われてます。共産党を前に出しすぎとか言われてますけど、蓮ちゃん、生理的に嫌いな人が多いと思います》と語った.
 ただし,友達でも何でもない東国原氏に「蓮ちゃん」呼ばわりされて,蓮舫氏は怒り心頭だ.
 とはいえ東国原氏の指摘の通り,蓮舫氏は,無党派層の若い有権者に「生理的に嫌われている」から,石丸とかいうインチキくさい男の後塵を拝する惨敗を喫したのだと私は思う.彼女がいくら有能でも,嫌われ者では選挙で当選できない.
 無党派層という人々は,政策なんかどうでもよくて,ただただもう好きか嫌いかで政治家を評価するのだ.
 それを自覚していたから,蓮舫氏は街頭演説で「若い人」を連呼したのだろうが,たぶんそれでますます嫌われた.
 
 若い人に生理的に嫌われたのは,例の《二位じゃダメなんですか》が決定的だった.
 実はあれで私も蓮舫氏が生理的に嫌いになった.w
 私が都民だったら,石丸は論外だが,蓮舫氏よりは古たぬきの小池現職知事を選ぶ.
 たとえ神宮外苑の樹々が切り倒され,三井不動産と都庁幹部とのカネ儲け癒着が激しさを増しても,現職小池氏のほうが,スパコンという日本の未来の夢に係るプロジェクトを平気で潰そうとした蓮舫氏よりもマシだからである.(参考資料;デイリー新潮《「都幹部14人が天下り」「三井不動産が儲けられるようにお膳立て」 東京都と同社の“癒着”に、現役都議は「これほど怪しい話はない」》[掲載日 2024年7月6日])
 
 選挙結果について大串選対委員長は《無党派層に対する訴求が弱かった。これがどういう要因から出ているのかは、しっかり分析しなければならない》と述べたが,しっかりと分析したら困るのは立憲民主党自身だ.
 分析結果が「候補者が嫌われ者だったから敗けた」ではお話にならない.
 それなら的外れでも《共産色が強すぎて無党派層の支持が逃げたのが敗因の一つだ》とでもしておくのが無難である.
 いずれにせよ私は東京都民ではないから,都庁幹部の天下り問題には傍観者に過ぎないが,神宮外苑の樹々の受難は残念だ.
 この問題では,これまで世論の反対があったから三井不動産も多少の遠慮はしてきたが,小池知事の再選によって,もう遠慮する必要はなくなった.計画を変更して再開発のために並木を全部切り倒しても「都民の支持を得ています」と言うことができる.
 私ら年寄りは古い東京の景観が変わってしまうのは残念だが,東京の若い人たちが,公務員に天下り先を与えて都政を操るという三井不動産の汚いビジネスを容認するというなら致し方ない.
 それにしても「三井のすずちゃん」には,これまで以上に三井不動産の汚いイメージが強くなってしまった.
 これでは,彼女がこれからも清純派でやっていくのは大変になるんじゃないかと同情する.
 才能ある女優さんが,カネのために汚い企業イメージのCM仕事を受けるのはやめたほうがいいと私は思う.
 
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2024年7月 7日 (日)

ジュリー・ロンドンの水色のドレス

 昨朝放送のNHK《あの人に会いたい 八代亜紀 (歌手) 》[初回放送日:2024年7月6日] を観て,昨年亡くなった彼女を懐かしんだ.
 
 橋本明代は昭和二十五年八月生まれで,義務教育の学年は,早生まれである私よりも一学年下であった.
 彼女が「なみだ恋」の大ヒットで一躍世に知られたのは昭和四十八年 (1973年) のことであった.
 レコード歌手としてのデビューはその前々年の昭和四十六年 (1971年) の「愛は死んでも」であったが,後にNHKの番組で自ら語ったところによればこれは全く売れなかったそうだ.
 
