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2023年12月16日 (土)

東電に原発をおねだりした人 /工事中

 NHK《映像の世紀バタフライエフェクト 田中角栄 列島改造の夢と転落》[初回放送日: 2023年12月4日] から下に引用する.
 
「目白御殿」と呼ばれた田中角栄の自宅に、公共事業の誘致を求めて、全国から自治体や企業の担当者が陳情に押しかける映像が残っている。民主政治とは陳情政治。高まいな理想よりも目の前の現実。新潟の農家に生まれ、高等小学校卒、土建会社出身の田中角栄は、何もかも本音むき出しだった。地方と都市の格差解消の手段が道路と新幹線だった。開発を見越して地価は高騰、住民は地域発展を夢見た。田中角栄は日本に何を残したのか。
 
 上に引用したのは番宣サイトの紹介文だが,放送内容について担当ディレクターがSNSに投稿した記事もある. 
 そのNHK《田中角栄とは何者だったのか?》[掲載日 2023年12月5日 13:08] から下に引用する.
 
田中角栄がこの世を去ったのは、今から30年前の1993年。
30代の私にとって田中角栄は、かなり昔を生きた人です。そして金権政治の象徴という負のイメージが強くありました。
 しかし、当時の映像に映るその姿は、今の政治家とは異なる不思議な魅力であふれていました。喜怒哀楽がにじみ出る人間臭さ。聞き取れない部分も多いけど、何度も聞きたくなるダミ声。さらに、信念だった地方と都市の格差解消は、地方出身の私が今も共感できるものでした。
 人々の心をつかんでいたはずの田中角栄は、どこで道を誤ったのか。
 番組制作後も、脳裏に焼き付いて離れない映像があります。
「世論というものは、新聞じゃないんだよ。テレビじゃないんだよ。世論というものは選挙だ。選挙の結果が世論だ。そんなこともわからんでどうするんだ。そうでしょ」
(田中角栄インタビュー)
 当時、選挙に出ればトップ当選。目白の闇将軍として政界を牛耳っていた田中は、なぜこんなに強気な姿勢を見せたのか。すべては国民の選択だと言いたかったのか。
 立花隆が「良くも悪くも戦後日本を体現したシンボル的存在」と表現した田中角栄。
功罪併せ持つこの政治家に対して、複雑な感情が私の中で渦巻いています。
(担当ディレクター)
 
 昔も今も変わらず,かなりの数の日本人が,国政選挙や地方選挙の票を金品で売る.「この国の政治は斯くあるべし」という見解に基づいて投票するのではなく,「私の一票をいくらで買ってくれるのか」との判断基準で候補者を決める.
 だから国政選挙候補者は,地元の地方議員や有力者に現金を配って「票の取りまとめ」を依頼する.
 近年の最も悪質な例は,河井克行元法相が妻と共謀して行った買収である.
 この事件について朝日新聞デジタル《河井克行元法相が仮釈放 2019年参院選めぐる買収の罪で実刑判決》[掲載日 2023年11月29日 15:30] から下に引用する.
 
2019年の参院選をめぐる大規模買収事件で公職選挙法違反(加重買収など)の罪で実刑判決が確定し、服役していた河井克行元法相(60)が29日、栃木県内の刑務所から仮釈放されたことが、関係者への取材でわかった。
 河井元法相は妻の案里氏(50)=同法違反(買収)罪で有罪確定=を当選させるため、地方議員ら100人に選挙運動報酬として現金計約2871万円を配ったとして、21年6月に懲役3年追徴金130万円の判決が言い渡された。21年10月に控訴を取り下げ、実刑が確定して収監された。服役の満期は24年だが、反省の態度などが考慮されたとみられる。
 河井元法相は19年9月に法相に就任したが、選挙買収疑惑を受けて約1カ月半後に辞任。20年6月に案里氏とともに逮捕され、21年4月に議員辞職した。初当選した案里氏も同年2月に議員辞職し、有罪判決の確定を受けて当選無効となった。
 現金を受け取った地方議員ら34人も公選法違反罪で略式や在宅で起訴され、全員が一審で有罪と認定された。
 
 上に引用した河井元法相夫婦の買収事件のように,国政選挙ともなれば数千万円の現金が必要になる.
 もちろん授受に際して領収書発行を要しない,いわゆる裏金である.
 地方議員を通じて行われる買収の他に,企業に提供する裏金もある.これは「企業ぐるみ選挙」といい,経営者に指示された候補者に社員が揃って投票するような仕組みである.
 今はどうか知らないが,私が若い頃の国政選挙では「企業ぐるみ選挙」はごく普通のことだった.(参照;日本大百科全書(ニッポニカ)《企業選挙》)
 候補者から提供された裏金は経営者の懐に入るが,経営者の指示通りに投票した社員には賞与や昇給でアメが与えられる.
 この「企業ぐるみ選挙」が堂々と行われるようになったのは,田中内閣時代の昭和四十九年 (1974年) に行われた参議院選挙であるが,この参院選は「金権選挙」とも呼ばれた.Wikipedia【金権政治】から下に引用する.
 
