「屍活師 女王の法医学」のネタバレを書いてしまうけど /工事中
テレビ朝日《屍活師 女王の法医学 3》を視聴した.タイトルからわかるようにシリーズものの第三作だが,私は初めて観た.
あとで調べて,原作は同名のコミックだと知った.
主演の法医学者は仲間由紀恵さんだが,死体発見現場でもどこでも,長い髪をまとめずにいるという演出が少し疑問である.
地面に横たわっている死体を,かがんで検視している際に髪が邪魔だ.仲間さんに髪を切れというわけにもいかないだろうが,それならキャップを被るのが役割上はそれらしい.
ちなみに,警察ドラマに登場する女性の医師や科学者たちが,白衣の前のボタンをとめずにはだけているのは,彼女らの衣裳 (のトップス) を協力店から無償提供 (番組の最後に「衣裳協力○○」と字幕が出る) されているので,視聴者の目にしっかり印象付ける必要があるからだという.(「榊マリコの沢口靖子さんが着ていたセーターが欲しい」などという女性が店に来るのだそうだ)
他に演出上のことでは,《科捜研の女》でも《屍活師 女王の法医学》でも,検視官でないどころか捜査員でもない美女が死体の検視を行うことに疑問を呈する人がいるようだが,これは警察フィクションのお約束であり,私としては何の文句もない.
(Wikipedia【検視官】;警視庁・道府県警察本部刑事部の捜査第一課あるいは鑑識課(大阪府警察は検視調査課)に所属している。警察大学校において法医学を修了した警部または警視の階級を有する者が刑事部長によって指名される。)
それはともかく,このドラマ第3作《屍活師 女王の法医学 3》は,昭和六十一年 (1986年) に沖縄で発生した「トリカブト保険金殺人事件」で行われたアリバイ工作を,推理ドラマのトリックに 丸パクリして 材料にしている.(参照;Wikipedia【トリカブト保険金殺人事件】)
実際に起きたこの殺人事件で犯人とされ,無実を主張しつつ獄死した神谷力が実行した殺害方法は,テトロドトキシン (フグ毒) とアコニチン (トリカブト毒) を併用することであった.
神谷の犯行についての簡単な記載が『図説現代殺人事件史』(河出書房新社,1999年) があるとされているが,古書の流通が少なくて高価である上に,内容が薄いという.
また『警視庁取調官 落としの金七事件簿』(産経新聞出版,絶版) にも本事件の記述がある らしいが私は未読である.とWikipediaに書かれているので,古書を入手して確認してみた.
しかし「トリカブト保険金殺人事件」に関するこの書籍の著者は,犯行の法医学的側面に関心が全くないので,その意味では読むだけ無駄だった.ただし,本書に書かれている事件の概要は,Wikipedia【トリカブト保険金殺人事件】の記述を
そのため,神谷の犯行がどのように行われたかについては,Wikipedia【トリカブト保険金殺人事件】に頼ることにして,その記述を下に引用して解説する.引用文中の文字を着色強調した箇所が重要である.