 橋本明代は小学校五年生の頃,ジュリー・ロンドン (Julie London,1926年9月26日 - 2000年10月18日) のアルバムを父親に見せてもらった.(これについては後述)
 このアルバムのジャケット写真では,ジュリー・ロンドンはピッタリとフィットしたロングドレスを着ていて,それを見たとたんに彼女は「私はこういう仕事をするんだ」と決めたという.
 早熟な少女であった彼女は,中卒で就職した会社をすぐ辞めて,年齢を偽って地元のクラブで歌い始めた.
 だがこれはすぐに親にバレて勘当されてしまった.
 しかし家を追い出された彼女は単身上京し,アルバイトをしながら歌唱の基礎を学び,やがて銀座のクラブで歌うようになった.
 彼女自身の希望はクラブ歌手だったが,同じクラブで歌っていた五木ひろしの紹介で芸能プロダクションに入り,やがてレコード・デビューする.上に記したようにデビュー盤は「愛は死んでも」で,芸名は八代出身の明代から八代亜紀とした.
 NHKの番組で八代亜紀が思い出を語ったところによれば,彼女が父親に見せてもらったアルバム,すなわち昭和史に名を刻んだ歌手八代亜紀を生んだジュリー・ロンドンのアルバムは,初期の名盤“Sophisticated Lady”である.これは彼女のアルバムを代表する一枚だ.(現在はCD化されたエディションが入手できる
 このアルバムの最初のプレスがリリースされたのは1962年であり,《あの人に会いたい 八代亜紀 (歌手) 》の中で彼女は小学校五年生頃だったと語っているが,実際には彼女は小学校六年生であったから記憶違いと思われる.
 オリジナルのジャケットに使われたジュリーロンドンの「ピッタリとフィットした」水色のドレス姿は,後年にリリースされたベスト盤や現在のCDジャケットに継承されている (《あの人に会いたい 八代亜紀 (歌手) 》ではベスト盤のジャケットが画面に映しだされたが,これは八代亜紀が父親に見せてもらったアルバムではない.放送時にテロップでその旨の断りを入れるべきだった).
 
 昭和四十七年に東大農学部を卒業し,同じ講座の先輩に 騙されて リクルートされて,豊年製油という万年赤字のボロ会社 (後に他社に吸収されたため現存しない) に就職した私は,入社前には研究所に配属されるという人事課長との口約束があったのだが,研究員採用という約束は見事に反故にされて,ド田舎の静岡県清水市 (現静岡市清水区) の工場に配属された.
 その先輩 (私をリクルートした数年後にがんで亡くなった) も人事課長も嘘つきなのであった.
 後にこの人事課長は役付き役員にまでなったが,自分が退任する時に私のところに来て「あの時は君を騙して申し訳ないことをした」とわざわざ詫びた.嘘つきだが,人事の管理職は新卒採用の際は嘘をつくものなのであり,悪いひとではなかった.
 私は,工場では毎日朝八時に実験室に出勤し,一日中,頭を使わないルーチンワークに従事した.
 先輩社員に,私がこの小さな実験室に配属された理由を教えられたのだが,実験室アシスタントの若い女性が退職するので本社に補充を申請したら,私が配属されてきたのだという.つまり若い女の子の穴埋めだったのである.
 今日やったことが知識経験となって明日の役に立つという仕事ではなかったから,俺は何のために大学を出たのかと,正直なところ精神的に参った.
 その日暮らしの生活に腐った私は,夕方の四時に仕事が終わると,そのあとは飲み屋に直行するようになった.
 清水市という人口の少ない田舎町は,商店街は今でいうシャッター商店街で寂れていたが,しかし赤提灯が並ぶ飲み屋の横丁は一丁前にあった.
 給料は,初任給が四万三千円で,独身寮費が八千円 (食費込み) だったが,寮費を払った残りで,丸善出版から出ていた『実験化学講座全32巻』を買い揃えようと思って数冊を書店に毎月注文し,残りはすべて飲み代になった.
 そんな荒んだ日々が一年過ぎた頃,行きつけの飲み屋の有線放送で特徴的なハスキーボイスの歌手の歌がよく流れるようになった.
 店の女将さんに聞いたら,その曲は「なみだ恋」で,歌手は八代亜紀だという.
 その年の紅白歌合戦に登場した八代亜紀は華やかな容姿と大人びたハスキーな声で,とても私と同い歳には見えなかった.
 以後,私は八代亜紀の大ファンとなった.ボーナスをはたいてソニーのステレオを買って「なみだ恋」を聴いた.
 後年に私は思ったのだが,少女時代にジュリー・ロンドンの水色のドレスを見て「私は歌手になる」と決め,ひたすらそうなるべく生きた八代亜紀と,仕事が詰まらないくらいのことで挫折し,赤提灯で飲んだくれていた私とでは人間のデキが違うのであった.
 そんなことを思いつつ,NHK《あの人に会いたい 八代亜紀 (歌手) 》[初回放送日:2024年7月6日] を観て,昨年亡くなった彼女を懐かしんだ.
 
