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2024年6月13日 (木)

他人の保険証で /工事中

 アサ芸biz《マイナ保険証トラブルで「処方箋さえあれば」谷原章介の“誤情報”に非難殺到》[2024年6月13日] から下に引用する.
 
《……
 番組で紹介したトラブルは薬局で起きた。とある男性が処方箋を持って薬局に行ったところ、薬局側からは「マイナ保険証しか受け付けできなくなった」と言われ、仕方なくその場でマイナ保険証の利用登録を行った。ところが、現行の保険証がまだ使えることから、後に薬局側が男性に「誤解を招いた」として謝罪する運びとなった。
 このトラブルを受けて、谷原はスタジオ出演中の専門家にこう語りかけた。
「そもそもですけど、処方箋を持って薬局に行ったりした時に、処方箋は渡しますけど、そこで健康保険証を求められた覚えがないんですけど、いかがなんですか?」
 谷原の質問に、専門家は「保険証か処方箋でも保険があることが確認できますので、そのどちらかであれば、基本的には問題なく調剤されると思います」と回答。
 谷原は「本来で言うと、薬局では処方箋さえあれば、保険証、マイナ保険証を見せる必要はないってことですよね」と結論づけたのだが、SNSでは医療関係者と思しきユーザーから《いやいや保険証は提示してもらってるよ》《保険証不要の発言は訂正したほうがいい》《保険番号が間違ってること多いから処方箋だけじゃ怖いよ》といった指摘が相次いでいた
「谷原さんが言うように、薬局によっては、保険証を見せなくても処方箋だけで調剤してくれる薬局もあるかもしれません。しかし、多くの薬局では窓口で健康保険証の番号と処方箋の番号を照らし合わせて間違いがないか確認しているのが現状。健康保険法にも『当該保険薬局等から被保険者証の提示を求められた時は当該処方せん及び被保険者証を提示しなければならない』と書かれています。
 ……》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 番組に出てきた「専門家」が誰なのか知らぬが,嘘を言ってはいけない.
保険証か処方箋でも保険があることが確認できますので、そのどちらかであれば、基本的には問題なく調剤されると思います》は真っ赤な嘘である.
そのどちらかであれば》が嘘.調剤薬局で保険証しか提示しない場合,医師が処方した医薬品の名称を口頭で薬剤師に説明することになるが,口頭説明では絶対に調剤してくれない.
 このことは当ブログの記事《調剤薬局は飲み屋ではない》に既に書いた.
 もし万が一,「いつものクスリをください」などと口頭説明で医薬品を出してくれる薬局があったら,それはヤバイ薬局である.
 賢明な消費者はそんな薬局を使ってはいけない.
 なぜなら,処方箋なしで口頭説明によって調剤することは違法行為であるとともに,調剤作業の正しいルーティンを踏み外しているからである.
 調剤薬局では,スタッフ (もちろん薬剤師) の一人が処方箋に則って箋に記載されて医薬品を,名称と数量を確認しながら棚から取り出す.
 同時に,処方箋に禁忌の有無を点検判断する.
 次に,その医薬品が正しく選び出されているかを,もう一人のスタッフ (もちろん薬剤師) が確認する.(下図)
 
20240613a2
 (出典;松村由美・京都大学医学部附属病院医療安全管理部部長《ダブルチェックの有効性を再考する》[平成30年12月7日])
 
 このいわゆるダブルチェックを経て,ようやく消費者 (患者) は医薬品を入手できる.
 しかし,このような手順を踏まない薬局がたまにあるので私たちは気をつける必要がある.
 というのは,実は私の行動範囲である藤沢駅の近くにもこのヤバイ薬局があるのだ.
 そこは食品や日用雑貨消耗品まで幅広く扱うドラッグストアで,店の入口付近に狭いブースがあり,そのブースには薬剤師が一人のこともあるしバイトみたい (欲しい医薬品のことを説明してもチンプンカンプンな顔をするので薬剤師ではないはず) な若い女性がいることもある.
 一人しかいないこともあるという状態だからダブルチェックなんかしていないのが明らかである.
 おまけに,最初にその薬局に行ったとき,処方箋を出して暫くしたら薬剤師が「処方箋に書いてある先発品はジェネリックに変更しておきました」と言った.
 私が「勝手にジェネリックしてもらったら困ります」と言うと,そいつは舌打ちして「ウチはジェネリックしか扱ってないっすから,先発品が欲しけりゃ他の薬局へいってください」とほざいた.
 国は医療費削減のために,ジェネリック医薬品の普及を図る政策誘導として,ジェネリック医薬品の調剤率が低い薬局にはペナルティ (調剤報酬の減額) を課している.
 その結果が,ジェネリック医薬品しか扱わない調剤薬局の出現である.
 先日,処方箋と健康保険被保険者証をもって薬局にきた客に,強制的にマイナ保険証を作らせた調剤薬局の出現が報道された.
 マイナ保険証の扱いが少ない調剤薬局にペナルティを課すという現政府の政策誘導が,このような違法行為を発生させたのであるが,これは先発品を調剤するとペナルティを課す現在の政策誘導と似ている.
 医師には医の倫理があるが,薬局にあるのは薬の営利である.
 いずれ,先発医薬品を置く薬局はなくなり,先発品はすべて取り寄せになる時期がくるのではないか.
 ジェネリック医薬品メーカーは大手も中小も不正や品質事故ばかり起こしているから,厚労省としては問題を起こしたジェネリック医薬品の製造を差し止めざるを得ない.
 実際,複数のジェネリック医薬品メーカーで製造上の不正が発覚し,2021年以降,業務停止などの行政処分が相次いだことに加えて新型コロナやインフルエンザの流行で需要が増えたことなどを要因に,製造量が二年以上にわたって減っている.
 昨年八月時点で,日本製薬団体連合会と厚生労働省が製造販売業者を対象に行った調査ではジェネリック医薬品のうち限定出荷と供給停止となっているのが9077品目中の2928品目,32.3%にもなっているのだ.
 つまり,以前からずっとジェネリック医薬品の三割は製造不正が行われてきたことが三年前に発覚したのだが,それでも政府はジェネリック医薬品を消費者 (患者) に強いることをやめない.
 またジェネリック医薬品しか在庫しない調剤薬局が現れるに至って,私たちは必要な薬を買えないという事態になっているのが現状である.
 
