「職務専念義務」を歪曲する主張
ファイナンシャルフィールド《仕事中に空腹すぎて外出! 業務中に「食事」をしても給与は支払われる?》[掲載日 2023年7月6日] から下に引用する.
《勤務時間中に空腹になりすぎて仕事の継続が難しくなったからといって、外のコンビニで食事をしてきても良いのでしょうか。そもそも勤務時間中に私的な用事で出かけても良いのか、中抜けした時間の給料は払ってもらえるのか、気になるところです。
勤務時間中に私的な用事をすることの是非や、仕事中におなかが空いたときの対処法などを紹介します。
企業に勤務する従業員は、職務専念義務(仕事中は業務に専念する義務)を負います。
公務員の場合は、国家公務員法や地方公務員法に職務専念義務が明文化されていますが、民間企業で働く従業員の場合、職務専念義務は法律で明文化されているわけではありません。企業と従業員の間で労働契約を締結した際に、職務専念義務が発生すると考えられています。
そのため、従業員が勤務時間中に私的な行為を行っていた場合、職務専念義務違反になる可能性があるわけです。
(中略)
・勤務時間中にコンビニに軽食を食べに行くことは処分の対象になるのか
神戸市水道局の職員が勤務時間中に弁当の注文を取る目的で近所の飲食店に3分程度の中抜けを26回したことに対し、減給の処分が下された判決があります。この職員は弁当の注文のための中抜け以外にも公用車でコンビニに寄る姿が住民に目撃されていました。水道局ではたびたび注意喚起を行っていた事実があり、常習性があると判断された故の判決でした。
公務員と民間企業の従業員では立場は違うものの、仕事中に空腹だからと中抜けしてコンビニに軽食を食べに行く行為は職務専念義務に反しており、減給などの処分の対象になる可能性があります。中抜けした時間がたとえ5分だったとしても、その間は持ち場を離れており、業務を遂行できない状態になっているためです。》(引用文中の文字の着色強調は当ブログの筆者が行った)
コロナ禍の時に「エッセンシャル・ワーカーの皆さんに感謝を!」という言葉が流行った.
日本の社会を成り立たせている労働は多方面に存在していて,その労働に携わっている人たちに私たちは感謝してもし切れない.
ほんとにその通りなのだけれど,しかしコロナの流行下,実際にエッセンシャル・ワーカーの人々に対して,私たちは何をしたか.
親が医療従事者の子弟たちは,小学校や中学校で疎外された.
「親が病院で働いている人の子たちは登校させないで!」と学校にねじ込んだ親がいたと報道された.
「○ちゃんのお母さんは看護師さんだから,○ちゃんに近寄っちゃだめよ」と自分の子に教育した親がいたと報道で耳にした.
医療従事者と同じくコロナ感染リスクが高い医療救急隊員も白い目で世間から見られた.
連続的に出動が続いて,職場に戻って昼食を摂る暇がない隊員がコンビニに立ち寄ってパンなどを買ったりすると,それを目にした者から自治体消防にクレームが寄せられるのは以前から知られていた.
最近では昨年夏に,さいたま市消防局がSNSに《【救急隊に食事の時間を!】》と投稿して話題になった.下にツイートを引用する.
《救急出場が続くと、救急隊が消防署に帰れない時があります。そんな時は、出場できる体制を取りつつ、救急隊がコンビニ等で飲食物を購入し食事をする事がありますので、ご理解をお願い致します。》
さいたま市消防局は「クレームがあったわけではない」としているが,市民からのクレームがないのにわざわざ《ご理解をお願い致します》と投稿するわけがない.
またネット上の質問掲示板に「コンビニで救急隊員が買い物をしていたが,そんなことをしていいのでしょうか?」という質問が立ち,それに「もちろんダメです.買い物は休憩時間に,私服に着替えてしなければいけません」と悪意の「回答」が寄せられる等の例がある.
もちろん嘘の「回答」だ.
公務員の業務には多様な形があり,無断離席とか職場放棄などの労務管理的な言葉が馴染まないものがある.消防はその最たるものだ.
それがために各自治体は,公務員の特別な勤務形態の場合,職務専念義務について柔軟な解釈をしている.
一例を挙げると,総務省消防庁資料《救急隊員の労務管理》に,医療機関の食堂やコンビニで食事を買い求めることについての東京都の解釈例が掲載されている.下に抜粋引用する.
【事例3】コンビニエンスストア等での食事等の購入
○東京消防庁(東京都)
東京消防庁においても、連続出場などにより、食事時間を経過した救急隊については、帰署(所)途上にコンビニエンスストア等を利用し食事を取ることができることとしている。(レスト タイム)
【実施要領】「救急隊員の食事等の対応について」
1 コンビニエンスストアで等で食事等を行う場合は、感染防止衣、救急帽及び保安帽を着用しないこととします。
2 食事場所は、出場指令に対応できる次の場所とします。
(1) 帰署途上の他所属の消防署(所)
(2) 医療機関内に設置されている救急隊員の控え室
(3) コンビニエンスストア等の駐車可能な場所
(4) ファーストフード店内
3 食事等の時間について、勤務上の処理は休憩時間とし、帰署(所)後署隊本部に報告してくだい。
つまり救急隊員は,所属する消防署以外の四ヶ所において《感染防止衣、救急帽及び保安帽を着用》しないことを条件に食事を許可されているのだ.そして,食事の時間は休憩時間として扱うこととしている.
昨夏に,救急隊員に対する誹謗中傷が問題になった時,上記の総務省の解釈は広く知られたと私は思っていたのであるが,ここにきてファイナンシャルフィールド誌がこの件を蒸し返した.
ファイナンシャルフィールド誌の主張を,以下に再度引用する.
《仕事中に空腹だからと中抜けしてコンビニに軽食を食べに行く行為は職務専念義務に反しており、減給などの処分の対象になる可能性があります。中抜けした時間がたとえ5分だったとしても、その間は持ち場を離れており、業務を遂行できない状態になっているためです。》
ファイナンシャルフィールド誌が「総務省および各自治体の職務専念義務解釈は誤りだ」と思うのであれば,総務省当局に疑義照会せよ.
それをしないのであれば,ファイナンシャルフィールド誌編集部は悪意のデマゴーグというべきである.
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ウクライナに自由と光あれ
(国旗画像は著作権者来夢来人さんの御好意により
ウクライナ国旗のフリー素材から拝借した)
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