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2024年3月 1日 (金)

嘘吐きなのかバカなのか (たぶん後者)

 アサ芸biz《年間消費量が大幅減少!日本人が「ハム」を食べなくなった「生活習慣の変化」って何だ》[掲載日 2024年2月27日] から下に引用する.
 
総務省が発表した家計調査によれば、「ハム」を買うために支払う年間支出金額が減少を続けているという。かつては朝食の定番食品であり、お歳暮の人気商品だったイメージがあるが、なぜ日本人はハムを食べなくなったのか
 同調査によると、2023年の2人世代以上のハムの年間支出額は4750円だった。14年には5832円だったため、1000円以上も少なくなっており、この10年でおよそ20%減少したことになる。しかも、加工肉全体の年間支出額はこの10年で約500円の微増となっていて、ソーセージやベーコンはほぼ横ばいの状態にあることから、やはり「ハム離れ」が鮮明となっているのだ。
「ハムを食べなくなった原因の1つには、ハムなどの加工肉を食べると『がんになりやすい』という研究結果のイメージが残っている面もあるでしょう。世界保健機関(WHO)の研究機関である国際がん研究機関(IARC)が、加工肉を1日に50g食べた場合、大腸がんのリスクが18%高まると発表。2015年当時、加工肉メーカーはこれに猛反発し、WHOは「一切食べないようにとは求めていない」と弁明しました。ソーセージやベーコンでも同様のはずですが、ハムだけが嫌われるのは、単体で食べることがあまりなく、腹持ちもそれほど良くないといった理由が考えられます」(フードジャーナリスト)
 加えて、ハムにとっては致命的とも言える「生活習慣の変化」があったという。
「ハムエッグにサラダにトーストなど、ハムは朝食に食べるもの、というイメージがあると思いますが、近年は朝食を食べない人が増えているのです。農林水産省の調査によると、21年には全体の13.9%が朝食を欠食しているといい、特に20代から30代の若い世代では26.5%にのぼるといいます。ハムエッグで使われる卵の価格が急激に高騰した影響もあり、さらにハムは存在感を失いつつあります」(前出・ジャーナリスト)
 朝食の欠食率は増加傾向にあるという。今後はさらにハムの存在意義が薄れていくのかもしれない。(小林洋三)
 