《妻の急死
1986年(昭和61年)5月19日、神谷と妻は、沖縄旅行のために沖縄県那覇市に到着した。翌20日、2人に誘われた妻のホステス時代の友人3人も、那覇空港で2人に合流した。
11時40分、神谷は「急用を思い出した」と大阪の自宅へ帰宅することになり、那覇空港に残った。妻と友人3人は、予定通り石垣空港行の飛行機に乗り、正午過ぎに石垣島へ到着した。石垣島に到着した一行はホテルに到着し、チェックインをしたが、すぐに突然妻が大量の発汗、悪寒、手足麻痺で苦しみだしたため、救急車で八重山病院へ搬送された。妻の容体は急速に悪化して救急車内で心肺停止に陥り、直後に病院に到着するも、一度も正常な拍動に戻らず15時4分に死亡した。
不審な死因
沖縄県警察は、那覇空港から急遽石垣島に来た神谷の承諾のもと、行政解剖(遺族の承諾による)を行った。解剖にあたった大野曜吉(当時・琉球大学医学部助教授)は、妻の死因を急性心筋梗塞と診断した。しかし、心臓の一部に小さなうっ血を発見するも、内臓には病的な異変のない状態だった。また、急死につながる明らかな異常は発見されず、石垣島に旅行できるほど若く健康な女性が突然死したことを不審に思った大野は、妻の心臓と血液30ccを保存した。この判断が後に事件解決につながる。
(中略)
妻の保険金をめぐる裁判
妻は神谷が受取人である複数の生命保険に加入していた。
(中略)
事件の発覚
1991年(平成3年)6月9日、警視庁は神谷を別の横領事件で逮捕した。その捜査の過程で、5年前の妻の死が保険金目当ての殺人だった可能性が浮上し、7月1日に警視庁は殺人と詐欺未遂で再逮捕した。
5年前の事件ということもあり、証拠は無いものと思われていたが、その間大野は毒物に関する資料を読み漁った結果、犯行に使用された毒がトリカブト毒であることを突き止めていた。そして保存していた心臓や血液を東北大学や琉球大学で分析した結果、トリカブト毒が検出され、妻が毒殺されたのは確実なものとなった。さらに神谷にトリカブトを69鉢売ったという花屋が現れたこと、神谷が借りていたアパートの大家から水道代・電気代料金が異常に高い月があったという証言を受け警察が部屋を捜査した結果、畳からトリカブト毒が検出されたため、神谷への疑惑は一層強まった。
しかも、神谷にクサフグを1000匹以上売ったという漁師が現れたことから、警視庁は琉球大学に保存されていた妻の血液を、東北大学の協力を得て改めて調べた。すると、フグ毒(テトロドトキシン)が検出された。
公判
公判では、神谷が、いつどのようにして妻に毒を飲ませたかが焦点となった。
検察側は、妻の血液から毒が検出されたことに加え、神谷がトリカブトとフグを大量に買っていたと主張し、神谷がトリカブトを69株も買い求めたという福島県西白河郡の高山植物店の店主も出廷した。検察は、神谷の自宅から実験器具を押収しており、生前の妻がサプリメントのカプセルを飲んでいたことから、自宅でアコニチンとテトロドトキシンを抽出し、その毒を入れたカプセルで毒殺したと主張。殺害の動機として、検察は神谷が消費者金融から借金をしていたことを挙げ、借金返済のために保険金殺人を計画したとし、妻とのスピード結婚も保険金目的だったとした。その上で、神谷が1981年頃からトリカブトやフグを購入していたことから、急死した前妻も毒殺された可能性を指摘し、自宅から押収した毒物から、妻の死後も次の保険金殺人を計画していたと主張した。
これに対して、神谷はトリカブトは観賞用のために、フグは食品会社を起業するために購入したと反論。さらに、アコニチンが即効性のある毒であり、神谷と別れてから1時間40分後に苦しみだした妻に対してアリバイがあると主張した。再反論のために、検察は千葉大学にカプセルで効き始める検証を依頼。すると、カプセルを二重三重にしても5分から10分程度しか遅らせられない事が判明し、神谷の主張が正しいかに思われた。
ところが、妻の血液を分析していた大野が、公判でアコニチンとテトロドトキシンの配合を調節することで互いの効力を弱めることができると証言した。アコニチンはNa+チャネルを活性化させ、テトロドトキシンはNa+チャネルを不活化させ、この2つを同時に服用するとアコニチンの中毒作用が抑制される、拮抗作用が起こることが判明した。そしてテトロドトキシンの半減期(毒物の血中濃度が半分になるまでの時間)がアコニチンよりも短いため、拮抗作用が崩れたときに、アコニチンによって死に至る。これにより、神谷が妻を毒殺することが可能となった。神谷はアパートに大学でも用いられる機材を導入し、マウスを用いて実験を繰り返した末、犯行に使用された毒薬を生成していたとされた。
1994年(平成6年)、東京地裁は神谷に対し、求刑通り無期懲役の判決を下した。神谷は控訴したが、二審の東京高裁も一審判決を支持し、神谷は最高裁に上告。2000年(平成12年)2月21日、最高裁は、神谷の上告を棄却したため、神谷の無期懲役が確定した。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
この殺人事件の動機等の背景については,関心がないので説明をしない.
殺害方法にのみ注目して要点を以下にまとめる.
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