通夜
十七年も一緒に暮らした愛犬が未明に逝った.
容体が深夜に急変してからずっと横にいて,間歇的に携帯酸素ボンベを口に吹き付けて呼吸を楽にしてあげたのだが,10リットルのボンベはすぐ空になる.用意しておいたボンベをすべて使い切ったのが未明の四時過ぎ.
すると暫くして,ハッハッと荒い息が,やがてゆっくりになり止まった.
私は嗚咽を,歯を食いしばって堪え,彼女が生を終えた時刻を記憶した.
そして彼女の四肢を整えた.死後硬直が始まる前に遺体の形を整えるのがよい,とネットの記事に書かれていたからである.
適当な大きさの段ボール箱を物置から探しだして,老いてからはずっと上に乗っていたラグを箱に入れ,彼女を横たえて,その上に好きだった毛布を掛けた.
市の斎場に電話をして,小動物の個別火葬の予約を取った.合同火葬はいつでもやってもらえるのだが,遺骨はもらえない.
個別火葬は予約制だが,遺骨を骨壺に納めて戻してもらえる.
それから,昼前に街に出かけて花を買ってきた.カットフルーツのメロンも買った.
実は,彼女はメロンの甘い果肉部分ではなく,果皮に近い白いところを好んで食べたのだが,そんなのは売っていないので,その代替だ.
花は,段ボール箱の中の毛布の上に置いた.
箱の上に,彼女がまだ若かった頃の写真と,毎日使っていた皿に果物を置き,水の器と並べて置いた.
幼い頃は被毛の色がアプリコットだったのだが,十年くらい経ったらかなり薄い色になった.人間なら白髪なんだろう.
エアコンをオフにし,ホットカーペットのスイッチも切り,室温を下げた.
火葬は,亡くなった朝の翌日の予約が取れた.一晩だけだから保冷剤は入れない.
こうして十七年間の思い出を辿る通夜が始まった.

| 固定リンク
「新・雑事雑感」カテゴリの記事
- 田舎者(2026.09.12)
- 推敲しないライターはクズだ /工事中(2026.09.06)
- カスハラを目撃したぞ /工事中(2026.09.05)

最近のコメント