 上に引用した記事の筆者である小林洋三という人物を詳しくは知らぬが,バカであることは確かだ.
総務省が発表した家計調査によれば、「ハム」を買うために支払う年間支出金額が減少を続けている》に続けて《なぜ日本人はハムを食べなくなったのか》《2023年の2人世代以上のハムの年間支出額は》《この10年でおよそ20%減少した》と書いているが,ここがまず頭の悪さ丸出しである.
 ハムには色々な種類があるのだが,小林洋三は,スーパーの店頭で販売されているハムの代表である「ロースハムの薄切り」のことしか念頭にないのだろう.
 小林洋三はハム・ソーセージ工業のシロートのようだから,それはそれでいい.生産量も販売量も「ロースハムの薄切り」が他のハムよりもかなり多いからである.
 で,私たちの家庭で《「ハム」を買うために支払う年間支出金額が減少を続けている》ことは,私たちが食べているハムの量とは直接の関係がない.
 あたりまえだ.《「ハム」を買うために支払う年間支出金額》は,私たちが食べているハムの量ではなく,ハムの価格の関数だからである.
 スーパーの店頭に行って自ら食肉加工品を購入している人には常識だが「ロースハムの薄切り」は各メーカーが激しい価格競争をやっている.消費者は「三食パック」とか「四食パック」を比較して,三円でも五円でも安いほうを買い物カゴに放り込むからである.
 ではメーカーはなぜ価格競争ができるかというと「ロースハムの薄切り」は,原材料の生肉にタンパク質系の増量剤や糖類の水溶液を,多数の注射針でできた剣山の様な専用装置を用いて注射 (インジェクション法という) し,「水増し」して製造しているからだ.(参考;生活クラブ《「業界常識」にあらがい続けて44年》[掲載日:2018年2月15日])
 だから多量の増量剤液を注射して激しく「水増し」すれば製造コストを大きく下げることが可能になる.
 ただし,多量の増量剤をインジェクションすると,肉の筋繊維の食感が失われて,口中で噛んだ印象は蒲鉾に近くなる.
 それ故,咀嚼した時にこの蒲鉾的食感がバレないように,「水増し」ロースハムはペラペラの薄切りにして販売されるのである.
 しかし「水増し」ロースハムは,紙のごとくペラペラに薄切りすると別の欠陥が顕わになる.フライパンなどで焼くとチリチリと収縮して,非常に惨めで貧乏ったらしい姿を晒してしまうのだ.「水増し」製造法による「ロースハムの薄切り」でこしらえたハムエッグはしみじみと情けない食い物である.
 小林洋三は「ハムエッグは朝食」と思い込んでいるようだが,普通の人間は一日の始まりの朝飯から「水増し」ロースハムのような意気消沈するようなものは食いたかあない.「ロースハムの薄切り」と卵一個で作った似非ハムエッグを食うくらいなら,いっそ卵二個の目玉焼きのほうがずっと潔い.
 だから「ロースハムの薄切り」の実際の使われ方は,生野菜サラダとか子供の弁当の「差し色」である.誰も「ロースハムの薄切り」がおいしいとか栄養があるなんて思っていないのである.
 話が横に逸れた.私たちの家庭で《「ハム」を買うために支払う年間支出金額が減少を続けている》ことは,私たちが食べているハムの量とは直接の関係がないという件について続ける.
「ハム」を買うために支払う年間支出金額》は,私たちが食べているハムの量ではなく,ハムの価格の関数である.
 家計における支出金額以外に,私たちが食べているハムの量と関係がある統計データには,ハムの生産量がある.
 私たちが食べているハムの量について考察するためのデータとしてハムの生産量を使用すれば,長期的あるいは短期的なハムの価格変化の影響を排除できるから,明確な議論が可能となる.
 本来の製造法によるハムは保存食であったが,現在の「ロースハムの薄切り」などの賞味期限はあまり長くない.
 そのためメーカー在庫も流通在庫も一定の適正水準に保たれるように生産される.
 ということは,ハムの生産量と消費量 (消費者が食べた量) は等しい.
 つまりハムの生産量の推移を調べれば,私たちが食べるハムの量の推移がわかるのである.
 従って,私たちが食べるハムの量の経年変化を調べるために,小林洋三は,それとは無関係である総務省の家計調査のデータを使用したが,これは不適切である.いや不適切というか明らかに頓珍漢な誤りである.
 
 さて我が国のハムの生産量は日本ハム・ソーセージ工業協同組合から公表されており,その一部は誰でも資料を入手できる.
 小林洋三が《2023年の2人世代以上のハムの年間支出額は4750円だった。14年には5832円だったため、1000円以上も少なくなっており、この10年でおよそ20%減少したことになる》と書いているので,2014年から2023年までのハムの生産量を,日本ハム・ソーセージ工業協同組合のサイトから下に抜粋引用する.
 
日本ハム・ソーセージ工業協同組合年次食肉加工品生産数量
---------------------------------------------------------------
            生産量     2014年を100とする指数
2014年 (平成26年)   80863.6トン  100
2015年 (平成27年)   80459.8     99.5
2016年 (平成28年)   80608.4     99.7
2017年 (平成29年)   80391.9     99.4
2018年 (平成30年)   77665.6     96.0
2019年 (令和元年)   77478.9     95.8
2020年 (令和2年)    78519.8     97.1
2021年 (令和3年)    77116.9     95.4
2022年 (令和4年)    75097.4     92.9
2023年 (令和5年)    72957.1     90.2
---------------------------------------------------------------
 上のデータを見ると,2014年から2017年まで,生産量はほぼ横這いで推移している.
 続いて2018年から2021年まで,2014年の96% (四年間の平均値) 前後で横這いに推移している.
 ところが一昨年の2022年に突然,生産量が対2021年比で92.9%に落ちた.そしてこの段階で暫く落ち着くのかと思いきや,昨年の2023に更に90.2%にまで低下した.
 この状況 (2018年に階段状に生産量が減少した) を考察すると,ハム生産量が減少するような何らかの出来事が2018年に起きたと推察される.
 同様に2022年にも生産量低下をもたらす何らかの要因が発生したのではないか.
 そしてこの要因は,2023年には更に生産量を減少させ,遂に対2021年比で90.2%にまでなってしまった.
 この「何らかの要因」とは何か.
 2022年,2023年は,コロナ禍とウクライナ戦争の影響により「原材料価格の高騰,エネルギー価格と物流費の増加」を理由として食品分野で怒涛の値上げが行われた年であるが,独立行政法人農畜産業振興機構《食肉、食肉加工品ともに購入数量は減少、消費者の食に対する節約志向が顕著に》に次の記述が掲載されている.
 
