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2023年10月18日 (水)

ほうれん草のおひたししは程々に

 家庭情報サイトのトクバイニュース《ほうれん草はアク抜き必須!手軽な方法とアクの成分「シュウ酸」について》[掲載日 2023年4月27日] から下に引用する.トクバイニュースは小売店の特売情報誌.この記事の筆者は管理栄養士の藤倉詩織さん.
 
ほうれん草にはえぐみを強く感じさせる「アク」が多く含まれます。このアクの正体は、ほうれん草に含まれる「シュウ酸」という成分。アクが残ったほうれん草は、えぐみにより料理の仕上がりを悪くしてしまったり、私たちの身体に必要のないシュウ酸を摂りすぎてしまったりするデメリットがあります。
 そこでほうれん草は調理前に「アク抜き」という下処理を行います。シュウ酸は水に溶けやすいため、アク抜きといえば「たっぷりのお湯で茹でこぼす」方法が一般的です。実際に、鍋に沸かしたお湯で3分間茹でたところシュウ酸がおよそ37〜51%減ったというデータもあります(※)。このようにほうれん草は茹でることで簡単にアクを減らすことができます。
 ただしアク抜きをしようと長時間茹でてしまうと、今度は火が通りすぎて食感が悪くなったり、水に溶けやすい栄養成分がどんどん流れ出たりしてしまいます。シュウ酸を減らしつつ、食感や栄養価をできるだけ損なわないベストな茹で加減は「沸騰した湯に入れて2~3分程度」です。あわせて覚えておくと調理の際に役立ちますよ。
※参照:Mindsガイドラインライブラリ「尿路結石症診療ガイドライン2013年版」》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 上の引用中の《実際に、鍋に沸かしたお湯で3分間茹でたところシュウ酸がおよそ37〜51%減ったというデータもあります》の出典は,草間正夫ら「野菜類の調理に関する生化学的研究 ホウレン草のシュウ酸について」(栄養学雑誌,1963;21;41-5) である.下に一部を引用する.
 
ホウレン草を茄でることによるシユウ酸の除去量は,葉身では単位重量当り,豊葉 53.21%,ニユーアジヤ 43.49%,新日本 46,27%,全量は豊葉 50.62%,ニユーアジヤ 37.39%,新日本40.83%である。葉柄では単位重量当り,豊葉 76.09%,ニユーアジヤ 49.65%,新日本 65.25%,全量は豊葉 80.55%,ニユーアジヤ 61.36%,新日本 73.83%である。また,葉身と葉柄の合計では,豊葉 51.32%,ニユーアジヤ 37.40%,新日本 40.93%である。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った.また,豊葉,ニユーアジア,新日本はホウレン草の品種である)
 
 トクバイニュースからの引用末尾の「尿路結石症診療ガイドライン2013年版」の出典は,公益財団法人日本医療機能評価機構「Mindsガイドラインライブラリ」《尿路結石症診療ガイドライン 2013年版》である.下に一部を引用する.
 
ゆでることと食べ合わせが重要である。シュウ酸は水溶性なので,ゆでることによって減らすことができる。ホウレンソウについては詳細に検討され,3分間ゆでることでシュウ酸の除去量は37〜51%になる》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
 
 冒頭に紹介したトクバイニュースに書かれている情報の資料説明は以上だが,ほうれん草に含まれるシュウ酸に言及している他の情報サイトでも,ほうれん草の茹で時間は3分がよいとしている.
 そこで,料理実技を解説しているサイトではどのような説明がなされているか,調べてみた.

クラシル《ほうれん草のゆで方 レシピ・作り方
作り方
 1.ほうれん草の根元を少し切り取り、ほうれん草の根元を上にして持ち、包丁で茎の中心に1cm程度の深さで十文字に切りこみを入れます。
 2.たっぷり水が入ったボウルの中で、根元を手で擦りながらふり洗いし、水を取り替え、反対側の葉も洗い、全体の汚れを落として水気を切ります。
 3.沸騰したお湯に塩を入れます。
 4.ほうれん草の葉の部分を手で持ち、茎の部分だけ30秒ほどゆでます。
 5.全体をお湯の中に入れ、30秒ほどゆでます。途中箸で上下を一度返し、湯切りします。
 6.氷水に入れ、冷まします。
 7.しっかり絞り、水気を切り、4等分に切り分けます。
 
 白ごはん《ほうれん草のゆで方/ゆで時間のまとめ
ほうれん草のゆで方/ゆで時間
 ほうれん草をゆでるときのポイントは『塩加減』と『輪ゴムを使うこと』、それから『茎と葉を時間差でゆでること』です。
 洗い終えたほうれん草は、輪ゴムで中央をまとめ、鍋に湯を沸かしたらティースプーン山盛り1杯の塩を加えます(塩気がゆでたほうれん草の味わいを引き立ててくれます)。
 ※輪ゴムを使うことで、ゆでる→冷ます→切るという後の流れがぐっとやりやすくなるのでおすすめです。
 ゆで方は、はじめにほうれん草の葉を手で持って茎を湯に浸け、茎の部分だけを先に30秒ほどゆでます。
 30秒経ったころに全体を落として、箸でほうれん草を湯にしずめます。
続けてさらに30秒ほどを目安にゆでます(途中1回ほうれん草の上下を入れ替えます)。すぐに冷水(夏場なら氷水)にほうれん草を取って冷まします。
 冷めたらほうれん草を軽くしぼってまな板に移し、料理に応じた幅に切り分けます。
ほうれん草は切った後に水気が出やすいので、料理に使う幅に切った後、もう一度しっかり水気をしぼることも大切。醤油&かつお節でシンプルに食べても美味しいですし、おひたしや汁物の具としてもおすすめです。
 