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2024年7月 4日 (木)

似非左翼を賛美したひと /工事中

 NHK《旧優生保護法は憲法違反 国に賠償命じる判決 最高裁》[掲載日 2024年7月3日] から下に引用する.
 
旧優生保護法のもとで障害などを理由に不妊手術を強制された人たちが国を訴えた裁判の判決で、最高裁判所大法廷は、旧優生保護法は憲法違反だとする初めての判断を示しました。
 そのうえで「国は長期間にわたり障害がある人などを差別し、重大な犠牲を求める施策を実施してきた。責任は極めて重大だ」と指摘し、国に賠償を命じる判決が確定しました。(以下略)》
 
 私は,最高裁もやるときはやるんだ,と感動した.
 私はもちろん今回の最高裁判決を支持するものだが,実は私たち戦後すぐに生まれた世代と,その少し下の世代は,おぞましい優生保護法の影響下に教育を受けてきた世代でもある.
 これについて,テレ朝news《検定教科書に強制不妊手術「明るい社会のため大切」》[掲載日 2018年4月26日] から下に引用する.
 
障害者らに強制的に不妊手術が行われた問題で、当時、高校の教科書に「明るい社会を作るために大切なもの」などと書かれていたことが分かりました。学校でも強制的な手術を望ましいものとして教えていた実態が浮き彫りになりました。
 1950年4月の時点で国の検定に唯一、合格した高校の保健の教科書では、障害者らへの強制的な不妊手術について「社会から悪い遺伝性の病気を持った人を除き、明るい社会を作るために大切なものである」と書かれています。当時、旧優生保護法が施行されたばかりでした。さらに、教科書では「浮浪者や凶悪犯罪者に精神疾患や知的障害者が少なくないことを考える時、この法律が大切なことが分かる」などと指摘しています。また、文部省が教師に向けて作成した1972年度の学習指導要領の解説でも「我が国の精神障害の現状を理解させ、予防や取り扱いに関連して優生保護法に触れる」と書かれていたことも分かりました。
 立命館大学・松原洋子教授:「優生政策の重要な柱の一つに国民の啓蒙(けいもう)と啓発があった。(その一環として)文部省が保健体育の教科書に取り入れた」
 保健体育はすべての生徒に履修が義務付けられていて、優生保護法に関する記述は1960年代から1970年代の複数の教科書に見られます。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 昭和二十年の夏,戦争が終わって,昨日まで天皇陛下万歳を叫んでいた教員たちが,手のひらを返して戦中の教科書に墨を塗り (実際は授業の時に生徒たちに「ここを塗りなさい」と指示して墨を塗らせたものが多いと私は高齢者から聞いている),唐突に民主主義とか人道主義とかを生徒に教え始めたという.(参考;YouTube《戦後の転換点を物語る 墨塗り教科書の展示》)
 教科書に墨を塗る様子を記録した映像をテレビ番組で観た人は多いだろう.
 しかし戦前から天皇を現人神と教えられて生きてきた日本人にとって人道主義などという概念は理解しがたいものだった.
 占領軍の手前,世渡りの術として反省はしてみせたが,しかし日本の支配層にとって根本的には,国民は天皇の赤子であった.
 神である天皇の赤子が《精神疾患や知的障害者》であってはならぬ.
 社会から《精神疾患や知的障害者》を除くことは《明るい社会を作るために大切なもの》である.
 こうして昭和二十三年七月,優生保護法が成立した.
 40万人の障害者が不妊手術を強制された「断種法」、重度障害者30万人以上が犠牲となった「安楽死」政策=「T4作戦」。その根底に横たわる ナチス・ドイツの優生思想を ...


