へりくだって抗議する人
テレ朝news《“留守番禁止”条例案取り下げも…飛び交うヤジ 議会大荒れ》[掲載日 2023年10月13日] から下に引用する.
《曲がりなりにも条例案は委員会を通過し、13日の本会議で可決する見込みでした。昼前、自民党県議団の入るフロアには反対署名の発起人ら市民団体の姿が。10万を超える反対署名を手にしています。
署名を呼び掛けた野沢ココさん:「この思いを自民党県議団の皆様に届けたい」
面会室に田村団長が現れました。反対の署名、そして意見書が手渡されます。
自民党県議団 田村琢実団長:「大変多くの方にご署名をいただいたと、責任を感じております。子育て世代の皆様方のお声を反映できる政策を」》
反対署名の発起人である野沢ココさんの発言を,テレ朝newsは,テキストと動画のテロップの両方とも《この思いを自民党県議団の皆様に届けたい》とした.
しかしテレ朝newsの動画では,実際の野沢さんの発言は「この思いを自民党県議団の皆様にお届けさせて頂きます」であった.(文字の着色強調は当ブログ筆者が行った)
ここで問題になるのは,なぜ野沢さんは「この思いを自民党県議団の皆様にお届けします」ではなく「この思いを自民党県議団の皆様にお届けさせて頂きます」と述べたのか,ということである.
野沢さんとその市民団体は,自民党県議団に陳情に来たのではなく議案反対の署名を届けに来たのであるから,常識的には「この思いを自民党県議団の皆様にお届けします」でよい.何の不都合も失礼もない.
ところが野沢さんは「お届けさせて頂きます」と言った.
文化庁文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日) では,「させて頂きます」の使いかたについて次のように解説している.《自分側が行うことを,ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い,イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる》
言い換えると,この解説とは外れる用法に私たちは違和感を覚えるのだ.
その違和感だが,「させて頂きます」という表現は,関東地方では,相手方の負担になることをお願いするというニュアンスを帯びることが多い.(「させてもらいます」という方言が存在する関西ではそうでもないとNHKの資料にはある)
私は,「させて頂きます」に卑屈な態度を感じてしまう.
人によっては「くどい」とか「慇懃無礼だ」との印象を持つこともある.
野沢ココさんの場合,当該条例案に反対する署名を集めたのは自民党県議団に対する抗議なのだから,ア) 自民党県議団に「条例案反対署名を受け取ってください」と許可をお願いしてはいけないのである.「反対署名を受け取れ!」というのが正しい態度だ.
それなのに野沢さんは「お届けさせて頂きます」と言った.
この言いかたでは,野沢さんは自民党県議団に卑屈にへりくだっていることになる.
とはいえ,野沢さんに「へりくだっている」という意識はないだろう.ということは,敬語の使いかたについて無頓着で,軽く関西弁風に「させて頂きます」という人が関東地方でも増えてきたのかも知れない.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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