鰻
先日,土用丑の日に所用で外出した帰路,藤沢駅の周辺で夕飯の弁当なり自炊の食材なりを買って帰ることにした.
夏の宵の七時過ぎである.
夕食の食材を買いに来た人びとは夕方には帰宅し,この時刻に駅の周辺にいるのは,仕事帰りに取り合えず何か食うものを買って帰ろうという人たちだ.
私は,藤沢の駅ビルにクイーンズ伊勢丹があるので,まずそこで弁当を物色した.ここは閉店時刻が早いので,まずはここを覗く.
この日は弁当コーナーに,たくさんの鰻弁当が積み上げられていた.
店員さんが「お得になっておりまーす」とアピールするのだが,客たちは鰻弁当は手に取りもせず,他のリーズナブル価格の弁当をカゴに入れてレジに急ぐ.
クイーンズ伊勢丹のすぐ前に崎陽軒の売店があるのだが,鰻弁当を一つ買うオカネで,値上げしたとはいえあのシウマイ弁当が三つも買えるのだから,鰻弁当はコスパが悪すぎだ.家で子供たちが腹を減らして待っているおかあさんとしては,ガッツリ系弁当を買って帰るわなあ.
鰻以外の弁当はほぼ売り切れていたので,仕方ないから鰻弁当を買おうかと私はチラと思ったのだが,同じくらいの大きさの国産鰻蒲焼 (の切れっぱし) をスーパーで買って帰り,自宅でレンチンしてから熱い飯に載せて食えば,二千円も安上がりになると思って考え直した.
次に,駅から少し歩いてスーパーのサミットに行った.
するとそこでも大量の鰻弁当が売れ残っていた.
客足はそろそろ減っている時間帯なのに,売れ残りはどうするんだ,とバイヤーに言いたい.
国産ウナギが絶滅危惧種になってから,もうかなり経つのに,土用丑の日の鰻廃棄は一向に収まらない.
あの恵方巻は,大量の売れ残り廃棄に対する批判が高まったせいか,スーパーでは閉店時刻 (あるいは消費期限) が迫ると値引き販売が行われるようになった.スーパーやコンビニでの恵方巻廃棄に関する調査が実施されて公表されたこともあり,安易に廃棄することにブレーキがかかっているようだ.(YAHOO!ニュース《恵方巻、89社が予約販売に応じた2023年、45店舗の調査結果はどうだったのか》[掲載日 2023年2月9日 13:09])
しかし,恵方巻は高価なものではないから,店としては「20%引き」シールを気楽にペタペタ貼っているが,鰻弁当は単価が桁違いに高いので,そうもいかないのだろう.
閉店までいて鰻弁当の末路を見届けたわけではないが,必ずや廃棄処分が出るだろうと思われた.
結局,私は助六寿司弁当を買って帰った.
NHK《サイエンスZERO 謎の回遊魚!ウナギのミステリーツアー》[初回放送日: 2023年7月30日] を興味深く視聴した.
研究者の努力にもかかわらず,ウナギの生態について明らかになっているのはごくわずかである.
しかし放送の中で紹介されたが,最新研究で「親ウナギを性成熟させる」ことは,どうやら可能になるかも知れないと言うにやぶさかではないらしいのである.
つまり人工的に産卵させることが,どうやら可能になるかも知れないと言うにやぶさかではないらしいのである.
しかし産卵して孵化した後が人工飼育環境では非常に困難らしい.
とはいえ私は楽観的に,十年後か二十年後か,いつの日か研究者たちがウナギの完全養殖に成功するだろうと希望を持っている.
だとすれば,私たちがすべきことは,完全養殖成功の日までに日本産ウナギを絶滅させないことである.
水産庁水産研究・教育機構《令和3年度国際漁業資源の現況 ニホンウナギ》(下図) によれば,日本に戻って来るニホンウナギ稚魚はほぼ絶滅しているのである.

上の図を見れば,私たち日本人はニホンウナギを食いつくして,ほぼ絶滅に追い込んだことがよくわかる.
日本人は色々な生物を絶滅させてきたが,もうすぐニホンウナギがこれに加わる.
もうニホンウナギを絶滅から救うことは不可能だと思われるが,せめて自然に対する贖罪の意味で,もう鰻を食うのをやめてはどうだろう.
土用丑の日に鰻を食うなんて,何の意味もないではないか.夏バテ防止のためには他に色んな食い物があるからだ.
元々私は鰻を好んで食う習慣を持たないので乱暴に言い切るが,スーパーやコンビニは,国産鰻弁当の廃棄をすぐやめろ!
滅びつつあるニホンウナギを,彼らが細々とあちこちの河川で生きていた昭和三十年代の日本に戻してあげようじゃないか.私はそう思う.
方法はある.シラスウナギの採捕や養殖に高額の税金を課するのだ.
鰻重が二万円とか三万円になれば,富裕層だけが口にすることになるに違いない.それでいいじゃないか.
コンビニやスーパーやデパートは,ニホンウナギに手を出さなくなるに違いない.私を含む庶民は,食いたければ皮がゴムのような中国産ウナギ (ヨーロッパウナギ) を食えばいい.
課税方式なら,富裕層に需要がある限り,生産者および鰻職人は廃業せずにすむ.
平賀源内の思いつきとの説がある土用丑の日に鰻を食う習慣は,もうやめようではないかと言いたい.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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