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新紙幣狂騒曲 /工事中

 今日 (7/3) から新札が発行されると,NHKの朝のニュースが報じていた.
 山田アナが,埼玉りそな銀行の支店に朝っぱらから出向いて,支店長と新紙幣について話をしたところ,新紙幣をATMに入れるのは昼になるという.
 山田アナは「私がNHKで最初に新紙幣を見る人間かと思ったのですが残念です」とか言ったが,そんなに今回の新紙幣発行が価値あることなのか,視聴者には全く伝わらなかった.
 日本銀行によると二十年前 (2004年) の新紙幣発行時には一年間で約六割が新紙幣に入れ替わったという.
 日本銀行はルーティンとして,市中に出回っている紙幣を新しく印刷した紙幣に交換する作業を行っている.
 今回は,市中から日本銀行に戻って来る旧紙幣をどんどん新紙幣に交換するわけだから,そりゃ一年間で約六割が新紙幣に入れ替わるのもわかる.
 しかし新紙幣対応のために自販機界隈の業界は大変なコストを負担させられたという.
 
 今回はどうだろう.
 夕方の民放テレビニュースによると,老いも若きもATMや銀行の窓口に殺到して新紙幣を手に入れようと大騒ぎだった.
 中には窓口で分厚い札束を受け取っていた人もいて,その様子をカメラがとらえていた.セキュリティもへったくれもないなあと呆れた.
 評論家の加谷珪一氏によると,自宅に現金を保有している「タンス預金」が約六十兆円あるという.
 銀行の窓口で新紙幣の札束を手に入れた人は富裕層であり,きっと「タンス預金」の一部を新紙幣にしたのだ.
 だって,実際に使用するのなら旧紙幣でいいわけだから.
 
 またそのニュースでは,何万円もATMで新紙幣を手に入れた若い人にインタビューしていた.
 その青年が新紙幣を早速自販機に入れたところ,紙幣投入口からヌーと戻ってきてしまったことに驚いていた.
 飲料などの自販機はまだまだ新紙幣に対応していないということを知らなかったとみえる.
 若いくせにどんなに情弱なんだと,ニュースを見ていた私が驚いた.
 鉄道券売機や大規模小売店のレジでは既にほとんど新紙幣対応は済んでいるが,飲料自販機界隈の業界とか,大衆飲食店の食券券売機などは新紙幣対応はかなり遅れている (後述) とのこと.
 
 これは当然のことだ.新紙幣対応は後ろ向きの投資であり,付加価値を産まないからだ.
 例えば「新紙幣が発行されたからその記念に北陸観光にでかけよう」とは誰も思わない.
 旅行に行く人は新紙幣になろうがなるまいが旅行に行くから,鉄道会社にも旅行業者にも観光地にも,新紙幣発行は売上増をもたらさないのだ.
 また何かこの種の大規模イベントがあると必ず「経済効果は○兆円」とかいう狸の皮算用が出てくるのだが,その通りになった試しがない.
 莫大な経済効果を謳った東京五輪もそうだった.あれで日本経済が上向いたか.
 あの大騒ぎの後も,五輪後も国民の実質賃金は下がり続け,購買力も減った.国民は貧しくなった.
 今度の万博も同じ轍を踏むに違いない.
 なぜあの手のイベントの「経済効果」予測が,獲らぬ狸の皮算用に終わるのか.経済効果どころか,なぜ負の遺産として醜状を晒すのだろうか.
 それは,五輪や万博が単なる娯楽的な消費であって,生産性の向上に役立たないからだ.
 新紙幣対応も同じ.新しいデザインの紙幣が,日本の科学技術振興に役立つのか.
 先端工業製品どころか国内では日用品の不織布マスク一つまともに作れなくなって中国からの輸入に頼っている「物作り日本」を新紙幣で再興できるのか.
 繁華街に設置されていてそれなりの売り上げがある飲料自販機は別として,そうでなければ,新紙幣対応自販機への交換は投資の回収が難しい.だから新紙幣対応が進まないのである.
 ならば飲料自販機界隈の業界はどうしたらいいか.
 新紙幣対応をいっそのことやめてしまえばいいのだ.
 これまでも飲料自販機は,新五百円硬貨や二千円札への対応を無視してきたではないか.(ただし沖縄県は特殊で,二千円札が紙幣として使われているという)
 だったら今回の新紙幣も無視すればいいのである.
 飲料自販機や食券券売機は,少額硬貨とキャッシュレス決済専用にすればいい.
「紙幣は使えません」と貼り紙すればそれで済む.
 