20240301a2
 
 上に引用したように,食費は消費者国民が節約する三大費目である.
 一昨年から現在に至るまで相次ぐ食品の値上げに対して,消費者国民は家計防衛のために食品の購入を節約せざるを得なかった.
 農畜産業振興機構の専門家はそのように分析している.
 この分析に異論を唱える向きは少ないだろう.食品値上げラッシュに対抗して家計を防衛するための節約.これがハム消費量がこの直近二年間に5%も減少した要因なのである.
 さて,以上の記述をまとめてみよう.
 
【小林洋三の主張】
 2014年から2013年までのあいだに,日本人の「ハム離れ」が進行した.「ハム離れ」の原因を二つ挙げている.
 まずその一つとして小林は《ハムを食べなくなった原因の1つには、ハムなどの加工肉を食べると『がんになりやすい』という研究結果のイメージが残っている面もある》と述べている.(註)
 
(註)《ハムなどの加工肉を食べると『がんになりやすい』という研究結果》に関する報道資料
BBC NEWS《加工肉に発がん性あるとWHO》[掲載日 2015年10月27日]
世界保健機関(WHO)は26日、ベーコンやソーセージ、ハムなどの加工肉は発がん性があるという分類を発表した。
 専門機関・国際がん研究機関(IARC)の報告は、加工肉を毎日食べた場合、50グラム(ベーコン2切れ以下)ごとに大腸がんにかかる確率が18%上昇するとしている。赤肉も「恐らく発がん性がある」が、限られた証拠しか得られていないという。
 WHOは一方で、肉の摂取には健康上のメリットもあると認めている。
 英国のがん研究機関「Cancer Research UK」はWHO報告について、赤肉や加工肉の摂取を一切止やめるのではなく量を減らせば十分で、ベーコン・サンドイッチをたまに食べるくらいはかまわないとしている。
*加工肉とは?
 加工肉は賞味期限を延ばしたり味を変えるために加工されたもので、加工の主な手段は燻製(くんせい)、塩漬け、塩や保存料の追加などだ。
 牛肉をひき肉にするだけでは「加工」したことにはならない。
 加工肉にはベーコン、ソーセージ、ホットドッグ、サラミ、コーンビーフ、ビーフジャーキー、ハム、肉の缶詰、肉ベースのソースなどが含まれる。
 報告によると、発がん性のリスクがあるのは、肉の加工に使われる化学物質だ。バーベキューなど高温度による調理も、発がん性物質を作り出すことがある。
 英国では100人に約6人が一度は大腸がんにかかる。全員が終生、1日50グラム分のベーコンを追加摂取し続けた場合、大腸がんにかかる確率は18%上昇し、つまり発症リスクが100人中7人に上がるという。
 リスク研究を専門とする英ケンブリッジ大学のサー・デイビッド・スピールゲルハルターは「つまり一生ずっとベーコンを食べ続ける100人の中で、大腸がんにかかる人が1人増えるわけだ」と説明する。
 この報道の中の《英国では100人に約6人が一度は大腸がんにかかる。全員が終生、1日50グラム分のベーコンを追加摂取し続けた場合、大腸がんにかかる確率は18%上昇し、つまり発症リスクが100人中7人に上がる》は,私たちの普通の生活感覚では「なーんだ,毎日ベーコン50グラムを死ぬまで食い続けても発症確率は100人中6人から7人に増えるだけなのね,大したことないじゃん.日本人は加工肉はそんなに食わないから加工肉の発がん性って無視していいのね」ということになるわけだ.
 そのため《世界保健機関(WHO)は26日、ベーコンやソーセージ、ハムなどの加工肉は発がん性があるという分類を発表した》ことは一般人の興味を全く引かなかった.
 事実,日本のハム生産量 (消費量に等しい)は,世界保健機関(WHO)の発表 (2015年) によって影響を受けなかった.下表の通りである.
---------------------------------------------------------------
            生産量     2014年を100とする指数
2014年 (平成26年)   80863.6トン  100
2015年 (平成27年)   80459.8     99.5
2016年 (平成28年)   80608.4     99.7
2017年 (平成29年)   80391.9     99.4
---------------------------------------------------------------
 