キッコーマン・ホームクッキング通信《ほうれん草の ゆで方は?下ごしらえや 冷凍保存の コツなども紹介!
鍋に湯を沸かし、色止めのため水2~3リットルに対して小さじ1/2くらいの塩を加える。
 根元から半分程度までを湯に入れ、まずは約30秒ゆでる。その後、葉先も入れて全体を1分~1分半ほどゆでる。
 アク抜きと色止めのため、ボウルに張った冷水に入れて冷やす。
 根元を上にしてそろえ、上から下へ水気を絞る。
 4~5cmの長さに、食べやすく切る。
 
DELISH KITCHEN《料理の基本!ほうれん草のゆで方
1【洗い方】ほうれん草は根の端を切り落とし、十字に切り込みを入れる。ボウルにたっぷりの水(分量外:適量)を入れて、水の中で振りながら洗う。葉の部分もよく洗い、水気を切る。
 2 鍋に水を入れてわかし、塩を入れ、ほうれん草を1/3量ずつ根元から加え、30秒程ゆでたら、葉を加えて10秒程さっとゆでて、冷水にとる。
 
ニチレイ・ほほえみごはん《【ほうれん草のゆで方】ゆで時間やレンジ加熱、冷凍保存方法も解説
ほうれん草のゆで方、ベストはたった1分ってご存知でしたか? 美味しさはもちろん、旨みや栄養も逃がさない正しいゆで方を、管理栄養士で野菜ソムリエ上級プロの岸村康代さんに教えてもらいました。
【ほうれん草のゆで方①】基本は「鍋で1分」が正解!
 ベストなゆで時間は1分。これ以上長くなるとやわらかくなりすぎ、旨みや栄養も逃げてしまうので、キッチンタイマーで計りましょう。冷凍保存するなら10秒縮めて50秒に。
●鍋を使った、ほうれん草のゆで方
 1 流水に当て、根元を開きながらアルミホイルを丸めたものを使って洗う
 2 根元が太いものは、熱が通りやすいよう十字の切り込みを入れ、輪ゴムで束ねる(後で切るときにラク)
 3 茎だけを30秒ゆでた後、全体を沈めて30秒ゆでるほうれん草1束(約200g)の場合、湯の量は鍋のサイズにもよりますが、ほうれん草が十分に浸る約1Lが適量。1Lに対し塩小さじ1を入れて沸かし、ほうれん草を根元から入れ、茎だけを30秒ゆでる(やけどに注意)。

ほうれん草をゆでている写真
 全体を湯に沈め、15秒程度で裏返し、さらに15秒たったら引き上げる。冷凍する場合は、解凍調理時の加熱を考慮して10秒ほど短くし、茎が太めのものや葉が硬めのものは少し長めにゆでる。
 
カゴメ監修WEGEDAY《[ほうれん草]栄養や選び方、保存、下ごしらえ、レシピなど
ほうれん草の茹で方
 たっぷりの湯(ほうれん草の重量の5倍位)をわかし、塩を湯の0.5%加える。1リットルに小さじ一杯が目安。
 ほうれん草を立てるように持ち、茎が根元から湯につかるように入れる。10秒程たったら葉の部分も入れ、約1分茹でる。根元の部分に少し固さを感じるくらいが茹で上がりの目安。
 ボールに水を用意し、茹であがったほうれん草を流水で冷やす。
 
 まだまだ他にもあるが,大同小異である.
 すべて,ほうれん草の茹でかたは「葉柄部分を先に鍋の熱湯に浸して加熱し,その後に葉の部分も湯に入れる」という順序で行う.
 これは周知の通り,熱が通りにくい葉柄 (茎のように見えるが,正しくは葉柄という) を先に湯に浸し,葉身 (葉) を後から湯に浸すことで,全体の茹で具合を均一にするためである.
 そこで,ほうれん草の茹で時間を,葉柄を熱湯浸漬してから引き上げる時間までとして,下に列挙する.
 
DELISH KITCHEN 40秒
クラシル 1分
白ごはん 1分
ニチレイ 1分
カゴメ 1分10秒
キッコーマン 1分30秒~2分
 
 キッコーマンは1分30秒~2分としているが,1分前後茹でるのが普通のようだ.
 私自身も1分熱湯に浸して,それでよしとしている.それ以上茹でると食感が損なわれる.
 いわんや,栄養学的見地からの「3分茹でる」は論外である.ポパイのほうれん草缶詰じゃないんだからね.
 すなわち「ほうれん草を茹でることによりシュウ酸を減らして尿路結石を予防する」は現実離れしたお話である.
 尿路結石のことを気にするなら,少量のほうれん草をたまにしか食べないのが最も良い解決策である.
 食事の副菜として,ほうれん草のお浸しを少し食べる程度でよいのである.
 それでもシュウ酸が気になるのであれば,ほうれん草のお浸しには花鰹やシラス干しなどを振りかけてよく咀嚼して食べると,シュウ酸が水不溶性のシュウ酸カルシウムになって吸収されにくくなるという説が有力である.(ただし確たるエビデンスはないようだ)
 それと,尿路結石に関してはほうれん草が悪玉として挙げられるが,キャベツの外側の色の濃い葉,ブロッコリー,サツマイモなどもシュウ酸量が多い.
 ブロッコリーのサラダとか焼き芋なんかをワシワシと馬のように食っている御仁が平気で生きているのを見ると,ほうれん草ごときは大したことはないという気がする今日この頃ではある.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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