 ローカルな路線バス会社も新紙幣対応に苦慮しているらしい.
 車内の両替機を新紙幣対応機に更新する費用のことだ.
 私は現役会社員の時から通勤にバスを利用してきたのでよく知っているが,小銭も交通系ICカード (モバイルを含む) も持たずに乗車し,降りる時になって五千円札を出して「両替してください」というやつがいるのだ.
 中でも悪質なのは,乗務員が「両替は千円札だけです」というと「これしかないんですよ,困ったなあ」とか言うやつだ.
 仕方なく乗務員が「今度乗った時に払ってください」と言うと,しめしめと嬉しそうに「わかりました」と言った.
 こいつは無賃乗車の常習者なのであるが,バス車内に「無賃乗車常連客」の顔写真を貼るわけにもいかないから困りものだ.
 こういう悪質な連中のことも含めた対応について,私は思うに,車内での紙幣両替をやめてしまえばいいのだ.
 報道によると,新紙幣の両替を申し出た乗客には「釣り銭引換券」を渡すアイデアがあるらしい.
 この「釣り銭引換券」はバス会社の営業所に持って行くと現金にしてくれるというのだ.
 新紙幣を相手にしないというのはなかなかよいアイデアだと思う.
 
 ファストフードやファミレスなど資金力がある業界は新紙幣に対応すればよいが,ラーメンとか蕎麦の小さな飲食店で券売機を設置している店は困っているだろう.新紙幣対応のために多額の投資が必要だからである.
 評論家はこういう無意味な投資を「経済効果」に勘定して騒いでいればいいが,その経済効果を負担させられる側はたまったもんじゃない.
 ならば,バスとおんなじで,こういう店も新紙幣を無視すればいい.券売機の紙幣投入口をガムテープでふさいで,使えるのはキャッシュレス決済と硬貨だけにすればいいのだ.
 政府はキャッシュレス決済を推進していたはずだが,それと新紙幣発行とは整合性が取れているのか,疑問だ.

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2024年7月 1日 (月)

都合の悪いことは言わないFP (7/6に追記あり)

 All About《70代以降はいくらお金を使っている?年代別にみる高齢世帯の支出額》[掲載日 2024年6月9日] から下に引用する.
 
歳を重ねるほどお金がかかるのはホント?
 歳を重ねるほど、お金を使うことが増えると考えている方は、多いと思います。だから、リタイアするまでにお金を貯めなければと必死になったり、老後資金が足りないのではないかと不安になったりするのではないでしょうか。
 しかし、実際のところ60歳代以降は、歳を重ねるほどお金を使わなくなるというのが現状です。次の表は、総務省が毎年発表している家計調査報告の2023年に公表された高齢無職世帯(2人世帯以上)の1カ月の家計収支のデータになります。
 
(註;引用した元記事には,この位置に図が挿入されている.図は冒頭にリンクを示した元記事を見て頂きたい)
 
オレンジ部分が実支出、緑部分が実収入です。65歳から69歳の支出額は33万6752円、70歳から74歳は30万3054円、75歳以上になると26万4367円となり、徐々に減少していることがわかります。65歳から75歳までで見てみると、大体7万円近く支出が減るのです。
 
 60歳以降はやりたいことを我慢せずにやる

 データを見てみると、年齢が上がるにつれて、お金を使わなくなることが認識いただけたと思います。ですので、もし今「歳をとったらお金が必要だから、やりたいことを我慢しよう」と考えているのであれば、先送りせずにやることをおすすめします。
 歳を重ねると、お金はあってもやりたいことができなくなってしまう可能性もありますから。60歳ぐらいになったら、お金を貯めることばかりではなく、お金をどう使って老後をより充実したものにするかも考えてみてください。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上に引用した記事の筆者は深野康彦である.
 記事の末尾に紹介文があるので,それも引用する. 
 
