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2023年9月 4日 (月)

インチキな「お得感」

 私がまだ若かった昔の話だが,マクドナルドが「クーポン券をお持ちのお客様は○○円割引!」というキャンペーンを始めた.
 まだクーポン券が物珍しいものだった時代のことである.
 私なんか「クーポン券てナニ?」という男であり,しかもハンバーガーなんてしゃれた食い物には縁がなかったのだが,ちょうどマクドナルドの前を通りかかったら店員が,通り過ぎる人たちに何か小さな紙きれを配っている.
 私にもそれをくれたので見てみたら,それがクーポン券だった.
 クーポン券が,いつもマクドナルドを利用してくれる客への特別サービスなら話はわかるが,店の前で誰かまわず無差別にバラ撒いているのだ.
 店の前でクーポン券をもらって.そのまま店内に入ってハンバーガーを購入すれば「○○円割引!」なのである.
 そんなことをせずに単に値引きしてくれれば,客としては注文時にクーポン券を出す手間がいらないわけであるから,私はクーポン券というものの意味が理解できなかった.

 そういう私の理解を超えて,世はまさにクーポン全盛である.
 では,クーポン全盛の理由はなんだろう.
 テレビCМを見ていると,若い女性 (めるるちゃん) がスマホで検索して食べたいものを決めて,それを出前館にデリバリしてもらう,なんてことをしている.
 そういう生活スタイルの世代の人たちにしてみると,何を食べようかという選択肢は余りにもボーダイで,スマホ画面をスクロールすればいくらでも出てくる.
 しかし,現物の食べ物ではなく,ちっちゃな画像で判断しなきゃならないのが,いささか困る.
 おまけに,例えばいくつかの店のハンバーガーを比較するというのではなく,牛丼とサンドイッチとパスタを比較するという有様であるから,料理一人前の単価は決定打にならない.
 そこで若い人たちが着目するのが「お得感」すなわち「割引額」または「割引率」である.
 その背景には,「家族割」とかナントカ割という用語を流布宣伝しまくった携帯電話キャリアの戦争があったのはわかりやすい事実だ.
 携帯電話の場合は「○○割」を連発しすぎて複雑化し,結局なにがどう「お得」なのか理解不能となって自爆したのであるが,飲食物業界は携帯電話キャリアより賢かった.
「現金正価-クーポンによる割引」という単純な計算を用いて「お得感」を演出したからである.
「お得」な料理をスマホで選んで,「出前館いいじゃーん」で万事解決だ.
 これなら二桁の加減算を暗算できないそこらへんのお姉ちゃんでも,ランチに何を食べればいいか決められる.
 しかも,一般の飲食店とかファスト・フーズを提供する側からすると,その時々の他店や他業種との競争状況を睨みつつクーポンによって販売価格を自在に変更できるメリットがある.
 
 さて先日,藤沢駅北口商店街にあるスーパーのダイエーに行った時のこと.
 カット・フルーツのコーナーにスイカがあった.
 包装容器に詰められて陳列されたスイカ (598円) の中にポップ・スタンドがあり,掲示されていたポップには「クーポンをお持ちのお客さまはレジで200円引き!」旨のことが書かれていた.
 クーポンはイオンのサイトでゲットできる.
 ところが,このカット・フルーツのスイカは値引き後の価格が,近くにある中堅スーパーのサミットの同種商品と同額なのであった.
 つまりいかにも「お得」のように見せかけて,実は他店と同額で販売していたのである.
 ダイエーは,「お得感」で商品を選択する若い人たちを狙って,こういう手口で販売している.
 つまり普段からクーポンの利用に慣れていない高齢者の目でみると,現金正価は異常な高額販売なのだ.詐欺に近い.
 
 そう遠くない時代に,スーパー等の小売店は二極化するだろうというのが私の持論だ.
 イオンはどうか知らぬが,藤沢のダイエーは商品の価格に敏感かつ詳しい高齢消費者を敬遠する方向に行くだろう.それはレジを見ればわかる.
 ダイエー藤沢店は以前はセミセルフ・レジであったが,これを大幅に減らして,若い人たちが好むセルフ・レジ中心に改装した.
 価格が高いせいで客が少なくなり,人件費削減の必要に迫られたのであろう.
 セルフ・レジは,セミセルフ・レジでは店員が行うスキャン操作を客が行うのだが,商品の価格は同額である.
 すなわち店側は,本来は自らが負担すべき人件費を,客に押し付けているわけだ.
 疑うと言う事を知らぬ若い人たちは,クーポンの「お得感」に騙され,その上,セルフレジで人件費の肩代わりをさせられている.
 若い人たちは,世に数あるクーポンの中には,インチキな「お得感」が仕込まれていることがあると知った方がいい.
 
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ウクライナに自由と光あれ
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(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)


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