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2024年1月 7日 (日)

電子カルテ

 先日,知人と互いの持病なんぞの話題で色々と情報交換したら,その知人が掛かりつけにしている病院では最近,電子カルテを導入したという話になった.
 
 少し前の某日,知人がその病院に出かけたら,待合室が大混雑していたという.
 コロナ禍以来,中規模の病院や,医師は院長一人という規模のクリニックでは予約制が普通になって,そういう医療機関の待合室はガラガラである.
 その知人の掛かりつけ病院でも予約制なので,いつもは待合室には数人の患者しかいないのだが,その日は大混雑だったのである.
「なんで今日はこんなに混んでいるだ?」と不思議に思って受付のひとに訊ねたら,よく報道されているマイナ保険証のトラブルではなく,電子カルテが原因ですという.
 例えば普段なら患者一人の診察に五分~十分かかるとして予約を受け付けているわけだが,電子カルテを導入したために患者一人に二十分も掛かるようになってしまったとしたら,そりゃ待合室はあふれるはずだ.
 結局,予約は午前中だったのに,いったん帰宅して午後に出直して,診察をしてもらったのは三時過ぎになった.
 午後に予約していた人たちは,その日は諦めて,日を改めて予約を取り直しになったのだろうとのこと.
 なぜそんなことになったのか.
 多忙な医師たちが,入力方法などについて操作のトレーニングなしのぶっつけ本番で,実運用に臨んだのだろう.
 
 私の掛かりつけの小さなクリニックは,紙のカルテをメインにして (つまり手書きだ) いて,しかしとてもじゃないけど紙カルテには書ききれない情報,例えば投薬の履歴 (これは処方箋を出すのに必要) や血液検査結果,心電図グラフ,エコーの画像データなどは,それぞれ別のソフトウェア (最近の言い方では「アプリケーション」だ) がPC上で動いている.イメージとしては,Windowsの窓がいくつも開いている状態である.
 そしてそれらのデータは,院長の頭の中で統合されている.
 電子カルテは,別個のデータ群を一つの「アプリケーション」内部で統合するのだが,重要なことは,統合管理している「だけ」だということである.「データがこうであるから,こういう治療が必要だ」という指針は電子カルテからは出てこないのだ.
 そう考えると,一人の医師が自分の頭脳で数百人の患者データを管理できるならば,あえて電子カルテにする必要はないことになる.
 しかしながら政府は電子カルテ導入を推進する方針だ.Wikipedia【電子カルテ】に次の記述がある.
 
2023年、政府は「医療DXの推進に関する工程表」を発表し、2030年までに概ね全ての医療機関において電子カルテの導入を目指すとの目標を打ち立てた。
 
 電子カルテを導入しなくても充分な医療行為が行える医師は,電子カルテを使用しないクリニックを運営すればいいじゃないかと私は思うが,政府はそう考えない.《2030年までに概ね全ての医療機関において電子カルテ》を導入するという.この政策には「なんのために」という目的意識が欠落していると私は思う.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


 

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