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2023年12月24日 (日)

シュフーズは非科学的な嘘をつくメディアである

 シュフーズ《炊き立てのご飯に納豆は合わない?意外と知らないNG行為2選!》[掲載日 2023年12月17日] から下に引用する.
 
納豆を炊きたてのご飯の上に乗せると、納豆に含まれるナットウキナーゼの効果が低下してしまいます。ナットウキナーゼはアルツハイマー病の予防に効果があるため、その働きを最大限に活かしたいですよね。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 納豆に含まれるナットウキナーゼがアルツハイマー型認知症に有効であるというエビデンスはない.現在までに知られているのは「納豆はヒトの女性の認知症リスクを低下させる傾向がある」ということだけである.その傾向をもたらすのがナットウキナーゼであることを示すデータはない.
 このことについて,国立がん研究センター《大豆製品摂取と認知症リスクとの関連 ― 多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告 ―》から下に引用する.
 
2006年から2016年までの追跡期間中(平均9.4年)に、要介護認定情報から4,911人が認知症と診断されました。男女とも、総大豆製品やイソフラボンと認知症リスクとの関連はみられませんでした。一方、個別の食品でみてみると、男性では関連は見られませんでしたが、女性では納豆摂取が多いグループで認知症リスクが低下する傾向がみられました(図1)。年齢を60歳以上と未満で分けて調べた結果、特に、60歳未満の女性では納豆摂取と認知症リスク低下との関連が統計学的有意にみられました(図2)。男性では総大豆製品および個々の大豆食品やイソフラボンと認知症リスクとの関連において、年齢での違いはみられませんでした。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上に紹介した研究は,納豆は《女性では納豆摂取が多いグループで認知症リスクが低下する傾向がみられ》かつ《60歳未満の女性では納豆摂取と認知症リスク低下との関連が統計学的有意にみられました》という結果を得ている.
 
 しかし,そもそもナットウキナーゼが,消化分解されずに酵素活性を維持したまま血中に入り,大脳に届くということは,常識的には絶望だと言っていいが,ナットウキナーゼは血中に入るという報告がある.(一島英治「ス ブ チ リ シ ンNAT ― 構 造,活 性,機 能 性,応 用」日醸造協会誌, 1993;88(7):537-42 / ただし日本醸造協会誌は査読なしの雑誌である).
 シュフーズの記事は,WIRED日本版《「納豆酵素はアルツハイマー治療に有望」研究結果》[掲載日 2009年2月24日] を下敷きにして書かれていると思われるので,そこから下に引用する.引用文に続いて註釈を述べる.
 