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
 
 各位御承知のように,FPとはファイナンシャル・プランナーのことである. 
 さて引用した記事中に挿入されている図 (註) の出典は総務省統計局「家計調査報告令和5年 (2023年) 平均結果の概要」である.
 高齢無職の二人世帯 (65歳以上) の1ヶ月の家計の収支額が5歳刻みで示されている.
 これによれば,実支出と実収入は下表の通りである.
 
      実支出  実収入 (単位は円) 
75歳以上  264367  239727 (赤字:24640)
70~74歳  303054  267508 (同上:35546)
65~69歳  336752  296122 (同上:40630)
 
 深野康彦は《65歳から69歳の支出額は33万6752円、70歳から74歳は30万3054円、75歳以上になると26万4367円となり、徐々に減少していることがわかります。65歳から75歳までで見てみると、大体7万円近く支出が減るのです》と述べているが,高齢者世帯の家計収支では,支出が減ると同時に収入も5万6千円減っていることには (敢えて) 触れない.
 このデータは表に明記されているから深野が隠蔽しているわけではないが,しかし嘘つきの常套手段だ.嘘つきは,きちんと書かれていることでも都合が悪ければ無視するのだ.w
 事実は深野康彦の主張とは全くの逆で,高齢者世帯は,収入が減ったから一所懸命に節約して,支出を減らしたのである.
 繰り返すが,支出が減ったのではない.減らしたのだ.
 誰だって,無い袖は振れないから,収入が減ったら支出を減らすのが当たり前だ.
 上表に示されているのは「収入が減ったので節約を心がけたが,家計の赤字は解消していない」という高齢者世帯の現状なのである.
 
 家計が赤字ということは,貯蓄を切り崩して生活していることを示している.
 老いた年金生活者にとってそれがどんなに心細いことか,あたかも鬼のごとく深野康彦は知らぬふりをする.
 そして《「歳をとったらお金が必要だから、やりたいことを我慢しよう」と考えているのであれば、先送りせずにやることをおすすめします》と高齢者たちの耳元でささやく.
 こういう深野たちFPの言うことを信じて《歳を重ねると、お金はあってもやりたいことができなくなってしまう可能性》があるから《やりたいことを我慢》せずに老後資金を消費した人たちを待っているのは「老後破産」だ.
 試みに「老後破産」をウェブ検索してみる.
 すると生保などのFPたちが,老後破産対策を色々と指導している.
 歳を取ると《大体7万円近く支出が減る》から,その分のお金を使ってしまいましょうと言っていたFPたちが,老後破産しそうな老人夫婦に「老後破産対策に,リースバックが役立ちますよー」と,再び甘く耳元でささやく.
 御承知の向きが多かろうが,リースバック (註1) とは,自宅を売却して現金化することにより老後資金を確保し,その売却した家に売却後も住み続けることを売り文句とするサービスである.
 住み慣れた自宅で生活しながら,まとまった資金を調達することが可能だというのである.
 言い方を変えれば,年老いた夫婦が長年「住み慣れた自宅」が,人手に渡って賃貸住宅になってしまうのだ.
 テレビで頻繁に宣伝が打たれているこのシステム (リースバックの他にいくつか名称がある) の大きな問題は,老後破産を回避するために自宅を売却して得た「まとまった資金」が,結局は家賃として消えてしまうことだ.
 そしてこの家賃負担が高齢者の生活が立ち行かなくなる原因なのである.
 現在の私たち高齢者のほとんどは持家であるが,それは賃貸に住み続けると,日本の現状では老後の生活設計が行き詰るからである.
 現行の厚生年金制度では,家賃の支払いを賄えるほどの給付が得られないことが昔から明白だったから,私たちの世代は必死に持家のローンに耐えてきたのである.
 それ故,深野たちFPの言うことを信じてリースバックに手を出してはいけない.
 それは高齢者が貧窮化する最初のステップだ.
 ここで詳細は述べないが,「リースバック×トラブル」でウェブを検索して頂きたい.
 テレビCМでは「住み慣れた愛着ある自宅をいつでも買い戻せる」と宣伝しているが,買い戻せるほどの資力があれば,そもそもリースバックなんかしない.結局は家族との思い出が詰まった自宅を追い出されてしまうのだ.
 
