火葬
長年一緒に暮らした愛犬や愛猫が亡くなったあと,納骨するための霊園があちこちにある.
横浜市は,小動物を合同火葬にすると共同埋葬施設に納骨してくれるのだが,個別火葬の場合は飼い主が焼骨を引き取ることになっている.
それからあとは飼い主によって色々で,霊園に納骨する人もいれば,手元供養にする人もいる.
前々から決めていたのだが,私は死んだら自分自身を散骨にするので,愛犬もその時に一緒に散骨する.
その時まで手元供養にしておこうというわけだ.
個別火葬の予約は土曜日の午前十時だった.
予約電話をした際に係のかたの説明では「火葬の十分前には手続きをして欲しい」とのことだったので,早めに自宅を出た.公共交通機関利用が望ましいということなので,バスで行くのである.
自宅の近くのバス停からまず戸塚駅近くのバスセンター (戸塚バスセンター) に行き,そこで別のバス系統に乗り換える.
ところが道が混んでいたのか,最初のバス停で待たされたため,戸塚バスセンターに着いたのは九時半を過ぎてしまった.
このバスセンターで,目的地の戸塚斎場行きのバス系統に乗り換えたら完全に遅刻である.
そこでタクシーを使うことにしたら,ピタリの時刻に斎場に到着できた.
もちろん市営の斎場は人間の火葬をする施設で,犬や猫など小動物の火葬は本業ではない.
そのため事務所も火葬施設も,案内表示板がなければそれとわからぬくらいの簡素なものだった.
しかし係員のかたは親切で,丁寧に手続きの説明をしてくれた.
手続きをして待合室で待っていると,一時間もかからぬうちに火葬の係のひとが火葬施設のほうへどうぞと迎えにきてくれた.
部屋に入ると,机の上のステンレスの二つのトレイに遺骨が入れられていた.
一つのトレイには,頭骨と,人間でいえばのど仏に相当する骨と,肩甲骨など.
もう一つのトレイには,四肢の骨と肋骨,椎骨などが載せられていた.
その焼骨を入れる骨壺は大小を選べるようになっていたので,小さい壺を選んだ.
大きい骨壺は手元供養にはちょっと大きいように思われたからである.
係のひとが「小さい骨壺に入れるには,大きい骨をすこし砕くことになりますがよろしいでしょうか?」と言うので「お願いします」と答えた.
私が,愛犬の四肢と椎骨などの焼骨を割り箸で骨壺に入れると,係の人がそれを砕いた.
次に頭骨など砕かぬ焼骨を壺に入れた.
焼骨をすべて入れ終わると,係の人は骨壺にフタをし,フタが外れぬようにテープで封をした.
それから壺を銀色の六角袋 (骨壺カバー) に入れてくれた.
骨壺は,人間の葬儀では位牌を持つ喪主の次に故人と親しい人が持つことになっているが,私の愛犬は私一人で見送ったし,彼女は無宗教だったので位牌はないから,私が骨壺を持った.
すべて済んだあと,私は事務所の受付に戻り,親切に対応してくれた職員さんに礼を言ってから斎場を後にした.
小さな小さな軽い骨壺を手に持ち,誰もいないバス停でバスを待っている時に,また少し泣けた.

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