納豆とは、匂いのきついネバネバした大豆製品だ。しかし、アルツハイマー症を撃退してくれる可能性がある。
 日本のテレビ番組『Iron Chef(料理の鉄人)』のテーマ食材にもなった納豆は、ナットウキナーゼという酵素を含む。ナットウキナーゼには脳のプラークを分解する作用があり、化学者たちは画期的な治療薬が生まれるかもしれないと期待している。
 ナットウキナーゼは理論上、アミロイドと呼ばれる有害なタンパク質を分解してくれる。アミロイドはアルツハイマー症の患者の脳に線維性の沈着物を形成する。
「アミロイド線維を分解するナットウキナーゼの能力はかなり有望だ」と、[カリフォルニア大学サンフランシスコ校]グラッドストーン神経疾患研究所に所属するアルツハイマー症の専門家Li Gan氏は言う。「健康食品に含まれる酵素なので、副作用も少ない可能性がある
 アルツハイマー症は500万人以上を苦しめる変性疾患で、治療法は確立されていない。中度の記憶障害を少し和らげる薬はいくつかあるが、病気をさらに理解し、治療のための新たな対策を作ることが求められている。
 国立台湾大学の化学者Rita Chen氏のチームも、ナットウキナーゼが3種類の有害なタンパク質の線維を分解できることを明らかにしている。『Journal of Agricultural and Food Chemistry』誌に掲載された論文の中で、試験用の薬は経口摂取すれば体の各部に届けられるが、脳には届かないかもしれないと述べている。アルツハイマー症の患者は脳に作用する薬を必要としている
 それでも、もしナットウキナーゼを脳で作用させることができれば、ただの対症療法ではなくダメージを修復する方法がついに得られる可能性がある。ただし、タンパク質の線維を分解すると、状況がさらに悪くなる危険もある
「線維を分解することは必ずしも有益とは限らない」とGan氏は指摘する。「例えば、粉々にされた線維が線維性ではなくなり、集合すれば、かえって有害になる可能性もある」》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
1.《ナットウキナーゼは理論上、アミロイドと呼ばれる有害なタンパク質を分解してくれる
 「理論上」という表現は誤解を招く.単に in vitro (試験管内) の結果に過ぎない.ナットウキナーゼは試験管内でアミロイドを分解するが,それはナットウキナーゼがアルツハイマー型認知症に有効であることは意味しない.
2.《健康食品に含まれる酵素なので、副作用も少ない可能性がある
 いわゆる「健康」食品には健康に有害なものが存在する.昔,東京ビッグサイトだったか幕張メッセだったか忘れたが,「健康」食品の展示会に行ったら「喫食すると宇宙の波動と共鳴する」という食品のブースがあった.こういうのはまともな精神にも有害である.
3.《国立台湾大学の化学者Rita Chen氏のチームも、ナットウキナーゼが3種類の有害なタンパク質の線維を分解できることを明らかにしている
 "Amyloid-Degrading Ability of Nattokinase from Bacillus subtilis Natto" (J. Agric. Food Chem. 2009, 57, 503–508) を指す.続報は見当たらない.
4.《試験用の薬は経口摂取すれば体の各部に届けられる
 文章がこなれていないが,《試験用の薬》とはナットウキナーゼの標品と思われる.また《経口摂取すれば体の各部に届けられる》はナットウキナーゼが血中に入ることを指していると思われる.
5.《脳には届かないかもしれない
 この記述は,ナットウキナーゼはいわゆる血液脳関門を透過できないかも知れないということを意味している.(註;脳を守るバリア:血液脳関門)
6.《タンパク質の線維を分解すると、状況がさらに悪くなる危険もある。「線維を分解することは必ずしも有益とは限らない」とGan氏は指摘する。「例えば、粉々にされた線維が線維性ではなくなり、集合すれば、かえって有害になる可能性もある」
 これは妥当な見解だろう.ナットウキナーゼがアルツハイマー型認知症に有効であるかどうかは in vitro ではなく動物実験で検討されねばならないからである.
 その動物実験だが,経口ではなく血管にナットウキナーゼを注入投与した場合は血中繊維の分解効果が認められたが,経口投与で有効かどうかは明らかではない.
 これについてWikipedia【ナットウキナーゼ】には次の記述がある.
 
ナットウキナーゼ(nattokinase)は、納豆の発酵過程で納豆菌が産出する酵素である。須見洋行らにより1980年に発見され、1986年に発表された。俗に「血液をサラサラにする」と言われているが、納豆またはサプリメントを摂取した場合の有効性について信頼できる十分な情報は見当たらない。
 試験管内での実験や血液に直接入れた動物実験では、フィブリンの分解効果が認められた。しかしナットウキナーゼは酵素(たんぱく質)であるため、経口摂取した場合は胃腸の消化酵素でアミノ酸やペプチドに分解され、酵素としての性質を失う。分解を免れたものも分子が大きすぎて、そのまま腸の細胞の中に取り込まれて血中に移行することはない。分解吸収されたペプチド断片等の薬理作用の可能性が考えられるが、経口摂取したナットウキナーゼが消化管から吸収されて血液中で作用する明確な根拠はなく、さらなる研究が必要とされる。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上の引用箇所もごく常識的な見解である.ナットウキナーゼが血液中に入るという (既に紹介した) 一島英治の説は古い論文だが,最近の文献はこれに否定的である.
 以上をまとめれば,ナットウキナーゼがアルツハイマー型認知症に有効であるとの仮説を支持するエビデンスは現在のところ存在しない.
 しかるにシュフーズ《炊き立てのご飯に納豆は合わない?意外と知らないNG行為2選!》[掲載日 2023年12月17日] は《納豆を炊きたてのご飯の上に乗せると、納豆に含まれるナットウキナーゼの効果が低下してしまいます。ナットウキナーゼはアルツハイマー病の予防に効果があるため、その働きを最大限に活かしたいですよね。》と根拠のない説を拡散している.
 これに限らずシュフーズというネットメディアには目に余る嘘が多い.困ったことである.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)



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