 リースバックと似ているものにリバースモーゲージ (註2) がある.
 これは高齢者にとってあからさまに阿漕で苛烈な借金であり,かつ「老後破産寸前」の臭いがプンプンするから,よほど不勉強でなければ,さすがにこれに手を出す高齢者は少ないだろう.不勉強な高齢者の最晩年に待ち構えている借金地獄だからである.
 言い換えると,リバースモーゲージの借金臭を隠蔽したものがリースバックである.
 
(註1) Wikipedia【リースバック】から抜粋
リースバック (英語: Leaseback) とは、セール・アンド・リースバック (英語: sale-and-leaseback) とも呼ばれ、現在所有している物品 (主に固定資産など) に相当するものを他に売って、そこからリースするという金融取引をいう。……(中略)……リースバックを行なう際の当事者の理由は、これにより金融上、会計上、税務上の利点があるからである。大きな利点は二つあり、「まとまった現金を得ることが出来ること」、「維持管理などの手間を省くことが出来る」ことである。……(中略)……リースバックの中でも、不動産を対象としたものを「不動産リースバック」と呼ぶ。不動産リースバックには、持ち家をリースバック業者に売却して、資金を調達しながら、リースバック業者から以前の持ち家を賃貸することで、住み続けるサービスもある。
  
(註2) Wikipedia【リバースモーゲージ】から抜粋
リバースモーゲージ (Reverse mortgage) とは、自宅を担保にした融資制度の一種。自宅を所有しているが現金収入が少ないという高齢者世帯が、住居を手放すことなく収入を確保するための手段。……(中略)……通常のモーゲージ(=抵当・担保)ローンでは年月と共に借入残高が減っていくが、この制度では逆に増えていくのでリバースモーゲージと呼ばれる。……(中略)……公的年金などでは生活費を賄えない高齢無職者(または低所得者)の生活費の原資として利用されることが多い。
 
 厚生年金だけが収入の一般的高齢者が心得るべき安心安全な老後生活の要諦は,年金給付額から諸税と健康保険料を引いた手取り収入以下に支出を抑えることに尽きる.
 支出を抑えて,老後資金 (註3) を絶対に減らさないようにしなければいけない.
 某極悪精神科医やFPがいくら「リタイア前にやりたかったことを,お金を使ってどんどんやりましう」と言っても口車に乗ってはいけない.
 彼らは「やりたいことをするためには少額投資が勧められます.失敗してもリースバックをすれば老後資金は大丈夫です」などという.
 彼らの手口は,ジャーナリストの荻原博子氏が説くように,まことに油断がならない.
 
(註3) 最晩年に必要となる介護費用 (介護施設入居費を含む) と末期医療費が真の老後資金だ.
 
[追記]
 FPという非道の輩は,老後資金の相談に乗る形で高齢者を老後破産に追いやる.
 例えばその手口は,THE GOLD ONLINE《社宅暮らしで貯金に励んだ60代夫婦、定年退職を機に“念願のマイホーム”を購入!年金月24万円で老後を満喫していたが…3年後、68歳夫「家なんて買わなければよかった!」と後悔したワケ【FPの助言】》[掲載日 2024年7月5日] を読めばわかる.わざわざ【FPの助言】と書いてあるところが悪党なりに堂々としている.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した) 
 

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