 日本人の「ハム離れ」の原因の二つ目として,小林は《ハムにとっては致命的とも言える「生活習慣の変化」があった》と述べ,それは《ハムは朝食に食べるもの、というイメージがあると思いますが、近年は朝食を食べない人が増えている》ことだという.
 ここで小林は嘘を吐いている.日本人の一部が朝食を摂らないのは昔からだ.
 七十三歳の高齢者である私が若い頃から,二十代から三十代の独身会社員は男でも女でも忙しい朝にはちゃんとした朝食は口にせず,コーヒーか牛乳を一杯飲んで出勤する人がかなりいた.また彼らはそれが「都会的な生活」でもあるとむしろ意識的に朝食を欠食していた.
 朝っぱらからハムエッグを焼いているような暇人ではビジネス社会で「24時間戦え」ないという風潮 (註*) (註**) が日本を覆っていたのである.
(註*) バブル経済期,都会の朝には駅のホームでリゲインとかリポビタンDをイッキ飲みする会社員がたくさんいた.彼らは「オレは企業戦士だ!」という気概に満ちていた.朝飯なんか食ってられるか,と意気軒高だった.そして私も含めてみんなアホだった.(参考;YouTube《勇気のしるし ~リゲインのテーマ~ - 時任三郎》)
(註**) 同じくバブル経済期,ネスカフェのCМのワンシーンを高齢者は記憶しておられるか.「ニューヨークの朝は早い」というナレーションと共に,テイクアウトのコーヒーを片手にオフィス街を颯爽と歩く若い女性.素敵な膝上丈スカートのビジネススーツをきっちりと着こなし,足元はスニーカーという通勤スタイルだった.ビジネススーツとスニーカーという女性のコーデが市民権を得たCМであった.
 
 では小林洋三の嘘を晒すために,日本人の朝食欠食率に関するデータを見てみよう.
 
厚労省《平成16年国民健康・栄養調査結果の概要》から引用
20240302a2
「総数」は,(1) 何も食べない (食事をしなかった場合),(2) 菓子,果物,乳製品,嗜好飲料などの食品のみ食べた場合,(3) 錠剤・カプセル・顆粒状のビタミン・ミネラル,栄養ドリンク剤のみの場合,の合計である.
 
厚労省《平成29年国民健康・栄養調査結果の概要》から引用
20240302b2
20240302c2
「総数」の意味は平成16年調査と同じ
 
 厚労省による朝食欠食率調査は平成29年調査結果が最新である.(コロナ禍により令和2,3年調査が実施中止となり,令和4年調査結果は同5年末に公表の予定であったが,結果取りまとめが遅れている)
 このデータによれば,平成末期の十年間の朝食欠食率は全くの横這いで推移している.
 さらに十年遡って平成16年調査を見ても,朝食欠食率は二十年間に数%上昇しているに過ぎない.すなわち小林洋三の主張「日本人のハム離れの原因は《近年は朝食を食べない人が増えている》からである」は真っ赤な嘘である.
 以上をまとめると,小林洋三は,2014年から2023年までのあいだに進行した日本人の「ハム離れ」の原因は《ハムなどの加工肉を食べると『がんになりやすい』という研究結果のイメージが残っている》ことと《近年は朝食を食べない人が増えている》ことだと主張しているが,両方とも嘘デタラメである.
 上に私が掲げた統計資料がそのことを示している.
 
 ここで生じる疑問は,なぜ小林洋三はこんなすぐバレる嘘を書いたか,である.
 小林が主張する「日本人のハム離れ」の根拠は,普通の人でも数分のウェブ検索で嘘であることを見抜いてしまうに違いない.
 本物の悪意のデマゴーグは,嘘がバレないようにもう少し手の込んだ嘘を吐く.
 ということは,つまり小林には読者を騙そうとする悪意がない.
 すなわち小林洋三は卑劣な嘘吐きなんかではなく,ただのバカにすぎないと私は思う.
 彼の名誉のためにここにそう言明しておく.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)

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