日本では1974年の参院選で田中角栄首相は企業から集めた数百億円でヘリコプターをチャーターして栃木県を除く46都道府県に訪れて演説等の選挙活動を行う一方でタレント候補を企業と組み合わせて立候補させるなど多額の金銭を駆使して集票する選挙戦を行い、結果として買収などで大量の選挙違反逮捕者を出したため「金権選挙」と批判された。この選挙では全国区に立候補をした糸山英太郎の陣営から142人の逮捕者や1287人の選挙違反検挙者を出すなど当時としては最大規模の選挙違反事件に発展した。
 また参議院議員通常選挙の全国区制については全国各地を遊説する上に加えてポスターやビラに多額の選挙資金が必要となったため、「全国区」ならぬ「銭酷区」と呼ばれた。また「8(10)億円で当選し7(9)億円で落ちる」と言われていたことから、「八当七落」(「十当九落」)とも呼ばれた(受験勉強における三当五落――睡眠時間3時間で、残りの余暇全部勉強に充てれば合格、5時間も寝てたら不合格――のもじり)
 
 国政選挙候補者の当落が金銭による集票で決まるという,半世紀前からの古めかしい不正な仕組みがまだ生きていることを,かつて安倍派の議員だった豊田真由子氏がテレビ番組で述べている.
 日刊ゲンダイDIGITAL《元安倍派・豊田真由子氏が「羽鳥慎一モーニングショー」で暴露!“パー券販売”の驚愕実態にSNS震撼》[掲載日 2023年12月14日 13:50] から下に引用する.
 
豊田氏はこの日朝に放送されたテレビ朝日系の情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」に出演。「令和のリクルート事件」「パー券疑獄」などと呼ばれ始めた、自民党最大派閥「安倍派」(清和政策研究会)の政治資金パーティー収入をめぐる裏金疑惑について、「元安倍派」の肩書きでコメントしていたのだが、この内容が衝撃的だった。
「頼れる身内企業を持たないペーペーの議員はパーティー券を買ってもらう為に細かく回って歩いて頭を下げて大変なんです」
「『(金を)持ってこい、じゃないと応援しないぞ』と脅かされて、致し方なくそうなってるケースもいっぱいある」
 安倍派のパー券販売の実態について、自身の過去の経験を振り返りつつ、こう明かしていた豊田氏。裏金やキックバック自体について具体的に踏み込むことはなかったものの、自民党支持者の中には裏金を要求する人たちがいることや、選挙で応援が欲しくて裏金を配ってしまう候補が存在する可能性について“暴露”したのだ。
 
 田中角栄は昭和四十七年五月に佐藤派を割る形で田中派を結成し,同六月に「日本列島改造論」(日刊工業新聞社刊) を発表し,続いて七月五日に自由民主党総裁に就任し,同月六日に第一次田中内閣が成立した.
 この当時の田中角栄のエピソードには,資金繰りに困った議員に数百万円の現金が入った封筒 (もちろん領収書は不要) を,細かい事は聞かずにポンと渡したといった類のものが多い.そしてそのカネで窮地を脱した議員はその後は角栄に忠誠を尽くしたという.つまり多額の現金を配布できることが派閥の領袖たる資格であることを角栄は示したのである.
 このような強大な資金力を背景にして田中角栄はライバル (福田赳夫) を圧倒して 宰相の地位に登り,「日本列島改造論」政策を推進し,昭和四十七年十二月の総選挙では全国遊説で《皆さん,まだまだ日本にはたくさんの土地がありますよ》(「映像の世紀 バフライエフェクト」で放送された角栄の演説録音) と述べて,国民の土地投機熱を煽った.
 国民は成金を夢見て「日本列島改造論」を読み漁り,不動産投機に熱中し,日本中を拝金主義が覆った.
 それを端的に表現したのが角栄の《世論というものは、新聞じゃないんだよ。テレビじゃないんだよ。世論というものは選挙だ。選挙の結果が世論だ。そんなこともわからんでどうするんだ。そうでしょ》である.
「選挙はカネでどうにでもなる,つまり世論はカネでどうにでもなる」が角栄の主張だったのである.
 そして日本人の民度は,角栄の言うとおりであった.
 カネがないから清貧などと気取っているが,札束で頬を叩かれればたちまち転ぶのが多くの日本人の正体であった.
 その典型例を私たちは知っている.


 いずれにせよ田中角栄は国政をカネまみれにした.
 

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