 話が横に逸れた.冒頭に引用したテレビ番組でゲストが《多くの薬局では窓口で健康保険証の番号と処方箋の番号を照らし合わせて間違いがないか確認している》と述べたことに戻る.
 一般に調剤薬局は処方箋に記載されている保険者番号と,健康保険証に記載されている保険者番号が一致することにより,その処方箋が本人のものであること,および偽造品ではないことを確認している.
 しかし谷原章介が《処方箋を持って薬局に行ったりした時に、処方箋は渡しますけど、そこで健康保険証を求められた覚えがない》と発言したこともまた事実である.
 というのは,若い人には無縁の話だが,中高年以上の消費者 (患者) の多くは何らかの持病や健康上の問題を抱えており,定期的な医療を受けているため「かかり付け医」と「かかり付け薬局」を持っているのが普通だ.
 私なんぞ,かかりつけ医は三十年の付き合いになる.薬局との付き合いもかなり長い.
 こうなると,下手な顔認証システムより遥かに強力な「顔なじみ」という本人確認が行われる.
 処方箋を持って薬局に行き,薬をカウンターで受け取る時には薬剤師と健康状態について会話をするのである.
「腰痛の具合は最近どうですか?」
「腰はいいんですが,膝の調子がイマイチでしてね」
 という具合である.
 谷原章介が《処方箋を持って薬局に行ったりした時に、処方箋は渡しますけど、そこで健康保険証を求められた覚えがない》が語ったのはまさにこのことで,谷原の「かかり付け薬局」では「顔なじみ」本人確認システムwがあるために健康保険証による本人確認は省略されているのである.
 もちろん「かかり付け薬局」では,最初に訪問した際に,健康保険証を提示した上で質問票に必要事項を記入してカルテを作成済であることが前提としてある.それなくして「顔なじみ」の「かかり付け薬局」とはなり得ない.
 
 若いSNSユーザーたちはこのことを知らないから《SNSでは医療関係者と思しきユーザーから《いやいや保険証は提示してもらってるよ》《保険証不要の発言は訂正したほうがいい》《保険番号が間違ってること多いから処方箋だけじゃ怖いよ》といった指摘が相次いでいた》と谷原章介を批判したが,若い人たちは滅多に調剤薬局に行かないから「顔なじみ」本人確認システムwが実際には稼働していることを知らないのである.
 だからSNSユーザーたちが言っていることは正しいが,谷原章介が言ったことも間違ってはいないのである.
 ただし付け加えると,調剤薬局以外の医療機関では,毎週来院している患者に対しても「月が代わる」たびに健康保険証の提示を求めるの原則だ.
 この場合の保険証提示は,本人確認の意味ではなく,健康保険加入資格を確認しているのである.健康保険の資格は変わることがある (組合健保から国保へ変更等) からである.
 だがこれも原則であり,実際には柔軟に運用されている.
クリニックの窓口の人「おばあちゃん,月が代わったから今日は保険証を見せてね」 
毎週診察を受けに来る患者「おや,今日は持ってこなかったよう」
クリニックの窓口の人「それじゃ来週来る時でいいから忘れずに保険証持ってきてね」
毎週診察を受けに来る患者「ああ,すまないねえ,忘れなかったら絶対持ってくるからねえ,ありがとねえ」
 高齢者の患者ではこういう「忘れなかったら絶対持ってくる」という困った人もいるので,調剤薬局は家族との連絡もとれるようにしている.
 逆に言うと,こういう柔軟かつきめ細かい対応をしない調剤薬局を「かかり付け」にしてはいけない.調剤薬局なんてどこも同じさ,と軽く考えていると,上に述べたような「勝手にマイナ保険証を作らせる薬局」とか「勝手にジェネリック医薬品に変更してしまう薬局」に遭遇してしまうのである.
 
 さて長い前置きに続いて本題.
 この記事の本題は,健康保険証の本人確認に係る昔の話である.
 私は昭和四十三年に大学に入って上京した.
 語学のカリキュラムは英語が必修で,選択制の第二外国語毎にクラスが分けられていた.
 各クラスには担任教官が決められていて,学生生活や学業の悩みを聞いてもらえる制度になっていた.
 

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