恵方巻 /工事中
節分の日,藤沢駅前のスーパー「サミット」へ食料の買い出しに出かけた.
毎年のことだが,弁当コーナーは恵方巻が積み上げられていた.
私は,太巻寿司を「丸かぶり」できない.
中巻なら口に咥えることができるのだが,太巻はだめだ.上下の唇は太巻寿司の太さに開くのだが,それ以上口に入れようとしても歯がつっかえてしまって,「丸かぶり」できないのである.
だからこれまで,太巻寿司一本を「丸かぶり」で食うやつなんかいるのかよ,かつて漫才で口が大きいことを得意ネタにしていた京唄子 (平成二十九年没,享年八十九) さんだって無理だぜ,と思っていた.
ところがテレビのニュース中継 (《富士急ハイランド、富士山を眺めながら恵方巻を食べる「節分」イベント》下のスクリーン・ショット)
に出てきた男のアナウンサーは「それでは私も恵方巻をいただきます」と言って,太巻寿司を難なく口中に差し込み,上下の歯でスパッと噛み切ったので,私は驚いてテレビの前の椅子から転げ落ちた.
恵方巻と言う元々素性のはっきりしない似非「食習慣」をでっち上げたのがセブンイレブンであることはよく知られていて,Wikipediaにまで書かれている.
セブンイレブンが節分イベント「恵方巻」のキャンペーンを展開し始めた頃 (1990年~),その由来について,食文化史研究者が大阪の旦那衆の芸者遊びを紹介した.
遊びというのは,例の野球拳とか,そういったお座敷ゲームである.
その遊びに旦那が勝つと,対戦相手の芸者に罰ゲームをやらせたのだが,それは中巻き寿司を一本,尺八のようにして両手で持ち,口に咥えて食べるというものだったという.
最近の週刊文春によると,いま問題になっている芸人の松本人志が渋谷のマッサージ店で女性マッサージ師に性加害行為を強要したそうだが,この中巻寿司の罰ゲームは,松本が行ったとされる行為を寿司を用いて疑似化したものだ.
つまり巻寿司を咥えるという大阪発祥のこの罰ゲームは,わかりやすいエロなのであった.
そしてそのエロ的な由緒が,恵方巻の全国展開に邪魔になったことは想像に難くない.
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