ブギウギの発音
スポニチアネックス《朝ドラ「ブギウギ」 博多大吉が内容より気になったこと 鈴木アナに注意「早急に首藤さんと決めておいて」》[掲載日 2023年10月2日 09:01] から下に引用する.
《女優の趣里(32)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「ブギウギ」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は2日、第1話が放送された。
直後の「あさイチ」(月~金曜前8・15)の“朝ドラ受け”では、司会の華丸大吉は番組タイトルのイントネーションが気になったようで「(「おはよう日本」の)朝ドラ送りで首藤(奈知子)アナウンサーが“さあ、今日から『ブギウギ』”っておっしゃったから。イントネーションあれ?って思って」と“ブ”にアクセントを付けた呼び方への違和感を口に。鈴木奈穂子アナウンサーは「ひとまず、『ブギウギ』(“ブ”にアクセント)でいきましょうか、って来たんです。ちょっとまた変わるかもしれませんが…」と“通達”があったことを明かした。
大吉は「僕は普通に『ブギウギ』(平らなアクセント)って言っちゃいそう」と困惑。鈴木アナが「まあ、どっちでもいいです」と言うと、「早急に首藤さんと鈴木さんで決めておいてください」と“注意”した。》
首藤アナは英語に堪能なのではないかと思われる.
ネイティブ・スピーカーの発音に馴れている人は,どうしてもネイティブの発音に引きずられて,外来語 (つまり日本語化した英語) の発音から外れる.
つまり《朝ドラ送りで首藤(奈知子)アナウンサーが“さあ、今日から『ブギウギ』》と述べた際に《“ブ”にアクセント》をつけたのは当然なのである.
これに対して大吉は,英語ネイティブの発音を知らず,外来語「ブギウギ」の普通の平板な発音に馴れている.これが二人の違いである.
一般に欧米の言葉は,日本で使われるようになった初期には,元の発音に近く発音されるが,外来語として定着すると平板な発音になる傾向が強い.(顕著な一例は「サーファー」)
この現象についてはNHK《外来語のアクセントの現況》に解説があるので,冒頭の箇所を下に引用紹介しておく.

さて東京ブギウギのこと.
Wikipedia【東京ブギウギ】に次の記述がある.
《「東京ブギウギ」は、鈴木勝の作詞、服部良一の作曲、笠置シヅ子の歌唱により1947年発表(ただしレコード発売は翌年1月)されてヒットしたブギのリズムによる日本の歌謡曲。「青い山脈」「リンゴの唄」などと並んで、終戦直後の日本を象徴する曲としても有名である。》
笠置シヅ子は大正三年 (1914年) 八月二十五日の生まれ.作曲者の服部良一は明治四十年 (1907年) 十月一日生まれである.
笠置シヅ子の歌唱をCDなどで聴けばわかる通り,ジャズ奏者でもあった服部良一は当然ながら「ブギウギ」の「ブ」にアクセントを置いて作曲し,笠置シヅ子は服部良一のアクセント指示通りに歌った.当時,「ブキウギ」は英語の発音に倣って発音されたからである.
そして戦後のラジオ放送に耳を傾けた軽音楽ファン大衆も「ブギウギ」の「ブ」にアクセントを置いて発音し,歌った.
ちなみに,ほぼ同時期に大ヒットした美空ひばりの「東京キッド」が昭和二十五年 (1950年) のレコード発売で,ひばりは昭和十二年 (1937年) 五月二十九日生まれ.
また戦前から戦後にかけて大人気を博した歌手の明日待子は大正九年 (1920年) 三月一日生まれであったから,笠置シヅ子はかなり遅咲きのスターであった.(明日待子は,NHKが《アイドル》のヒロインとして2022年に古川琴音主演でドラマ化した)

映画「東京キッド」の美空ひばり (パブリック・ドメイン画像;Wikimedia Commons File:Hibari Misora 4.jpg)
では「ブギウギ」が《在来語の仲間入り》をして発音が平板化したのはいつ頃か.
昭和の終わり頃,テレビの歌謡番組で「懐メロ」としてしばしば「東京ブギウギ」は笠置以外の歌手によってカバーされたが,番組司会者はまだ「ブギウギ」の「ブ」にアクセントを置いて発音していたと記憶している.
私自身その記憶があるから,今でも「ブギウギ」は「ブ」にアクセントを置いて発音する.
しかし,たぶん平成の時代に,多くの外来語の発音が在来語の仲間入りして平板化したが,「ブギウギ」もその一つだったろう.
それは若者たちが日本語の変化を主導するようになったからである.
私のような年寄りの「彼氏」の発音は「か」にアクセントがあるが,若い人たちは「カレシ」を平板式で発音する.
「サーファー」「モデル」「バイク」「ビデオ」等々も然り.(国立国語研究所《国語研の窓 第9号 アクセントの平板化》,2001年10月1日発行)
ではなぜ若者たちは平板式に発音するのか.
いちいちアクセントを覚えるのがダルイからだろう.
英語でも日本語 (外来語を含む) でも,仲間内ではなんでも平板に発音しときゃいいのである.バカ同士ならそれで通じる.
会社の会議で表計算ソフト「エクセル」を平板式に発音して,それを部長あたりが「発音が違う」と言ったら「はあ」と鼻で笑っとけばいのだ.どうせそのうち定年退職でいなくなるから.
そういうわけで,今の連中は平板式発音しか知らないから,朝ドラ《ブギウギ》の登場人物たちも「ブギウギ」を平板式で発音するのではないか.
もし朝ドラ《ブギウギ》の物語が正しい時代考証に基いて演出されるなら,俳優たちは笠置シヅ子と服部良一たちと同じ発音をするはずである.
すなわち,大吉は《「早急に首藤さんと鈴木さんで決めておいてください」と“注意”した》のだが,「ブギウギ」の発音は時代考証に関わることであるから,首藤アナと鈴木アナで決める事柄ではないのだ.
NHKドラマの時代考証がダメなのは承知でそう書いておく.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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